ちょっと大人なインフィニット・ストラトス   作:たんたんたんめん@オルコッ党員

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バトルってのは筆が乗るんですよ
でも剣一本で展開を考えるのはなかなか難しい


白と黒の激突

 放課後、アリーナでは黒と白が相対していた。

 白の方は、白式を纏った一夏。

 反対の黒の方は、ドイツ第三世代機『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏ったラウラだ。

 目を引くのは、右肩にマウントされた長大な砲。目に見えて強大な威力を誇るであろうその砲撃は、それだけで相手を威圧する迫力があった。

 

「さあ、好きな様にかかってこい」

 

 片手を持ち上げ、クイクイと手前に寄せるラウラ。

 先手を譲るという事か

 

「んじゃ遠慮なく……!」

 

 促された一夏が加速する。

 今回はお得意の瞬時加速(イグニッション・ブースト)は使っていない、通常の加速だ。

 それでも一ヶ月前より、遥かに動きは良くなっている。

 そう思ったのはラウラも同じだったのか、小さく「ほう」と息を漏らした。

 

 不思議な事に、ラウラは右肩のレールカノンで迎撃は行わなず、両手にプラズマ手刀を展開しそちらで迎撃を刷るつもりのようだ。

 自らの得物の間合いに飛び込んだ一夏は、勢いそのままに突きを放つ。

 切り上げや振り下ろし、横薙ぎの一撃は面で対応できるため比較的受け止めやすいが、点で対応せねばならない突きは回避が難しい。そこに付け込んだ一撃だ。

 

「甘いな」

 

 だが、ラウラは冷静だった。

 突き出された近接ブレードの側面にプラズマ手刀を差し出し、剣同士が触れた瞬間にスナップを利かし受け流す。

 放った突きを受け流された一夏はバランスを崩し、前のめりに体勢が崩れる。

 そこに、手ぶらだった片手のプラズマ手刀が煌めく。

 ここからでは、後退して避けることも、左右に避けることも、あるいは近接ブレードで受け止めることも不可能だ。

 それらを瞬時に判断した一夏は、前のめりに倒れかけている身体を立て直すような事はせず。そのまま地面にダイブする様にしてその一撃を躱す。

 

「ふっ!」

 

 地面に激突しそうになった一夏は、地面に手をつきそこを起点に、前転をしつつ踵落としの要領でラウラに蹴りを放つ。

 一夏の蹴りは苦もなく避けられるが、それでも距離は開き、結果的にはラウラの追撃を拒む形になった。

 

「成程、成程。今のを反応するか」

 

 距離をとったラウラは攻勢をかけるでもなく、ぶつぶつと呟く。

 その様子を怪訝に思った一夏だったが、こちらも今度は仕掛けるようなことはなく、正眼の構えをとり油断なくラウラを見定めていた。

 

「良いだろう。今度はこちらからだ」

 

 一夏の機体に射撃装備が無いのは知っていたのだろう。

 ラウラは瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使用し、瞬く間に距離を詰める。

 

「ちいっ!」

 

 振り下ろされたプラズマ手刀を弾くと、直様もう片方の手刀が襲ってくる。

 それらを弾きながら一夏は舌打ちを漏らす。

 双剣使いというところは、一見すると鈴と似た感じだが、その性質はまるで違う。

 勢い、という面では鈴の方が上だ。

 だが、鋭さという面ではラウラの方が上だった。

 鈴の場合は大剣を武器にしている為、速度はラウラと比べると遅いが、その代わり一撃の威力に優れる。反対にラウラは鈴の大剣に比べると威力は劣るが、ほぼほぼ手刀の延長という事もあって振るわれる速さはこちらの方が上だ。

 さらに得物が短いという事は、ラウラの間合いまで接近を許すとその速さと相まって捌くのに難儀する理由になっていた。

 

「懐に飛び込まれ、近接ブレードを満足に振るうスペースは無い。さて、この状況をどう打破する?」

 

 口調は穏やかだが、乱舞は穏やかではなかった。

 ブレード一本で対応するのは無理と判断した一夏は、右手のみで持つと、空いた左手でもプラズマ手刀の対応をする事にした。

 手刀本体を叩くと、ダメージを受けるるため、触れるのは腕本体だ。

 

「良いぞ。その対応は正しい」

 

 だが、とラウラは更に間合いを詰め、頭突きを放つ。

 

「うおっ!?」

 

 うめき声を上げながらもとっさに頭を仰け反らせた一夏だったが、ラウラの方が僅かに早かった。

 控えめに言っても美人と称されるだろうラウラの顔が、文字通り接触するほど近づく。

 それだけ聞くと、役得な感じがするが、実際は得どころか損だらけである。

 

「いってえなコラ!」

 

 箒の様な、剣道に凝り固まった戦い方ではない。

 セシリアの様に、有る種騎士道精神的な、戦い方でもない。

 鈴に近いとも思ったが、違うのは本能に身を任せる事はなく、冷静に状況を見極めて戦っている点だ。

 箒や、セシリアだったらやりようはあった。

 鈴であれば、こちらも本能に身を任せればよかった。

 だが、ラウラ相手に一夏はどう戦えば良いか、見当がつかないでいた。

 

「戦いとは、痛みを伴うものだ」

「そりゃそうだけどさ!」

 

 頭突きを受けた勢いを利用して距離を取ろうとしたが、みすみすと見逃してくれることはなかった。

 あるいは、今までの戦いぶりを見るに見逃してくれる可能性もあるだろうとそちらに賭けていたのだが、一夏の目論見は外れた。

 結局、一夏は距離を取ることは叶わず、ラウラは追撃の一撃を横薙ぎに放つ。

 一夏は、それを近接ブレードを立ててなんとか防ぐ。

 が、それによって一夏のバランスが崩れたのを見逃さず、ラウラは身体を回転させ、一夏の側頭部に回し蹴りを叩き込んだ。

 

「──っ!」

 

 ラウラの放つ一撃は、生身であればすべて致命傷となり得る一撃だ。

 無論、生身であればISの攻撃は致命傷になるのだが、それにしてもラウラの放つ一撃は確実に命を狙った攻撃だ。

 側頭部にモロに蹴りを受けた一夏が吹き飛ぶ。そして、それを悠長に眺めているラウラではない。

 ラウラが追撃の姿勢に移ったの把握した一夏は、未だ宙を飛んでいるこの状態では制動をかけ、体勢を立て直して対応するのでは間に合わないと判断し、近接ブレードを地面に突き刺し、それを支点に吹き飛ばされる勢いを利用してくるりと回り、ラウラにお返しとばかりに蹴りを放った。

 

「むっ」

 

 この動きは、ラウラの意表を突いたのか、小さくラウラが呻いた。

 だが、対処不可能という事はなかったのか、動揺はそれほど感じられない。

 これまでのような大きな動きで対応するのではなく、ラウラはすっと右手を差し出す。

 

(何をしてやがる?)

 

 そのラウラの行動に疑問が湧き上がるが、これまで無駄をとことんまで省いた彼女の動きを思い出し、何かがあると本能が警鐘を鳴らしたが、今更動きを止めることは出来なかった。

 

 だが、しかし、結果として一夏の動きは止まった。

 

「なん……だ……これ!」

 

 だが、それは本人の意図するところで無いのは、本人の反応を見れば一目瞭然だ。

 

「AIC。停止結界と思って貰えれば十分だ」

「AIC……?」

「本来はコレを使わず終わらせるつもりだったが、お前は引き出した。そこは誇って良い」

 

 本人がどう思うかは別として、これはラウラの偽らざる本心だった。

 AICに頼らずとも勝てると思っていたのは事実だった。

 動けない一夏だが、どうにかしようとしているが、そもそもこの停止結界に囚われてはどうすることも出来ない。

 ラウラは、右肩にマウントしたレールカノンを展開、一夏に狙いを定め、放った。

 

「ぐぅ」

 

 轟音と共に、一夏が吹き飛ぶ。

 またしても、顔を狙った一撃。装甲に守られていない為、絶対防御が発動。大幅にシールドエネルギーが削られる。

 地面に身体が叩きつけられるが、それでも一夏は立ち上がる。

 しかし、顔を上げた時には既にラウラが眼前に迫っていた。

 再び右手を差し出すラウラ。

 

「またさっきの動きを止めるやつか!」

「違う。フェイクだ」

「──ッ! ふっざけんな!」

 

 AICは使わず、空いている左手にプラズマ手刀を展開。右手の動きにばかり注視していた一夏は反応することは出来ず、その身にプラズマ手刀が叩き込まれシールドやエネルギーが更に減少する。

 思わず後退した一夏の目の前に、三度(みたび)右手を差し出すラウラ。

 

「っ!」

 

 今回はAICを使うのか、それとも今度もまたフェイクか。

 

「──迷ったな」

 

 一瞬の躊躇が、勝敗を左右した。

 まだ近接ブレードの間合いだったが故に、やけくそでも振っていればまだ、戦い様はあった。

 だが、一瞬の躊躇がラウラの間合いにする事を許したのだ。

 もはや、一夏がここから形勢を逆転させる術はなかった。

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