ちょっと大人なインフィニット・ストラトス   作:たんたんたんめん@オルコッ党員

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準決勝第二試合

「で、ぶっちゃけラウラはどういう戦いになると思ってるの?」

 

 二人を見送った後、スポーツドリンクをラウラに差し出しながら、シャルルが問いかける。

 

「専用機持ち同士のペア、と言う視点だけで見れば一夏達が優位にはなると思うが」

「その言い方だと、額面通りに受け取ってるわけではなさそうだね」 

 

 とはいえ、それはシャルルも同じ様な考えではあるが。

 

「一夏とセシリアは戦える距離がハッキリと別れてるからな」

「それは箒も同じだけど、鈴だけが違うもんね」

 

 一夏と箒は近距離のみ。

 セシリアは中距離のみ。

 それに対し、鈴は近・中距離で戦うことが出来る。

 アリーナがもう少し大きければばセシリアの戦う距離は伸びるが、この広さは彼女の強みを十全に活かす事が出来ているかといえばそうではない。

 

「四組の代表候補生と戦った時の様に、一夏が鈴と当たっても今のあいつの手札では抑えきれないだろうしな」

 

 薙刀と、ミサイルしかなかった相手だったからこそ、一夏は抑えることが出来た側面がある。

 けれど、鈴は違う。

 

「衝撃砲があるからねえ。──ミサイルと違って近距離でも撃てるから、一夏にとっては苦しいだろうね」

 

 いずれにせよ、戦局を動かすのは一夏・セシリアペアだろうとラウラは呟き、シャルロットも追従するように頷く。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 すでに、四人はISを展開し向き合っており、後は試合開始のブザーを待つだけだった。

 今までの試合開始前の緊張とは違う感情を一夏は感じていた。

それは、違和感と懐かしさが同居するような感覚だ。

 

「なーに笑ってんのよ」

「全くだ。勝負の場だというのに、腑抜けているのではないか?」

 

 思わず、と言った風に笑みを浮かべた一夏に対し、鈴と箒が通信を飛ばしてきた。

 セシリアも、言葉にこそしなかったが、呆れているようだった。

 悪い、と軽く謝りながら、一夏は雪片を呼び出す。

 

「いや、鈴とは俺の後ろにいたり、肩を並べたりはしてたけど、こうやって向かい合うのは初めてだから、新鮮でな」

「あー、まあね」

 

 軽く笑いながら、鈴も青龍刀を呼び出し、両手にそれぞれ構える。

 人懐っこい笑みはとは違う、獲物を狙う猛禽類の様な笑みを携えて。

 

「でもって、箒とは。小学校の時からさんざんやり合ったけど、公式戦で戦うのは初めてだしな」

「ふ。確かに、そうだな」

 

 鍛錬を重ねる中で、当然剣を合わせたことはあるが、一夏の言うように公式戦と言う意味ではこれが初めてだ。

 勝負の場において、箒にとっては珍しく口元に笑みを浮かべる。

 だが、それも一瞬のことで、近接ブレードを正眼に構えた時には、いつもの様な凪いだ水面を思わせるような静かな表情になっていた。

 

「──やっぱり、幼馴染はズルいですわ」

 

 そして、この場において仲間外れの様な扱いをされたセシリアが拗ねたように唇を尖らせる。

 とはいえ、右腕を真横に伸ばし、自身の愛銃を呼び出した時には、狩人を思わせるような鋭い目つきに戻っていた。

 

 カウントダウンが終わり、試合開始のブザーが鳴り響いたところで一夏とセシリアが動く。

 定石通りなら力量の近い一夏と箒、セシリアと鈴のマッチアップになるところだったが、一夏は鈴に向かって機体を動かす。

 ならばセシリアが私の相手かと箒が思ったところで、鈴が突如機体を動かす。

すると、それまで鈴がいた場所を二条の光線が凪いだ。そして遅れるようにしてミサイルビットが襲うが、鈴は上昇することでこれも難なく回避。

 

(あたしに対して二人がかりってこと?)

(──私の事は眼中にないというのか!)

 

 頭に血が上った箒が勢いのままに機体を前に押し出したところで、冷や水を浴びせかけるように箒にも二本の青い衝撃が襲う。──だけではなく、ミサイルビットも突き刺さり轟音を響かせる。

 

「やってくれるわね……」

 

 鈴が忌々しいとばかりに吐き捨てた。

 もちろん、その間も一夏の剣撃と間を縫って降り注ぐセシリアのレーザーを防ぎながらだ。

 狙いは自分では無かった。

 二人がかりで自分を狙うというアピールに箒は引っかかったのだ。

 自分が避けたミサイルビットも箒を狙うための物。一度、別の方向に飛ばしたのもわざとだ。

 

 ──本当に、やってくれる。

 

 そう呟いたのは、鈴では無かった。

 爆炎の中から出てきたのは、物理シールドがボロボロになりながらも、尚も闘志を失っていない箒の姿だった。

 タフな奴だぜとボヤきながら一夏は雪片を振るう。それを冷静に受け流しながら鈴は箒にプライベートチャンネルで指示を飛ばす。

 一夏は任せたわよ、と。

 先程は取り乱したが、今度は箒も鈴の指示に力強く言葉を返した。

 

『箒の相手は俺がやる』

『頼みましたわ!』

 

 すでに箒のシールドエネルギーは大きく減らしているはずだ。

 ならば、鈴との戦いで一夏のエネルギーを消耗させたくはない。

 一夏が箒を仕留めるまで、彼の邪魔にならない様に戦うのが自身の役割だとセシリアはビットを鈴に飛ばす。

 

(どう対処します?)

 

 猟犬の様に鈴の周りを飛び回るビットを操作しながら、セシリアは鈴の動きを見定める。

 このまま、一対一の展開に素直に移行できるとは思っていない。

 どこかで箒の援護に入るはずだが、ひとまずはこちらの相手をしてくれるようだ。

 横目で一夏を見れば、勢いよく斬りかかった斬撃を、箒が受け流しているのが見える。

 頼みましたわよ、そう心の中で伝えると、セシリアは眼前の相手に再び注意を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 ISの操縦者は、感覚派と理論派におおよそに分けられる。

 だが、そこから戦い方はまた二つに分けられる。

 自分から仕掛けるタイプか、あるいは受け止めるタイプか、だ。

 

 その枠で言えば、一夏は感覚派で自分から仕掛けるタイプであるし、箒は感覚派でありながら、相手の攻撃を受け止める戦い方を好む。

 一夏は攻撃に攻撃を重ねて主導権を握る戦いをするのに対し、箒は相手の攻撃を受け続けることで主導権を握る戦いをする。

 

 共に仕掛けるタイプであるならば、相手の手数を上回った方が勝つ。

 

 あるいは、共に受けのタイプならば、先に焦れた方が負ける。

 

 であれば、仕掛けるタイプである一夏と受け止める箒が打ち合ったらどうなるか。

 互いに得意の形で戦うことが出来るが故に、主導権争いは発生しない。ある意味では、共に主導権を握っているからだ。

 ならば、勝敗を分けるポイントがあるとすれば、それは自分の戦いをどこまで貫けるか、という事に尽きる。

 一夏が、この展開に焦れて大振りの一撃を加えようと企めば、瞬く間に箒のカウンターに遭うだろう。

 反対に箒からすれば、守りの展開を捨て、攻撃に出たところで一夏を捉えきれない。

 なぜならこれはISを使っての戦い。平面での戦いに限定しているからこそ打ち合えているが、一夏に対して仕掛けるということは空中機動も必要になってくる。空中での制御をしながら、剣を振るう技量は箒には無かった。

 

 一夏と箒の戦いとは違い、鈴とセシリアはある意味で似ていて、ある意味で違っている。

 共通点は、互いに受けではなく、攻めの戦術を好む事。

 縦横無尽に飛び回るビットと正確無比な狙撃を用いて、一対一の戦闘をまるで多対一かの様な戦闘に持ち込み場を支配するセシリア。

 不可視の弾丸を放つ事が可能な衝撃砲による駆け引きと、強力無比な近接格闘を組み合わせる鈴。

 異なっている点は、理論派のセシリアと感覚派の鈴という事だ。

 

 タッグマッチでありながら、行われているのは上空での射撃戦を行うセシリア対鈴と、地上で近接戦を行う一夏対箒だ。

 どちらのペアも決定打が出せないまま時間だけが経過していく中で、シャルルが違和感を感じた。

 

「ぬるい」

 

 そしてほぼ同じタイミングで、ラウラが呟いた。

 

 違和感を覚えたのは、セシリアと鈴の戦いだ。

 ラウラの目から見て、鈴が踏み込めるタイミングで動かず、戦況を膠着させようと動いている風に思ったのだ。

 お互いに、膠着状態の今が好都合と考えているということだ。

 確実に勝つため、相方の決着を待つ構えだ。

 なら、地上の戦況は、と見るも、こちらも膠着状態だ。

 ISの操縦技術なら箒に勝る一夏だが、剣術で言えば箒の方が上。

 更には、攻勢に出ず、守勢に回っているのも、箒が操縦技術の未熟さをカバーできている一因だったからだ。

 

「一夏の決着を待つために、セシリアが踏み込もうとしないのは理解できるが……」

「鈴はどうしてそれに付き合うんだろうね?」

 

 セシリアが膠着状態を選んでいるのは、ムダなエネルギーを使いたくないから。

 今でこそ箒は耐えているが、地力の差で一夏が押し切るのは時間の問題だろう。

 だからこそ、待ちを選択したセシリアの判断は間違ってないし、自分がその立場でもその選択をするだろう、とラウラは思う。

 だが、鈴も同じ様に膠着状態を保つという事は、箒が勝利するのを待っているのかあるいは──

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

「──ふん。単調だな」

「織斑先生?」

 

 思わず、と言った風に出た千冬の一言に真耶が反応する。

 管制室で戦いを見守る千冬が、生徒の試合に言及するのは珍しかったからだ。

 

「織斑くんも、オルコットさんも予定通り戦えていると思いますけど……」

 

 真耶も、二人がどういった作戦で臨んでいるかは試合運びを見れば理解できる。

 その上で、今の状況は二人にとって都合の良い展開になっているように見えた。

 

「だからこそさ。人間だれしも、思い通りに事が進んでいると思っている時ほど危うくなる──気付かないか?」

 

 言われ、はっとする。

 

「──オルコットさんの動きが単調になっている?」

「ああ。ビットによる牽制で鈴の動きを止めようとしているが、ビッドも無尽蔵に飛び回れるわけではない」

 

 親機である、セシリアの機体に接続されなければエネルギーは補充されず、攻撃や飛行する機能を失う。

 ゆえに、ビットがセシリアの元に戻る瞬間は攻撃をすることが出来ない。

 だが、セシリアも当然それをわかっていて、四基のビットを二基ずつ運用し、攻撃と補充をローテーションすることで、常に絶え間なく攻撃を加える事に成功している。

 打開力や攻撃力は落ちるが、膠着状態を維持するには十分ではあるからだ。

 

「回収と射出のテンポが徐々に一緒になっている。──狙われるぞ」

 

 千冬が呟くのと同時に、鈴が一夏に向かって機体を動かすのが真耶の目に映った。

 




ちょっと短いですが、キリよくまとめられたのでここまで
後編は休み明け頃の予定です
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