ちょっと大人なインフィニット・ストラトス 作:たんたんたんめん@オルコッ党員
過密日程のスケジュールの中で試合が行われている都合上、昼食の時間はまちまちだ。
時間も勿論、軽食を摘まむだけの人もいれば、豪快に食べる人もいた。
既に敗退が決まったペアなどは自分へのご褒美か、それともこれまでの慰労かでパフェを食べてる人もいたりする。
雰囲気としたら、学園祭の様な感じだろうか。
それも各国の料理が集まるIS学園の食堂はより一層華やかな雰囲気を感じる。
軽食類を買って、アリーナで観る事も出来るので、形としてはスポーツ観戦の形に近い。
また、会場の様子は食堂内のモニターでも中継されているので、ここで食事をしながら観戦する事も出来たりする。
「強かったな」
「まあ、代表候補生ですから」
一夏とセシリアも昼食を食べながら、次に対戦するであろう更識の試合を観戦していた。
彼女が纏っている機体は打鉄。対戦相手も同じISを纏っているが、本当に同じ性能なのか疑ってしまうレベルだ。
轟音と共に砂塵が舞い上がる。
濛々と立ち上った煙が晴れたそこには、シールドエネルギーを失い、装甲もボロボロになった打鉄があった。
「おとなしそうな見た目してえげつない。つーか同じ打鉄とはいえ装備でここまで変わるか」
「とはいえ、機体性能の差はありませんわ。それでこの結果では相手の方も辛いでしょうね」
専用機持ちに負けたのなら、まだマシだ。
機体性能が違うから負けたのだと、自分を慰められる。
だが、同じ機体を使ったのなら、それも出来ない。
「ただ、一夏さんのおっしゃるように武装は特徴的ですわね」
「ああ。近距離は薙刀で、遠距離はミサイルか」
「日本は『マルチ・ロックオン・システム』を搭載したミサイルシステムを第三世代兵器として開発していましたから、その辺りですわね」
けれど、その装備は完成されていないはずだとセシリアは本国から聞かされていた。
試合を観た限りでは、通常の単一ロックオン・システムを使っている様に思える。
「で、俺はアイツの相方にびっくりしたわ。布仏と組んでるんだな」
「更識さんとは幼い頃からの知り合いの様ですし、わたくしはそこまで驚きませんでしたが」
「へえ。あんまり馬が合うような組み合わせには見えないけどな」
その辺りは、更識の家と布仏の家との間の関係によるところなのだが、一夏は知るよしもない。
セシリアとて、イギリス本国から聞かされていたから知っているだけだし、敢えてその事を一夏に伝えようとは思わなかった。
「授業の時にも思ったけど、布仏ってISの扱いに慣れてそうだよな。更識の隙を守る動きだけを見たら非の付け所がない」
「ええ。一回戦、二回戦と見た限りではダメージ源は更識さんのミサイルが主ですわ。ただ、現状では単体でのロックオンしか出来ない都合上、どちらかはフリーにしてしまうという事になりますが」
「それを布仏が上手い事抑え込めてる」
強敵だな。
真剣な表情で一夏が呟く。
その様子を見て、セシリアはとりあえずは胸をなでおろす。
どうなる事かと思ったが、怒りで冷静さを失ったまま、試合に臨むことは無さそうだ。
もっとも、試合が始まってどうなるかはわからないが。
「では、相手の持ち札を整理しましょう」
「布仏は打鉄の頑丈さを活かした防御戦術がメイン。ここ二試合の動画を見た限り、銃火器を使ってる様子はない」
肩部に取り付けられている物理シールドに加え、左手にも物理シールドを持ち、右手には通常の近接ブレードよりはやや小振りの太刀を持ち、場合によっては太刀ではなく両手シールドで防御を固めるのが本音の戦い方だ。
完全に守りに比重を置いているのがわかる。
銃火器は使っていないが、ここまで使っていないからと言って、次も使わないとは限らない。
問題は、使えないのか、あるいは使わないのか。
「更識の方はまずは近接戦を挑んでから、ある程度ダメージを削ってミサイルで仕上げるって感じだな」
「序盤は様子を見ながらといった感じでしょう。更識さんは代表候補生ですので過去のデータはありますが、今大会に限らず、今までも威力の高い兵装は後半まで伏せておく戦い方を好んでいる様ですし」
一夏なんかは開幕ミサイルで主導権を握っても良いじゃないかと思うが、この辺りは性格だろう。
セシリアもどちらかと言えば更識の様に、火力の高い兵装は伏せておくタイプだ。
必殺の一撃たり得るからこそ、必中を期して使い時を見計らう。
一番は使わせる前に倒す事だが、相手は代表候補生に、乗りたての操縦者ではない。
初心者二人を相手取った初戦の様には上手くはいかないだろう。
戦術を立てているのは更識だというのが二人の共通理解だ。
最大火力と言えるミサイルを温存する立ち回りを見るに、更識は後半に勝負手を打つ事が多い。
それは格下ともいえる相手であっても変わらない。
「……難しいな」
「ええ。更識さんはまだ手を残しているのか。あるいは、布仏さんに持たせているのか」
「実は全て出し尽くして、手を残しているように思わせてるのか」
うんうんと唸る二人だが、答えはない。
そもそも、じゃんけんで相手が次に何を出してくるのか考えるようなものなのだ。答えがあるはずもない。
となると、現在わかっている情報に対して、考える方が有意義だ。
「いずれにせよ、更識さんのミサイル戦術を破らない事には意味がありませんわ」
最大火力を活かすという点において、二人の連携は完成されている。
あるかもわからない他の手を考えるよりも、まずはこの対策をしなければならない。
「戦術といっても、ミサイルで削りきれるまで近接戦闘でシールドエネルギーを減らし、ミサイルで仕留めるという単純なモノです。布仏さんもその間、邪魔をされない様に守っているだけですし」
「近接戦闘で邪魔をしようとする相手には同じく近接戦闘で、射撃を選択された場合はシールドで守るって感じだな」
おそらく、彼女は更識を守るためだけに訓練を積んできたのだろう。
ただ、だからこそこの戦術の穴もわかりやすくもある。
「この戦術を崩すのに一番簡単なのはどちらかを倒す事ですわね」
一対二なら複数人を相手に戦うのは不利なのは当たり前の事だ。
ただ、この二組の場合は一人になった瞬間、一気に不利になる。
単一のロックオンしか出来ない更識にとって、その隙を守ってくれる布仏がいなければ無防備な姿をさらす事になるからだ。
また、更識が脱落した場合は有効打になる武器がない布仏にとっても同じ事。
もっとも、だからこそ布仏は脱落しない様に防御偏重の守備で戦い、他に手があるのではないかと疑っているのだが。
「布仏の防御は厚いが、抜けない程ではない」
「今までは、それが通用するのは同じ力量の相手までですわ」
セシリアなら、防御の隙間を撃ち抜く狙撃の腕は持っているし、一夏からしてもセシリア程簡単には片付けられないが勝てない相手ではない。
なら、どちらが布仏に当たるべきか。
「一夏さんが更識さんを抑え込み、その間にわたくしが布仏さんを倒す。その後に二人で更識さんに当たるのが理想ですわね」
「俺の得物は剣で、あいつは薙刀だ。剣術三倍段って言葉があるんだが、薙刀とか長物を持った相手を剣で倒すには三倍の力量が必要って意味なんだ。倒す必要はないから、三倍とはならないだろうが、ISの操縦技術を含めて更識の方が上って事を考えると難しい」
箒ならば、ISによる空中戦を捨てて剣術と薙刀術の勝負に持ち込めただろうが、一夏は自分には難しいと判断した。
剣と薙刀の単純な勝負なら、時間稼ぎ程度は出来る自信はある。
ただ、これはISを使っての勝負だ。技量の向上した一夏とはいえ、代表候補生の更識と比べるまでもない。
なら、逆はどうだろうか。
セシリアが更識を抑え、一夏が布仏を倒す。
その事をセシリアに伝えると、セシリアが眉間に皺を寄せた。
「ミサイル兵装を使わない事、そして他の武器を使わない事が前提になりますが、彼女は近接兵装しか持ちません。一夏さんがそうであるように、近距離戦を得意とする方は必然、距離の詰め方にも優れるという事になりますから」
「お前の射撃をもってしてもか」
専用機が無くとも、代表候補生だ。
弱いわけはないが、セシリアがそこまで評価するのは正直意外だった。
そうなると、どちらのリスクを取るかだ。
「俺が更識を抑えられる僅かな時間に、セシリアが布仏を倒すか」
「わたくしが更識さんを抑えている間に、一夏さんが布仏さんを倒すか」
前者の問題点は、一夏がどれだけ粘れるかだ。
そして、一夏が脱落する訳にもいかない。
後者の問題点は、一夏がどれだけ早く布仏を倒すかだ。
布仏を倒す事が出来たとしても、時間をかけすぎてはセシリアの損耗が激しければ意味はない。
万が一、布仏に敗れる事があれば、残されたセシリア一人では辛いものがある。
「一夏さんが更識さんを受け持って頂けるとしても、それほど時間はかけませんわ」
「……俺が負けるかもしれねえぞ?」
念のため、一夏が言うとセシリアがどこか勝気そうな顔で口を開く。
「あなたが負けてしまう前に倒してみせますわ。わたくし、こう見えてエリート中のエリートですから」
「エリートのお前なら一人でも勝てるんじゃねえの?」
一夏が皮肉げに口元をゆがませると、セシリアが頬を緩め、拳を前に突き出す。
「二人で、勝ちましょう」
「……ああ」
それに応える様に一夏は拳をぶつけた。
タッグマッチトーナメントはバトルが沢山書けそうで嬉しいです
原作では1試合で中止になっていた?
決勝にラウラを持って来ればヨシ!