愛和創造シンフォギア・ビルド   作:幻在

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ウォ「この本によれば、世界的アーティスト風鳴翼は、シンフォギア天羽々斬を纏い、仮面ライダービルドこと桐生戦兎と共に、様々な異端技術を扱う者たちを戦う運命にあった。歴史を変えられ仮面ライダーが消えた世界で、自身とうり二つの少女と対峙し、偽物のレッテルをはられ、ここまで敗走してきたが、とうとう最終決戦にまでもつれこんだのであった」
翼「ついにお母様との決着・・・」
切「セイウンスカイが実装されたのデス」
響「笑えばいいよ・・・ジュエルのない私たちなんて・・・」
未「またやってるよ・・・」
ソ「ま、まあまあまあいよいよ本編もクライマックスなんだからさ」
マ「そうね、そろそろ作者のあまりにもないオリジナル力が試されるこの章で、一体どれほど作者たちに楽しんでいただけるか、心配ね・・・」
調「何気に酷い事いうねマリア」
ゲ「本当に大丈夫か、こいつら・・・」
ツ「はあ・・・変人揃いとは聞いてたけど、ここまで来るともはや現実ね・・・」
ソ「いや、変人揃いなのは俺たちもでしょ?」
ツ「私を一緒にしないで!」
ソ「いやツクヨミ巷じゃゴリラってよばr」

ジカンガトマール

ソ「ぐふあ・・・」
ゲ「そ、ソウゴォォォ――――!?」
ウォ「我が魔王ォォォ――――!?」
ツ「なんか、イッタ?」
ゲウォ「イイエナニモ」
翼「と、とにかくっ!シンフォギア・ビルドオリジン・ザ・天羽々斬第七話をどうぞ!」


母娘/王/真意

戦場に、歌が響く―――。

 

地下駐車場になだれ込むように入る翼。その翼を追撃して、綾女の刃が倒れている翼に迫る。

それを間一髪で躱した翼は立ち上がり、続く綾女の連撃を捌いていく。

改めて思う。

 

母は本当に強い。

 

だが、だからこそ、

(その壁を、超えていくっ!!)

反撃に放った斬撃、しかしその斬撃を躱されるだけに留まらず、逆にその手を掴まれ、抑え込まれる。

それに猛烈な悪寒を感じ取った翼はすぐに頭を下げる。

その瞬間、頭上を刃が駆け抜ける。あのままであれば首を跳ね飛ばされたのは確実だ。

その事に戦慄しながら翼は前転し、距離を取ろうと走る。

だが、その時背後で風を切る音がして、後ろを振り向けば、綾女のスーツのラインが淡く光り、そのまま地下駐車場の柱を飛び移ってやや上方から奇襲をしかけてきた。

「くあっ・・・!?」

それをどうにか体を前に投げ出すことで回避、距離を取るようにさらに走る。

そんな翼と平行するように綾女も追いかけてくる。

「どうした?その程度か?」

走りながら綾女がそう挑発してくる。

「お母様こそ、この十年で随分と衰えたのではありませんかっ!?」

言葉を切ると同時に斬り込む翼。しかしそれよりも速く綾女が飛び込み、タイミングを見失って回避に転向。背にした柱が十字に斬り刻まれ、斬撃が炸裂する。

「くっ!?」

(前々から思っていたが、このいきなりの加速はなんなんだっ!?)

いきなり起こる綾女の加速。そのカラクリを見抜かなければ、彼女に勝つことは出来ない。

 

 

 

 

 

潜水艦の装甲がぶち抜かれ、ゲイツリバイブ・疾風が飛び出す。

「くそっ、化け物かあのおっさんっ!?」

その穴から追撃してくるかのように弦十郎が飛び出し、ゲイツに向かって拳を突き出す。

その突き出された拳から凄まじい風圧が放たれ、ゲイツに迫る。

それをゲイツは空中移動と時間加速の能力で躱し、一瞬で空中にいる弦十郎に間合いを詰める。

そのままジカンジャックローで斬り裂こうとするが、一撃目からジカンジャックローを掴まれ、逆に港の地面に向かって投げ飛ばされる。

「くぅっ!?」

地面に叩きつけられる前に飛行し、すぐさま弦十郎に向かって再度突撃。しかし既に着地した弦十郎はすでに迎撃態勢を取っており、その地面を踏み砕いて壁を作り出す。

その壁を躱してゲイツは側面から攻撃―――しようとして空へ飛び、迫った拳を間一髪で回避するも風圧で吹き飛ばされる。

「くっ!?」

当たり前のようにスピードに対応してくる。

その事実に、ゲイツは驚愕を隠せない。

(噂以上の化け物だなっ・・・!)

それでも弦十郎の追撃は止まらず、ゲイツはすぐさま砂時計を逆転させる。

 

PAWERED(パワード) TIME(ターイム)!!』

 

RI・VI・VE(リ・バ・イ・ブ) RIGIT(ゴウレツ)―――RIGIT(剛烈)!!!』

 

すぐさま剛烈になり、パワーで対抗する。

激突する、拳とのこ。

「ぐっ!?」

「ぬぅっ・・・!?」

弾き飛ばされ、距離を取る二人。

「―――君たちの目的はなんだっ!?」

その最中で弦十郎が呼びかける。

「なにっ・・・おわっ!?」

弦十郎の拳を寸での所で躱すゲイツ。

「何故歴史を変えようとする。その行為に何か意味はあるのか!?」

その問いかけの意図を、ゲイツは察する。

「ハッ、何を言うかと思えば、その事か」

「答えろ!」

「簡単な話だ!この世界が本来の歴史を辿っていないからだ!」

「なんだとォ!?」

その言葉に、弦十郎は思わず瞠目する。

「奴だけは覚えていたのさ。いいや、未来だって覚えていた。この世界の本来の歴史をな」

「その歴史とは、なんだ!?」

再び、拳の応酬が繰り広げられる。

「そのままの意味だ。この世界は本来の歴史を辿っていない。そして翼と未来は、その本来の歴史の記憶をもっていた。それが答えだ」

「なんだと・・・」

そこで弦十郎の拳が止まる。

「にわかには信じられん・・・」

「信じるか信じないかは、お前たち次第だ」

 

 

 

 

まるで雨の如く降り注ぐ光線の嵐をジオウⅡは巧みに躱していく。

その嵐の中を真っ直ぐ突き進んでアナザーシンフォギアが襲い掛かり、ジオウはジカンギレードでその攻撃を迎撃し、激しい連撃を下がりながら回避していく。

その余波で周囲の物体がひび割れ、壊れ、砕けていく。

その激しい攻撃をジオウⅡの能力である『未来予知』で先読みし回避していく。

だが、破壊された地面や建物の壁などによって舞い上がった土煙によって視界を遮られる。

「―――貴様には分からないだろう。信じていたものに裏切られ、玉座を瞬く間に奪われた時の苦痛を」

「なんだと・・・!?」

「信じていたものに刃を向けられ、愛する者を殺される苦しみ。そうだ。全ては、我が民をたぶらかした『歌』さえなければ・・・!!」

「歌だって!?」

「その通りだ!」

「ッ!?」

未来予知でアナザーシンフォギアが出てくる位置を予測し回避。すかさずアナザーシンフォギアの怒涛の連撃がジオウに襲い掛かる。

その連撃すらも、未来予知で回避していく。

「『歌』だ。『歌』が人々をかどわかした!歌が私への忠誠心を揺らがしたのだ!ゆえに私は誓ったのだ!私を破滅へと導いた『歌』をもって、『歌』を操る者たちに鉄槌を下すと!!」

「その最初の標的が翼だっていうのか!?」

「ああ、その通りだとも!そしてこの世界もだ!別世界の、『歌』とは何も関係のない世界と融合しておきながら何も変わらないっ!!所詮人は『歌』に縛られて生きているのだっ!!」

拳から放たれた竜の顎がジオウの腹に噛みつく。

「ぐあっ!?」

「『歌』は呪いだ。『仮面ライダー』もまた邪悪の力を元としているっ!この大差のない力をもって、私は再び王へと返り咲駆ければならないのだっ!!」

そのまま振り回され、地面へと叩きつけられる。そのまま粉塵が舞い上がり、ジオウを隠す。

だが―――これで終わる『魔王』ではない。

 

ZI-O(ジオウ) ULTIMATE(サイキョウ)

 

しかし、その粉塵を振り払って、七色の斬撃が飛んでくる。

 

KING(覇王) SLASH(斬り)!!!』

 

「無駄ァ!」

しかし、アナザーシンフォギアはそれを防いでみせる。だが、そのアナザーシンフォギアの懐に飛び込んで、ジオウが右手のジカンギレードと左手に新たに取り出したもう一本の剣『サイキョーギレード』をもって、二刀流でアナザーシンフォギアに連撃を浴びせる。

「その為だけに、世界の歴史を変えたのか!?」

「ああそうだとも!」

「王様ってのは人々を幸せにするものだろ!?」

「だが私は裏切られた!貴様もいずれ理解する筈だ!裏切られた時に感じる屈辱を、絶望を!!」

「それでも俺は、誰かの為に戦う。それが俺の『王道』だ!!」

ジオウの剣が、アナザーシンフォギアを吹き飛ばす。

「ぐぅっ!?成り損ない風情がぁぁああああ!!!」

アナザーシンフォギアから、複数の竜が飛び出す。

それに対して、ジオウはサイキョーギレードを地面に突き刺し、その鍔部分にあるジオウの顔のようなパーツ『ギレードキャリバー』をジカンギレードのスロット部分に装着。

 

ULTIMATE(サイキョウ)

 

FINISH(フィニッシュ) TIME(ターイム)!』

 

そして、ジカンギレードにサイキョーギレードを装着し、『サイキョージカンギレード』へと形態変化。

そして、両手で構える。

 

KING(キング) GIRIGIRI(ギリギリ) SLASH(スラッシュ)!!!』

 

黄金の光の奔流が剣から放たれ、それを天へと突き出す。さすれば時空を斬り裂き、全てを一刀両断の元に破壊する『魔王の剣撃』が完成する。

 

突き出したエネルギーの先で時空が一瞬歪む。その最中で剣に『ジオウサイキョウ』の文字が現れる。

 

そして、その光の奔流を、剣を振るうとともに振り回し、襲い掛かる竜たちを瞬く間に両断。

そしてその一撃を、アナザーシンフォギアに叩きつける。

 

「無駄ァ!!」

だが、その一撃はいとも容易く弾かれる。

「紛い物の一撃など効かぬはぁ!」

「それでも俺は諦めないっ!!」

再び、ジオウとアナザーシンフォギアが激突する。

 

 

 

 

(動きが鈍いね・・・)

ウォズは、ふとそう思った。

装者たちの動きが、幾分か鈍いのだ。

初めは問題はなかった。だが、時間が進むにつれ、ミスする回数が増えていっている。

長く戦い続けている疲労故か?それだけではないだろう。

少なくとも、先ほどの翼の言葉が、装者全員に響いているのだ。それは『風鳴翼』も例外ではない。

だんだんと、確実にミスが増えている。

「あっ!?」

「切ちゃん!?」

切歌が、瓦礫に脚を取られてバランスを崩す。

そこへ襲い掛かるノイズたち。

「ふっ」

それをウォズがカバーし、その間に調が切歌を支え距離を取る。

「もう少し集中したらどうかな?」

「う、うるさいのデス!」

ウォズの言い方に切歌は言い返すも、その言葉にいつもの勢いはなかった。

「はあ・・・次が来る」

ウォズが構えれば、再び次のノイズが襲い掛かってくる。

「くっ!」

「このっ!」

調と切歌はその対応に追われる。

その一方、クリスの方では―――

「チクショウチクショウチクショウチクショウっ!!」

ダダダダダッとガトリング砲を撃ちまくり、出てくるノイズを一方放射状に片端から撃ち墜としていく。

(なんなんだよアイツはっ!偽物のくせに、なんで、なんであんな事言えるんだよっ!まるで、本物の先輩みたいじゃねえか・・・!)

引鉄を、壊れるのではないかとぐらい引き絞り続ける。

だが、その当たり所はバラバラだ。腕が震えているからだ。

(どうして、そんな満ち足りた顔ができるっ!どうして、あんなに人を殺したのにあんな事が言えるっ!どうしてっ・・・どうして、本物の先輩みたいな事が言えるんだ・・・っ!!)

そして、ふと頭を過ってしまう、最悪の可能性―――

 

(もし、アタシが偽物だって言ったアイツが、本物の先輩だったら・・・)

 

―――がしゃんっ

 

「っ!?クリスちゃん!?」

突如聞こえた重厚な金属音に響が反応する。

見れば、いつの間にか接近したノイズに、クリスのガトリングガンが叩き落されている光景がそこにあった。

「あっ―――」

「クリスちゃんッ!!!」

すぐさま響が飛び、クリスに一撃を入れようとしていたノイズに拳を叩き込む。

「大丈夫っ!?」

「あ、ああ・・・」

クリスはすぐにガトリングガンを拾おうとする。

 

だが、取っては取りこぼしてしまう。

 

「あっ・・・」

「えっ・・・」

その光景に、クリスと響は言葉を失う。

「止まるなっ!!」

そこへ、分身したウォズが飛び込み、襲い掛かってきたノイズを迎撃する。

「ぼさっとしているとやられるぞ!」

「す、すみませんっ!」

「お、おう・・・!」

ウォズの言葉に、響とクリスは、すぐさま立て直す。

だが、やはりその動きは、どこか躊躇いがちだった。

 

そして、マリアと『風鳴翼』は背中合わせになってノイズに囲まれていた。

「くっ、数が多すぎる・・・」

「そうだな・・・」

マリアはそこで『風鳴翼』の声の違和感に気付いて、翼の方を見る。

その口元は、心なしか辛そうに引き結ばれていた。

(翼・・・?)

「っ!?」

ノイズが襲い掛かる。

「翼っ!」

「っ!?」

マリアは、すぐさま蛇腹剣で全てのノイズを斬り飛ばす。

「ボーっとしないで!」

「す、すまない・・・」

マリアに怒鳴られ、『翼』は剣を構え直す。

そして、襲い掛かるノイズを迎撃しにかかる。

(なにも、言い返せなかった・・・)

翼の言葉に、何も言い返す事は出来なかった。

自分はただ、彼女を真似ただけなのだから。その歌に、偽物の想いを込めて歌っただけだから、彼女の語った『夢』に、飲み込まれてしまった。

(私は―――)

「う・・・」

心の底から、自分の在り方の曖昧さを呪うように、

「うわぁぁあぁああああ!!!」

思いのたけの分、叫び散らした。

 

 

 

 

斬撃が、腹を浅く裂く。

「あぐっ!?」

血が、浅く斬られた腹の傷から垂れ流れ、痛みに涙が出る。

しかし、歯を食いしばって耐え、背後から回りながら迫ってくる綾女の攻撃に備える。

振り向き、刃を迎撃しようとしたが、再び剣を持つ手を掴まれ、斬撃が腕に迸る。

「ぐぅっ!?」

立て続け、脚に斬撃が入り、浅く斬られる。

致命傷を紙一重で躱し続けているものの、その体には次第が傷が増えていく。

(このままでは・・・!?)

その時、腕を掴まれ、そのまま自らの背後に回るように回転、そしてそのまま、コンクリートの壁に叩きつける。

「あがっ!?」

一瞬、意識が飛びかける。それと同時に剣を取りこぼす。

その霞む視界の中で見えた、綾女の刺突。

その軌道は、翼の心臓を貫くに値する角度と位置。

(死ぬ、のか・・・?)

朦朧とした意識の中、目の前に迫る『死』に翼は、体中の痛みでそれを幻などではないと判断する。

故に、思い出す。

 

彼女が愛してやまない、男の事を―――

 

(―――死ねるかっ・・・!)

 

その一撃に、その死に、翼は抗う。

感情が昂ぶり、翼は、その斬撃を避けようとする。だが、綾女の異常な速度を相手に、今のままでは確実に斬撃を受け、死ぬ。

だったら、どうすればいい―――――

 

―――なんて事を、翼は考える前に横に動いていた。

 

 

そして、目の前の景色が急激に変わった。

 

「ッ!?」

気付けば目の前に壁が迫っていた。どうにかその壁に手をついて、激突を免れる。

(何が・・・いや、今は・・・!)

翼はすぐに振り返って綾女の方を見る。

そこには、意外そうに目を開きながらも、翼の次の動きを警戒するように構える。

その行為に、翼はありがたいと思った。

ついさっき起きた現象が一体なんなのか、確認する必要があったからだ。

(今、私は、死にたくないと思った)

もう、二度と会えないかもしれない人を想い、その人の為に死ねないと思った。

そして、その想いが、全身に溢れかえった気がした。

(そうしたら、このRN式が応えてくれた気がした・・・)

そもそも、RN式とは一体何なのか。

シンフォギアとの違いはなんなのか。

何故、こんなものをフィーネが作り、そして、母が使っていたのか。

(初めて変身した時、私は精神が削られるような感覚がした。歯を食いしばって耐えねば、気絶するかもしれなかった・・・っ!そうか!)

そこで、やっと翼は、RN式の使い方を理解した。

(そうか・・・あの時は、歌で聖遺物を活性化させ、プロテクターに変換させる技術は確立されていなかった。その代わりに、『精神力』を使う事でそれを補った。この加速の正体は―――)

翼が、ぐっと構える。

(気付いたか・・・)

それに綾女も応えるように構える。

一瞬の静寂。

しかし、初めに動いたのは翼で、綾女はそれに一歩遅れて動く。

 

次の瞬間、肉眼では捉えられない速さで二人は疾駆した。

 

刃を振るう、刃を躱す、その刹那のみ、微かに二人の姿が見える。

それはまるで嵐のようで、瞬く間に、地下駐車場中に、二人の残像が見え隠れする。

地下駐車場にあった車は軒並みぶった斬られる。

その最中で、翼の刀が弾かれ、そして消える。

 

そして、次に見えたのは、翼と綾女が剣を交える残像だった。

 

しかし、やはり年期の違いが、綾女の方が優勢であり、翼はその強さに翻弄される。

刀を撃つ。弾かれ腿を斬られる。

刃を墜とされる。弾くも、頬をざっくりと斬られる。

刺突を放った。躱され腹に蹴りを入れられる。

突進を迎え撃とうとした。手首を掴まれ、脚を蹴られて投げ飛ばされる。

 

(強い・・・やはりお母様は強い・・・っ!!)

 

激しく、縦横無尽に駆け回る。

背後から攻撃してみようとした。だが蹴り飛ばされ、その先で追いつかれてまた逆方向に蹴り飛ばされる。

天井を駆けて真上から―――天井で迎え撃たれ、落とされる。

顔面に、拳を喰らう。反撃しても防がれる。

 

本当に、強い―――だけど、負けられない。

 

「あ、ああぁぁあああ!!!」

加速する。加速する。加速する。

リンクスアームズ『スカイスプリング』を意識して、翼は加速する。否―――飛ぶ。

走るのではなく、飛ぶ。駆けるのではなく、跳ぶ。迅く動くのではなく、飛ぶ。

 

飛んで、飛んで、兎のように、飛び回る。

 

「っ!?」

綾女の視界で、翼が天井も、壁も、地面も飛び回る姿が見えた。

走るのではない。地面を蹴って飛ぶ。

誰に影響された戦い方だろうか。

だが、それでも簡単には譲らない。

 

娘が天へ飛ぶというのなら、母である自らは、地の果てまで駆け抜ける。

 

綾女が加速する。

「っ!?」

地面、壁、天井の順に、綾女は走り、翼が天井に着地した瞬間を狙い撃つ。

「ぐあっ!?」

そのまま、ピンボールのように翼を弾き飛ばしまくる。

「あぁぁぁあああ!?」

翼の全身に斬撃が降り注ぐ。それを、翼は全身全霊をもって防ぎにかかる。

全ての致命傷を避け、深い傷を避け、自分の命に届く一撃を躱し抜く。

やがて、綾女が翼の後ろ首を掴んで柱に叩きつける。

「がはっ―――」

そして、綾女の振り下ろしが迫る。翼は迎え撃つ刃でそれを受け止める。

しかし、力は綾女が上か、その刃が翼の左肩に食い込み、翼は苦悶の表情を浮かべる。

それでも―――

「叶えて、見せる・・・ッ!!」

全身全霊、勇往邁進―――

「私の夢をッ!!!」

己の全てを出しつくして、翼は、叫ぶ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおッ!!!!!」

一度刃を弾き、態勢を整え、背後の柱を全力で蹴り飛ばし、綾女を押し返す。そしてそのまま柱や車を何度も吹き飛ばして、突撃を続け、やがてそれが綾女に止められる。

そして、刃が弾かれ、綾女の拳が翼を撃つ―――しかし、それは翼の胸を打った所で、翼の手に捕まれる。

「っ・・・!?」

綾女はその拳を見下ろし、そして翼を見た。

そこには、ボロボロになりながらも、決して揺るがない意志をもった眼が、そこにあった。

「―――お母様を止められるのは、ただ一人・・・!」

 

―――(あなた)を超えてゆく事をお許しください。

 

「―――私だッ!!!」

二人のRN式天羽々斬改が、ここ一番に輝く。

翼が拳を弾き、すかさず刀を両手で持ち、振り上げる。

そして、綾女も同じように構え、そのまま振り下ろす。

二つの刃が激突する。

風鳴翼と風鳴綾女の剣が鍔迫り合う。

火花が散り、全力を注いで相手を押し返そうとする。

そして―――翼が綾女の剣を押し返す。

 

初めて、翼が綾女に一矢報いた。

 

よろける綾女。しかしそれでも鞘に刃を納めた。

それは決して、降伏の為の行為などではない。

その態勢から放てる、居合を放つ為だ。

 

翼が来る―――その確信が、綾女にはあった。

 

そして翼は―――

「アァァァアァアアッ!!!」

―――刀を投げた。

「ッ!?」

それに綾女は、思わず抜刀してしまった。

RN式の加速によって、砲弾の如き勢いを得た刀に対して反応が遅れて躱すという選択肢が潰されたからだ。

だから刃を放って、その一撃を防いだ。だが、()()()()

刀を弾いたその先で、翼が大きく身をかがめている事に気付く。

 

「―――勝利の法則は・・・」

 

大きく、膝を折り、屈み、脚を強烈に伸び縮みするバネに連想し、そして―――飛んだ。

 

「―――決まったッ!!!」

 

そして、渾身の飛び蹴りを、高速で放つ。

それは完全に、相手を殺すつもりで放った一撃だ。

それに対して、綾女は抜刀の勢いによって回転。そのまま右の後ろ回し蹴りを放つ。

「ハァァァァア――――ッ!!!」

全力を放つ翼―――それに対して、綾女は、笑っていた。

 

「―――もう、大丈夫だ」

「――――ッ!!」

 

 

 

蒼兎

 

閃迅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャラルホルン、保管室にて。

「これがギャラルホルンね・・・」

ツクヨミの目の前に、ヴーっと音を出し続けているギャラルホルンがあった。

「これを破壊すれば・・・!」

ツクヨミは、すぐにジクウドライバーを腰に装着し、ツクヨミライドウォッチを起動する。

 

TUKUYOMI(ツクヨミ)!』

 

それをスロットに装填し、背後にバンクを展開。

そして叫ぶ。

 

「変身ッ!」

 

RIDER(ライダー) TIME(ターイム)!!』

 

KAMEN(仮面) RIDER(ライダー) TUKUYOMI(ツクヨミ) TU KU YO MI(ツクヨミ) !』

 

仮面ライダーツクヨミへと変身した彼女は、再びツクヨミライドウォッチのライドオンスターターを押す。

 

FINISH(フィニッシュ) TIME(ターイム)!』

 

そして勢いよく飛び上がり、ギャラルホルンに向かって強烈な飛び蹴りを放つ。

 

TIME(ターイム) JACK(ジャック)

 

黄金色の粒子が飛び散り、ギャラルホルンに激突する。

「ハァァァァアア!!!」

その瞬間―――時空が歪んだ。

「ッ!!」

それに合わせて、ツクヨミは破壊から免れようとするギャラルホルンの時間を停止。

しかし、それでも完全聖遺物であるギャラルホルンの操作も干渉も受け付けない防衛機能が、ツクヨミの時間停止の中でも発動する。

「ハァァァァアアァァアアアアアッッ!!!」

それに対して、ツクヨミはライダーキックの勢いを強めるとともに、さらに時間停止能力を()()

ギャラルホルンの平行世界に干渉する力そのものに干渉。次の瞬間にはギャラルホルンは奇怪な音を発し出す。

「いい加減―――砕けろォぉォぉお!!!」

ギャラルホルンに、ひびが入る。その瞬間を見逃さず、ツクヨミは手を振り上げ、そのひびに掌を叩きつける。

その掌から生体エネルギーを高収束させ、内側から砕く刃『ルミナスフラクター』を発動して、そのひびにそれを流し込む。

 

――――ギギギギギギィィィィィィィィ――――――!!!?

 

そして、ギャラルホルンが―――止まった。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

想定以上の力を使い、思わず膝をつくツクヨミ。

「あとは、向こうの・・・」

そう言って、ツクヨミは空を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっぐ・・・えぐっ・・・」

 

―――泣き声が、聞こえる。

 

綾女は、自分の顔にぽたぽたと落ちる雫と、誰かの泣き声で目を覚ます。

目の前には、年ごろの少女らしく泣く、娘の姿があった。

「・・・なに泣いてるの」

「うっ・・・お母様はっ、操られてなど、いなかった・・・!わたしがっ、ふがいないっ・・・ばかりにっ・・・お母様はっ・・・!!」

「ははっ・・・さすがに剣を交えただけあって・・・バレるわよね・・・」

なんとなく、自分の事が分かってしまう。

(ああ、死ぬのね。私は・・・)

最後の翼の蹴り。あれは確かに本物だった。

そして、自分はその一撃を受けた。

当然の結果だ。

殺す気で放ったのなら、相手は死んでいなければならない。

今回は、それが自分であっただけの話だ。

そう綾女は納得して、翼の顔を見上げた。

とても、立派に成長したくせに、その泣き顔だけは、あの時と全く変わらない。

彼との子ではないはずなのに、その眼差しは、とても良く似ている。

とても、とても―――

「・・・成長、したわね、翼。もう、こんなに大きくなって・・・」

「ひっく・・・お母様の、子ですから・・・」

「でも、泣き虫なのは、相変わらずなのね・・・」

「お恥ずかしい、かぎりです・・・」

そんなに時間はない。翼に早く渡さなければならないものがある。

綾女は、RN式が解除された服装のポケットに手を突っ込み、そして、取り出したものを、自分のRN式と共に翼に手渡す。

「っ・・・夢を、忘れずに、戦いなさい・・・」

「お母様・・・」

また、泣き出しそうな顔になる翼に、綾女はふっと微笑む。

そして、もう死んでしまった母親からずっと聞かされてきた子守唄を、そっと歌った。

 

―――風よ そよげよ 向こうまで

 

―――私の知らない場所へ飛んでおくれ

 

―――風よ 運べよ ここまで

 

―――私の知らないことを教えておくれ

 

―――風よ 貴方はどんな姿をしているの

 

―――貴方は一体、どんな『翼』をもっているの

 

―――どうか その姿を見せてくださいな

 

―――風よ 飛べよ どこまでも

 

―――貴方と共に、飛ぶ鳥のように

 

 

 

 

 

 

緒川慎次は、壁が割れ、地面が砕け、天井が落ちた地下駐車場の中で、母親を抱き抱える翼の背中を黙ってみていた。

いつまでも、いつまでも、年ごろの少女のように泣く翼の背中を、緒川は黙って見つめていた。

だが、時間はそんなにない。

「・・・翼さん」

 

もう二度と、間違えないように。

 

「行きましょう」

その言葉に翼は一瞬、天を仰ぎ見て、その後に、目元を擦った。

そしてそっと母親の遺体を、瓦礫の落ちていない、砕けてもいない地面に寝かせ、立ち上がる。

そして、振り返った彼女の顔は―――覚悟に満ちていた。

「―――はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響が最後のノイズを殴る。

「止まった・・・?」

「やはりね」

ノイズの出現が止まり、装者たちはほっと息を吐く。

だが、すぐ傍にウォズがいる事で、未だ油断はできなかった。

「やはりって、どういうことだよ・・・?」

「私の仲間がギャラルホルンを破壊したおかげで、ノイズの発生が収まったんだ」

「はあ!?」

その言葉に、一同は驚く。

「ギャラルホルンを破壊したんデスか!?」

「そんなっ!それじゃあ他の平行世界に行けなくなって・・・」

「それでも破壊しなければ、君たちはノイズの物量に押されてやられていた。結果オーライというものさ」

「ふざけんな!お前、一体いくつの平行世界があると思って・・・」

「そんな事は今必要ない」

「なんだと!?」

喰ってかかるクリス。だが、その言葉を遮るかのように、ドームの壁が突如として砕け散る。

「うわぁぁあぁあああ!?」

そこへジオウが転がり込んでくる。

「我が魔王!?」

「え!?魔王さん!?」

「あたた・・・」

ウォズがすぐさま駆け寄る。

「大丈夫ですか!?」

「うん、どうにか未来予知で直撃は躱したけど・・・」

装甲にやや傷が入っているが、致命的な状態にはなっていないらしい。

だが、ジオウが突き抜けてきた壁から、一人の異形が現れる。

「あれは・・・!?」

「カインだよ・・・」

「え!?」

ジオウがどうにか立ち上がり、サイキョージカンギレードを構える。

そしてカイン―――アナザーシンフォギアは首を鳴らすように首を回した。

「ふぅー・・・ここまで君がしぶといとは思わなかったよ」

「そりゃどうも」

鼻で笑うアナザーシンフォギア。

「カインさん・・・なの・・・?」

響が、信じられないとでもいうようにアナザーシンフォギアを見る。

しかしアナザーシンフォギアは、響の方を見ると、ふっと笑う気配がした。

「ああ、もう溜まったか」

意味の分からない言葉を呟くアナザーシンフォギア。

その言葉の意味を、装者たちは知らない。

 

だが、仮面ライダーは知っていた。

 

「溜まった・・・まさか・・・!?」

気付いた時にはもう遅かった。

アナザーシンフォギアが手を掲げた途端、響たちの懐から、手渡されていたウォッチが飛び出してくる。

「え!?」

「なんデスか!?」

「あれは、奴から貰った時計・・・!?」

しかし、最初に貰った時とは形状が違っていた。

それぞれの色をもった―――それこそ、装者たちのイメージカラーそのものに変化したもの。

だが、それらは瞬く間に紫色の禍々しい形状へと変化する。

「素晴らしい・・・これが七つの音階に類する力・・・!」

アナザーシンフォギアは、その変身を解除する。

「え・・・!?」

装者、三度驚愕。アナザーシンフォギアが形を変えたと思いきや、出てきたのはなんと、自分たちをここまでサポートしてくれたカインだったからだ。

「カインさん・・・!?」

「おい、どういうことだ!?」

「どういうことも見ての通りさ」

次の瞬間、装者たちの変身が解除される。

いや、解除というよりは、まるで初めからなかったかのように消滅してみせたのだ。

「え!?」

「ギアが・・・」

「君たちシンフォギアの歴史が奪われたんだ」

「歴史が・・・!?」

「これはいよいよまずいことになってきた・・・」

 

それは即ち、カインがライダーとシンフォギアの歴史を牛耳ったということ。

 

「で、でも、翼のはまだ・・・!」

「何!?」

何故か唯一『風鳴翼』の『天羽々斬』だけは残っていた。

「あア・・・?」

そして、カインの眼差しが、『風鳴翼』に向けられる。

その眼差しに『風鳴翼』は思わず体を震わせる。

「ああ・・・そういえば、いたなぁ、そんなの・・・」

「っ・・・」

 

「君はもう用済みだ」

 

ぐしゃ―――

 

「・・・え?」

そんな音が聞こえた。腹に、謎の違和感を感じて、視線を落としてみれば、そこにあったのは、自分の体を貫く、一本の棒のようなもの。

「な・・・あ・・・」

何が起きたのか、誰にも分からなかった。

「あの世であの醜い母親によろしく言っておいてくれ。―――君は良い手駒だったとね」

 

そして、『風鳴翼』は宙を舞った。




次回!愛和創造シンフォギア・ビルドは!?

殺されてしまう『風鳴翼』

「お前は、私の・・・」

そして目覚める、アナザーシンフォギア完全体。

「どんな化け物だっ・・・」
「アタシは、アタシはぁあ・・・!!」

その強大な力の前に、彼らは―――

「お前如きに、王を名乗らせはしないっ・・・!!」

次回『復活の交響曲』

「―――待たせたな、翼」
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