ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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第7話 霧中の反乱

「なぁアッシュ、この辺りってこんな霧出るもんか?」

「……夏場ならそこそこ。けど、今の時期にここまで濃い霧が出るのはおかしいかな」

「……魔導の気配がしますね。霧を作り出す魔法でしょうか」

「ブリザーを弱めに広く流せば、意図的に霧を作れる。わかってるな向こうの魔術師」

 

 霧の原理は大気中の飽和水蒸気量が関係している。暖かい空気は水を沢山含めるが、それを冷やせば含まれていた水が空気中に現れるのだ。それが霧の原理。科学の根っこはこういう所で育っているのだろう。

 

「カトリーヌさん、先生、戦闘準備しときませんか? この霧が意図したものなら、音やらで向こうは位置を掴んでるはずです。騎士団が抜かれるとは思いたくないですけど、何もしないで奇襲を受けるよりかはマシかと」

「お、流石は

 魔獣殺し。目の付け所が良いね。先生、生徒の指揮を頼んだ。私らは松明でもつけとくか」

 

 騎士団から生徒の護衛についてきてくれたカトリーヌさんはそう指示を出す。

 松明を照らしたその瞬間、見えたのは森の中にいる人たち。

 

 鎧は付けていない、だが剣はしっかりと構えている。基本に忠実だが、固い。新兵か? 

 

「……パン屋の、コロネ?」

「ロナート様への恩を仇で返すつもりか、アッシュ!」

 

 瞬間、投げ込まれる松明。火災ではなくこちらの位置だけを知る一方的な展開を作り出すためのものだろう。

 

「知り合いか?」

「……うん、余ったパンを僕らにくれたこともある恩人なんだ」

「てことは、民兵か……速攻で大将落とすぞ。そうなりゃ烏合の衆だ、セイロス騎士団なら捕らえる事は楽だろうよ」

 

 投げ込まれた数は多く、全てを消すのには少し時間がかかる。

 

 しばらくの間、飛んでくる矢を風切り音頼りに回避する。次第にラファエルの持つ盾に守られたマリアンヌのブリザーにより松明は消されていった。それと同時に前に前進。二の矢の狙いを絞らせない戦術だ。

 

 即興でこうまで有効な戦術を組み立てるとは、流石の先生だ。

 

 その間、襲いかかってきた民兵たちの必死の形相が頭から離れない。この限られた視界の中、仲間を守るために殺すしかないのはわかっている。だが、やはり辛い。

 

 殺されるほどの罪過を積み上げた賊でなく、殺される事の覚悟を決めた兵士でもなく、ただの人なのだから。

 

 だが、今は拳で迷いを握る。ここで死ぬ訳にはいかないし、ここで殺させる訳にもいかないのだから。

 

「弓を警戒、魔導師を内側に。アッシュ、クロード、イグナーツ、見えてる奴を一人ずつ仕留めていく」

「……アタシは魔導師を殺しに行くよ。冷気の根元を辿れば良いんだろ?」

「十中八九罠ですよ?」

「アタシを舐めないで欲しいね。私はカトリーヌ、“雷霆”のカトリーヌさ!」

「いえ、無駄に危ないだけなんで前に出る必要がないだけです。この霧が人工的に作られたものなら、破り方も人の手でやれます。空気を冷やして作ってるなら……」

 

「焼いて暖めりゃ良いんですよ! 冷気の根元ごと!」

 

 ファイアーで点火し、冷気の流れの根元に向けて火炎瓶を投げ込む。

 

 戦場になりやすい場所が森林地帯だと事前情報にあったので、ちょっと準備していた。魔法があるので酒の蒸留はお手軽にできるのだ、流石のファンタジーだぜ。入手するために騎士団の人にちょっと賄賂として手品を披露したけれどそれはそれ。相変わらずシャミアさんには見破られたがな! 畜生、あの人をハメるには算術トリックしかないのだろうか。それはそれで負けた気がする。

 

 そして、そんなことを考えたのは相変わらずの現実逃避の超火力。冷気の根元は霧で見つからないように森の中に隠れていたようだ。

 

 つまり、またしても自然破壊である。

 

「ハハッ、デカイ松明だね!」

「デスネー」

 

 そうして、燃え移る火によって周囲の気温は上がり、空気が取り込める水蒸気の量も上がり、結果として霧はなくなる。

 

 そして、火災の規模にビビる兵士たち。まぁ、そうなるわな。

 

「カサンドラ、貴様ァ!」

「……ハッ、私はセイロス騎士団のカトリーヌさ!」

 

 火が回ると共に露わになる敵将の姿。

 

 老いてなお覇気を衰えさせない強き将。アレが、ロナート様なのだろう。

 

「先生! 指揮を!」

「二手に分かれて攻め込む。北回りはラファエルとレオニーを中心に、南回りはヒルダとローレンツを中心に。クロードとイグナーツは南側で視野を広く。突破させなければそれでいい。北側には残り全員で、突破する」

「了解!」

「へぇ、いい指揮だ。お前ら! 私達は大将首取りに行くよ! 連中の練度はそう高くはない!」

 

「……僕に、行かせてくれませんか!」

「アッシュ?」

「ロナート様がどうしてこんな事をしたのか、知りたいんです。知らなきゃいけないんです。僕は、ロナート様の息子だから!」

「吠えたなアッシュ! レオニーさん、ラファエル! ソシアルナイトを突破するぞ! 正規兵だろうが、この面子なら食い破れる! 行くぞ!」

「おうよ!」

「任せな! 伊達に師匠に鍛えられてないって事を見せてやる!」

 

 ラファエルが騎兵の突撃を真正面から吹き飛ばして転ばせる。凄いマッスルだ。そうして、その転んだ馬と人に引っかかってもう一人のソシアルナイトも転ぶ。そこをしっかりとトドメを刺すレオニーさん。槍も弓も使える万能っぷりは伊達ではない。

 

「前線交代! 行くぞアッシュ!」

「うん!」

 

 弓を背負い斧を抜いたアッシュと、拳に魔力を纏わせて俺が前に出る。その前線の交代する隙は、姉さんとマリアンヌがしっかりと魔法による援護をしてくれたので問題はない。

 

 そうして剣士と弓兵のコンビを、即席のコンビネーションで崩す。

 アッシュの持ってきたのは手斧。あくまで弓のサブだというのもあるが、投擲武器として使えるというのもおいしいのだ。

 

 それの軌道をウインドで調整して剣を弾き、コイルガンで弓を砕き、全力でアーチャーの頭を蹴り飛ばす。そして、剣士はアッシュの弓で首を貫かれていた。

 

 だが、突出した俺たち二人は格好の的であり、こちらの戦力を削るためには目敏く攻めてくるだろう。実際ロナート卿の直属部隊が俺たちの命を奪いに来た。

 

 それが、狙い通りだとは知らないままに。

 

「集団魔法・炎!」

 

 リシテア姉さんの指揮能力の高さを買われて配備された騎士団の皆さんが一斉に炎の魔法を放つ。

 その業火に焼かれて動揺した部隊は、後詰めに入っていたベレス先生とカトリーヌさんによりぶった切られた。

 

 残りは、ロナートに付き従う者たち。

 

 戦の恐怖もあるはずなのに、それでもと叫ぶ民兵たち。

 

 ……これは、きっと道を違えた貴族の成れの果て。

 だから、言葉はきっと届かないのだろう。それでも、問わずにはいられなかった。

 

「なぁロナート卿。あんたのなりたい姿って、ありたい騎士って、こんな風に自分を慕ってくれている人たちに死ねと告げて前に出すような奴なのか?」

「若造が、知ったような口を効く!」

「そうだ! ロナート様の苦しみもわからないガキが、口を出してんじゃねぇ!」

「あぁ、わからねぇよ。わからねぇよそんなもん! それは、息子さんの復讐ってのはあんたの道を変えてまですることか⁉︎違うだろ!」

 

「痛みも、苦しみも、全部明日に繋げるための過去からの贈り物なんだよ! その意味を取り違えて地獄を作るような姿が、息子さんの、息子さんたちに見せる最後の姿でいいのか!」

「もうクリストフは死んだ! 見るものなど!」

「ここに居るだろ! あんたが救った、あんたの息子が!」

 

「今のあんたは、アッシュに誇れる騎士なのか!」

「そんなもの()()()()()()! 悪逆の徒を殺せるのならば!」

 

 その声と共に、兵たちが動き始める。

 

「グダグタうっせえ!」と力任せに槍を突いてくる民兵、それを躱して殴り飛ばす俺と()()()()

 

 ロナート卿の説得は無理だったが、アッシュの心に火をつける事くらいは出来たようだ。

 

 全く、火を消すのが仕事だったというのに何をしているのだか。と、ちょっと自嘲する。いや、火炎瓶とか作ってる以上今更なのだけれど。

 

「アッシュ、どうする?」

「僕がやる。ロナート様の目を覚まさせられるのは、きっと僕だけだから。それが、僕がロナート様に救われた意味だと思うから!」

「バカ言うんじゃないよアッシュ! アンタに親が殺せるのか!」

「殺しません、ちゃんと話すために、ロナート様をぶん殴ります!」

「アッシュくんにジョニーくんがうつった⁉︎」

「人を病原菌みたく言わないでくれませんヒルダの姉さん!」

 

「皆、アッシュとジョニーを援護する。カトリーヌさんも」

『あの暴走小僧に乗るのか? お主よ……たしかに、その方が面白いの! 妾も、はっぴーえんどの方が好きじゃからな!』

 

 瞬間、世界の時間が停止する。何度か試したベレス先生とソテっさんの時を戻す力、天刻の拍動の発動準備だ。

 

『聴こえておるな暴走小僧、これより指示を伝えるぞ。今より30秒後に迂回していたクロードとイグナーツが援護可能距離に入る。故に北回りに道をこじ開けて民兵の背中を見せるのじゃ。そこを一斉射撃の計略で止める。そうして出来た道から此奴が攻め込む。二方面からの挟撃であ奴を捕らえる。……これで良いか? 全く、こまっしゃくれた指示出しなどせずともあの小僧なら殴り勝てるであろうに。では、指示は終わりじゃ。気張れよ、小僧』

 

 この天刻の鼓動は時を戻す前に時を止める。これを応用すれば、俺とベレス先生とソテっさんだけだがノータイムで秘密裏に指示出しができるのだ。発言できるのはソテっさんだけだが。

 

 時間が戻る、世界が色づく。そして、体は動き出す。

 

「道は俺が開く! アッシュは俺について来い! 最後に、親子喧嘩くらいはさせてやる!」

「ありがとう、ジョニー!」

 

 (フェイ)で北側に陣取る民兵団の中に飛び込み、風を纏わせた拳で先頭の男を吹き飛ばす。そうして崩れた陣形の中で、拳を放った勢いのまま逆立ちになり回転する。それと同時に脚部にも風を纏わせる事でリーチを延長。必殺技は少ないが、一発芸なら結構あるのだ。

 

「なんだこいつ、逆立ちのまま回っていやがッ⁉︎」

「グボァ⁉︎」

「……ジョニー、何やってんの?」

「これぞ秘伝、逆羅刹なり。どーよ?」

 

「目を惹くことに関しては、一家言あるのさ」

「ホント、予想外なことばっかりするよな、ジョニー」

「でも、ああいうのが良いと僕は思います」

 

 クロードとイグナーツの率いる弓兵隊から放たれる一斉射により民兵たちの動きが止まる。

 

「さぁ、道は開けたぞ!」

「……うん、行ってくる!」

 

 ロナート卿の陣取る砦に向けて真っ直ぐに走るアッシュ。

 そして、その背中を守る。

 

「アッシュ、そこを退け!」

「どきません! あなたから教えられた、誇りが胸にある限り!」

 

 交錯は、一瞬。

 

 アッシュが放った矢はロナート卿の馬を確実に射抜き、対してロナート卿は銀の槍を叩きつける。

 

 それを弓で受け止めたアッシュは一歩下がり、横合いから剛撃を叩き込んで槍をへし折ったベレス先生がその間に入り込んだ。

 

 そして、槍を失ったロナート卿の顔面に、アッシュの渾身の拳が叩き込まれた。

 

 雄々しい、叫び声ともに。

 


 

 それからの動きは迅速だった。カトリーヌさんが駄目押しにと示した英雄の遺産である“雷霆”の圧倒的な力に、民兵たちの心は折れゆっくりと降伏していった。

 

「しっかし、あんたらの護衛に来たのに美味しいところ全部取られちまったね」

「頑張ったのは生徒だ」

「だけど、まだ甘い。今度時間あるときにでも稽古つけてやるよ」

 

「カトリーヌさんの稽古とか超キツイ奴な匂いがするの俺だけ?」

「その分力はつくだろ。俺は行かないけど」

 

 そうしていると、ロナート卿と話をしていたアッシュが戻ってきた。もう話は良いのだろうか? 

 

「……カトリーヌさん、ロナート様が呼んでます。話があると」

「……どうせ恨み言だろうけどね」

「いえ、違います。クリストフ兄さんの真実を、あなたの口から聞きたいんだそうです」

「……わかった。ただしアッシュ、あんたも来な」

「はい」

 

 そうして数十分後、捕らえた兵士たちの勾留をガスパール領の牢に捕らえる手続きが終わった頃に二人は戻ってきた。

 

「アッシュ、どうだった?」

「うん……ジョニー、今日ここに呼んでくれて本当にありがとう。多分まだ全部は納得できてないけど、ここに来れなかったらそれすらなくて迷ったままだっただろうから」

「そっか。じゃあ、今回のお節介は成功って事で!」

 

 そして、なんだかカトリーヌさんから感じる感情も柔らかいものになったような気がした、カトリーヌさんにとっても、ロナート卿との会話は悪いものではなかったのかもしれない。

 

 そんな事を考えながら、大修道院への帰路につく。

 

 とりあえずは、今回もまた世話になった皆になにかサプライズをするとしよう。

 

 




アッシュとカトリーヌさんとロナート様の会話は、アッシュとカトリーヌさんの支援会話とだいたい同じです。
半分くらいわかってたロナート様と、手を下させてしまったカトリーヌさんと、その二人の思いを受け止めて前に進むアッシュ。

詳しい内容が知りたい人は、是非プレイしてみて下さい
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