Take me to・・・ 作:ENDLICHERI
楽器店を出た僕たちは、意外と時間が経っていた事に気付き、今から昼食を取ることになった。場所は、フードコートだ。
「ちょうど良いタイミングで席が空いて良かったよ。」
「そうですね。」
「紗夜は何か食べたい物はある?良かったら買ってくるけど。」
「いえ!そんな事はさせれません!・・・・・・それぞれ別のタイミングで買いに行くのはどうでしょう?」
「・・・・・・仕方ない。それにするよ。」
「決定ですね。では、まずは映司さんから。」
「いやいや、そこはレディーファーストで紗夜から。」
順番を決めるのに、2分くらいかかったのは・・・・・・察して。
映司さんと氷川さんがフードコートで昼食を取っている時、わたしたちも少し離れた所で昼食を取っています。
「う~ん・・・。」
「紫音さん、どうかしたんですか?」
「映司君、ちょっと引き過ぎない?」
「・・・・・・確かに。アタシもそれは思った。」
「全て紗夜の行きたいところだものね。彼、自分の行きたいところが無いのかしら?」
わたしも、それは思いました。・・・・・・蒼空君も、そんな感じだったような・・・。
「ここは男子が引っ張っていかないと、女子はキュンとしないよ!ね、燐子?」
「え・・・・・・?」
今井さん・・・・・・何故こっちに答えを求めるんですか?
「確かに。ここは恋愛では先輩の燐子様に伺いましょう!」
紫音さんまで・・・・・・。
蒼空君、助けてーーー!!
昼食を終えた私たちは、今はショッピングモールを見て回っています。
「映司さん、どこか気になるところはありましたか?」
「う~ん・・・・・・これと言って、かなぁ。」
私もこういうのは初めてで、正直何をすれば良いのか分かりません。それでも、映司さんが先程から全く自分の意見を主張しないのです。
「・・・・・・紗夜、どこか行きたい場所はある?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・ん?紗夜?」
「すみませんが、映司さん。」
「はい・・・。」
「映司さんは自分の意見が無いのですか?」
私は彼の前に立ち、真っ直ぐに彼の目を見ました。
「・・・・・・無い、ことは無い。」
「でしたら、何故言わないのですか?」
「・・・・・・否定されるのが、怖いから・・・。」
「・・・っ!」
忘れていました。彼は、普通とは言えない生活を過ごしてきたことを。・・・・・・だから、他人に自分の意見が言えない。
「・・・・・・私が、映司さんの意見を否定すると思いますか?」
「っ・・・・・・。」
何も言わないってことは、その可能性が少しあるのかもしれませんね。
「私は、あなたの全てを否定しません。絶対に。」
私は彼の両頬に手を当て、
「だから、あなたのやりたい事を教えてください。ね?」
私の目を見るようにした。私は、彼を安心させるように、出来る限りの微笑みを見せました。
「・・・・・・分かった。ありがとう、紗夜。」
「いえ、それほどでも。」
彼が笑ってくれたのが嬉しくて、頬が緩んでしまった。
「それにしても、紗夜がここまで大胆だったとはね~。」
「・・・っ!こ、これは・・・・・・その・・・・・・忘れてください!!」
少しからかわれたのは、ちょっと悔しいと思いましたけど・・・・・・。
いかがでしたか?
今回は『心に』って意味ですが、紗夜が映司の心に・・・・・・って感じですよ。
では、また次回!