Take me to・・・ 作:ENDLICHERI
第1話 OVERTURE
暗闇の中、灯りは街を照らす。だが、その景色は真っ白な世界だった。だが、1ヶ所だけ、白以外の彩りがその街にはあった。
「・・・・・・ん?おねえちゃん?」
「おはよう。よるだけどね。」
まだ幼い少年と少女が、背丈にあった荷物でいっぱいのカバンを背負って、手には背丈に似合わない大きなケースを持っていた。
「あるける?」
「・・・・・・うん。はやくいかないと、だよね?」
「うん・・・。じゃあ、いこ。」
少女の言葉で少年はカバンを背負い、ケースを持って歩き出した。少女もカバンを既に背負っていて、少年と同じケースを持って歩き出した。
まだ10歳にも満たないであろう子供が、雪が降り続ける夜の街を・・・・・・。
少年と少女はひたすら歩いていた。でも、2人はまだ10歳にもなっていない。もちろん、何も食べていなければ空腹にもなる。
「はい、ごはんだよ。」
「ありがとう、おねえちゃん。」
少年は少女から1つのおにぎりを貰う。それは、コンビニのおにぎりなのだが。
「・・・・・・おねえちゃんはたべないの?」
「おねえちゃんはだいじょうぶ!」
でも、少年は知っていた。自分がご飯を食べている間、少女は何も食べていなかったことを。それも、来る日来る日も・・・・・・。
「・・・・・・はい。」
「?・・・・・・ダメだよ、ちゃんとたべないと。」
「おねえちゃんもでしょ?それに、1りでたべててもおいしくないもん・・・。」
「・・・・・・わかった。これからは、いっしょにたべるね。」
「うん!」
2人は1つのおにぎりを半分こにして、仲良く食べていた。
2人が目的地まで歩いている時にあった出来事だ。とある商店街を通っていた時、少年の目にあるものが飛び込んできた。
「うわぁ~!」
「?・・・・・・どうしたの?」
「おねえちゃん!あれみて!」
少女が見た先には家電屋のテレビだった。2人はテレビを見ることは何日ぶりだろうか。でも、2人が釘付けだったのはテレビに映っているアーティストだった。
2人のアーティストがアコースティックギターを弾きながら歌っていた。
「ぼくもできるかな~?」
「・・・・・・いっしょにれんしゅうする?」
「・・・・・・うん!」
それから、2人は目的地まで歩きつつ、休憩がてらにずっと持っているケースからアコースティックギターを取り出し、『テレビで見たアーティストみたいに弾きたい』と思い、練習をしていた。
あれから数日が経ち、2人はとある公園で休憩を取っていた。休憩するスペースを確保したと同時にギターを取り出し練習し始めた。幸い、あの時テレビで見たアーティストの楽譜が1冊とギターの教本が1冊、ゴミステーションに捨てられていたため、こっそり持ち去り、それを見て練習していた。
「・・・・・・できた!」
「あたしも!」
「じゃあさ、いっしょにひかない?」
「あたし、1ばんまでならうたえるから、1ばんまででいい?」
「ふっふ~ん!じつは、ぼくもうたえるんだ!」
そうして、歌うパートと弾くパートを決めて、2人による2人だけのライブが始まった。
「しんぱいしょうすぎなあなたは~~~♪」
お客さんは誰もいない。でも、少年は少女に、少女は少年に、自分の練習の成果を見せるために演奏する。
「あなたとおなじこうすいを~~~♪」
2人の顔には笑顔が溢れる。
そんな光景を1人の女性が見て、興味を持ち近くに向かう。
「「おもいきりだきよせられるとこころ~~~♪」
2人は演奏に集中し過ぎて、その女性のことを気にしてなかった。
「「クリスマスなんていらないくらいひびがあいのかたまり~~~♪」」
そして、演奏が終わる。2人は顔を見つめ合わせ、笑い出す。
「アハハ・・・!ぼくなんかしょかまちがえちゃった!」
「あたしも!たのしくなっちゃって・・・!」
\パチパチパチパチ/
「「ん?・・・・・・わっ!?」」
聞こえてきた拍手の音で通りすがりの女性に気付いた。
「あなたたち、良い演奏だったわよ!」
「あ、ありがとうございます・・・。」
2人に緊張感が走る。2人は見ず知らずの大人をあまり信用出来ずにいた。
「?・・・・・・そんなに緊張しなくていいよ。お姉さん、感動しちゃった。」
その女性は、さらに言葉を続ける。
「最近ね、嫌なことが沢山あって、悲しい曲くらいしか聞いてなかったの。でも、あなたたちの演奏を聞いて、『音楽ってやっぱりいいな』って思ったの!悲しい曲ならそのまま悲しくなるし、明るい曲なら気持ちまで明るくなる。あなたたちみたいに音楽を楽しんで楽器を演奏して歌っているのを見ると、周りの人たちも楽しくなる。」
2人からすれば、詳しくは分からないけど、なんとなくこの女性が言ってることを理解していた。
「2人は路上ライブは初めて?」
「「・・・?」」
「あら、『路上ライブ』も知らないんだ。」
女性はカバンから何かを取り出しつつ、会話を始める。
「『路上ライブ』ってね、道路や公園とかの外で音楽を演奏することよ。そして、お客さんが来て、『この人の演奏は良かった!』って思われると、こうやって・・・・・・」
女性が取り出したのは財布だった。そして、そこから千円札を取り出し、
「お金をもらえるの。」
「え!?」
「だ、ダメです!おかねはもらえません!!」
2人は驚いてしまった。少年は驚きの声をあげてから黙ってしまい、少女はそのお金は受け取ろうとしなかった。
「おかねはせいかつのなかでたいせつなものです!!そんなたいせつなもの、もらえません!!」
「・・・・・・はっ!うんうん!!」
2人は知っていた。何日も外で、しかも限られたお金で生活してきたから。働かないとお金は手に入らないことも知った2人にとって、今回の演奏は『路上ライブ』ではなく、ただの練習だった。だから、幼いながらにも『自分たちは働いていないからお金はもらえない』と考えていた。
「ふふっ、2人ともお姉さんより大人かもね。」
女性は少し考えて、
「じゃあ、お姉さんに音楽の素晴らしさを改めて教えてくれたお礼として、受け取って。」
「で、でも・・・・・・。」
「いいから!・・・・・・それに、2人も何かありそうだしね。」
「「・・・!?」」
「お金は少ないのは我慢してね。じゃあ、頑張ってね。」
女性はそれだけ言って、去っていった。
「・・・・・・わるい人だけじゃないんだね。」
「・・・・・・うん。これからも、ギターひく?」
「うん、みんなをえがおにできるなら!」
それから2人は、また目的地まで歩き出した。
でも、2人の行く先はとても険しく・・・・・・心を壊していくものだった・・・・・・。
このタイミングですが、初めまして!ENDLICHERIです!そうでない方はお久しぶりです。
この作品は、『双子の姉弟がバンドリキャラと触れて閉ざした心を開いていく』ってお話・・・・・・の予定です。・・・・・・アタシの作品をほとんど見たことある方、『どっかで見たことあるような設定』って思うだろうが、その辺は言わないで!!
今回の作品のタイトル『Take me to・・・』は『私を~~~へ連れてって』という意味です。このタイトルの意味は、いずれ分かります。
そして、第1話のタイトルの意味は・・・・・・知ってる方が多いと思いますが、ライブとかである『序曲』です。まぁ、『始まり』と解釈していただければと思います。
ってことで次回から本編です!!では、また次回!!