私が凪であること   作:キルメド

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凪の部隊に対DNMIC調査協力要請を断られたフジタだったが、彼女からすればそれは想定内のことだった。山風部隊にそれを伝えたら彼女の仕事が始まる。単独でDNMICの偵察及び調査に赴いた。
一方……凪の部隊に所属する飛粋は協力を拒否したことに納得が出来ず、こちらも単独で動こうとしていた。


第二話:彼女のやり方

「では行ってきます」

山風部隊の部署を出た彼女の姿が見えなくなってからやっと緊張が解けた。誰かが長く息を吐くと誰かの肩の力が一気に抜ける。

「スパイってのがここまでとは。入ってくる情報量もそうだが、観察眼やそんな懐まで入り込める潜入力には恐れ入る」

「もしかしたら何か弱み握られてたりしないかな?」

部屋の中はフジタの話題で持ちきりだった。警視庁上層部全体で動き回る女スパイ、その目が何を見ているのか分かるはずもない。

「そういえばお前この間二股かけてたよな」

「この間ってつい最近みたいなこと言うな!4ヶ月も前だよ!それに二人とも別れたし!」

しかし山風にはその緊張感の中でもブレない人間はいる。仁木が氷村を揶揄うと途端に場の空気が和み出した。大柄な氷村が立ち上がると自然と冷や汗まみれの顔が部屋全体からよく見える。

「ほどほどにしておきなさいよ。何せ最初は部隊内恋愛だってさせようとしたんだから」

「いやアレはここに来たばっかりで……って照見さんはなにしれっと暴露してるんですか!」

「あらあら、いきなりナンパしてきたのはそっちでしょ?」

「えホントに?氷村さんって私にもナンパして来ましたよ」

「あぁ、それは!」

女性隊員の照見と詩宮が過去を暴露すると次々に他の隊員からも氷村の恥ずかしい暴露話が飛んでくる。その全ての真偽を知っているのは当事者の氷村のみだろう。

「おいお前ら。いい加減にしろ!スパイが出てったと思い込んでんじゃねえ!壁に耳あり障子に目ありだ!」

唐突に怒鳴り声が響く。参謀役の呉田はスパイであるフジタがいた時と全く変わらぬ緊張感を持った眼をこちらに向ける。思わず全員顔を逸らした。

「まぁそれだけスパイの力量が知らないってことだ。呉田、肩の力を入れすぎるなよ」

「……隊長も緩めすぎないように」

そんな呉田のことを宥めたのは山風部隊の隊長の金眼だった。呉田も彼には大して言い返すことなく一歩下がる。すると一気に部屋の中の緊張が解けていった。ようやく一息つける、と誰かが言った気がした。

「緩めきった覚えはないさ」

全体を見渡す金眼の余裕が広がっていたのかもしれない。

 

作戦会議の翌日、放課後に飛粋は繁華街に寄っていた。する必要はないと言われたがつい意識して歩みを向けてしまった。

「なぁ飛粋〜。なんでわざわざそんなことすんのさぁ。遊ぼうぜ〜」

「そうしたいけど気になるし。やっぱ女子高生として買ってみるってのもありじゃないかなって思って」

特に予定がなく付いてきたゆらはブーブー文句を垂れている。繁華街はまだ人足が少ない方ではあるが制服を着た若者達が大勢いる。

「とりあえず行ってみよう。やっぱりこういう時は行動してみなくちゃ」

「不動なのにか?」

「そこは違うの!行くよゆらちゃん!」

グイグイとゆらの手を引きながら繁華街を行く。すると街中でも一際洒落た化粧品店が現れた。濃いめの赤色が目を引き、ガラス張りの店内にはたくさんの香水や口紅などのメイク用品が並んでいる。

「ここならあるかな?入ってみよう」

自動ドアの前に立ち、開くと同時にカッターシャツの女性が向こうから出てきた。ハンチング帽を被り両手にはこの店のロゴマークが入った小さな袋が一つずつ。

それを避けようと横にズレた時、ゆらは違和感を覚えた。

「なぁ今の客。香水の匂いしなかったぜ。それにあの後ろ髪」

深く被ったハンチング帽からは僅かに赤い髪が見える。その鮮烈な色を忘れるわけがない。

「ちょっと行ってくる!飛粋は店入ってろ」

「ええ!ちょっとゆらちゃん!」

飛粋の手を振り解くとその女性を追跡しに向かう。開きっぱなしの自動ドアの向こうからはアロマや香水の心地よい香りが流れてくる。しかしゆらが追って行った方も気になる。

「んん、待ってよゆらちゃーん!」

結局飛粋は踵を返し、ゆらの後を追うのだった。

 

繁華街を出て広い公園に入った。ちょうど小学生達がドッジボールに夢中だ。ボールを当てられた子供が悔しそうに外野へ回ると内野にボールを回せと叫び、そうはさせないと背の高い子供がその前に立ちはだかる。

「ドッジボール、やったことありますか?乱獅子さん」

「やっぱ気付いてたのか」

「わたくしもスパイですから」

ハンチング帽を取ったフジタはウインクをする。裸眼の状態ということもあり、目が大きく見えて少し顔が幼く見える。

「やったことねえなぁ。大八洲の中で育てられたアタシ様にはああいう遊びとは無縁さ。なぁ、飛粋ならやったことあるか?」

「……やっぱりバレてた?」

「アタシ様もスパイだからな」

ゆらを追いかけるつもりが雰囲気でついいつもの癖で追跡をしてしまったが、2人にはあっさりバレてしまった。大人しく近づくと、ちょうど向こうではまた1人子供がボールを当てられて外野へと送られた。

「私もないんだ。ずっと山の中にいたから大人数と遊ぶことなくって。黒百合のみんなはお嬢様が多いからドッジボールはやらないし」

飛粋もゆらも育った環境が特異だったため一般的な球技にはあまり縁がない。そしてそれはフジタも同じであった。

「わたくしもやったことが無いんですよ。子供の頃から目が弱くて」

「へ〜、それであんな度の強い眼鏡を」

「あれ?じゃあ今は見えてるんですか?コンタクト?」

今のフジタは眼鏡をかけていない。しかしコンタクトレンズを付けているかという問いに首を振った。裸眼の状態でも彼女は何不自由なく立ち振る舞っている。

「心配いりません。日常生活をこなす分には問題ありませんから。それに貴女達の事はすれ違った時に見えましたし、後は雰囲気で大体なんとかなります」

「なんかマメな性格かと思ったら結構適当だな」

「情報は正確でないといけませんが、わたくしの事は別にどうでもいいんですよ。ただ己を包み隠す嘘にほんの少しの真実さえあれば他は必要ない。スパイとしての教えです」

少し童顔なフジタはミステリアスに微笑む。ゆらと飛粋はスパイの先輩とも言える彼女の言葉に感心する。

「その教えというのは誰から教わったんですか?」

「それは秘密です。津守さんなら少しは知っているので機嫌のいい時に聞くことをお勧めします」

「ばあさんって機嫌良くてもそういうの話してくれないんだよなぁ」

津守ヨモギとはそれだけの仲だと言う。警視庁上層部ではあまり好かれていないフジタだが、ヨモギの反応は悪いものではなかった。

「それじゃあ、なんでスパイなったのかとかは?」

流暢に返答してきたフジタだったが、その言葉には沈黙が返ってきた。小首を傾げる飛粋だったがゆらは納得するかの様にうんうんと頷く。

あくまで仲良くしようとしてフジタの事を知りたい飛粋だったが、相手はただ一回共同で任務を行うことになった相手でしかない。

「それは津守さんも知らないことですね」

「なら是非教えてください!私のことも話しますから!」

ここぞとばかりにズイズイと距離を詰める飛粋。しかし人付き合いが少なかった飛粋は人との距離感を物理的に間違える。鍛えられたスピードで一歩前まで詰める。顔の距離に至っては1cmもない。

「綺麗な顔をしてるんですね。やっとその顔をちゃんと見ることができたよ」

「あ、ありがとうございます!フジタさんもとっても素敵ですよ」

「おお、飛粋のこれをされても動じてねぇ!すげえ!」

フジタの目ではしっかりと物が見えるのはどうしてもこの距離になってしまう。むしろ初めて見えた飛粋の顔を見て喜んでいるくらいだ。

「わたくしの事が知りたいというのは分かりました。しかし、ここは互いに必要以上に近づかないのが上手な付き合い方かと」

飛粋はまだスパイに成り立てということもあり、まだスパイ同士の距離感というものもよく分かっていない。ましてや凪の部隊以外に対してはなおさらだ。

「そうだぜ飛粋。仲良くなるのはまずは凪の部隊からな」

「え〜」

飛粋の興味は断然他のスパイの事にあった。そのやり取りを見てフジタは笑う。そのスパイ然としない彼女に呆れるはずが何故か微笑ましかった。

「宗近さんの周りには色んな人がいます。その人達からいっぱい勉強してください。わたくしはこっちの方で忙しいので」

一歩後ろに下がると両手に持った化粧品店の袋を見せる。中にあるのはおそらくDNMICの化粧品だろう。

「あ、そうだった!私達も協力します!やっぱこういうのって多い方がいいですよね?」

「いいえ、これは"わたくしの"仕事ですから」

多くを語らないフジタだがゆらは大体のことを理解する。凪の部隊でスパイとして動く様になってまだ長い月日が経ったわけではないが、ゆらには大八洲にいた頃の経験がある。どの部隊にいてもどの様な職であっても変わらない裏社会で生きる条件の知識もある。

「そういうことか。飛粋、やっぱりやめとくのが正解だわ。ほらほら遊びに行くぞー!」

「ちょっとゆらちゃん引っ張らないで!まだフジタさんとお話ししたいし、それに調査だって!」

「バーカ!んなことして困るのはあいつの方だ!ここは大人しくしてるんだよ!」

今度はゆらが飛粋の腕を引っ張る。振りほどかれると更に首根っこを掴み無理やりにでもその場を離れる。飛粋が最後に見たのはその様子を見てまた笑っているフジタの姿だった。

 

結局繁華街の方まで戻ってくる羽目になった。先ほどと真逆の状態から解放されると開口一番ゆらに文句を言う。普段はゆらの方が文句を言う機会が多いが、今回はとことんなまで逆だ。

「な〜ん〜で〜!せっかくフジタさんと色々お話しできてしかもお手伝いもできるチャンスだったのに」

「だからそれをしたらあいつが困るんだって言ってるじゃないか!」

向き合ったゆらの表情はいつになく真剣だったが、飛粋にはそれよりもフジタの方が重要なのだ。

「だってだって!他のスパイの人の事何も知らないし!勉強するならあっちの方が先輩だし」

その反応にはゆらのため息が返答となった。スパイという物を完全に理解していない飛粋にはまだ到達しない見解なのだろう。

「お主ら何を街中で騒いでおるのだ」

そこに偶然にもしぶきと葉栖美が居合わせた。二人の両手には大きな袋があり中身もぎっしりと詰まっている。

「あ、先輩!それって」

一瞬飛粋は化粧品を期待したが、緑色のロゴマークがその期待に応えてくれない。

「んんん?これは今晩の材料だよ」

「あ、そうですか」

肩を落とす飛粋を見て大体の状況を察する。彼女の甘さと考え方違いは二人ともよくわかっている。

「飛粋ちゃあん、さては勝手に調査しようとしたでしょ〜」

図星だった飛粋はとりあえず笑みを見せて誤魔化す。ゆらが呆れながら腕を伸ばして飛粋の頭をチョップし自然と下に向いてしまう。

「あいたっ!なんでぇ〜」

「あのな飛粋、よくよく思い返してみろって。あのフジタって女が最後に言った言葉を」

それは飛粋がやる気に満ちた声で手伝うと言っていた時の事。対照的に落ち着いた声色のフジタはなんと言ったか。

「これは"わたくしの"仕事ですからって」

「なるほど。ヨモギさんが通達されたのは山風部隊が調査とバックアップ、凪の部隊は潜入と無力化」

「ああ、だったら尚更余計なことはできないなぁ」

その一言はフジタの現状を表す言葉なのだが、飛粋はそれを読み取るのに時間がかかった。

「わたくしの?あれ?わたくし達じゃなくて?」

「大方、山風部隊にそういった事に適した者がおらんのじゃろう。じゃから諜報は一人でやっている。あるいは一人でやらされているか。そもそもあの時すんなりと凪が調査を拒否した事を受け入れたのも怪しかったわけだがな」

今彼女がいる所がどういう部隊かは把握していないが、もともと諜報をする者は警視庁内でも多くない。単なる調査程度ならまだしもそれ以上のことをできる者は限られてしまう。

「だったら私たちも協力しましょうよ!」

「だからそれをしたら困るのはあいつだって言ってるじゃねえか!」

飛粋は単純にフジタを助けたい思いだった。確かにそうすれば情報収集のスピードも規模もアップする。しかしそれは結果的にフジタを苦しめることになる。

「ゆらが正しい。飛粋の行動はあの女の信用を損なうことになる」

フジタからすれば諜報活動は信用を売るチャンスでもある。ただ部隊や所属を転々としているだけではいずれいられなくなる。だからこそこの世界で生き続けるために信用を得なければならないのだ。

「フジタって人はやりやすいって言ってたんでしょ?きっとこのやり方で生きてきたんだよ、スパイとしてね。だから私達は余計なことせずに待ってりゃいいのよ。果報は寝て待てってね」

葉栖美がまるで子供にするように飛粋の頭をぽんぽんと叩く。そして不機嫌に頬を膨らませる彼女を見てゆらにサインを送る。

(なんか面白い話題ちょうだい!)

(なんでアタシ様が気を遣わなくたないけないんだよ!)

(飛粋と一番仲がいいのはお前じゃ!なんとかせい!)

言葉に出さずに交信をする3人。ゆらはなんとか話題を絞り出す。

「あ!そうだ!しぶきち!今回の任務終わったらドッジボールやろうぜ!打ち上げ代わりにこうスカーっとする感じの!」

先ほど見ていたため口から出た。もっともやってみたいと思ったのは事実ではあるのだが。

「4人だけでドッジボールか?」

「じゃあ任務に参加した人も入れてやりましょう!私ドッジボールやったことなかったんです!」

「うおお、急に元気になった」

飛粋が話に食いついてきたので目論見としては成功だろうか。

「まぁ体を動かすことに悪いことはないじゃろう。ヨモギさんもきっと了承してくれるか」

「やった!みんなとドッジボール!」

「任務が先じゃ!!」

喜ぶ飛粋をしぶきが抑える。まるで親子のようなその光景はきっと他のスパイ達では中々見られることがないだろう。

「それにしてもなんでドッジボールなんて思いついたの?」

「ああ、さっき公園でやってる所見たんだよ。実はアタシ様も飛粋もやったことないって話になってさ」

飛粋とゆらの育った環境を知っている2人は納得して頷く。ならばそれに付き合ってやるのも仲間として必要なことだろう。

「それにほら、アタシ様達が普段やってるのもドッジボールみたいなもんじゃん?当たったらダメってとことか」

「はっはっは!あんためちゃくちゃ当たってるけどね」

「アレはほら、当たっても痛いだけだしその分相手倒したり情報取ったりしてるし、外野から当てて復帰してるようなもんだ!」

「そうはならんじゃろ」

「なっとる!やろがい!」

3人のコントのような空気で場が和む。とりあえず飛粋の機嫌も上向きになり、なんとかなったように見える。

(そうだよね。当たっちゃダメなのが私達だもん。ゆらちゃんだって本当は当たっちゃダメなはず)

表向きはそうだった。飛粋も悟られまいと燻っていたその思いを隠したのだった。

 

「はい。これが今日の分です」

本部に帰還したフジタは襟元に付けられたボタン大の機械を外しデスクに置いた。それはスパイ活動においては珍しい物かもしれない。

「ブツの解析は明日には出るだろう。その時までしばらく休んでいろ」

「いえいえ、もう少し調べなければならない事があるので資料漁りに専念させていただきます。一応別のを付けておきましょうか?」

「同じ物を使っておけ。あと好きにしていいが勝手はするな」

山風部隊隊長の金眼がデスクに置かれたそれを渡す。それは発信機。襟の裏に隠れ、見られたとしても飾りとして誤魔化せるようなものだった。

「了解しました。何か必要なことがあればいつでも連絡をしてください。どんな場所へも行きますよ」

フジタは営業スマイルを見せびらかしながら発信機を取り付ける。彼女は山風にいる間、1日交換毎に或いは外出毎に発信機を付け替えている。発信機の機能テストと共に彼女が監視下にあるという証明でもあった。

「毎回それだな。どの部署にもどの部隊にもそう言ってるんだろう?どの部隊にもへーこらして得られる情報の蜜はさぞ甘いんだろうな」

突っかかってきたのは呉田だった。隊の参謀役でありスパイに対してキツい視線を向ける。たかが下働きのスパイが隊長に何事もなく近付き調達した情報を与えると同時に、こちらの情報を全て奪われているような気さえした。

「どの部隊にもへーこらしてますが、わたくしはそんな甘美なんて求めてません。ただ仕事をやらせていただけるなら、それでいいです」

彼女がこの警視庁上層部て生きるために必要なのは情報でもなければ権力でもない。実績と信用だった。

「わたくしがやっているのはドッジボールに例えるとよく分かると思いますよ」

「ドッジボール?当たれば負けって意味か。だがこの世界に外野なんてないぞ」

「いえいえ、わたくしが言っているのはオフェンスの方ですよ」

呉田がイメージしたのは、投げられたボールをキャッチするか避けるかしなければならないディフェンスだった。しかしフジタが例えにしたのはオフェンスの方だ。

「わたくしにどれだけ仕事という名のボールを集めてくれるか、それを如何に有効的に使うかですよ。本来なら部隊が請け負うことのない諜報をわたくしが行い、それがどれだけ部隊の役に立つかを証明する。そしてわたくしが信用されれば、貴方達の役に立つようにとボールを回していただける。あとは逃げに徹しつつ立ち回るだけ」

ドッジボールでのオフェンスにもいくつかやり方がある。ただ内野にボールをぶつけて減らすのではなく、外野にボールを送り外野を復活させることも可能。また外野にボールの投げ方もいくつかあり、状況によって使い分ける。それが上手いと分かれば、いずれまたフジタにボールは渡される。

ボールと例えられた諜報や内部工作の任務を成功させればそれだけ彼女の腕とスパイの有用性が証明される。そうなればスパイ四人組の凪の部隊の価値も変動する。

「ならここまで近づく必要もないだろう?スパイとしての実力を発揮するなら一時的に所属せず情報だけ上に渡してそこから流した方が、報酬やら良くなるだろうし」

「そこはほら、正体を明かした方が信頼されやすいかなって。我々は味方同士ですからね。それに顔を売っておけば別の任務で偶々潜入先に突入したら敵と勘違いされたなんて事は避けられますし」

正体不明の何者かよりもそこにいる者として認識された方が確かに信頼や信用を得るだろう。何より安心感が違う。

「味方か。なるほどそういう考え方か」

金眼は納得した。それでも懐疑的な物は残る。フジタもそれを分かった上で発信機を自ら付けている。

「ではわたくしはこれで。呉田さんもお疲れ様です」

通り過ぎる先にいた呉田に近付き、彼の方に近かった左手を上げる。すると呉田は距離をとった。強い警戒心の現れだ。

「ビビりすぎじゃないか?」

「……所詮は他所にいたスパイです」

「そうだな。凪の部隊にも言えることだ」

ヨモギも元は別の場所からやってきたスパイ。現在は警視庁に入り少数精鋭のスパイ部隊として凪の部隊を結成した。

「日本には警察と協力してスパイ活動をしている団体があり、それが警視庁の下にできた。一部の奴らはそれだけだと言いますが」

呉田はスパイに対して異様に警戒している。彼のその姿勢は警戒しすぎる事はないと肯定する人間もいる。

「まぁ役に立つなら信じるだけの話さ」

金眼は改めてフジタが仕入れてきた情報に目を通す。その彼女の実績が後々に山風部隊と凪の部隊を助けると信じて。




フジタが例えに出した言葉はチームプレイでの役割と信頼性を表しています。彼女からすれば命令されなければ全ての行動は越権行為とみなされます。そのためにも信用を得る必要があります。
上層部を飛び回る彼女のやり方、それはどこにも属さないという特異な状況でも仲間を作ることにかかっている。ある意味で志を同じとすれば所属は壁ですらなくなるという心理の元に動いている。

そんなフジタは更に多くの情報を集め続ける。彼女が見た真実とは……

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