ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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第9話 死神騎士との戦い

「やっぱ仕事できますね、門番さん。ありがとうございます」

「いえ、私に協力できる事といえばこれくらいですから!」

 

 女神再誕の儀、というのがこの七月……青海の節の終わり頃にある。

 

 先のロナート卿の反乱の際に見つかった大司教レア様暗殺計画の密書の存在により、修道院は慌ただしくなっている。それもそのはず、なにせ密書がどう見ても餌なのだ。罠なのだ。あからさまなのだ。

 

 だが万が一の事を考えてレア様の護衛は外せない。ゆえに敵の狙いが何なのかの推理、及び遊撃が今節の金鹿の課題となっている。

 

 他の学級は女神再誕の儀の際に襲われると困る書庫や武器庫の護衛を課題にされているそうだ。要は猫の手も借りたい状況なのだろう。

 

 その状況で一つのクラスを遊撃に回すとは、レア様も思い切ったものだ。

 

 とりあえず、先生に頼まれていたお使いは終わったので教室に戻る。

 

「ジョニー、早かったですね」

「ああ、門番さんが情報をまとめててくれてな。先生から話を通されてからずっと調べてくれていたみたいなんだ」

 

 その情報とは、大修道院への参拝客の数。

 どうにも、女神再誕の儀の前の週に明らかに参拝客が多かったのだと。

 

 普通、ビックイベントが後に控えているのならその日に予定を合わせるはずだ。なのに前の週に人が多かったという事は、その中に作戦の下見に来た奴がいるという事。

 

 そして、ここで生きてくるのが敬虔なる信徒であるメルセデスの証言。

 

 どうにもその日は、女神像から左手側、つまり聖廟に足を向けた参拝客が多かったのだと。

 

「裏付け取れました。推理通り敵の狙いは聖廟ですね」

「ありがとう、ジョニー」

「だが、やっば聖廟か……聖セイロスの遺体を暴いてどうにかなるのか?」

「……あー、ちょっと心当たりあるわ」

「……ジョニー……」

 

 無自覚に出ていた姉さんの手を、ぎゅっと握っておく。

 

 だけれど、何も知らないままで邪悪に連なる者と皆を戦わせるわけにはいかない。それは、命に関わりかねない。

 

「敵は、セイロスの紋章を宿した血が狙いなんだと思う。……あんまデカイ声じゃ話せないけど、紋章ってのは血に宿るんだ。だから、後天的に血を入れる事でその力を取り入れる事はできなくないんだ」

「……ジョニー、お前」

「クロさんも皆も、察してても黙って下さいねー。あんま口外されたくない話なんで」

「……わかった。じゃあ別の疑問だ。千年前の古い聖人だとしても、その血って遺体に残ってるもんなのか?」

「遺体の保存方法によります。魔導で棺は開かないってんだから中身は開けてみないとわからない。魔導やら女神の加護やらで体は生かされているって可能性は十分にあります」

 

 というかセイロスが血の重要さに気づいているのなら、コールドスリープなり遺体からすぐに血を全部抜き出すことなりで未来に血を残すはずだ。この紋章至上主義の社会を作り上げた原因はセイロス教にあるのだから、セイロス教を利用する者は逆に最も紋章に縛られる者でもある。そうであるならばセイロスの血は必ず保管されているだろう。

 

「つまり敵には、そういうのを知れる知識を持ち、かつ使いこなせるヤバイ魔導使いがバックにいるって考えて良いでしょう」

「本人が来るとは考えないのか?」

「いや、この修道院にはカトリーヌさんがいます。英雄の遺産は伊達じゃあない。無駄なリスクは避けると思います」

 

「ま、これはあくまで推測。目的なんざ捕まえて吐かせりゃいいんだ。そんなに気負わないで行きましょう。見当違いだったら一発芸やるんで!」

「お前の場合それ罰ゲームになってないだろ、ジョニー」

 

 クロさんが笑いながらそんなことを言う。

 いつもの金鹿の空気に戻った。

 

「じゃあ、女神再誕の儀は明日! 頑張りましょう!」

 


 

 そうして翌日。聖人像のある部屋に隠れて、敵が聖廟に入っていくのを見る。

 

「かなり数居ますね」

「こりゃ、戦闘区域を聖廟にして正解だったな。背後を突かないと面倒だ」

「……セイロス様の遺体を傷つけないように気をつけないといけませんけどね」

「大丈夫だ、イグナーツ」

 

「女神の名前名乗っても天罰受けてない人だっているから、多少の傷くらいは許してくれるさ!」

『誰の事を言っておるのじゃ暴走小僧!』

 

 そんな会話の後に人が途切れた。

 

 聖廟に進軍する。

 ここの衛兵さんはあらかじめ話を通してわざと休憩に入って貰ったので、無駄に命が散るような事はない。

 

 そうして聖廟に入ったその時。

 

 死神に、目をつけられた。

 

 これは、不味い。

 

 否応がなく感じさせられる死を跳ね除けるため、皆に大丈夫を伝える為、口を軽くする。

 

「ヘイ、そこの騎士さん。その仮面どこで売ってるの? 何G?」

「ふっ、それが貴様の本気というわけか。珍妙な奴だ」

「質問に答えてくれやクソダサ仮面さん。あー、もしかして上司からの指示でイヤイヤ被ってる感じ? じゃあごめん、謝る。だからその闘気を抑えて欲しかったりするんだけど!」

「貴様とて、闘う気だろうが!」

 

 聖廟はかなり広い。馬に乗っている死神は直線での機動力の面では有利だ。が、小回りと瞬間速度では馬に劣らないのが(フェイ)だ。

 

 戦闘力は間違いなく俺の方が劣っているだろうが、この小回りと小細工で生き延びる。

 

 腹は括った。そして、同時に駆け出す俺と死神。死神の武器は業物と一目でわかる大鎌。扱いは難しいだろうが、鎌の先端は必殺の領域、かといって内側に入れば鎌を引かれて背中をやられる。

 

 そうでなくても、先端の重量が増している事で槍の基本、払いの威力はえらいことになっているだろう。

 

 故に、敵の攻撃は制空権の内側で受けてはならない。

 

 アウトレンジからの魔法戦、それが俺の勝ち筋! 

 

 そうして、(フェイ)で急速に方向を変え、鎌の範囲から逃れつつ大鎌に向けてサンダーを放つ。

 

 だが、大鎌にサンダーは引き寄せられなかった。ファンタジー物質だな畜生! 

 

 そうして悠々とサンダーを躱した死神は、馬首を俺に向けて真っ直ぐに駆けてくる。鎌の素材がアレならば、鎧の素材も絶縁、もしくは耐電素材である事は想像に難く無い。良い腕してんな鍛冶屋連中。

 

 さて、思考を回すリソースはそんなに無い。死神が俺でなく他の皆に狙いを定めたのなら、それを防げるのはベレス先生くらいだろう。ラファエルは必殺圏から逃れられる速度が無い、レオニーさんは一撃を止められる力がない。ヒルダの姉さんは、一撃は止められてもその次を防げる体力がない。

 

 だから、ここは俺が踏ん張るしかない。幸いにも敵の首領はこの死神ではない。こいつを首領の元に行かせずに足止めをし続ければ、勝機は繋がる! 

 

 瞬間、止まる世界。顔を動かせないので紋章によるなんとなくの感知でしかわからないが、特に誰かが重傷を負ったというわけではなさそうだ。

 

『聞こえるか、暴走小僧! 我らは左右に分かれて進軍しておる! 首魁は棺に夢中になっているが故に、奴を捕らえればその騎士もおとなしくなろう! じゃが、貴様以外にそ奴を相手にできるものはおらぬ! 無茶を承知で言わせて貰う! 任せるぞ!』

 

 息をつく事はできないが、死神騎士の次の行動を予測する事はできる。鎌の振り下ろしにしては少し力が足りてない。故にこれはフェイント。本命はなぎ払いだろう。鎌の腹だからといっても、奴の力を持ってすれば致命傷になるだろう。

 

 だが、これはちょっと良い。この瞬間に限っては完全に動きは見切っている。

 結構ムカついてきてるので、一発かましてやろう。

 

 動き出す時間の中で振り下ろしに対して(フェイ)でギリギリを躱して上を取り、逆足の(フェイ)で空気を蹴って加速した蹴りを死神の脳天に叩き込む。

 

 しかし、その蹴りは()()()()()()()()()()()()()()()()()()、しかし肩に当たりそれなりのダメージは与えられた。

 

 背後を取っての脳天直撃コースを、ただ首を傾けるだけで致命傷を避けるとか、どんだけ戦闘経験を積んだらそうなるんだよこの騎士。

 

 だが、利き手と思わしき右肩にダメージを与えられた。ここからの反撃は……ってマジか⁉︎

 

 瞬間、腕をクロスさせて死神の()()()()()()()()()()()()()()()()()()を受ける。

 

 一度天井に叩きつけられて、その後に地面に落下する。ちょっとこれはマズイ。両腕は逝ったうえに背中の方のダメージがデカイ。仕込みで鎖帷子はつけていたが、その防御を悠々と超えていくダメージはしんどいことこの上ない。

 

 さて、ここから足技だけで足止めをするというのは現実的ではない。仕込んでいたコイルガンは今のでぶっ壊れた。

 ならば、ここは奥義を使う時だ。

 

「いやー、参った参った。両利きかよあんた」

「ふん、その薄ら笑いは変わらぬか」

「ああ、変わらないよ。鉄則だぜ?」

 

「こういう時に笑ってる奴にしか、ヒーローにはなれないんだぜ?」

「ヒー、ロー?」

「ああ。つーわけで、お約束通りぶっぱの時間だ。俺の全力、受けてみやがれ!」

 

 位置取りは不思議なことに完璧。故に、全力で魔力を解放する。グロスタールの紋章の力を使って更に力を増させる。

 

 そして、豪炎を右足に纏わせる。その魔力は俺の全開だ。周囲の魔力すら焼き消して、ウインドとファイヤーを混ぜた炎で右足に全力の力を込める。

 

 そして、一瞬伝わってくる喜びの感情。

 何故だか感情の感知ができていなかったが、どうやらこの死神も紋章持ちだったようだ。あの鎧か何かに紋章の力を外に出さないものがあったりするのだろう。

 

 奴は、戦いに生きている。だからこその強さなのだろう。

 

 笑わせる。人は戦いだけで生きているわけじゃない。訓練と、繋がりと、発見と、帰るべき日常が力をくれるのだ。

 

「戦技、旋風槍」

「戦技、マイティキック」

 

 折れた両腕の痛みを無視して、全力で駆け抜ける。そして、旋風槍の一撃目を前方宙返りで回避して右足に全体重、全スピードを込めた蹴りを放つ。

 それを止めるのは、旋風槍の二段目。これくらいは予想していたのだろう。

 

 上等だ。どうせもう止められないのだからこの技で燃やし尽くすまで。

 

「うぉおおおおおおおお!」

 

 そうして、雄叫びを上げる。

 

 だが、二段目の旋風槍の威力に押し負けて、死神の鎌の頑丈さに押し負けて、俺のマイティキックは敗れた。

 

 そうして放たれる三段目の旋風槍が当たれば、俺の命は文字通り死神に持っていかれるだろう。

 

 だから……

 

「俺たちの、勝ちだ!」

「何ッ⁉︎」

「闇よ撃ち抜け! ダークスパイクΤ!」

 

 何のためにあんなド派手に魔力を流したのか、何のためにあれだけド派手に音を出したのか。

 

 そんなもの、俺の窮地を察して助けに来てくれた姉さんを隠す為に決まっている。

 

 その一撃は、確実に死神を捉え、その鎧を貫くほどの大ダメージを与えた。

 

 だが、奴の喜びはまだ止まらない。

 

「面白い、面白いぞ!」

「待て死神! 私を助けろ!」

「自分でなんとかしろ」

「貴様ぁあ!」

 

 そうして、ベレス先生が敵の首魁を追い詰める。

 

 そうしてセイロス様の遺体のある棺の中にあったのは、一振りの剣。それを敵の首魁は取り出したが、ベレス先生にあっさり弾き飛ばされた。

 

 そして、導かれるようにベレス先生の元にやってくるその剣。

 

 その剣をベレス先生が握った時、ソテっさんと似た感覚の力が周囲を満たした。

 

「おい死神、あんなのをお求めだったのか?」

「さてな。だが目的は果たした。俺は帰らせて貰おう」

「おう、帰れ帰れ。そしてどっかの街で良い感じの子と結ばれて50年後くらいに老衰で死にやがれ」

「……貴様は何を言っているのだ?」

「だってお前戦いの中で死ぬのは本望! って感じの馬鹿じゃん」

「……否定はしないがな」

 

 そんな言葉を残して、死神は消えていった。魔法反応から言って、おそらくレスキューの魔法だろう。死神にワープの魔法が使えるとは思えないし、魔力を集める感覚もなかった。

 

 そんなことをしていると、緊張の糸が切れた。

 

「あー、やばいわコレ。姉さん、治療頼む。背中な」

「全く、ジョニーは無茶をしすぎです。心配する姉の身にもなって下さい」

「感謝してますマジで」

「では、お菓子を要求します。しょっぱいのじゃなくて甘い奴を」

「……あー、商人にガラス細工売るしかないなコレは。凝ったやつ作らなきゃ」

「頑張ってください」

 

 そうしているうちに、見知った感覚がやってくる。この小気味好い感覚は、カトリーヌさんだ。聖廟の門番をしていた人が指示通りに騎士団の本隊を呼んできてくれたのだろう。

 

「さぁ、神妙にお縄につきな!」

 

 突破の過程で死なないままに放置されていた人たちが、次々と縛られていく。

 

 戦いは、どうにか終わったようだ。

 

「先生ー、皆はどうでした?」

「軽傷はあるが、皆無事だ」

「そうだぜ? お前があのバケモンを止めてくれたおかげだ。胸を張れよ、ジョニー」

「捕らえられてたら胸を張れたんですけど、そういうわけにもいかないんですよねー。あいつ紋章使ってませんでしたし」

「マジか⁉︎……手加減されてたのかよ、あの強さでか? 何のために? ……あークソ、何が何だかわからねぇ」

 

 そんな謎を残しながら、聖廟での戦いは終結した。

 

 二度と会いたくないが、あの死神とはまた会うことになる気がする。

 その時に備えて、もっとしっかり準備しなくては。具体的にいうならコイルガンのライフル弾の開発とか!

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