ちょっと大人なインフィニット・ストラトス 作:たんたんたんめん@オルコッ党員
3人くらいに指摘され、悶えました
「別に、送ってもらわなくても良かったんだけどな」
「わたくしが送りたいと思っただけですから、お気になさらず」
話を終えた一夏は部屋に戻ろうとしていたのだが、セシリアが送ると言って聞かなかった。
男が女を送るという話はよく聞くが、逆は中々無いなと一夏はぼんやりと思った。
と、一夏は前から歩く二人組に気付いた。
「珍しい組み合わせだな」
「そちらは、いつも通りだな」
違いない、と一夏が笑みを浮かべた。
にしても、本当に珍しい組み合わせだとセシリアは改めて二人に目を向ける。
鈴とラウラが二人でいた所を、セシリアは今まで見たことはあまり記憶に無い。
「一夏さんに御用でもありましたか?」
「さて、な」
肩をすくめて見せるラウラ。
はぐらかすような態度に、一夏は引っかかりを覚えた。
「そう隠すなって。シャルルの事だろ? まあ、気になる存在だよな」
「気付いてたの?」
思わず、という風に口を挟んだ鈴の言葉に、一夏はやはりなと自分の考えが当たったと確信した。
おそらく、二人もシャルルの事を知って話を聞きに行ったのだ。
自分がいないタイミングだったのも、偶然ではなく狙ってだろう。
が、しかし、だ。
「あんまり素直に認めるのはどうかと思うがな。俺の口が軽かったら喋りまわっている所だぞ?」
「それは、ごめん……」
ふと、一夏は鈴の顔に何処か影があるのに気付いた。
そもそも、軽くカマをかけただけで引っかかるのも鈴らしくなかったのだ。
「おい、鈴。お前大丈夫か?」
「や、別に大丈夫だから。気にしないで」
「大丈夫じゃねえだろ。シャルルとの話でなにかあったか?」
いつもは、快活な鈴だが、今はその気配はない。
重い空気のところで空気を読まずはしゃぐという事はしないが、それでも沈みすぎない丁度良い塩梅で場をもり立てる事が出来る。だから今の鈴に一夏は違和感を抱いたのだ。
「……なんでそういう事は分かるのよ」
「それが一夏さんですから」
ぶすっとした様子の鈴にセシリアが苦笑い混じりに答える。
一夏が鈍いのは、恋愛方面だけなのだ。
それ以外は、むしろ気遣いの塊だ。
「ホントに大丈夫だから。今はシャルルの話でしょ?」
「……なら俺はもう何も言わねえけど、無理はするなよ」
それだけ言うと、一夏はラウラの方を向く。
「で、お前らは俺が部屋を出てすぐに乗り込んだって事か」
「ああデュノアの思惑がわからない以上、お前の側に置いておきたくはないからな、軽い尋問はさせてもらった。その結果、問題はなさそうだから放っておいた」
「可愛い顔してエッグい事してたんだなお前……つーか軍人って尋問なんかも出来るのか?」
「受ける側だが、尋問の訓練があるからな。その知識を参考に尋問を行っただけにすぎん。プロが必要なら用意するが?」
「そんな事しなくていいから」
一夏からすれば、まさかこれほど早く動くのかと驚いていた。
しかし、ラウラの想いを知っているセシリアからすれば、意外でも何でもない。
先にラウラに声をかけるべきだったと思ったが、セシリアが思っていた以上にラウラは冷静だった。
話の聞き役を鈴にさせた所をみてもそうだろう。
なら、考えるべきはこれからのシャルルの扱いか、とセシリアは思考を切り替える。
「一夏さんは、デュノアさんを追い出すつもりはないのですわね?」
「ああ。俺はどっちでもいいけど、お前と話した様に学園側が認知している可能性もあるからな」
ただ単に、情にほだされた訳ではなさそうでセシリアとしては安心した。
そして、その言葉で、鈴とラウラも大凡の事を察する事ができた。
「……なるほどね。学園側ってより千冬さんが見逃すハズがないわ」
「いや、学園としては跳ね除けたかったが、フランスとデュノア社に対して断りきれなかったという可能性もある。決めつけるのは危険だ」
意見が傾かない様にとの配慮で、ラウラは敢えて苦言を呈す。
一夏はどうかわからないが、鈴に関しては少しだがシャルルに同情している節を感じたからだ。
「それに関しては、明日にでも千冬姉に聞いてみようと思う」
一夏の言葉に、それが良いとラウラは頷く。
当事者だし、姉弟というのも大きい。
理由を教えてもらうところまで辿り着けるかは微妙だが、行動の指針くらいは教えて貰えるだろう。
「現時点で行動を起こしているのは私達だけだ。だが、あまり時間はかけられんぞ」
生徒たちも、正体に気付くのは時間の問題だ。
そして、気付いてしまえば追い出そうという動きも出かねないのだ。
IS学園の生徒は優秀な者が多く集まっている。それに、ここにいる者達以外にも代表候補生は存在する。
確実に気付かれるだろう。手を打つにしても、速いに越した事はない。
それに、懸念事項は他にもある。
「内容が話しづらかったのもあるが、お互いに連絡を取り合ってなかったのは不味かったな。必要以上にデュノアを追い詰めてしまったかもしれん」
一夏に詰められ、その後はラウラに脅された。
今現在のシャルルの精神状態は、最悪な物だろうというのは容易に推測できる。
「悪い。俺は昼間もやっちまってる」
一夏はバツの悪そうな表情を浮かべ、唇を噛んでいた。
思い返せば、更衣室で問い詰める必要はなかったのだ。
胸の奥にしまっておき、放課後に部屋で話せば良かったが、それを出来なかった事は、素直に失策だと思えた。
「いや、二人の間に何かがあったのは察していた。そのままにしておいた私にも問題はある」
ラウラも申し訳な下げにしているが、今はそういう話をする場ではない。
今話すべきは、これからのシャルルの扱いの話だ。責任の押し付け合いではないのだ。
場の空気を変えるべく、セシリアは一度大きく手を鳴らした。
「話を戻します。デュノアさんの扱いはこれまで通りでよろしいですわね?」
「ああ。……向こうは、俺に対してこれまで通りって訳にはいかないかもしれんが」
「私もだな。必要以上に怖がらせてしまったのは否めん」
ラウラはまだいいが、一夏の方は問題だろうとセシリアは思った。
せめて、表向きは仲良くしてもらわねばならない。
二人しかいない男の操縦者同士が、ギクシャクしているのは不味いのだ。
「おそらく、鈴さんにはある程度心を開いていますわ。それにわたくしも、彼女に何もしてませんし、嫌われてはいないと思います。一夏さんとデュノアさんが話す際は出来るだけ一緒にいてフォローしましょう」
「わかったわ。──シャルル泣かすと承知しないわよ一夏」
「なんで俺に矛先が!?」
しかし、一夏はシャルルを既に二回泣かせている実績がある。
大手を振って文句を言える資格はなかった。
「昼間はそれでいいとしても、問題は夜だよなあ……」
一夏が、ポツリと漏らした言葉に、妙に弛緩した空気が流れた。
いや、一夏はふざけている訳でもないのだが、どうしても仕方がない。
「女と一緒に寝るってだけでも苦痛なのに、苛めた相手だぜ? お互いの精神が保たんぞコレ」
「泣き言言わない。男の子でしょ?」
「男だから困ってんだよ! いや、アイツは女だけどな!?」
だったら、とセシリアが口を開く。
「わたくしは何時でもウエルカムですわ」
言外に、部屋に来ても良いと伝えたが、一夏は呆れた様子で肩をすくめて見せた。
「同室の奴はどうするつもりだ」
「外で寝てもらいます」
「マジでそのうち刺されるぞお前!?」
外で寝るのが苦痛ではないとしても、限度はある。
これからは梅雨の季節だし、と思ったところで一夏は大きく頭を振る。
なぜ泊まる前提で話しているのだ、と。
「大体だ、お前と同じ部屋で寝たってのがみんなに知られたりしたら、それはもう取り返せないレベルで噂が固まっちまうぞ!?」
「わたくしは構いませんが」
「俺が構うんだよ!」
セシリアの開き直りに、一夏はとっては不思議でしょうがなかった。
下手な男より男前である。
だが、男顔負けな女性が、ここには他にもいるのだ。
「なら、私の部屋に泊めてやろうか?」
「まあ、お前ならまだマシか……」
苦笑い混じりにラウラが助け舟を出す。
転校生組とあって、ラウラは現在一人部屋である。
同室の心配はしなくていいのだ。そう考えると、現実的に思えた。
「その反応は少し傷付くな。私も一応、女だぞ?」
「あ、いや、すまん」
少し頬を膨らめたラウラと、しどろもどろになりながら謝る一夏のやり取りに、セシリアは胸がざわつくのを覚えた。
そして、以前放課後に話した内容がフラッシュバックする。
恋人になれば、色々が都合が良いと言っていた事を、だ。
「……おい。なんか怖え顔してるぞお前」
一夏の声ではっとする。
ラウラと鈴の方を見ると、なんとも言えない顔をしていた。
「大方、ラウラとの間になんかあると思ってんだろうが、何もねえよ」
「いえ、別にわたくしはそんな事は」
「下手な嘘を付くんじゃねえ」
言い訳がましく言ったセシリアのセリフは、バッサリと切り捨てられた。
そして、一夏はどこか別の方を見ながら頬を掻く。
「まだ、確かめてる最中なんだよ。もう少し待っててくれ」
あ、とセシリアが言葉を漏らす。
いつかの保健室で交わした言葉を思い出したのだ。
「すみません。わたくし……」
「いや、不安にさせた俺が悪かったんだ。悪い」
お互いに視線を合わせる事なく、所在なさげに視線をウロウロと飛ばす。
どこか、甘酸っぱい空気が流れていた。
「……ねえ、あたしらは何を見せられてるの?」
「……知らん」
それを、鈴とラウラは蚊帳の外で見せらてたのだから、たまった物ではないだろう。
そろそろバトルシーンを書きたいです
このままいくとシャルル君がISを展開して大脱走するとかいうハチャメチャな展開を書きそうです