響「いよいよクライマックスですね~。あ、翼さん、お誕生日おめでとうございます!」
翼「ああ、ありがとう・・・」
響「あれ?なんでそんなにテンション低いんですか?」
翼「いや、せめて、リアルタイムで戦兎に祝って欲しかった・・・」
ク「仕方ねえだろ、毎週土曜夜零時更新がこの小説の鉄則なんだからよ。これ崩すと途端に更新できなくなるんだと」
マ「徹底したスパンを組むことで更新頻度を安定させる・・・そうでもしないともたないのよウチの作者は」
調「あ、マリアやっとまともに登場した」
マ「確かに今までの私はまともじゃなかったわ・・・」
ソ「まあまあいいじゃない。そろそろ物語もクライマックスに近付いてきたんだしさ」
ゲ「まあ色々と大変なことになってはいるが・・・」
切「ブライアンが出ないのデェス・・・」
ツク「いつまで引きずってんのよ・・・」
翼「いい加減にしろ」アテミ
切「げぺっ」
ウォ「やれやれ・・・今日も今日とて騒がしい連中だね」
ソ「ま、それがこの小説ってことで、シンフォギア・ビルド オリジン・ザ・天羽々斬第六話を!」
翼「どうぞ楽しんでいってくれ!」
カインの時空跳躍艇にて―――
「未来!」
カインが連れ帰ってきた未来の姿を見て、響は声を挙げた。
カインの腕に抱えられた未来は、気絶しているのかぐったりしている。
「君たちの尽力のお陰で、歴史は無事守られた。さあ、未来に戻ろう」
「どうやったんだよ?」
クリスが訝し気に応える。
「それは帰りの道中に。残念ながらのんびりしている余裕はない。魔王たちはこの時代での歴史改変を諦め、未来へと戻った」
「そんな・・・!」
「迎え撃つためにも、まずは戻らなければならないというわけね」
「その通りだ」
未来をベッドの上に乗せ、カインは操舵室に向かう。
「未来・・・」
未だ目覚めない未来を見つめる響。その一方で、カインは彼女らに背中を向けたまま、操舵室へと向かった。
そして、『風鳴翼』は、そっと心の奥でほくそ笑んだ。
未来への帰還。それにより、どうにか難を逃れた一同だったが、アナザーシンフォギアの力は強大であり、翼自身は綾女との戦闘で満身創痍だった。
「惨敗・・・としか言いようがないね」
ウォズもまた、そう呟く。
「だけど、完全に負けたわけじゃないよ」
ソウゴが立ち上がってそう言う。
「まだ奴の暴挙を止める事は出来るからな。せめてそれぐらいはやっておかないと」
「そうね・・・」
翼への応急処置が終わり、ツクヨミもゲイツの言葉に賛同する。
「だが問題は、奴の次の手だ。過去の歴史改変を阻止できなかった以上、我々には奴らの動向を知る術はない」
「・・・・」
ふと、翼は視線を横に向ける。
そこにあったのは、一枚のポスター。
(ああ、そうか・・・コンサート、明日だったな・・・)
もうすぐ行われる、風鳴翼のコンサート。
ある意味、日本にいるファンに向けて感謝を伝えるためのものだ。
無論、響たちも見にやってくる。
(まだ中止の知らせは出ていない・・・)
スマホを見て、翼は一人そう思う。
この知らせを見ても、もはやこの心には虚しく響くだけだった。
(一体、どうすれば・・・)
何もかもを失って、今自分に残っているものは、手首にあるRN式天羽々斬のみ。
(仲間も失い、想い人も失い、挙句の果てには夢まで奪われる・・・これほどまでに、屈辱的なことがあろうか・・・)
拳を握り締め、翼は、泣き顔を隠すように顔を壁に押し付ける。
眼の奥が、悔しさに熱くなるのが分かる。
だが、こうしていても、何か思いつくわけでもなく、もう一度、自分の目に焼き付けるようにそのポスターを見つめる。
「・・・あ」
そこで、翼はふと、あることを思い出した。
(これであれば・・・いや、危険が大きすぎる・・・だけど、今の私にはこれしかない。これしか・・・ないのだ・・・)
そっと、決意を固め、翼は、ソウゴ達の方を見た。
「聞いてくれ―――」
翌日、『風鳴翼』によるコンサートは、予定通り開かれていた。
多くの観客が彼女の歌に熱狂し、歓声を上げる。
その中には、響たちの姿もあった。
「くぅ~、やっぱり翼さんのコンサートは生で見るに限るよ~!」
「相っ変わらずのテンションだなぁお前」
「当然だよ~。だって久々の生のライブなんだよ?テンションも上がるよ~」
「響は調子に乗り過ぎだよ」
響のハイテンションを諫める未来。
しかし、その表情はどこか不安げだった。
「どうかしたんですか?」
そんな未来の様子に気付いて、調が声を掛けてくる。
「え、ああ、ごめんね。なんでもないんだよ?」
「まだ気にしてるんですか?それほど気にする事じゃないと思うんですけど・・・」
目覚めた後の未来は、それまでの事を覚えていなかった。
響やS.O.N.G.と戦った事や、魔王と名乗る一行と翼の偽物と一緒に行動していた事など、その全てを覚えていなかった。
一応、元々の記憶は保持しており、どちらかと言えば、本来の『小日向未来』に戻ったという感じであった。
だが、未来本人は、言い知れぬ違和感を体に感じていた。
(なんだろう・・・今ある世界が本物だって分かってるはずなのに、心のどこかで自分の世界じゃないって思ってしまう・・・)
手の中の言い知れぬ違和感。それを未来はどうしても否定できなかった。
しかし、そう考えてるうちに、歓声がコンサートドームの中を叩いた。
二階建ての円形ホール。入場ゲートから一本道に続き、その中心に存在するステージの上に、『風鳴翼』は立っていた。
笑顔で歌い切り、そして声援を送ってくれた観客に、『風鳴翼』は手を振って答えてみせる。
その姿に、未来は言い知れぬ違和感を感じる。
(あれは確かに翼さんだ。だけど、なんでだろう・・・あの人にはどこか、小さな綻びを感じる・・・)
それは、本来の翼には持ち合わせない、小さな隙間というか、なんというか。
とにもかくにも今の未来にはそれぐらいの違和感しか感じなかった。
そして、件の『風鳴翼』本人は―――
(ああ、
周りから受ける歓声に、感動していた。
(私は今、愛されてる・・・他の誰でもない。この私が、愛されているんだ。あの女じゃない。
感動のあまり涙を流し、『風鳴翼』は今ある現実に酔いしれる。
(もうだれにも邪魔はさせない。これは私が掴み取った幸福だ。誰にも渡さない・・・もう、あんな記憶とは隔絶した人生を送るんだ・・・!)
ただただ火箸で殴られる―――そんな人生は、もう―――
その時だった。
バァンッ!!!と、会場の扉が、まるでこちらを見ろと言わんばかりに勢いよく開かれた。
その通りに、会場中の視線が、その扉へと集まる。
そして、その扉の前に立っていたのは――――翼だった。
「お前は・・・!?」
『風鳴翼』は、驚愕する。
何故、奴がここにいる。
『風鳴翼』は一気に混乱した。
この衆人環視の中、こうも堂々と現れるとは思ってもみなかったからだ。
だが、それでも事実は変わらない。
風鳴翼は、確かにこのコンサートホールに姿を現した。
「あいつっ!!」
その姿を見たクリスは、すぐさま首にひっさげたペンダントを握り締めて駆け出そうとする。
「待ちなさいクリス!ここでシンフォギアを纏うつもり!?」
「でもアイツが今から暴れ出したら・・・」
「分かってるわ。隙を見て、誰かに襲い掛かる前に止める」
マリアの指示で、装者一同がうなずく。
(一体、何を考えてるの・・・?)
そして、このコンサートホールに現れた翼の事を、マリアは不気味気に見た。
会場がざわついているのが、肌でわかる。
『え?あれ風鳴翼よね?』
『二人!?なんで!?』
『双子・・・?』
『コスプレとか・・・?』
様々な言葉が、観客たちの間で飛び交う。
しかし、今はそんな事はどうでも良い。
もしかすると、今日が私の―――風鳴翼の『命日』になるかもしれないのだから。
(いや、今日こそが、『私』という存在の最後かもしれん・・・)
だけど、それでもいい。
歌は、『風鳴翼』じゃなくても歌える。
「―――素晴らしいな」
果てしない程の称賛の意を込めて、翼は『翼』にそう言ってみせた。
「お前の歌で、こんなにも多くの人間が熱狂し、歓喜し、湧いている―――まさしく『風鳴翼』の歌によるものだ」
人々が静まり、翼が歩めば、烏合の衆は瞬く間に道を開けていく。
「きっとお前は、これから先も、そんな歌で、多くの人々に希望を与え、夢を与え、そしてそれに向かって奮い立たせていくんだろう」
それは、響たちの知る、偽物の翼からはかけ離れた表情だった。
偽物は、卑しく、ずる賢く、本物の風鳴翼の名誉を踏み躙った人物だ。
だから、許せる筈がない。それほどまでに、相手は悪い奴だ。
だから――――
「そうであるならば―――私は『風鳴翼』を譲ってやってもいいと思う」
その言葉で、その前提の全てが覆った。
「なん・・・だとっ・・・」
「お前が歌にかける思い・・・それは自分の為であっても、誰かを勇気づけられているのなら、それは『風鳴翼』として本物だ。そうであるならば、私は『風鳴翼』をやめよう」
穏やかで、しかし少し寂しそうな笑顔で、翼は『翼』を見上げた。
「ただ、最後に、私の想いをお前に聞いてほしい。これだけは、誰にも譲れない」
ゆっくりと歩みを進め、翼は、ステージの上に立つ『翼』のすぐ前に立って、見上げた。
「私のお母様は、私の歌で、お母様や私―――皆が幸せになることを望んだ」
一つ告げて、一息間をおいて、翼は言い放つ。
「私の夢は、私の歌で、世界中の人々が幸せになれる世界を創ることだ。誰もが夢を叶え、誰もが希望をもって生きられる―――その夢を叶える為に戦う」
すっと、『翼』を見つめ、翼は言い放つ。
「それが私のシンフォギア―――シンフォギア天羽々斬だ!」
そう高らかに言い放つ。
それが、翼が天羽々斬に込めた想い―――翼と、翼の母綾女が、一番最初のシンフォギアに込めた想い。
翼は、その想いを言い放った。
その気迫に『翼』は気圧された。
「っ・・・!?」
「この想いだけは譲れない―――お前はどうだ?『風鳴翼』」
その問いかけに、『翼』は思わず黙ってしまう。
何も言い返せない。その事実が、『翼』に突きつけられている。
「先輩・・・?」
その様子に、クリスたちも思わず怪訝そうな顔になる。
(私は―――)
「皆さん、聞きましたか?」
その時、『翼』の隣から、そんな声が聞こえた。
向けば、そこにいたのは、なんとカインであった。
「彼女は今『夢』と語りました。なんと、身の程知らずな事を口走るのでしょうね。なにせ彼女は今巷でヤクザ殺しをしている犯人なのですからね」
カインの発言に、場は一気に騒然とし出す。
「そんな彼女が『夢』を語るなど・・・浅ましいと思いませんか?」
そう告げるカイン。その言葉に、会場は自然と彼の意見に同意するようになる。
「一体何を言ってるの・・・?」
その最中で、マリアだけは彼を疑問視していた。
理由は単純に、何故あの場に立ち、突然現れた風鳴翼を名乗る女に事件の真犯人だと告げ、場を混乱させている。
別段、彼女の排除するなら、このような手段をとる必要もないし、事件のことだって、一般人である観客にはどうでもいいことだ。
それなのに、何故情報を勝手に明かしたのか。
「彼は、一体―――」
「・・・随分と、余裕そうだな」
その最中で、翼はカインを睨みつけていた。
「まさしくその通りだよ。殺人者君」
「もはやその事については、追及も否定もしない。・・・だが、これだけははっきりさせておく」
そして、翼は彼の正体を言った。
「・・・・お前はソロモン王だな」
その言葉に、装者たちは頭をハンマーでぶん殴られたが如き衝撃を受けた。
「な、なんだとっ!?」
「ソロモンって・・・」
「え、そんな、それじゃあ、カインさんは・・・!?」
ソロモン王―――
『ソロモンの杖』の所有者であり、かつて神の怒りに触れた父ダビデと母バド・シェバの間に生まれた第二子。
神から知恵を授けられたとされており、古代イスラエルを最盛期に招き、また堕落した王と蔑まれた人物―――。
翼は、今、そう言ったのか。
「お前は言ったな。ギャラルホルンを作ったと。であればギャラルホルンに関係したこの一連の事件を引き起こすことも可能だ。そして何より、お前はノイズを操ってみせていた。そんな事ができるのは、ノイズを作った張本人ぐらいだ。かつてこの東京の街をノイズの恐怖に陥れた『ソロモンの杖』その名を冠しているのなら、それも可能だろう」
それは、翼が一通りの作戦を話した後の事だった。
「ふむ・・・君は本当にそれでいいのかい?」
「ああ・・・もはや過去は変えられないというのなら、私は別の方法で人々に希望を見出す。戦兎がいなくても、彼の紡いだ『愛と平和』だけは、私の心に残っているから」
翼の寂しそうな笑顔に、ウォズは分かったと頷く。
「・・・・」
そんな中で、ソウゴはふと、考え込むように俯いていた。
「・・・ソウゴ?どうしたの?」
そんなソウゴの様子にツクヨミが気付く。
「・・・なんか違う気がする」
突然、こんな事を言い出すソウゴ。
「え?」
「あの男・・・たぶん、タイムジャッカーじゃないよ」
「何言ってんだお前は」
突拍子もない発言に、一同は思わず首を傾げる。
「お前も見ただろ?奴がアナザーライドウォッチを持っていた所を。その上時間まで操っていた。もはや疑う余地もない」
「だけど、ツクヨミやアイツらの時間停止とはなんか違うんだよね・・・なんだろ?
実を言えば、ソウゴのこういう勘は馬鹿にすることが出来ない。
なんかいけそうな気がする、と呟けば、大体どうにかなってしまうし、逆になんか違う気がする、と言えば、その通りになる。
このソウゴの直感は、まさしく王としての素質の一部なのかもしれない。
故に、彼を知る者たちはソウゴのその勘をバカにできない。
「ふむ、それならば奴の攻略に繋がるかもしれない・・・」
「問題はその正体だろ?それが分からなければ攻略など見つからんだろ?」
「そうよねぇ・・・」
などと、口々に言い合う中で、翼はふと考える。
(言われてみれば、こちらの世界のものである筈のノイズを、奴は操ってみせていた・・・ノイズは確か、人が人を殺す為に作った兵器だと、フィーネが・・・)
それを、思い出した瞬間、翼は、ある可能性が脳裏を駆け抜けた。
(まさかっ!?いや、でも・・・そんな事があり得るのか・・・!?)
到底信じられない。だけど、その方が一番、信じられる可能性だった。
「ククク・・・フハハハハ!!!」
その翼の指摘に、カインは高笑いをする。
「クク、私がソロモンだと?何をバカな」
「ならば何故、ノイズを操れた?」
「さあ、なんでだろうな―――おや?」
ふと、カインが首を傾げた瞬間、会場中を埋め尽くさんばかりのノイズが瞬く間に現れる。
「ッ!?」
次の瞬間、会場のいる観客たちが一気にパニックに陥る。
「貴様ッ!!」
「おやおや、何を怒っているのかね?偶然ギャラルホルンからノイズがここに現れてもおかしくはないだろう?」
「なんだとッ!?」
カインが、『翼』から離れていく。
「では、君の最後の戦い、楽しみたまえ」
「待てッ!!」
「きゃぁあぁあ!!」
悲鳴が聞こえ、追いかけようとした翼の足を止める。
見れば、ノイズはすぐにでも観客たちに襲い掛かろうとしていた。
(こいつらはギャラルホルンから現れたノイズじゃないっ・・・追いかけるのは後だ!)
優先すべきはどちらか。そんなことは翼にとっては愚問だ。
『一撃カマーンッ!!!』
次の瞬間、出現していたほぼ全てのノイズが、突如として纏めて消し飛んだ。
舞い上がる爆風に、翼は思わず顔を庇い、そして、そんな芸当をしてみせた者の名を呟く。
「ウォズか・・・!」
そこに立っていたのは、変身した仮面ライダーウォズであった。
その手には鎌のような武器を携え、そしてその装束は、手裏剣をかたどったような追加装甲が取り付けられ、首にはマフラーのような紫色の布が巻かれていた。
それこそは、忍法を使う未来のライダー『仮面ライダーシノビ』の力を司る姿。
その名も『仮面ライダーウォズ フューチャーリングシノビ』である。
「やあ翼君、一応奴のおびき出しには成功したね」
「ここを任せてもいいか?」
「お安い御用だとも」
ウォズはそう答えると、新たに出現したノイズに対してすぐさま飛び込む。
それを見ると、翼は戸惑う観客たちに向かって叫ぶ。
「皆さん!落ち着いて避難してください!大丈夫です、彼が―――仮面ライダーが守ってくれますから!」
翼は、そう叫びながら、避難誘導を始める。
一方、S.O.N.G.本部では。
「ノイズ、増加止まりません!」
「今はどうにか、アイツのお陰で抑えきれてますが、このままでは・・・」
「構わん!すぐに装者たちを向かわせろ!」
突然の騒動にS.O.N.G.はまさしくお祭り騒ぎだった。
無論、地獄絵図の方で、だが。
さらに言えば、職員たちの動きも鈍い。
(彼女の演説に、皆少なからず動揺している・・・)
そんな空気を、弦十郎は肌で感じていた。
何よりも弦十郎自身が、その事を感じているからだ。
(どうしても思ってしまった・・・彼女が『本物』ではないか、と・・・であれば、俺たちは翼に、一体どれほどの仕打ちをしてしまったのか・・・ッ!!)
血が滲む程に拳を握り締める弦十郎。だが、そんな彼にさらなる衝撃が叩きつけられる。
「っ!?せ、潜水艦内に、侵入者ありっ!・・・ゲイツとツクヨミですっ!」
「なんだとォ!?」
モニターに映し出される映像には、並み居る警備員を倒して進むゲイツとツクヨミの姿があった。
「そんな、通信機がないと入れないようにしているのに・・・」
「いや・・・翼が通信機を奪われたと言っていた。おそらくそれで・・・」
「・・・翼って、どっちの翼ですか・・・?」
藤尭のその言葉に、弦十郎は押し黙る。
「・・・すみません、今は、必要な事ではありませんでしたね」
「いや・・・いや、そうだな。自分の作業に集中してくれ、藤尭。お前にしか出来ないことを」
弦十郎は、それを言うだけで精一杯だった。
「装者、戦闘に介入します」
友里の言葉に、弦十郎は画面を見る。
「・・・指揮は現場のマリア君に一任せよ。オペレーターはノイズの位置と観客の避難状況をリアルタイムで続けろ」
「司令、どこへ?」
弦十郎は、踵を返し、歩きながらこういう。
「―――彼らの真意を確かめに行く」
S.O.N.G.潜水艦内部にて。
「それで、こっちの道で本当にあってるんだろうな!?」
「翼の画力には驚いたけど、地図で示してくれた通りに進んでるはずだから、たぶん問題ないわ」
「もうちょっとはっきりしないのか・・・!?」
「仕方ないでしょここ初めてくるんだから!」
ツクヨミの案内の元、道中の警備員を倒しながら進むゲイツとツクヨミ。
さて、彼らが何故ここにいるのか。その理由は単純、ギャラルホルンの破壊、あるいは機能の停止だ。
翼たちの方は、黒幕のおびき出しと囮を引き受けており、その隙にこうしてギャラルホルンに向かっているのだ。
「向こうは大丈夫かしら?」
「大丈夫だろ。あの女はそんなに弱くない。それになにより―――ソウゴがいる」
「それもそうね」
ゲイツの少し貯めた言い草に、ツクヨミは即答する。
なんだかんだで、ソウゴの事を信じているのだ。
「行きましょう」
「ああ―――ッ!?危ないっ!」
突如、ゲイツがツクヨミを抱え込んで前に向かって飛ぶ。
そのすぐ傍を、凄まじい風圧が駆け抜ける。
「何!?」
ツクヨミが声を挙げ、その正体の姿を見る。
そこに立っていたのは、風鳴弦十郎だった。
「ぬんっ」
手を振り抜き、構える。
ただそれだけで、凄まじい風圧と威圧が二人を襲う。
「なんて気迫なの・・・!?」
「ツクヨミ、ここは俺に任せて先に行け」
ゲイツが立ち上がり、ツクヨミと弦十郎の間に入るように立つ。
「ゲイツ・・・」
「風鳴から聞いてはいたが、こいつはかなりの手練れだ・・・ここで時間を取られるわけにはいかない。いけ」
「・・・・」
ゲイツの言葉に、ツクヨミは、不承不承ながらに走り出す。
その様子を肩越しに見送りながら、ゲイツは敵を見据える。
筋骨隆々とした体躯―――ただそれだけであれば、ゲイツも見くびっていただろう。
だが、先ほどの拳と事前に翼から聞いていた情報から、ゲイツは見くびるのをやめた。
「本気で行くぞ」
ゲイツは、ゲイツライドウォッチとゲイツリバイブライドウォッチを取り出し、構える。
『
『
起動した二つのライドウォッチをそれぞれジクウドライバーの二つのスロットに装填する。
そして、手を大きく振り回し、ドライバーに添え、叫ぶ。
「変身ッ!」
そして、ジクウドライバーを回す。
『
『
『
スムーズな避難誘導、そして、ウォズが一人、多くのノイズを排除したがゆえに、一人の犠牲者も出すことなくノイズを排除出来ていた。
だが、それでもノイズは際限なく湧き出る。
「くっ、流石にこの数は少し厳しいかな・・・」
ジカンデスピアを手に、ウォズは冷や汗を掻きつつ、自分を囲むノイズの群れを警戒する。
しかし、次の瞬間、六つの場所から光が迸り、ノイズが消し飛ぶ。
装者だ。
「やっと来てくれたのか。随分と遅かったじゃないか」
小馬鹿にするようにウォズは言う。
そんなウォズにマリアは冷たくあしらう。
「黙りなさい。ノイズを片付けたら次は貴方よ」
「随分と迷いが見えるけど、それで大丈夫なのかな?」
「っ・・・」
ウォズの指摘に、マリアは何も言い返せない。
それは、他の者たちも同じだ。
響ですら、自分が信じたものを疑い始めている。
そんな彼女たちの様子に、ウォズは呆れたように首を振る。
「やれやれ・・・」
そして、その視線を、さも当然のように、しかしどこか小さく見せる『風鳴翼』に向けた。
(なにも・・・)
『風鳴翼』は、目の前のノイズの大群を前に、ぎしりっ、と刀の柄を握り締め、歯を食いしばる。
(なにも、言い返せなかった・・・っ!!)
その事実に、『風鳴翼』は絶望していた。
何故なら、あの時の彼女の姿が、あまりにも輝いていたから。
それが、今の『風鳴翼』を大きく揺らす。
「今は目の前の敵に集中したまえ」
そんな中で、ウォズは全員に向かってそう言う。
「お相手ならあとでいくらでもしてあげよう。だがここでノイズの発生を抑えなければ、民間に被害が出る事は間違いない」
「んなもん、言われなくても分かってんだよ!」
クリスが、己を叱咤するかのように叫ぶ。
それに呼応するように、他の装者も各々の武器を構える。
「さあ、行こうかっ!」
それを見届けて、ウォズはその言葉と共に、ノイズの群れへと走り出す。
会場から少し離れた場所。周囲の景色を見れる場所に、カインはいた。
「もう少し、もう少しで、私は―――」
「―――王様になれるって?」
何かを待っているかのようなカインにソウゴが話しかける。
「ああ、貴様か。お前に用はない。さっさと失せたまえ」
「そうはいかないんだな~それが」
ソウゴは笑う。カインを見上げたまま。
「二度は言わないぞ?もしここから立ち去らなければどうなるか・・・分からない程バカではないだろう」
「そうだね。でも、それをしたら俺はもう王様を名乗れなくなる」
「たかが夢想を抱いてるだけの小僧が軽々しく王を名乗る者ではない」
微かに、怒りが滲むような声が発せられる。
「そもそもおかしな話だ。お前のような小僧が王になる未来。それが存在すること自体あり得ない絵空事だと何故誰も気付かない。私の手にかかれば、お前など簡単に捻り潰せるというのに・・・」
「まあ、確かに、俺も最初は『最低最悪の魔王』になるだなんて信じられなかったよ」
「何?」
カインの訝しむ表情に、ソウゴは胸を張って言う。
「でも、それでも俺はやっぱり『王様』になるって決めたんだ。『最低最悪の魔王』なんかじゃない。『最高最善の魔王』に俺はなるって」
次の瞬間、ソウゴが顔を傾けると同時にそのすぐ傍を何かが凄まじい勢いで飛び去って行き、地面を抉る。
「国を背負う重さも知らない小僧が、『王』になるなど軽々しく言うなァッ!!!」
ここで初めて怒りを見せたカインは、その手にアナザーシンフォギアライドウォッチを持ち、スイッチを入れた。
『シンフォギアァ!!!』
それを自分の体に埋め込み、瞬く間にその姿を怪物へと変質させる。
そして、まるで怒りを表すかのような衝撃波がソウゴを襲う―――だが、
「―――別に軽い気持ちで言ってるつもりなんてないよ」
ジクウドライバーを腰に装着し、ソウゴはあるウォッチを取り出す。
「沢山の事があったけど、それでも俺は―――皆の生きるこの世界を良くする為に、『魔王』になる」
起動するのは、表と裏、光と闇、未来と過去―――双極を統べるウォッチ『ジオウⅡライドウォッチ』。
それを、ソウゴは二つに分け、ジクウドライバーのそれぞれのスロットに装填する。
展開される、二つのバンク。それをもって、ソウゴは構え、叫ぶ。
「―――変身ッ!!!」
そして、ジクウドライバーを回した。
仮面ライダージオウⅡ―――ここに参上。
多くの観客が、ドームから逃げ出ていく。
その様子を翼は叫びながら必死に誘導する。
「落ち着いてください!彼がいる限り、全員助かります!倒れた人には手を貸して、逃げ遅れた人も見捨てないで!」
叫んで、叫び続ける。
あの時、多くの人々を死なせてしまった。その過ちを繰り返さない為に、翼は叫ぶ。
その最中で、ふと、背後に誰かが立つ気配がした。
振り返れば、そこには、緒川がいた。
「緒川さ・・・」
思わず名前を呼ぼうとして、やめた。
もはや自分は『風鳴翼』ではない。彼がマネージャーを務めるべき相手ではない。
そんな意識が、その名前を呼ぶことを躊躇させた。
そして緒川の方も、観客を必死に避難させている姿、そして先ほどの言葉に、辛そうな表情を浮かべ俯いている。
そんな沈黙が、二人の間で流れる。
―――カツッ、カツッ、カツッ
その時、何者かの足音が聞こえた。
その、この騒音の中ではあまりにも通ってしまっている足音に、翼と緒川は思わずそちらを向いた。
そこに立っていたのは、いつか、翼に『RN式天羽々斬改』を渡してくれた、ローブの女。
否―――風鳴綾女。
「綾女さん・・・?」
「お母様・・・」
緒川にとっては、何故ここに彼女がいるのか分からない。
だが翼は、何故彼女が現れたのか、なんとなく理解していた。
「・・・どれほどお前が、『夢』を語ろうとも」
十年前と、何も変わらない。昔のままの母親の姿に、翼は心のどこかで安心していた。
「―――私を超えない限り、お前が夢を叶える事は出来ない」
そう言って、ローブを脱ぎ捨てる。
その行為に対して、翼は緒川の前に出る。
「分かっています。だから私は、私の『夢』を叶えるために―――貴方を倒します」
腕のバングルを構えて―――翼と綾女、二人の母娘は、戦装束を纏う。
「「変身ッ!!」」
『Start Up. Resonance-type Kaiten special equipment』
黒と青の、サイバーチックな装束を纏い、翼と綾女が今―――激突する。
次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?
激突する
「王の紛い物風情がぁぁあああ!!!」
ジオウⅡを強襲するアナザーシンフォギア。
「次々とっ・・・!!」
溢れかえるノイズに、体力を消耗させられていく装者とウォズ。
「君たちの目的はなんだ・・・!?」
激突する弦十郎とゲイツ。
「これを破壊すれば―――!!」
そして、ツクヨミの一撃が、ギャラルホルンに刺さる―――。
次回『母娘/王/真意』
「貴方を止められるのはただ一人―――」
翼「さて、少し暇が出来たことだし、少し鍛錬にでも・・・ん?写真か?これは、どれどれ・・・」
少女閲覧中・・・・
翼「」
マ「ああ、翼、こんな所にいたのね」
翼「ああ、マリアか」
マ「それでね、そのぉ・・・何か、写真のようなものとか・・・」
翼「見てないが?」
マ「ああ、そうなの」
翼「見てないが?」
マ「え、ちょ、翼、どうし」
翼「ミ・テ・ナ・イ・ガ?」
マ「・・・ごめんなさい」
今回の勝敗―――マリアの敗北(エリザに負けたとかじゃなく)