ちょっと大人なインフィニット・ストラトス 作:たんたんたんめん@オルコッ党員
長々とお待たせしました
「──面倒な事になったな」
ふう、とため息を吐いたラウラの手には、一枚の紙が握られていた。
紙のタイトルは『学年別トーナメントの仕様変更に関するお知らせ』だ。
学年別トーナメント、それは毎年この時期に開催される、文字通り学年別のトーナメント戦だ。
各学年、原則として全員参加でトーナメント戦となるこの大会は、IS学園内で重要な試合として位置付けられている。
クラス対抗生は以前、行ったが、あちらはレクリエーション的な、クラス内の団結力を向上させる意図もあったが、こちらはまるで違うのだ。
三年生は、集大成とも言える場。代表候補生は勿論、それ以外の生徒にしても、各企業等が集まるこの場でのアピールは非常に重要になってくる。
一口で言ってしまえば、就活の様な場所だ。
二年生も、この一年の成果を発表する場になる。卒業はまだ先とは言え、ここで優秀な成績を収めることになれば進路の選択肢もより広がる事になる。
そして、一年生とて無関係ではない。
本当に将来有望な者なら、この時点でその片鱗は現れる。
更に今年は、織斑一夏というイレギュラーに加え、各国の第三世代機が集結している状況だ。
一学年で専用機持ちは現時点で六名。もっとも、一名の専用機は未だ完成していない為実質としては五機なのだが、それでもIS学園史上でもっとも多く専用機を保持している学年だろう。
それはそれとして──
ラウラが……というより、ここに集まっている面子。一夏、セシリア、鈴、シャルルは揃って渋面を浮かべていた。
その理由が、トーナメント戦の仕様変更についてだ。
「タッグマッチ形式に切り替わるとはな……」
「ほんとよ。てゆーか元の趣旨を考えると、ペアにする意味がわからないわよ!」
「変更の理由としてより実践的な模擬戦闘を行うため、とありますが……」
「んな事言ってもその
となると、とラウラが腕を組む。
「四月の襲撃事件がきっかけか……。一夏、鈴、セシリアの三人で対応したそうだが?」
「なんでアンタが知ってんのよ。つーか守秘義務で言えないっての」
「我が部隊を舐めない事だな。まあ、箝口令が敷かれるのは当然、か」
襲撃事件の情報は、殆どと言っていいほど公開されていない。
開示された情報は反政府組織、要はテロリストが襲撃してきたという事くらいだ。
襲撃してきた機体が無人機だったと知られたら、大事なると学園側が判断したのだ。
幸い、各国はテロリストという言葉から疑ってくれているのか、お互いに他国が攻めてきたのではと腹の探り合いをしている。
「しかし、実践の為というのはこの事だろうな。今度は襲撃が起きないとも限らない。そうなった場合、アリーナ内にISが四機いて連携の訓練も積んでいるとなれば、対処はしやすい」
ラウラが納得がいった様に頷きながら話をしていたが、一夏が「そんなことより」と遮った。
「なんで変わったかよりも、変わった事によって出てきた問題点をどうするってのを考えようぜ」
そして、問題点などわざわざ一夏が言葉にしなくとも全員がわかっている。
シャルルのペアをどうするか、だ。
今は一夏達の部屋に集まって話しているからあまり感じないが、一夏とシャルル、どちらかとペアを組みたい生徒が学園を探し回っている事は容易に分かった。
まあ、一夏はともかく、シャルルとペアを組む事は出来ないのだが。
「理想は俺と組む事だけど」
「う……」
「この有様じゃあ、無理だな」
言いながら一夏がシャルルを見ると、彼女は首を縮こませる。
どうにも、シャルルは一夏に対する苦手意識が拭えないらしい。
それを見たラウラが面白そうに笑みを浮かべた。
「一夏が誰かに嫌われているというのは新鮮だな」
ラウラのその言葉に、一夏は思わず苦笑いを浮かべた。
「お前がそれを言うかあ? 俺と初めて話した日の事を忘れたとは言わせねえぞ?」
「過去は振り返らない主義でな。今が良ければそれでいい」
「その過去に執着してたのは何処のどいつだよ」
「ドイツの私だな」
「うわ、つまんねえ洒落」
一夏とラウラが何やら話し込んだのを見て、セシリアが咳払いを一つする。
そちらの話も気になるが、今はシャルルの方だ。
「お二人の話はまた後日聞くとして、今はデュノアさんのペアの話に戻しましょう」
後回しにしつつ、ちゃっかりこの話は聞こうとするのかと一夏は思った。
「つっても我慢して俺と組んで貰うしかないんじゃないか?」
「むー……」
シャルルの性別を知る者しかペアの相手にはなれない。
その上、男同士なら自然だろうという一夏の考えなのだろうが、セシリアとしては面白くない。
「何を膨れてやがる。まさかお前『俺と組みたかったのにー』とかなんとか言うんじゃないだろうな?」
「そうですわ」
「即答するんじゃねえ。今はそういう事言ってる場合じゃねえだろ」
ただでさえ、一夏が女であるシャルルと同じ部屋で暮らしているのがセシリアとしては不満なのだ。
だが、一夏とシャルルが組む方が良いとはセシリアも頭ではわかっている。
これは、感情面の話なのだ。
「──私がデュノアを受け持とう」
そんな二人のやり取りを見ていたラウラが、こう切り出した。
それは意外そうな目で一夏が見やる。いや、一夏だけではなく、ここにいる全員だ。
「デュノアに与えられた命令は白式のデータを盗むことだ。ペアを組むとデータの入手は今よりはたやすくなるからな」
「おいラウラそれは──」
「コイツは強く命令されると拒めない性格だ。本人が望まなくてもフランス政府から強く命じられれば、やりかねん」
一夏としては黙るしか無かった。
デュノア社の真意は知っているとは言え、フランス政府がどう出るかはわからないのだ。
そして、黙ってしまったのは、そう言われたシャルルが身を縮こませたのを見て、という事もあるだろう。
ここでシャルルが言い返せるだけの気概があれば別だが、無いのならフランス政府に命じられるまま動く可能性があると思われても仕方がない。
そもそも、この場でも自分からどうしたいという事を言わない。自分の意思を主張出来ないのだ。
「だから、一夏は好きな奴とペアを組むと良い」
ラウラは最後はセシリアの方を向きながら締めた。
もしかして、ラウラは気を使ってくれたのだろうか、セシリアはふとそう思った。
「どうでしょう一夏さん。わたくしは今フリーでしてよ」
彼女の真意はわからないが、有り難く乗せてもらう事にしたセシリアが一夏に迫る。
その一夏は、しばらくシャルルとセシリアを交互に見ていたが、やがて観念するようにため息を吐いた。
「……わかったよ。よろしくな、セシリア」
一夏としては、本意では無いのかもしれないが、ペアを組めるという事がセシリアとしては素直に嬉しかった。
「ペア成立おめでとー」
パチパチとやる気のない拍手と、何処までも棒読みな気の抜けた鈴の声が響いた。
それに、一夏はとびきりのしかめっ面で返す。
「おい鈴、カップル成立ゲームじゃねえんだぞ」
「違うの?」
「違えよ!」
叫ぶ一夏の顔は赤かった。
それに対し、鈴はどこか楽しそうだ。
「だってセシリアがペアを組んでって言って、一夏がそれを受け入れたんだからそうでしょ?」
「そうだけどそうじゃねえんだよ! つーかお前はこの状況で何を楽しんでるんだ!?」
声を荒げる一夏の顔は、やはり赤かった。
そして、一夏をイジる鈴はケラケラと笑い声を上げている。
重ねてきた年月の違いを見せつけられている様な気がして、セシリアは少し羨ましく思った。
「あたしは別にシャルルと組んでも良いんだけど……」
「駄目だな。お前も第三世代機の持ち主だし、なによりデュノアに甘いからな」
鈴がちらりとラウラを見ながら聞くも、にべもなく切り捨てられる。
(嫌われるのは私だけで十分だしな)
何もしないと決めたとは言え、それでも最低限の備えは必要だ。
となれば、嫌われ役は一人で十分とラウラは考えた。
それに、鈴はいざという時の為のフォロー役として必要と考えたのもある。
「安心しろ。下手な動きをしなけれれば殺しはしない」
「それ、何のフォローにもなってないよな」
思わず一夏がツッコんだが、無理もない。
ラウラの言っている事は、裏を返せば下手な動きをすると殺されるという事を暗に言っているのだから。
彼女としては冗談のつもりだが、それを言われたシャルルは文字通り生きた心地がしなかった。
バトルを書きたいけどどれくらいでたどり着けるんだコレ?