愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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ウォ「この本によれば、世界的アーティスト風鳴翼は、シンフォギア『天羽々斬』装者として、仮面ライダービルドこと桐生戦兎と共に聖遺物と戦う運命にあった。しかし、突如として過去が書き換えられ、仮面ライダーのいない世界へと変えさせられてしまい、それをもとに戻すべく、我らが魔王常盤ソウゴと共に過去へと向かうのであった・・・」
切「はぁ~、やってられないのデス」ジゴク
響「ブライアンまたでなかったよ。ふふ、笑えばいいよ。私たちのことなんて・・・」ジゴク
未「響~、どっかの地獄兄弟みたいなことしないで」
調「そうだよ切ちゃん、見苦しいよ?」
切「結構ぐっさりいきますね調・・・」
響「だって、本編じゃ翼さんにとんでもない事してるし、リアルじゃツイッターで他の人がナリタブライアン当ててるのにこっちは緑の悪魔(たづなさん)しか出なくて出ないのに、本当にもうやってられないよ。ん?そこの貴方、今笑った?」
切「そういう調も、どうせ慧介の事で色々とため込んでるんでしょ?やってらんないデス(ガシッ)ゑ?」
調「けーくん・・・」
切「アッシンダ」
調「ウキャァァアアァァアアア!!!!」
未「うわぁぁあ!?調ちゃんが慧介君の事を思い出して暴れ出したぁぁあああ!?」
ゲ「どういう事だ!?」
響「調ちゃん、現在両片思い中の慧介君の事が大好きで、その成分が不足してるとこんな風に暴れちゃうんでスゥ!?」ガラスがさくっ
未「響ぃぃぃいい!?」
ゲ「あ、くそっ!くっ、ツクヨミ頼む!!」

ジカンガトマール

ツク「全く、これはそんな便利な能力じゃないのよ?」
未「でも助かりました~・・・地獄に落ちてた響と切歌ちゃんは手遅れだったけど」
切「デェス・・・」
響「ハハ、笑えばいいよ、私たちのことなんて・・・」
ゲ「大丈夫か、こいつら・・・」
ウォ「やれやれ・・・では、シンフォギア・ビルドオリジン・ザ・天羽々斬第五話をどうぞ」


真実とインパルス

―――風鳴邸、そこにある道場にて、

 

「ふっ!ふっ!」

綾女は一人、真剣を振っていた。

華麗な波線と、陽光に光る刀身が、振るわれる度にその残光を見せ、輝く。

もう何時間も振り続けているのか、綾女の額には汗が流れている。

やがて、剣を振るう手を休め、剣を下ろし、呼吸を整えながら、綾女はつい昨日のことを思い出す。

 

『貴方の娘の、翼です』

 

自分の娘を名乗る少女。その不安そうな顔が、脳裏にこびりついて離れない。

あの顔を、綾女は良く知っているのだから。

「おかあさま・・・?」

ふと、声が聞こえ、そちらを向いてみる。

そこには、学校から帰ってきたばかりであろう小さな娘がいた。

その姿を見て、綾女は頬を緩めた。

「どうしたの?翼」

刀を鞘に納め、膝をついて両手を広げてみせる。それに翼は、その顔を綻ばせると、こちらに走ってきて、汗まみれの母に抱き着く。

「ふふ、汗臭いのにいいの?」

「わたし、おかあさまのにおい、だいすきだからいいの」

ぎゅっとしがみつく娘の頭を、綾女は撫でる。

そして、ふと娘を離し、その顔をじっと見つめながら、尋ねる。

「何か、あったの?」

 

 

 

 

「そう、八紘が・・・」

縁側に座り、翼を膝に乗せ、綾女は不安そうに拳を握り締める翼の頭を撫でる。

「おとうさま、このいえをでていけって・・・おかあさまにいったことを、いっただけなのに・・・」

「そうねぇ・・・翼に似て、あの人は不器用だからね」

「む、わたし、おとうさまににてないもん。おかあさまににてるんだもん」

「ふふっ、そうね。確かに翼は女の子だもの。私に似てるわよね」

むっとする娘をなだめつつ、綾女は気付かれぬように、先日会った娘のことを思い出す。

(翼・・・私の娘、その未来の姿・・・こんなに無垢な娘が、あんな風に育ってしまうなんて・・・)

寂しそうで、辛そうな顔だった。

(一体、未来で何があったのか・・・)

気になる。気になってしまう。そして、心の奥底で分かってしまう。

 

彼女は間違いなく、自分の娘だということを。

 

「・・・」

「おかあさま」

「え?ああ、ごめんなさい。でも、大丈夫よ。お父さんはちゃんと翼のことを思ってくれてるわ」

「ほんとう?」

「ええ。だって八紘って、変に難しく考えちゃうから」

彼のことは、良く知っている。

初めて出会い、そして、共に過ごした時間分だけ知っている。

知らない所まで知っている。

だから、だからこそ―――

「貴方は、幸せに生きてね。お母さんはいつでも、貴方の夢を応援してる。貴方が夢を忘れない限り、応援してるから」

後ろからそっと抱き締め、綾女は、幼い翼にそう言った。

 

 

 

 

翼を、偶然やってきていた緒川に任せ、八紘の執務室へと向かう。

扉を開けば、そこには書類作業に追われている八紘の姿があった。

「八紘」

「綾女か」

「翼に、この家を出て行けと言ったそうだな」

八紘のペンを走らせる手が止まる。

「・・・責めるか?」

「いや」

綾女は、首を振るう。

そのまま椅子に座ったままの八紘の後ろに回り、そっと後ろから抱きしめる。

「それが、お前の優しさだって知っているからな・・・」

「・・・綾女、お前は、もう恨んでいないのか」

心なしか、八紘のペンを握る手に力が入っている事に気付く。

「暗殺の為、私に近付いたとはいえ、お前は私の父によって辱められ、そしてあの子を産んだ。・・・風鳴の子を、ましてや父の子を産むなど、お前にとっては、死よりも辛い屈辱なのではないのか?」

「・・・・」

震える八紘の声の、一音一音を受け止め、綾女はそっと、抱きしめる腕に力を込める。

「私の怨敵は風鳴訃堂ただ一人。当時は、風鳴の血を根絶やす気でいたさ。無論、お前のことも・・・だけど、私はお前と出会い、共に過ごしていくうちに、お前を恨めなくなった。それが、一つ目の理由」

次に、と続ける。

「お前の兄弟に出会った。あの外道の子とは思えない、優しい奴らばかりだった。豪胆な奴もいれば、繊細な奴もいえ、弦十郎のようにデタラメな奴もいた。そんな愉快な奴らと出会ってしまった。それが、二つ目の理由」

最後に、と続ける。

「あの日――――」

言葉が、八紘との間に交わされる。

それを聞いた八紘は、ふう、と息をついて、

「それが、お前が生きている理由、ということなんだな」

「ああ。だから私は感謝する。お前が生きている事に。お前があの子を想っている事に」

「買いかぶり過ぎだ。私はそんな器ではない」

「ただ不器用なだけだろう」

悪戯っぽく笑ってみせる綾女に、八紘は顔を赤くする。

「そんなことより綾女」

「なんだ?」

「何故道着のままなんだ?」

「誘っているからだが?」

「ブッ!?」

何の恥ずかしげもなく言ってみせる綾女に、八紘は思わず吹き出す。

「な、何を言っている!?」

「くくっ、そういう所は本当に翼とそっくりだな」

「い、今は仕事中だ!そういうのは後にしてくれ!」

「なんだ?私たちは夫婦ではないか。処女と童貞を捧げ合うだけでは飽き足りず、何度も体を重ね合った仲ではないか。一度や二度間違いを犯しても何の問題もない」

「と、とにかく!夜、夜だ!夜までまってくれ!」

そのまま執務室から追い出される。

「むぅ、八紘の意気地なし」

そんな八紘に綾女はふっと、安心したように微笑む。

 

 

 

 

「うっわぁ・・・大胆だねえ」

「ど、ドドド、ど、どうてっどうて」

「げ、ゲイツ落ち着いて」

「いやはや、彼女がこれほどまでに大胆だったとは・・・」

「翼さん、大丈夫ですか?」

「私は何も聞いていない私は何も見ていない私は何も言っていない・・・」

夫婦の仲睦まじい様子を見せられて興味津々なソウゴ、大人なやり取りに壊れたゲイツ、そのゲイツを心配するも流石に初心さが拭えないツクヨミ、ギャップの差に戸惑っているウォズ、悶える翼を心配する未来とその未来に心配される翼たちが、垣根の外から見ていた。

「だけど、夫婦愛を確認するだけでこれといった手掛かりは見つからなかったね」

「風鳴綾女の人間関係が、アナザーシンフォギア誕生の原因へと繋がると睨んだのだが・・・」

未だ壊れたゲイツをほっぽりだしたまま、ソウゴとウォズは考察を重ねる。

「未来ちゃん、そっちはどう?」

「えーっと少し待っていてください」

その一方、未来は持ってきたS.O.N.G.の通信機の周波数を合わせていた。

やがて―――

 

『―――ザザッ―――り―――した―――方がいいかもしれないですね』

 

「つながった!」

実は二課本部にクロを侵入させて盗聴器で会議の様子を盗み聞きしようという寸法なのだ。

そしてその目論見は上手くいっている。

『ああ、これ以上のノイズの発生を抑える為には、やはり、例の完全聖遺物を確保するか破壊するしかないようだな』

弦十郎の声だ。

『でも、今の二課じゃその聖遺物を納めるなんてことは出来ないし、綾女ちゃんにかかる負担のことを考えると、破壊するしかないんだけど、現状、破壊なんて出来ないのよねぇ・・・』

フィーネ、櫻井了子。

『もうちょい、綾女さんの使うあれが使えれば話が違ったんですけどねぇ・・・』

『これ以上、綾女の姉貴には負担を駆けられん。いざとなれば俺が出歯って・・・』

『綾女ちゃんの援護なしじゃノイズにやられておしまいでしょ?』

「ふむ、やはり聖遺物の回収こそがこの歴史改変の重要なポイントのようだね」

会話を聞き、ウォズはそう呟く。

「・・・回収させるのではなく、破壊すれば、未来は元に戻る・・・?」

「やることは決まったね」

ソウゴがうなずく。

「おそらくは回収出来たがなんらかの原因で破壊せざるを得なくなった、あるいは破壊されてしまったのだろう。だが今はタイムジャッカーが介入している以上、こちらで破壊した方がいいだろうね」

「よし、翼はお母さんを止めて、破壊は俺たちで請け負うよ」

「いいのか?」

「うん。任せて」

自信たっぷりに言ってみせるソウゴに、未来も同意する。

「いざって時は、私の神獣鏡でどうにかします」

その未来の後押しに、翼も頷く。

「分かった。お母様は私が止めてみせよう」

「頼んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

一方、

「くそっ、まさかあんなに強ぇとは・・・」

体の各所に包帯を巻き、クリスは一人ごちる。

「マリア、大丈夫?」

「一晩休んだから、体はもう大丈夫よ。調や切歌の方こそ、怪我とかしてない?」

「それはもうバッチリ!」

ここはカインが用意した時空跳躍型飛行艇の内部。

響たちは、これに乗って過去の世界にやってきたのだ。

「完全聖遺物『ギャラルホルン』の破壊阻止・・・それこそが、歴史改変を阻止する唯一の手段か・・・」

『風鳴翼』が、渡された資料を読み上げる。

「ギャラルホルンの破壊・・・そんなことをすれば・・・!」

「ああ、アタシたちが平行世界でやってきたことが、全部なくなっちまう」

これまで、平行世界の数多くの問題を解決してきた彼女たちだ。

その根幹であるギャラルホルンを喪失することは即ち、今まで解決してきた事件が全てなかったことにされ、そのままにされてしまうということだ。

そんなことを許せる彼女たちではない。

が、そんな中で、切歌はじっと『風鳴翼』のことを見つめていた。

「・・・む、どうした?暁」

「え、ああ、いえ、なんでもないデスよ?」

切歌は首を振ってみせる。

「・・・実は、変な〇✕クイズを繰り出してくる敵と戦ったのよ」

「〇×クイズぅ?なんだそりゃ?」

「そうよね。だけど、そいつがそこにいる翼は偽物だとかいう問題を出してきたのよ」

「その答えは?」

「・・・そこにいる翼が偽物というのが、正解みたい」

「はあ!?」

これに食いついたのはクリスだった。

「ふざけんじゃねえ!誰だよそんなふざけた答えだしたのは!?」

「酷過ぎます!過去を変えると言っても、こっちの翼さんを偽物呼ばわりだなんて」

「私もそう思ったわ。ちゃんと検査して、こっちの翼が本物だってちゃんと証明されてるもの」

顔の形、皮膚表面の皺の並び、目の色や髪の繊維にDNA検査。その全てにおいて『風鳴翼』はクリアし、逆に向こうの翼は顔立ち以外は全てアウト。

もはや疑いようもない。

だが、その〇✕クイズを出されてから、どうにも違和感を拭えずにいた。

(奴らには、何かしらの必死さがあった・・・それに、言われてみてから、あの翼に、何か、決定的な違和感を感じてしまう・・・)

検査では全てクリアした翼。

泣き黒子だって、翼にはないものだ。

だというのに・・・

(この拭い去れない違和感は一体なんなの・・・?)

マリアはそう思わずにはいられなかった。

「でも、カインさん大丈夫かな・・・?」

「はあ?何がだよ?」

「私たちのお陰で準備が出来たって言ってたけど、一人で大丈夫なのかな・・・」

「さあな。それに、絶対に出るなって言われてるし、ついでに言えば、あの子取り戻すのは現代に帰ってからってことになったからな」

本来であれば、あの場面で未来を取り戻すはずだった。だが、相手は予想以上に強く、取り戻すどころかマリアがボコボコにされるという始末である。

「なんか実に気に障ることを言われた気がするのだけれど・・・!?」

なにはともあれ、カインに動くなと言われてる以上、彼女たちは動くことは出来ない。

「なんか変な時計持たされてるし・・・」

「これ、なんなんだろうね」

「翼の偽物がもってたものと似てるけど・・・」

彼女たちの手には、ブランクライドウォッチが握られていた。

それら全てはカインから渡されたものだ。

「持ってれば分かるって言ってたけど・・・」

「まあ、今は待つしかねえよな・・・」

ジオウの力を身をもって知っているクリスは、そう言わざるを得なかった。

カインの話では、自分に使った形態よりさらに上の形態が存在すると言われた。

最強の姿で来たならもはや勝ち目はないと言われた。

一体、どれほどの力なのだろうか。

「どちらにしろ、魔王如きの好きにはさせない」

『風鳴翼』が、そう呟く。

(そちらは頼んだぞ・・・)

その心の内を覆い隠して―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    何故、何故なのです・・・?

 

何故、あの女なのです。何故、私ではないのですか―――?

 

 

 

―――一人の女が、綾女と八紘とのやり取りを、恨めしそうに見ていた。

(あの人と共に育ってきたのは私なのに・・・あの人の苦しみを一番理解しているのは私なのに、何故、何故あの女に全てを奪われなければならないのですか・・・!?)

拳からは血が滲み、滴り落ちている。

(剣の腕だって、負けてなどいない・・・なのに何故、何故なのですか・・・何故、あの隼の女を迎え入れたのですか・・・!私こそが、貴方に相応しいのに・・・)

「そう、相応しいのは君だ」

突如、声が聞こえた。

「ッ!?」

振り返れば、そこには白い装束を纏った美しい男が立っていた。

「しかし、このままでは永遠にあの女から彼を奪う事は出来ない・・・もうすぐ襲来するノイズの大量発生によって、君は命を落とすからだ」

「そんな・・・!?」

一体何を言っているのかは、実は分かっていない。だが、この男の言っている事が真実なのであれば、自分は二度と、八紘に振り向いてはもらえなくなる。

しかし、

「何故、そんなことが貴方に・・・」

「それは、私が未来から来た人間だからだよ」

声は、後ろから聞こえた。

いつの間にか男は目の前からいなくなっており、振り向けば、いつの間にかそこに立っていた。

「ッ!?」

その手には、一つのウォッチが握られていた。

「君が、真実を変えてみろ」

掲げられる懐中時計。それを見つめ、女は、それをそっと受け取る。

そのウォッチが、女の手の中で輝き、やがて変化し、新たなアナザーライドウォッチを作り出す。

蒼き剣の意匠が刻まれたそれを、女は、妖しく光る眼で見つめ、男はほくそ笑んだ。

 

 

―――そしてその直後、ノイズ襲来の警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その警報は当然、道着から着替えた綾女の耳にも入っていた。

「ノイズか、場所は?」

『割かし広範囲だ!だけど、これを君一人でカバー仕切るのは無理がある!』

端末に示されたノイズの発生情報。確かに、広すぎて対応するには時間がかかる。

(天羽々斬の機動力でどこまで対応できるか・・・)

『姉貴!自衛隊がなんとか耐えてみせる!だから姉貴は全てのノイズを―――』

その時、綾女の脳裏に愛する娘と夫の姿が過る。

「・・・それでは間に合わん」

『姉貴・・・?』

「すまない弦十郎、私の我儘にしばし付き合ってくれ」

『姉貴!?』

綾女は玄関から外へ飛び出す―――その先に、ノイズの集団。

「ここまで来ていたか、だが、家族には一歩も触れさせんッ!」

腕のバングルのボタンを押し、RN式回天特機装束を発動させる。

黒い膜のようなものが綾女の体を包み込み、その身を戦う姿へと変化させる。

 

「変身」

 

『Start Up. Resonance-type Kaiten special equipment』

 

体にぴったりと張り付く戦闘服。それを走る青いラインが淡く輝けば、綾女の姿が掻き消え、ほぼ一瞬にしてノイズの軍団が炭となって消え失せる。

その手に持つ剣を握り締め、苛烈に、神速に、華麗に戦場を駆け抜ける。

やがて、風鳴邸を囲んでいたノイズの集団は全て消え、綾女はある場所へ一瞬にして駆け出した。

 

 

 

そこは、この街にある森林の奥。そこを進めば、少し開けた場所に出た。

狙いを悟られぬよう装束を解除し、端末も捨ててきた。GPSも使われることもない。

「この先に、『ギャラルホルン』が・・・」

しかし、その視界に、一つの影を捉えた。

その姿を見て、綾女は鋭くその影を睨みつけ、尋ねる。

「何しに来た?―――翼」

そこに立っていたのは、翼だった。

「お母様を止めに来た」

その問いかけに、翼はそう答えた。

「ギャラルホルンは回収させない・・・ッ!」

そう決意を露わに、翼はその腕に嵌めたバングルを構える。

「・・・」

その視線に、綾女は正面から受け止め、

「いいえ違うわ」

予想外の声を聞いて、綾女はそちらに視線を向けた。

そこからやってきたのは、一人の女中だった。長い黒い髪をそのままに、妖しい笑みでこちらを見ていた。

(誰だ・・・!?)

「お前は・・・(フクロウ)・・・!?」

女中―――『(ふくろう)水香(みずか)』は、得意気に語る。

「ノイズを吐き続けるギャラルホルンを破壊すれば今出現しているノイズは平行世界との繋がりを断たれ消滅し、家族や仲間、そして娘を守る・・・それが貴方のシナリオね」

「・・・」

「お母様は・・・ギャラルホルンの暴走を止めようとしていたのか・・・!?」

その事実に、翼は驚き、母を見た。

「私は未来を知ったわ。ギャラルホルンは回収される・・・私が歴史を変えるからね」

そうして取り出したのは、一個の懐中時計。

「それはまさか―――!?」

 

天羽々斬(アメノハバキリ)ィ…

 

アナザーライドウォッチが起動し、水香はそれを自らに埋め込んだ。

そして、瞬く間にその姿が闇に覆われ、翼の知る天羽々斬とはかけ離れた装束―――そして、母親そっくりの顔となった水香の姿を目撃した。

「私が貴方を殺し、二課にギャラルホルンを回収させる。そして、八紘様の隣を私のものにする・・・!」

綾女の顔で醜悪な笑みを浮かべる水香。

その野望を知った翼は、それを止めるべく、RN式を発動させようとする。

だが、その前に、綾女が口を開いた。

「残念だが、八紘の隣は誰にも渡さない。いいや、八紘の妻はこの私であり、あの娘の母親は私以外認めない。そうでなければ、あの娘は笑えない―――」

 

 

『―――最後に、あの日、翼の産んだ時。それまで、風鳴訃堂に敗れ、奴の娘を孕まされるという辱めを受け、何度も命を断とうと思った。だが、それは出来なかった。その時は自分すらも殺せなくなるほど腑抜けてしまったと絶望していた。だけど、その理由は、翼を産んだ時に分かったんだ』

 

 

「―――私の夢は、翼の歌で、私や翼―――皆が幸せになることだ」

 

 

 

『―――私が今日まで生きてきたのは、この娘を愛していたから。風鳴訃堂の娘ではない。風鳴綾女として―――お前の女として、この娘の母親として、『翼』を愛していたからだと』

 

 

「その為に、力が必要だった」

母親は、綾女は、娘である翼に語る。

「人を守り、想いを歌にして聞かせる―――『シンフォギア』の力が」

「だから、櫻井女史に協力していた・・・」

胸の奥が、じん、と熱くなるような気がした。

(そうか・・・そうだったんだ・・・)

母は、自分を愛してくれていた。

その為に、泥を被るようなことをしていた。

だから、フィーネに協力していたのだ。

「お母様・・・」

自然と、笑みが零れる。

その姿を一瞥し、綾女は水香の方を向き、バングルを起動した。

その身を纏う漆黒が、綾女の体に這いまわり、戦装束へと変化する。

 

『Start Up. Resonance-type Kaiten special equipment』

 

起動した、RN式天羽々斬を纏いつつ、綾女は叫ぶ。

 

「変身」

 

纏われる漆黒の衣装。その黒き衣と、腰の刀を抜き放ち、綾女は水香に向かって駆け抜ける。

「チィッ!」

それに水香は反応、同じく刀を抜き放っては綾女の振り下ろした刃を正面から迎え撃った。

 

激しく撃ち合う、綾女と水香。

 

鋭く速く、凄まじく。

激しい剣戟が繰り広げられる。

その最中で、綾女の着込む戦装束の青ラインが淡く発光したかと思えば、恐ろしい速さでその場を駆け抜け、水香に一撃を入れる。

「ぐぅっ!?」

綾女は、そのまま水香に追撃を入れる。

 

その様子を見て、翼は―――

 

『その為に、力が必要だったんだ』

 

思い起こされる母の言葉。

 

『人を守り、想いを歌にして聞かせる―――『シンフォギア』の力が』

 

その確かな意思を、翼は娘ながらに感じとっていた。

ならば自分がすべきことは何か。

目を閉じ、やがて意を決したかのようにバングルに手を添え、RN式を起動する。

 

「変身ッ!」

 

纏われる漆黒の衣装と共に、翼は駆け出す。

一方の綾女は、水香の反撃を受け、躱して地面を転がっていた。

そして起き上がった所で、水香が剣を突き立てようとこちらに飛び込んできていた。

その水香に向かって、翼が割り込んではその剣を弾き飛ばす。

「ッ!?」

「ハァァアア―――ッ!!」

そして、母に負けじと、激しい連撃を水香に浴びせていく。

その姿を、綾女は見つめる。

「・・・翼」

そして、そっと娘の名を呟いた。

 

 

 

 

 

そこから少し離れた所で、ソウゴたちはギャラルホルンが存在する場所へと向かっていた。

「ギャラルホルンさえ破壊出来れば、歴史改変は阻止出来る・・・」

ソウゴがそう呟いた。その時、ふと、時空が歪む感覚がした。

気配がする方を向けば、そこから、一人の男が歩いてきていた。

思わず身構える一同。だが、男は突如として視界から消える。否、全く別の場所からこちらに向かって歩いてきていた。

そしてまた、時間が飛んだかのようにその場から消える。

「な、何が・・・!?」

「タイムジャッカー!?」

「やはり来たか、魔王オーマジオウ」

いつの間にか、ツクヨミの背後に立っており、ツクヨミは慌てて飛び退く。

しかし、やはりそこには誰もおらず、気付けば少し離れた所に、男が立っていた。

「なんのことだ?」

「歴史を書き換えれば、必ずオーマジオウが介入し、歴史を元に戻そうとする・・・」

「それじゃあ、貴方が私たちの世界を・・・!」

「そうとも」

男は―――カインは笑顔でうなずいてみせる。

「君が持っているシンフォギアの力と、オーマジオウが受け継いだ全てのライダーの力・・・渡してもらおうか」

次の瞬間、ソウゴたちの体が、金縛りに―――否、時を止められたかのように動かなくなる。

未来は何が起きているのか理解すらできず、一方耐性のあるソウゴたちは何とか逃れようと藻掻く。

(・・・!?なんだこれ・・・!?)

だがその前に、カインはソウゴと未来、両方に触れると、その手から、二人の何かを吸い上げる。

「ぐ・・・・ぅぅう・・・!?」

ソウゴは苦悶に顔を歪め、未来は停止しているために身動ぎも出来ず、そのままある程度吸い上げられた所で、時間停止を解除する。

「ぐ・・・ぁ・・・」

「あれ・・・?」

そのまま、ソウゴと未来が倒れる。

「何が・・・」

「我が魔王・・・!」

「未来ちゃん、大丈夫・・・!?」

「あ・・・はい・・・あれ、クロ・・・?」

気付くと、クロが淡い光になって消えかけていた。

「待って・・・待って!クロ、クロ!・・・ああ!?」

そのまま、クロが目の前で消滅してしまう。

「そんな・・・どうして・・・!?」

「シンフォギアの力を奪われたから・・・!?」

「何故ライダーの力だけでなく、シンフォギアの力まで・・・!?」

「必要だからだよ。ライダーも、歌も。私が王に返り咲くためには必要不可欠なものだからだ」

「王・・・だって・・・?」

「そうだとも!」

ソウゴの問いかけに、カインは高らかに答える。

「私こそが、私の世界の王に相応しいのだ!」

 

神獣鏡(シェンショウジン)

 

新たに生み出されたアナザーライドウォッチ。そのウォッチから、巨大な龍が飛び出す。

「まさか・・・」

「私こそが、王なのだァァァアアア!!!」

叫ぶカイン。そして、その龍を吐き出したウォッチとは別のウォッチを取り出し、そのウォッチに龍を招き入れる。

そして形作られたそのウォッチの名は―――

 

シンフォギアァ!!!』

 

起動する―――『アナザーシンフォギアライドウォッチ』。

「シン・・・フォギア・・・!?」

驚く一同を他所に、それを体内に埋め込み、カインはその身を瞬く間の見たこともない化け物に変える。

肉体は女性―――しかし、その肌色は蒼く、顔は鉄仮面で覆われ、人とは思えないような衣装を身に纏い、そこに立っていた。

「なんなの・・・あのアナザーライダー・・・!?」

「あれをライダーと呼べるのか・・・!?」

「恐らくは仮面ライダーとシンフォギア、二つの力を掛け合わせて生み出されたアナザーライダー・・・いいや、あれこそが『アナザーシンフォギア』と名付けるべき存在だね」

ウォズの説明を他所に、カイン―――アナザーシンフォギアは叫ぶ。

「未だ未完成―――しかし、この姿こそが―――

 

 

―――私こそが、原点にして頂点、世界を統べる『王』である

 

 

「・・・・ツクヨミ、未来をつれてここから離れて」

「・・・分かったわ」

ツクヨミが、未だ回復していない未来を抱えてその場を離れる。

そして、ソウゴは目の前に立つアナザーシンフォギアを睨みつけ、叫ぶ。

「仮面ライダーに、原点も頂点もない。シンフォギアだって同じだッ!!」

そう叫び、ジクウドライバーを装着する。

 

ZI-O(ジオウ)!』

 

まず、ジオウライドウォッチを起動する。

 

ZI-O(ジオウ) TRI(トリ)N()ITY(ティ)!!』

 

続いて、更に大きなライドウォッチ『ジオウトリニティライドウォッチ』を起動させる。

それを、ジクウドライバーに装填し、ソウゴは構える。

そして、ジオウトリニティライドウォッチのつまみ部分『ユナイトリューザー』を手動で回転。

するとウォッチ部分から制御機構が外れる。

 

ZI-O(ジオウ)!』

 

まず初めにジオウの顔が、

 

GEIZ(ゲイツ)!』

 

次にゲイツ、

 

WOZ(ウォズ)!』

 

最後にウォズの顔まで現れた所で、全ての能力が解放される。

その状態で、ソウゴは構え、叫ぶ。

 

「「「変身ッ!!」」」

 

ソウゴだけでなく、ゲイツ、ウォズも叫ぶ。

そしてソウゴがジクウドライバーを回せば、どこからともなく、空から光が降り注ぎ、その光がゲイツとウォズの二人を瞬く間に変身させ、更にその身を巨大な腕時計のような形へと変身。その一方、ソウゴの方には三つのリングが周囲を回り、自らも変身。ジオウの姿のまま、その顔部分が胸に移動。それと同時に、巨大な腕時計となったゲイツとウォズが両肩に合体し、そしてその顔には、黄色、マゼンタ、緑の順で『ライダー』の文字が映し出される。

 

それこそは、どの歴史にも存在しなかった、三位一体の姿。

 

TRI(トリ)N()ITY(ティ) TIME(ターイム)!』

 

TRY FORCE(三つの力)KAMEN(仮面) RIDER(ライダー) ZI-O(ジオウ)!!《 GEIZ(ゲイツ) 》《 WOZ(ウォズ)TRI(トリ)N()ITY(ティ)―――!!!』

 

 

魔王、救世主、預言者―――三人が一つとなることで成される変身。

 

それこそが、『仮面ライダージオウトリニティ』。

 

まさしく、三位一体の変身である。

 

 

そのジオウトリニティが、ジカンザックスを構えてアナザーシンフォギアへと走り出す。

「もうすぐだ。もうすぐこの力は完成され、私は王へと返り咲くことが出来る・・・その邪魔を、魔王如きにさせてたまるものかぁぁあ!!」

アナザーシンフォギアの絶叫と共に、出現したのは無数の鏡。

そこから放たれる光線が、ジオウトリニティを撃ち抜かんとせまる。

「ッ!?」

ジオウトリニティはそれを跳び退いて躱すも、光は迫る。

その光をジカンザックスで迎え撃ち爆散させるも、その光の中から飛び込んできたアナザーシンフォギアの帯がジオウトリニティを打ち据える。

『『「ぐぅあ!?」』』

ジオウトリニティは、三つの意識が一つの体を動かし、その連携によって最大の力を発揮する。

しかしそれは、逆にダメージの共有をするのと同義であり、三人はその一撃をまとめて諸に受ける。

「トリニティが、圧倒される・・・!?」

『あれで完全じゃないだと!?』

苦戦の予感を感じながら、ジオウトリニティはアナザーシンフォギアとの戦いに投じる。

 

 

 

 

 

その一方で、二人がかりでアナザー天羽々斬を纏っている水香を追い詰める翼と綾女。

「がはっ!?」

翼の一撃で弾き飛ばされる水香。

「こんなはずでは・・・!」

「もうやめろ水香。私にお前を殺させないでくれ」

剣を向け、綾女は水香にそう告げる。

「そうはいかない・・・私こそが、八紘様に相応しいの・・・だから、こんな所で挫けるわけにはいかないのよ・・・!」

立ち上がり、綾女に斬りかかる水香。

「そうか・・・残念だ」

それを見て、綾女は刀を納める。

「あぁぁあああああ!!!」

絶叫し、両手でもった刀を振りかざして迫る水香。

それに対して、綾女は虎視眈々と腰をかがめ、その身に走る青いラインを淡く発光させる。

そして、刀の柄に手を添え、構え、水香が射程に入るのを待ち構える。

 

水香が射程に足を踏み入れる―――その瞬間、綾女の抜刀が、水香の腹を斬り裂く。

 

閃迅

 

「あ―――がぁッ・・・!?」

舞う血飛沫、

「あ・・・」

その様子を、翼は茫然と見る事しか出来ず、その翼が認識する前に、綾女の後ろ回し蹴りが、水香の腹を穿つ。

「ぎゃぁぁあぁあああ!?」

蹴り飛ばされ、森の中へと消える水香。

バキバキと、すぐ傍の崖を転がり落ちていく音が聞こえる。

「・・・」

その様子を、翼はただ茫然と眺める。

「・・・すまない、水香」

その水香を見て、綾女は、静かにそう呟いた。

そして、踵を返して歩き出す。

その後を、翼も追った。

 

 

 

 

 

そこは、その山にある洞窟の中だった。

その洞窟を突き進んでいくと、その行き止まりの場所に、『それ』はあった。

「ギャラルホルン・・・!」

巨大な貝のような、巨大な聖遺物。見て分かる通りの起動状態だ。

それが証拠に、けたたましく警報のようなものを鳴らしていた。

これは、本来であればどこか別の世界で異常が起きている事を知らせる為のものだが、今はただ、壊されたくないと泣き喚いているようだった。

これが、この事件の全ての元凶。

「そこで見ていろ」

綾女が、翼に下がるように言い聞かせる。

そして一歩、ギャラルホルンに近付くと、そっと息を吸った。

(大丈夫、譜面は全て、覚えてきた)

脳裏に刻んだ一曲を、誠心誠意込めて歌う。

 

「――――Gatrandis babel ziggurat edenal――――」

 

その歌に、翼は驚愕する。

「それは・・・絶唱!?」

その歌詞は、間違いなく、シンフォギアの最終決戦機構『絶唱』のものだった。

己の全てを燃やし尽くすことによってなされる大火力。それを特定の歌によって発動させることが出来る。

(絶唱も、お母様が作ったものだったのか・・・!?)

だが、それは、それは危険過ぎる。

己の全てを燃やすという事は命を燃やすという事。そして、それは、自ら死を選ぶという事でもある。

まだシンフォギアすらも確立されていない、その前身であるプロトタイプでは、その負荷をどれほど軽減できるかどうか分からない。

もしかすれば、あの時の奏のように、跡形もなく消滅してしまうかもしれない。

それは、まさしく、死ぬこと。

「お母様、それは―――!」

死ぬ。そう思い、翼は思い出した。

(そういえば、お母様が死んだのも、ノイズの大量発生の後だった―――)

死体すら見せてもらえず、ただ、病気で死んだと伝えられていたことを思い出す。

詳しい理由も説明させてもらえず、ただ、母は死んだのだと伝えられた。

「ここで、命を全部使い果たして・・・」

翼は、背筋が凍り付くような感覚を覚えた。

もしそうであるならば、止めなければならない。

だけど、止めてしまえば、歴史は元には戻らない。

戦兎とも、会うことが出来ない。

「っ―――!!」

そんな板挟みの状態に陥る翼。

その間にも、綾女は絶唱を歌い続ける。

その体を走る青いラインが、限界まで光り輝き、命の輝きを見せる。

そして、その光が、頂点に達した時―――天井が崩れた。

「「ッ!?」」

落ちてくる瓦礫を、綾女と翼は躱す。

「なんだ!?」

「これは・・・」

驚く翼と、状況を確認しようとする綾女。

果たして、そこにいたのは―――アナザーシンフォギアだった。

「ギャラルホルンは破壊させないよ。これは各世界の衝突を避けるために作ったものだ。まあ、よほどのことがない限り二つの平行世界が接近することはないのだけれど、これがなければビルドの世界とこの世界は融合してしまう・・・それだけは避けねばならない」

アナザーシンフォギアは、二人を交互に見る。まるで品定めをするかのようだ。

「ふむ・・・」

そして、一つ呟くと、

「ではこうしよう」

次の瞬間、アナザーシンフォギアは綾女に向かって突撃し始める。

「ッ!?お母様!」

翼が叫ぶよりも前に綾女は迎撃の姿勢を取る。

だが、綾女の攻撃はかわされ、その手を顔の前に掲げられる。

「ッ!?」

「私の僕になってもらおうか」

次の瞬間、赤い光が迸り、綾女に何かをし始めるアナザーシンフォギア。

「ぐあぁぁぁあぁあ!?」

「お母様!」

翼はすぐさま母を助けるべく駆け出す。

しかし、それよりも早く、アナザーシンフォギアは綾女から手を離すと、そっと耳元で呟く。

「やれ」

たった、一言。それだけを告げた瞬間、綾女の目は、翼を捉えた。

 

風鳴り一閃、刃が、翼の首に迫った。

 

「・・・お母様?」

どうにか受け止めた翼は、それでも信じられないとでもいうかのように、綾女を見ていた。

しかし綾女は、その瞳に妖しい影を仄めかせて、呟く。

「―――王の意思のままに」

そう呟いた瞬間、綾女が翼に向かって凄まじい連撃を放つ。

「おかっさま・・・まっ・・・!?」

鋭い蹴りが、翼の腹に突き刺さる。

「お・・・ごぁ・・・!?」

その衝撃に思わず膝を付き、翼は、綾女の顔を見上げた。

 

もうそこに、愛する母の優しい眼差しは、なかった。

 

翼が綾女に蹂躙されているさまを、アナザーシンフォギアは面白そうに見ていた。

「悲劇なものだよ。実の母娘が相争う姿は・・・」

一方的にやられる翼。母である綾女を攻撃出来ないとは言え、その実力差は一目瞭然だった。

「さて、私もやらねばならないことをしなければな」

そうして視線を向ける先にいたのは―――未来だった。

「くっ・・・ぅ・・・!」

力を抜かれて未だ立ち上がれないのか、せめてもの抵抗としてアナザーシンフォギアを睨みつける未来。

「威勢のいいことだ。親友の所に帰りたくないのかい?」

「ど・・・の・・・口が・・・いって・・・!」

「話し合いの余地なしか・・・仕方がない」

そう言って、アナザーシンフォギアは手をかざす。

すると、どこからともなくノイズが現れ、倒れ伏す未来を一気に縛り上げる。

「ッ!?」

「心配はいらない。そのノイズは特別性でね。いわゆる分解器官をもたないアルカノイズと思ってくれ」

身動きの取れない未来に、アナザーシンフォギアは手をかざす。

「何、本来の時間軸の君に戻すだけさ。これは洗脳じゃあないからね」

「っ・・・!?」

そうして、赤い光が漏れた時―――

「させるか!」

「っ!?」

その背後からジオウ、ツクヨミの乗るタイムマジーン、ゲイツの乗るタイムマジーンが強襲してくる。

「やれやれ、君も大概しつこいね」

襲い掛かってくるジオウたちに、アナザーシンフォギアは降りかかる火の粉を払うかのように迎え撃つ。

 

 

「あぁぁあ!?」

そして翼の方は、全身に切り傷を作り、激しく呼吸をし、刀の切っ先をだらりと落としていた。

「おかあ・・・さま・・・!」

容赦なく降りぬかれる綾女の剣。

その剣戟を、翼はどうにか防ぎ、そして背後に回って拘束するように腕を回す。

「お願いですっ、正気に戻って・・・!」

だが、その拘束はいとも容易く振りほどかれ、素早く綾女の拳が翼に叩き込まれる。

(これは―――っ!?)

緒川流に似ている。だが、違う攻撃。

似ているようで違う攻撃に、翼は成す術なく殴られ続ける。

何もかも、容赦なく。それでも翼は、せめてもの抵抗として綾女の拳を躱して懐に踏み込んで、その腹に体当たりをかます。そして地面を転がって、仰向けになった綾女を抑え込むようにマウントを取る。

「お願いです・・・私は、お母様にも幸せでいて欲しいんです・・・お母様・・・!」

だが、その呼び掛けはむなしく届かず、綾女の振りぬかれた拳が翼の鼻っ面を叩き、ひるんだ所で上下が逆転する。

そして、その上から刀を押し付けようとする綾女が、翼に向かってこう告げる。

 

「―――私を超えない限り、お前が夢を叶える事は出来ない」

 

その言葉を告げ、綾女は容赦なくその刃を翼の右肩に突き刺した。

「あ―――」

痛みは―――ない。あまりにも綺麗に差し込まれ、神経を傷つけなかったのだ。

だが、そこから動かされれば話は別だ。

「ぐ―――ぁぁあ・・・!?」

焼けるような痛みが、後から押し寄せる。

綾女が刀を動かし、翼が自然にそれから逃れようと立ち上がらされる。

そして、翼が立った所で、刀が引き抜かれ、左肩から右肩に掛けて、刃が振り下ろされた。

「あぁぁあ!?」

物理保護のお陰で致命傷には至らない。だが、ダメージは本物。激痛と衝撃が同時に襲い、翼を吹き飛ばす。

そして、RN式が解除され、翼は地面に倒れ伏す。

「う・・・くぁ・・・」

痛みが、絶望が、恐怖が、翼を支配する。

迫る母。その手には、自分の血で濡れた刀。

自分はまともに動くことが出来ない。

 

 

と、そこへ、

「鬱陶しい」

「なっ―――ぐあぁあ!?」

ゲイツのタイムマジーンが吹き飛ばされ、その中からゲイツが飛び出す。

「ぐっ・・・なんて規格外―――ん?」

ゲイツが、翼に近寄る綾女を発見する。そして、ただならぬ雰囲気を感じ、ゲイツはすぐさまアナザーシンフォギアから綾女にターゲットを切り替え、その綾女に不意打ち気味に飛び蹴りを食らわす。

奇跡的に綾女への蹴りが決まり弾き飛ばすことに成功。

「大丈夫か!?」

「明光院・・・」

ボロボロの状態で、翼はゲイツを見上げる。

「くっ、どうにかして、あの聖遺物を破壊出来れば―――」

 

「それは困る」

 

「なっ―――ぐあぁああ!?」

突如としてゲイツが吹き飛ばされる。

「明光院!?」

「誰かと思えば、未来から来た綾女の娘ではないか」

聞き覚えのある声、それに翼は顔を上げる。

そこにいたのは―――櫻井了子(フィーネ)だった。

茶髪ではない。彼女本来の金の砂のように輝く金髪の状態でだ。

「天羽々斬の反応がここにあるからまさかと思ってきてみれば、とんだ茶番が繰り広げられているではないか」

「フィ・・・ネェエ・・・ッ!!」

翼はどうにか立ち上がろうと腕に力を込める。

その一方で、立ち上がったゲイツは―――

「・・・潮時か・・・ッ」

悔しそうに声を漏らす。

「ソウゴ!逃げるぞ!」

「くっ」

ゲイツの言葉に、ジオウは一瞬そちらを見るも、すぐに頷く。その一瞬に躊躇いを見せるも。

そしてすぐさまゲイツが降りたタイムマジーンに乗り込むと瞬時に再起動。起き上がる。

「待て、何をして―――」

「この時代はもうダメだ」

ゲイツがジカンザックスで了子を牽制しつつ、翼にそういう。

「な、何を言って・・・」

「・・・ギャラルホルンが回収された」

「なッ・・・!?」

いきなりのこと、理解が追いつかなかった。

回収された?いつ、どこで―――

「回収したのは二課じゃない、奴だ!」

見れば、ギャラルホルンは忽然と消えており、どこにもなかった。

「フィーネ嬢、安心してください。この聖遺物はあなた達二課に寄贈しましょう」

「気前がいいな。お前、見ない顔だが、一体いつの時代だ?」

「私はどこの時代のものでもない・・・強いていうなれば、平行世界の人間でしょうか」

「ほう・・・」

フィーネが興味深そうに、アナザーシンフォギアを見る。

「ッ・・・・」

翼は、思わず綾女の方を見る。

既に立ち上がっている綾女が、こちらに向かって歩いてきていた。

その瞳には、やはり―――

「く―――ぅぅ―――」

歯を食いしばり、翼は、それでも腕に力を込める。

「まだ、小日向が・・・」

まだ、未来は捕まったままだ。せめて、彼女を助けるだけでも―――

「行ってください・・・」

その時、未来の声が聞こえた。

「小日向・・・」

「お願いです・・・私のことはいいですから・・・」

「何を言っている!?」

その時、未来が微笑んだのを、翼は見た。

「未来を・・・みんなを、取り戻してください・・・翼さん・・・」

その、笑顔に、翼は、理解した。

 

 

これは―――敗北だ。

 

 

自分たちは、負けたのだ。

「う―――ぁぁあ―――」

母を、仲間を、大切な人も、全部奪われた。

何もかも、奪われた。その事実を、拒絶するかのように。

 

「―――うわぁぁああああぁああぁぁああぁあああああああッッッ!!!」

 

絶叫して走り出し、タイムマジーンに乗り込んだ。

そして、翼たちは時空を超え―――逃げた。

「ふむ、逃げたか・・・ではフィーネ嬢」

するり、と穴が出現し、そこからギャラルホルンがずしん、と落ちてきた。

「これはお渡ししましょう。残念ながら多くを語れない身でしてね。では」

「おい、待て―――」

フィーネが引き止める前に、アナザーシンフォギアは未来を抱えたままその場を移動する。

「チッ、逃がしたか・・・・ん?」

フィーネは、虚空を見上げる綾女を見つける。

「・・・翼」

娘が消えていった虚空を、綾女はいつまでも見続けていた。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

「惨敗・・・としか言いようがないね」

カインに敗北した翼たち。

「ああ、愛されている」

その最中でも開催される『風鳴翼』のコンサート。

「―――素晴らしいな」

そこへ、単身乗り込んできたのは―――

次回『それでも私は』

「・・・なんか違う気がする」



少し時間もらうかもしれません・・・(次回が書き終わってなくてこのままのペースだと来週にまで間に合わないかも・・・




翼「先週のマリアは一体なんだったんだ・・・ん?マリアの部屋が開いている・・・?」
マ「―――ッ!―――っ、―――!!?」
翼「なんだ、悲鳴k」

カット編集

翼「・・・」
ク「ん?おーいせんぱーい!どうしたんだそんなふらふらして・・・」
翼「ゆきね・・・」
ク「ん?なんだよ?」
翼「お前は女と貝を合わせた事はあるか?」
ク「は?貝を合わせる?何言ってんだ?」
翼「そうか、それならいい・・・頼むからそのままでいてくれ・・・お前だけは万丈と添い遂げてくれ・・・」
ク「お、おう・・・」
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