あり得ない特典でぼっち旅   作:裏界の鈴風

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書き直し


反逆者と神代魔法

 【ライセン大峡谷】、魔法を封じる効果があり、強力な魔物が出没するその地帯に一組の男女はいた。

 通常ならば一刻も早くその場を脱出しようとするものだったが、彼らはまず辺りを確認して……唐突に抱き合った。

 

「よっしゃぁ!! 帰って来たぞーー!!!」

 

「ん!!」

 

 そのままの状態でくるくると廻り、この場所には似つかわしくない幸せそうな笑い声が響く。

 一頻り笑いあったところでその男、南雲はじめは思い出したようにあるものを取り出した。

 それは白髪に眼帯、左腕が凶悪な義手という中2病まっしぐらという風体に成り果てた彼が持つには相応しくない可愛らしいピンク色のスマートフォンであった。

 元は色々な飾りがついていたことを彼は知っているが、迷宮にて落下したからかそれともあの火球のせいなのか分からないが幾つかのストラップは千切れてなくなっており、本体の塗装や画面にも傷が入っている。

 

「それは何?」

 

「あーこれはスマートフォンっていう俺らの世界の……誰でも念話が使えるようになる道具だな」

 

「それはすごい、でもいらない」

 

「まぁそうなんだがな……」

 

 念話、口を使わずとも相手に直接自分の声を伝えることかできる技能だが、この二人は既に習得しているため必要がないと言える。

 

「……もしかして、昔の女?」

 

「なんでやねん」

 

 思わず関西弁になるはじめ。

 

「迷宮で言っただろ、一緒に奈落に落ちた奴の……形見だ」

 

 奈落に落ちた後、はじめは直ぐに彼女、黒海みくを探したが見つからなかった。

 地獄を見、生きて故郷に帰ることを決意した後も上層への道を探すついでに探してみたがついぞ見つかることはなかった。

 唯一の成果と言えば、川辺に流れ着いていた破れてばらばらになった彼女の衣類の一部とそこに入っていたこのスマートフォンだけである。

 形見と言ったのはあの大迷宮の恐ろしさを正しく理解しており、自身が生き延びたことが奇跡的であること、本人が見つからず服もボロボロだったことから、魔物に骨も残さず食べられたか探すことのできない遠くに流されたと考えていた。

 人間は長い間息ができなければ死んでしまうし、魔物に食われたのならなおさら生きているはずがない。

 その考えにたどり着いた時、少しは悲しくはあったが、それだけだった。

 彼女には庇われた恩はあるが、そこまで親しかったわけでもない。

 しかし、義理や恩のある相手の物を無下にするほど人でなしでもない。

 この壊れたスマートフォンは地球に帰った時に彼女の家族か、最悪仲の良かったクラスメイトにでも渡そうと拾っておいた物だ。

 

「ん、はじめ」

 

「ああ、まったく無粋な奴等だ」

 

 スマートフォンを宝物庫にしまい、代わりに彼の手製の拳銃、ドンナーを取り出す。

 見れば彼らはすっかり魔物たちに囲まれており、逃げ場はない状況であった。

 

 はじめはゆっくりと狙いを定め、ふと思った。

 

「そういや俺、あいつのプライベートってほとんど知らなかったわ」

 

 まぁどうでもいいことか、と彼は引き金を引く。

 それはちょうどオルクス大迷宮最下層にて彼女が不様を晒している瞬間であった。 

 

-------------------------

 

 

 

 

「クルゥアン!」

 

「ン!」

 

 赤い頭の大蛇が炎を吐く。それをローリング回避する私。

 

 戦いが始まって数分は経ったことで大体相手の行動パターンが読めてきた。

 赤い頭が炎系、緑頭が風系、青が氷系の魔法攻撃担当。

 黄色が盾役で白が回復系、黒は……なんか必死にやってるけど私には何の異常も出てないが多分デバフ系。

 一度黄色頭を潰してみたけどすぐに回復される。だからまずは白から潰す必要があるけど、……ここにきて私の最大の弱点が露呈することになった。

 そう、射程距離(リーチ)のなさである。私の主武器って拳だし致し方ないね。

 だから白頭を潰そうと近づくと、こう、露骨に白が逃げ出すのである。追いかけようとすれば他の頭が必死になって攻撃してきて近づけない。

 多分、一撃目であちらも理解したんだと思う。私の攻撃は一撃でも喰らうとそれで終わると。

 たがら回復役を必要以上に遠ざけるし、回復役は全力で他の頭を支援する。

 

 いやぁ、まさかまさかですよ奥さん。そう言えばちゃんとした戦いって初めてだからすっかり失念してたわ。

 上層にいたときはナイフか何か持ってた気がするけど、服と一緒に無くしちゃったし。これは少しばかり面倒かもしれない。

 

 まぁ、それはあちらも似たようなことを考えてると思うけど。

 

 まずあちらの攻撃だけど、実はあまり効いてない。

 氷魔法は殴って壊せるし、風魔法はかすり傷程度、炎系に至ってはちょっと熱いくらいにしか感じない。どうなってんのこの体。

 

 と言うわけで、攻撃は当たらないけどこちらも効かないというちょっとした膠着状態に陥りまして、どうしようか考え中なのである。

 

 何かこう武器はないものか、できれば遠距離系の【ゴトッ】そうそうこんな感じの……はい!?

 

 妙な重みを感じて右手を見れば、そこにはB★SRでお馴染みの機関砲【★Rock Cannon】がそこに握らされていた。

 

 え、誰!? 誰よこんなもの持ってきたの。今ここにいるのは私と大蛇だけだよね!?

 

 辺りを見渡すが、もちろん他に人はいない。

 

「クルゥァァァァ!!」

 

 飛んでくる氷を★Rock Cannonで撃ち落とす。

 初めて使ったけれど、まるで長年使用した相棒のように手に馴染む。

 

 ……そっか、考えてみれば当たり前なことだった。

 今の私はB(・)★(・)R(・)S(・)で(・)あ(・)り(・)南(・)方(・)棲(・)艦(・)で(・)あ(・)り(・)時(・)崎(・)狂(・)三(・)で(・)あ(・)り(・)五(・)河(・)琴(・)里(・)で(・)あ(・)り(・)ニ(・)ン(・)フ(・)で(・)あ(・)り(・)初(・)音(・)ミ(・)ク(・)な(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)★Rock Cannonくらい使えるし、持っていて当然なのだ。

 

 ならばと思い、空いた左手にとある武器が握られてる様を強く念じてみると、私の想像通りの物がそこに握られていた。

 瑞々しくきらびやかなその刀身、白雪のように輝く白と生命力に溢れる緑を併せ持った美しいそれは見るものすべてを驚愕させることだろう。

 その名も【真打・ネギ雪】、見た目はほぼほぼただのネギなのに日本刀扱いというとんでも武器である。

 

 私はそれ黄色頭に向けて、全力で投擲した。

 

「クルゥァ!?」

 

 私の全力に刀の切れ味が加わったその一撃を耐えきれるはずもなく、黄色頭の頭蓋を貫通し、背後の壁へと轟音をたててめり込んだ。

 白頭が慌てて回復しようとするが、それ私も予想通り。

 魔法攻撃をかわしつつ、回復に取り掛かったその瞬間に★Rock Cannonの弾丸を白頭に叩き込む。

 一撃目で頭蓋を砕き、二撃目で残った頭部を粉砕し、三撃目で再生しかけていた黄色頭を再び破壊した。

 

「キヒヒヒ♪」

 

 これで盾と回復は潰した。あとは残る頭はあと四つ。

 さぁ、もうちょっと付き合ってもらうよ大蛇さん。まだまだ試運転し足りないからね。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 やービビった、超ビビった。まさか七つ目の頭があるとはこのみくちゃんの目を持ってしても見ぬけんなんだわ。

 幸い、残った胴体を処分しようと大技使うところだったからそのまま一緒に巻き込んじゃったけどさ、後ろ向いてたら危なかったかもね。

 処分しきれなかった残骸は纏めて柱の側に埋めました。【大蛇さんここに眠る】ってトータスの文字で刻んでおいたから満足してくれるはず。

 

 さーて! でわでわ邪魔も入りましたが、早速扉へ入りましょう! 開けゴマー、…………ほう。

 

 扉を開けた先はまさに楽園だった。

 眩い太陽、掃除の行き届いた石畳、澄んだ水が流れる水道に、奥にはよく手入れされた畑も見える。

 今までの迷宮と違い人が住む為に整えられた空間。これを見て私は確信した、ここがゴールであると。

 念のために空中に待機させていた艦載機たちを帽子の中にしまう。これはヲ級の力、発着陸の時帽子の口が、こう、グワッて開くのが少し怖いけど成れると便利だと思う。

 

 まぁそんなことはさておき、ちゃっちゃと探索してしまおう。ダンジョンのゴールには宝か付き物だし、いいのあるかな~。

 

 

 

 いきなり魔法陣を発見した件。

 誰か暮らしていた痕跡はあるものの、人気はない。

 これ見よがしに椅子が置いてあったけど、何もない。

 畑とかあったけれど、普通の畑っぽい。

 となれば、魔法陣には何かの仕掛けがしてある、と思う。

 

「……」

 

 ちょっと悩んで、魔法陣にのる。

 魔法陣が光るとズキリと軽い頭痛がして、何かが脳内を探るような嫌な感覚が走る。

 光が収まり、再び正常な視界へ戻るとそこにはそこにいる骸骨と同じ服を身に付けた青年がそこにいた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 知らない。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい」

 

 ここから先が長かった。

 要約すると、

 1、この世界の神は狂ってるよ。

 2、私たちは戦ったが負けた、だから残った七人で迷宮を造り、後の世代に託すことにしたよ。

 3、この力をどうするかは自由、できれば悪いことに使わないでね。

 

 といった感じ。メッセージが終われば再び頭痛。そして【生成魔法】なる神代魔法とその使い方が脳に直接インプットされた。

 

 ……どうしたものか。

 一応この世界に連れてきた神に対する怒りがないわけじゃない。だからと言ってこの人たちの遺志を継ぐべきなのか否か、よくわからない。

 関係ないものと割り切ってしまえば楽だけど、多分そんなに時間的猶予はない。

 話通りあの神が狂っているのなら、漫画に出てくる狂人どもがどうするか考えたなら、嫌な可能性が次々と浮かんでくる。

 クラスメイト同士で殺し会わせたり、更に地球から誘拐してきたり、最悪地球が狙われるかもしれない。

 

 あーあーもう仕方ないなぁ! 面倒だけどやってやるか! やればいいんでしょ神殺し!! やってやんよこの野郎!!!

 

 

「…………フム」

 

 

 とりあず姿見の前で衣装合わせする私。適当に霊力で目立たない服を作り、それの着心地を確認する。

 新しい服は必要ないようにも思えるけど、実際は超必要になる。

 何せ今の私は魔物すらも逃げ出すスーパークリーチャー、何かで隠さないと目と目が合ったら殺し合い、ってことになりかねない。

 なので出来る限り目立たない風貌にする必要がある。それを踏まえていろいろと試した結果。市傘女に落ち着いた。

 市傘女とは平安時代くらいから現れた衣装の一つで、頭にかぶる大きな傘の周りに顔を隠すように薄い布を張り巡らせた物であり、当時の旅の女性がよく利用したらしい。

 これなら顔も隠せるし遠目から見ればただの人間に見える、はず。

 翼はジャミングで隠せるし、戦闘服は霊力で編み直せるから特に不便はない。

 

 

 

 さて、新衣装も手にいれたし、新たな目的もできた。ならば次はここを脱出するのみ。(資料室とかは開かなかったし、壊すのも何か気が引けたし)

 とりあえず壁に《私、参上!》と落書きをして、この空間を出る。

 大蛇さんと戦ったあの柱の間を通り抜け、私が落ちてきた穴の下に着く。

 

「ン」

 

 そして飛翔、そのまま五十階層程度上がる。エンジェロイドであり精霊である私にとって飛ぶことは手足を動かすのと同じくらいに容易にできている。

 次にニンフに搭載されている高性能レーダーで迷宮の構造を大まかに把握。

 最短ルートを高速移動して、私が落ちてきたであろう大きな縦穴へとたどり着く。

 一度深呼吸、そして再度飛翔。

 数分程度上昇したのかな、途中壁から湧き出ている水流や落石を避けたりしていると、ようやく天井が見えてきた。

 

「……!!」

 

 その階層に到着すると見覚えのある壊れかけの橋があった。

 着地し辺りを見渡して、確信する。

 

「ツイタ!」

 

 ここは私が落ちた場所だと。

 

 いやー、長かったわ~。ここに来るまでに何日かかっただろう? 攻略に三日くらい、帰りに四時間程度だからおおよそ四日くらいかな? まあ長かったな。

 さて、ここからどうする? 当然次の迷宮に行くわけだけれども、クラスメイトたちのことをほって置いていくのもな~。私は死んだことになってるだろうからそこはいいとしても、神関連の厄ネタをどう伝えたものか……。

 いや、それは止めた方がいいか? あの王国には狂信者がいるし、どこに神の目があるかわからないし、南雲や白崎あたりならともかくあのアホが暴走しかねない。

 

 結論、監視はするが私が生きてることは伏せる方針で。

 

 ……え? 迷宮攻略はどうするのかって? ふふふ、そこは私に考えがあるだよワトソン君。

 という訳でさっさと迷宮の出口へGO。

 

 

 

 

 着きました。途中冒険者に絡まれたり怯えられたりしたけど丸々カット、だって意味ないし。

 そんで追っ手を振り切り、どことも知れない森の中、私は二丁の古式銃を携えて立ち尽くす。

 誰にも見られることがないここなら存分に力を使える、そう思ってみたけれどやはりこればかりは少し緊張する。

 死なないとは解っているけれど、他人から見れば自殺と変わらないのだから当たり前だ。

 二丁の古銃、短銃と歩兵銃の内短銃の方をこめかみに当て、息を整える。

 

「……【八の弾】(ヘット)」

 

 力を込め、引き金を引く。

 軽い衝撃、しかし痛みは無く、最後には何かが自分から抜け落ちるような妙な感覚と何かが地面に落ちる音だけが残った。

 ゆっくりとそちらを見れば、もう一人の私がそこに倒れていた。

 

「ノ」

 

「……ノ」

 

 倒れていた私に手を差し伸べ、それを受け取る私。

 ……ややっこしいな、もう分身体でいいや。

 

 種を明かせば単純な話で、これは時崎狂三の力の一つ、刻々帝(ザフキエル)第八の能力、ヘット。

 それは消費した自身の時間(寿命)に応じて自身よりも一段階スペックダウンした分身体を作り出すこと。

 今から彼女がクラスメイトたちを見守ってくれる。

 

「【八の弾】(ヘット)」

 

 念のためにもう三体分身を作っておく。

 とりあえず一人一年分の寿命を使ったので道中魔物とかから回収しないと。

 

「ン!」

 

「「「ン!」」」

 

 私たちに別れを告げ、私はとりあえず近場の大迷宮、【ライセン大峡谷】へと向かうことにした。

 

 

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