あり得ない特典でぼっち旅 作:裏界の鈴風
んんー、ん~、んーー、はっ!?
怪獣王VS邪神、巌流島の対決って感じの夢見てた!? いやぁ、まさか最後の最後に光の巨人となった主人公が海外王と協力して邪神を倒し、そのままエンディングになるとは読めんかったなぁ、さすが夢カオスすぎ。
…………処でここどこよ? なんか水底っぽいけど、何でも私息できてるの? いつの間にエラ呼吸を会得したし。
取り合えず泳いでみるけど、……おっかしいなぁ?
一息ついて取り合えず、さっきの水面を見てみる。
……うん、やっぱり結構深い。深海とはいかないけど人間だったら確実にダイバー装備がいるレベルの深さだわ。
…………? あれ?
波立ってた水面が落ち着いてきて辺りの景色が映るようになってきたけど、……
髪形がツインテールなのはまだいい私もよくやるから、けど肌がまるで死人のように青白く、髪が大部分は黒のままだけど緑と赤と青と白が所々混ざった奇妙な色に変色している。
そいつの右目、いや左目か、も奇妙で時計みたいな模様が刻まれている。お洒落にしてもチャレンジャー過ぎではないか?
何よりはその表情、私はこんなにも驚いていると言うのに水面のそいつは顔色ひとつ変わらない。何て奴だ。表情筋死んでるんじゃないか?
…………試しに右腕を挙げる、水面のそいつも腕を挙げる。
両手で髪を握る、そいつも握る。
ニコッと笑いながら手をふってみる、笑いとも嘲笑ともとれる微妙な顔をしたそいつが手をふってくる。
どう考えても私です。本当にありがとうございました……。
よくよく見てみれば変わったのは顔だけじゃない、体もだ。なんか背中に透きとおった虹色の翼が生えてるし、体も全部が色白に腕はどこかの悪役のような凶悪な鎧を纏っていて鈎爪なんて岩すらも切り裂けそう、服も……何故か黒いビキニの上に紅白の羽衣と黒のホットパンツになっていた。元の服もはどこへ行ったし、街中でもこんな格好の人中々見ないぞ……。
oh、なぜこんな怪人へとワープ進化してしまったのか。原因がまったくわからない。
……いや、原因はわからないが心当たりが全くないわけでもないぞ。
勝手に変わった髪形と髪色、変化した服と腕、そして特徴的な左目。
全部が当てはまる人間は見たことないが、
忘れるはずもない、十七年経とうがずっと考えていたことなのだから。
初音ミク、緑色の髪をしたツインテールのヴォーカロイド。
ブラック★ロックシューター、黒髪で左右非対称のツインテールをして、水着みたいなラフな格好をした少女。
時崎狂三、こちらも黒髪非対称ツインテールで左目に時計の文字盤がが刻まれた精霊。
南方悽鬼、深海棲艦。白い肌に白い髪のツインテール。凶悪な腕が特徴的。
五河琴里、赤髪赤眼のツインテール。妹属性で精霊。炎と再生の能力を持ち、精霊状態ではまるで角の生えたら天女のような格好になる。
ニンフ、電子戦用エンジェロイドタイプβ、
あの神爺さんに押し付けられた特典、今までは瞳の色が変わったり、歌が上手くなった程度だと思ってたけど、これが本当の効果ではないのか?
ステータスプレートの稼働率、あれは特典の稼働率を意味していたのではないか?
ならばメルドさんが分からなかったのも頷ける。これは私くらいにしか表れない特異なものだから。
切っ掛けは……多分あの火球。あれで気絶して起きたらこうだったのだからそれしかない。
私が寝てる間に稼働率が急上昇した結果がこの姿と言うなら納得できる。
確かめるためにステータスプレートを……?
ステータスプレートを…………?
全身をさぐる。パタパタと叩いてみるが、ない。
あああああああああああ!?
そうだよ服に入れてたんだから服が無くなって残ってる分けないじゃん!!
orz とリアルで地面に頭をつく。その衝撃で地面に罅が入る。
正直私にはかなりショックだ。あの中にはスマホも入ってたのに……。
そのまま何分かくらい落ち込んでいたが、いい加減悩むのも飽きたのでここの探索を開始する。
えっと……、たしか私はベヒモスに遭遇して、誰かの魔法が南雲に当たりそうになって、仕方ないから加速&月煌ノ剣を歌って身体能力底上げして庇ったんだっけ?
そっから先の記憶がないけど、……察するに私、そのまま崖下に落ちたな。私がいたの橋の上だったし、意識も飛んでたからしょうがないか。
となるとここは一体第何階層?
トラップで飛ばされ、崖から落ちたからかなり下ってるはず。
最悪、ここが第百階層って可能性もある……。
城で覚える限りいろいろ覚えたけど、流石に未踏の階層までは知識にない。
……。
…………。
………………よし、進もう。
正直ここから上がったとしても無事にたどり着ける保証はない。なら進むだけ進んで手掛かりの一つでも見つけてからでいい。ゴールまで行けばスタート地点まで戻る転送装置みたいなものもあるかもしれない。
進むも地獄、戻るも地獄、ならば進むしかない。
それに勝算がないわけでもない。
さっきのジャンプや罅が入った地面からみて、クラス最弱だった私からかなりパワーアップしてるみたい、今ならあの
……そう言えば南雲大丈夫かな。私多分死んだことになってそうだけど、その責任をとらさせて更に虐められてそう。
やばいね、考えれば考えるほどそう思えてきた。
ならここでモタモタしてる時間はない。さっさと出発してしまおう。
全力疾走したいところだけれど、トラップや魔物で出くわしても困るし、普通に歩く。
歩く。歩く。……歩く。
見渡す限り岩岩岩、そして水と時折魔物。
何だっけ、……ああ緑光石だ、緑光石のおかげで辺りは明るい。
さすが迷宮、緑光石も地上とは桁違いか。
「……ア」
兎さんだ! いや、あのむきむきの足は本当に兎? まあ兎でいいや。 わーい、兎さーん!
「キュキュ!? キューーーー!!」
…………何だよ、読んで字のまままさに脱兎しなくてもいいじゃないかぁ。
そりゃ私は今何処に出しても恐れられるキメラティッククリーチャーだけどさ。魔物兎さんにまで逃げられるとお姉さん凄い悲しくなるぞ。
うーん、流石に兎相手は可愛そうかな、程よい練習相手は……いた、丁度いい熊的な生物が。
へーい、そこの格好いい大熊さん! ちょっと私と
「ヲ!」
「グル、グル、……グルアアアアァァァァァァァァァ」
ドップラー効果を残して逃げ去る熊。
…………もうそろそろお姉さん泣くぞ。みっともなく泣きわめくぞ。
ギロリと、後ろを見れば白い毛並みの狼が腹を見せて寝転がっていた。いわゆる服従のポーズである。
なんだ貴様ら! 恐ろしいのは見た目だけかこらぁ!!
もっと私を楽しませろよ! ワクワクさせろよ! 魔物らしくかかってこいよぉ!!!
……。
…………。
………………よし、そろそろ動こう。
流石に少しばかり心にきたけど、逆に考えれば魔物に襲われないということは安全に進めるということに他ならない。ポジティブだ、ポジティブに考えるのよみくちゃん! この状況で少しでもネガティブなことを考えてみろよみくちゃん! 心が壊れて死んでしまうぞみくちゃん!!
とまぁ、適度にふざけるのもここまでにして。
今気づいたけどもしかして私、喋れなくなってる?
「ミク、ネギ、好キ」(みくちゃんはネギが大好き)
駄目だ、単語は言えるけど文が作れてない。
歌は歌えるみたいだから戦闘とかには問題無さそうだけど、コミュ力の大幅ダウンは辛い。
それはそうと結構歩いたし、何階層か降りたと思うけどまだ最下層には着かないのかな?
緑光石も無くなってやや暗くなったけど視界には問題ない。そして相変わらず魔物は逃げる。というか下の階層に行くにつれてどんどん早く逃げるようになってる気がする。
あーでもあいつ、ドロドロの液体まみれの階層にいた壁を泳ぐ鮫には悪いことしたなぁ。
急に壁から出てきたもんだから驚いてつい思いっきり殴っちゃった。
まさか壁ごとミンチになるとは、地面がちゃんとしてたらお墓を造ってあげたのにね。
……流石におかしくない?
もう明らかに四十以上は階層を下ってる。なのに一向に最下層につかない。
何日も何日も下り続けたけど手がかりの一つもつかめてない。流石に少し焦る。
もしかして私結構浅い階層に落ちてたりした? 上がった方がよかった?
ああそうそう。これはちょっと前に気づいたんだけど、私食べ物要らないみたい。明らかに何日も飲まず食わずなのに全く空腹感がない。これはもう人間かどうかも怪しいね!
心当たりはないということはない。初音ミクやB★SR、ヲ級に時崎狂三といった人外ズが混ざったのだからこれくらいは予想はできる。
おそらく魔力とか他の何かを生命力にまわしてる様な状態なのだと思う。自信はないけど。
でも正直いつ燃料切れを起こしてもおかしくないので、ちょっと卑怯だけど
ところで唐突に話は変わるけど、絶対に迷路の出口にたどり着く方法って知ってる?
たとえ通路全部が行き止まりでも必ず、出口に行く方法。
それはね。
「――――ヌン!!」
壁をぶっ壊せばいいんだよ(笑)。
私がしたのは単純、全力で足元を殴りつけただけ。
でもそれだけであたり一面にまるで爆発でも起きたような轟音が響き、地面に皹が入り私を中心に崩れ、下の階層へ落下していく。
「ヲ!」
くるくると二・三回転してからのY字のポーズで着地、今の私なら体操で世界を目指せそう……じゃなくて。どうやら壁抜きならぬ床抜きは成功したみたい。意外となんとかなるもんだ。
この調子で最下層まで一気にやってこーー!!
「………………ン」
あんなことを考えた自分を殴りたい。結局あれから五十以上殴り続けることになったしどうなってんのこの迷宮。下った階層と落ちた階層とか合計するとどうやっても百超えるんだけど。何? 隠しステージにでも突入したの?
「……………………ハイ」
しかしだからと言って止めるわけにはいかない。もう後戻りできるほど浅い階層にはいないのだから、もはや退路はない。
「……………………エイ」
休憩して、再び殴る。体力的には全く疲れてないけど、気力がゴリゴリ減っているのがわかる。
「……………………ポイ…………ヲ?」
繰り返すこと数回、私の怪力でも破壊できない階層に到達した。
いや、クレーターはできてるけど上の階層と違って下に落ちない。と言うことはーー
「ツイ、タ?」
何か久々に言葉をつかった気がする。もう何十時間もボッチだったし、独り言もあまりしてなかったような……。
まあいいや。ともかく最下層に着いたなら着いたでゴールを探さなきゃ。
そんなこんなで探すこと数分、下層に降りる階段を見つける私。
あー、そりゃそうよね。最下層なんだから上と階層の広さも違うから偶々硬い場所に当たっただけだったのかな?
意気消沈しつつも階段を下る。
「ン?」
そこは、今まではの迷宮とは一線を画す所だった。
直径が五・六メートルくらいの円柱がまるで神殿のように三十メートルはある天井と地面を等間隔に繋いでいる。
地面を見れば明らかに誰かが掃除したように平らで、ここが明らかに人の手が加わった空間であると理解できた。
…………確かにその可能性を考えなかった訳じゃないけど、実際に見るとやはりびっくりする。
結論から言うと、この迷宮は自然発生したものではなく、誰かが造り上げた物ということになる。
誰が、どうやって、なんの目的でこんなものを造ったのかやや興味があるけど、どうせ答えはこの先にあるのだから考えないことにした。
視界の先、二・三百メートル先に十メートルほどの巨大な扉を見つけたから。
ゆっくり歩き、それに近づく。
どうやらこの階層には魔物はいないらしく、何かが逃げる気配も感じない。
あの先にゴールがあると思った私はなんの躊躇もなく最後の柱を越えた、その時だった。
「ン?」
扉と私の間に、三十メートルほどの巨大な魔法陣が現れた。
あれこれどっかで見たような、具体的にはベヒモス辺りで。でもこれあれより三倍はデカイような……。
そんなこんな考えていると魔法陣から発せられた光が一面を照らしだしたので、眩しくめ思わず顔を手で覆う。
光が止み、恐る恐る手をどけてみるとそこには思った以上魔物がいた。
例えるなら八又の大蛇かキング○ドラかな、そんな感じの六つの首見持った巨大な蛇がそこにいた。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
赤い瞳をギラギラと輝かせ、此方に溢れんばかりの敵意を向けてくる。
「キヒヒ♪」
それが、堪らなく嬉しい。
だって今の今までこんなにも敵らしい敵はいなかったのだから。
やっと、……やっと戦える! 今までの弱いもの虐めじゃなくれっきとした闘いが! 命を懸けた殺しあいが! 私の迷宮初の戦いが、やっとできる!
……鮫さん? あれはノーカン、ほぼ事故だし。
そうして私は拳を握りしめ、そいつへと向かっていった。
あれ、そう言えば私って、何ができるんだっけ?
あ、待ってタイムタイム! ちょっと確認するからーーーー!!
ギャー!? 炎吐かないでぇ!!! 焼ける! 焼けみくちゃんになるからぁ!!