キングダム 〜俺は俺の為だけに生きるぉ!〜   作:丸の内 幹太郎

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遅くなりました。ごめんなさい


5話 "大槍"

「第一軍出撃だ! 」

 

『オオ!』

 

趙奢(ちょうしゃ)様、魏軍三万が進行を開始しました! 」

 

「やっとか! 」

 

「魏軍め! 我々の脚を引っ張りおってッ 」

 

 

「山岳の上に兵はいなかったか? 」

 

 

「ハッ! 魏軍が言うには伏兵は存在しないと」

 

「調査したのであろうな魏軍め! 」

 

魏趙連合軍が山岳に挟まれた一本道から進軍を開始した。連合軍の為、連携が取れず、兵糧の関係もあり、夜の侵攻となってしまった。

 

 

趙奢(ちょうしゃ)…」

 

 

侵攻する軍より後方に本陣を置いていた趙三大天・趙奢の陣に同じ三大天の藺相如(りんしょうじょ)が馬上した状態で進軍する山岳へ目をやっていた。

 

 

「前に夢を見た……ここと同じ風景だ…」

 

「………」

 

「"暁の夜、騎乗した若き虎が漆黒の魔獣となり"天"を切るとな」

 

「!! 」

 

「! 」

 

「暁じゃと? 」

 

 

その言葉を誰も疑わなかった……藺相如は不思議な夢を見るとそれが現実になることは趙の兵士には知れ渡っていた。

 

 

「それを俺は確かめに来たのだ……例え()()()()()()()()()()()()

 

「! 」

 

 

そういうと自分の右翼の陣に引き返した。

 

 

…ーーあの藺相如が武者震いか……

 

 

 

 

貴皇直下兵団ーーその数は1000人で構成された特殊部隊。それを率いるは千人将・影楼。

その部隊の特徴はその隠密性であった。

魏軍は山岳上に兵士を置き探査していたが全てが殺害され、敵に知られることなく真上にある。それが現在ーーー

 

 

「………………」

 

 

『ーーー影楼…』

 

『ーーハ 』

 

『先頭は必ず魏軍だ……一、いや二万程度平地に入った後……頭の上に落としてやれ……』

 

 

山道を進む魏軍の上に大きな影が出来上がった。

 

 

「あ 」

 

 

 

ーーー特大の岩石をな……

 

 

 

 

「ぎゃぁ!!」

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!? 」

 

 

山岳に転がっていた岩石を上から数個転がし、山道を行進中だった魏軍はペチャンコになった。

ドン、ドン、ドンと地鳴りを起こした後、それに負けない叫びが平地に出た魏軍、後方の趙魏軍にも聞こえる叫びであった。

 

 

『報告! 後方の山道にて落盤事故がッ! 』

 

「バカモノ! 今のが落盤のはずがなかろうて!! 」

 

 

『オオオオオオオ!!! 」

 

 

「なんじゃ!? 」

 

「前方にて敵軍がッ!! その数1万から2万ッ」

 

「バカな敵は籠城では………」

 

「一体どこに隠れていた! 」

 

「何卒撤退を! 我々は今ーーー」

 

 

 

『袋の鼠にございまする!! 」

 

 

 

後方を切りだった山、そして唯一の山道を失い、そして目の前には同等の軍が包囲して待ち構えていたのだ。

 

 

「へへ、流石は殿だ……」

 

将軍・尚角

 

「そっちは任せましたよ殿! やるぞお前ら! 」

 

『オオオオ!!! 』

 

「来たぞ! 迎え打て! 」

 

 

そしてその乱戦の声は後方の山岳より、中央に高くそびえ立つ"大天"の旗を捉えていた。

 

 

「尚角が始めたようです…」

 

「我々も始めましょう! 」

 

「……………」

 

「殿? 」

 

「見ろ……"大天"が二つ」

 

「え? 」

 

 

前で騎乗していた貴皇の横に並び確認をすると中央の大天の左翼にもう一つの大天があることに驚愕した。

 

 

「バカな…勝てる筈がない! 」

 

「まさかここまでの軍とはッ! すぐにーーー」

 

「静まれ! 」

 

 

三大天が二人いる真実を知った兵士達は慌て慄くが、それを尚相が黙らせ、先程から黙り込む貴皇に視線を戻した。

 

 

「どうなさりますか? 」

 

「我々は計画通り"左翼"から突破する…」

 

「と、殿……左翼敵軍は4万程度、ですが我々は三千しかおりません!」

 

「そんなこと最初からわかっていたろ」

 

「で、ですが尚相様…」

 

 

後ろで動揺する将兵の声に笑いを上げる貴皇は後ろを振り返り、ニヤリと笑った。

 

 

「これが"戦国"だろ? 」

 

 

「! 」

 

「!! 」

 

「尚相、槍と兜を…」

 

「ハッ! 」

 

 

尚相が持ってきたのは"大槍"……

貴皇が手に持つとふた回りするほどの大きさであった。他の者は疑問に思った…これを扱えるのかと……

それは尚相も同じ思いだった。

 

 

「どうですか? 」

 

「……心配するな尚相」

 

「! 」

 

「後ろから見ていろ」

 

「……ハッ! 」

 

「狙うは中央にいる趙奢なり! 右翼に狼煙を上げろッ」

 

 

顔まで覆う兜を被ると貴皇は目をカッと見開き……

 

 

『突撃ィッ! 』

 

 

『ッオオオオオオ!!! 』

 

 

貴皇自ら先頭に立ち、崖を馬で駆け下りると敵左翼に衝突した。

 

 

「ん? 」

 

 

小石が崖を転がるのを見て上を見た趙兵が急斜面を馬で降る秦軍に驚愕した。

 

 

「て、敵襲だぁぁ!! 」

 

 

ドオン!!!

 

 

藺相如(りんしょうじょ)様! 敵兵が右の山岳より飛び出し、右翼と交戦中! 」

 

「報告! 敵の数およそ二千! 」

 

「…………」

 

 

「どうなさりましたか? 」

 

 

一頭の馬が真正面から近づく。

 

 

「ぎ、堯雲(ぎょううん)! 」

 

 

「あれは助攻…ですな」

 

十傑・堯雲(ぎょううん)

 

 

 

そして後ろからもう一頭……

 

 

 

「助攻には少なすぎる……主攻でも同じく 」

 

十傑・超峩龍(ちょうがりょう)

 

 

「そんなことわかってるはバカ」

 

「ぬ 」

 

「攻められてるのはお前の陣だぞ堯雲」

 

「"雷雲(らいうん)"を置いてきた……"十槍(じゅっそう)"も数人。それより藺相如様…これがもし助攻ならーーー」

 

 

「報告! 左翼にてここと同じく敵軍が山岳から出現ッ、その数およそ一万五千! 」

 

 

「左翼が主攻か…」

 

「これは奇襲……脚を止めれば敵は全滅します」

 

 

魔物は左翼か………

 

 

「峩龍! 」

 

「ハッ! 」

 

「"土雀(どしゃく)"を引き連れ、中央へ援軍に行け! 」

 

「ハハッ! 」

 

「堯雲」

 

「ハッ、右翼の敵を殲滅し中央へ行け! 」

 

「ハッ」

 

 

命令された堯雲、超峩龍は騎乗し、自分の陣に戻っていった。

 

 

「藺相如様……左翼に援軍は? 」

 

「左翼は魏軍の範囲だ…援軍を出す意味はない。そこで潰しあってくれれば後々楽だろ? 」

 

「ハ、なるほど……」

 

 

「報告! 右翼が…」

 

 

「おお、もう殲滅したか! 流石は堯雲様だ」

 

 

いやそれには早すぎる………

 

 

「雷雲が抜かれ! 中央の本陣に近づいています! 」

 

「なーーー」

 

「なんだと!? 」

 

 

藺相如も予想してなかったことが右翼では起きていた。それは尚相達も予想にしてなかったことだった。

左翼と衝突した貴皇達はその勢いのまま左翼を突入した。

 

 

そして堯雲直下部隊の"雷雲"に近づいていた

 

 

「おいきたぞ」

 

「フッ、たった二千で何をしようと」

 

「左翼でも敵と衝突してるらしいぞ! さっさと片付けて援軍に行くぞ」

 

「オオ」

 

 

 

 

「しーー」

 

 

先頭を自ら走る貴皇を止めるべく趙兵が群がるがーー

 

 

「このクソガキ! 」

 

スパン!

 

「? 」

 

「なっーー」

 

「さ、左右から挟み込め! 」

 

「オオーー」

 

 

スパン、スパンと大槍が届く位置から敵兵は一歩も入ってこれず、首だけが飛んだ。

 

 

「す、すごい! 脚が止まらんぞ! 」

 

「まさか、ここまでの槍使いとはッ!! 」

 

「…………よし! 行くぞ皆の者ッ、殿に続け! 」

 

 

『オオオ! 』

 

 

その時でも敵の首を飛ばし続ける。

 

 

「クッ、あのガキ! 単体で攻めるな! "投"! 」

 

「オオ! 」

 

三人同士に槍を投げるがそれを大槍で防ぐ。その防いだ隙を見て騎兵が突撃する。

 

 

「オオ! 死ねーー」

 

 

それも虚しく五人の首が同時に飛ぶ。それは敵も味方も戦慄することであった。

 

 

なんだあのガキ!? あの槍使い……"中華の五指"に入るぞ!?

 

 

貴皇の腕技を見て後ろに下がってしまう趙兵達の後ろからヌッと巨躯の男達が出てきた。

 

 

「! 」

 

「貴公様お気をつけよ! あれは"十槍"! 」

 

「………」

 

 

そしていつの間にか貴皇を中心に円ができていた。

 

 

「"十槍"が五人か……」

 

「フハハハ、小童! 俺が一騎打ちしてやろう! ハッ! 」

 

 

馬を走らせ、真正面から勝負を挑んだ。

 

 

「俺自ら、あの()()のように首をはねてくれるわ! 」

 

「ピク 」

 

「死ねぇぇ! 」

 

槍を向け、貴皇の正面まで迫っていた。

 

 

ーー獲った!

 

 

「貴ーーえ」

 

 

貴皇と一騎打ちをした十槍が見た景色は槍を貫く光景ではなく、逆さまの兵士達。

それを周りで見ていた兵士達がみたのは十槍の首が空高く飛ぶ光景であった。

 

 

「うぉおおおお貴公様ぁぁぁあ!」

 

「やったぞ!! 」

 

 

 

「フーーー次だ」

 

 

 

 




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