ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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第13話 新しい級友(クラスメイト)、 新しい実験体(モルモット)

「ごめんねー、ちょっと気になることがあってー」

「いやいや、助けてくれただけで感謝ですよメルセデスさん」

 

 気になることとは、リッツァ先生のことだろう。案外リッツァ先生はメルセデスの生き別れの兄だった! なんてことがあるのかもしれない。

 

 まぁ、俺には関係ないが。

 

 その後は、フレンちゃんと赤髪の子を救出して離れることにした。

 

 道中は、死体だらけだ。自らの不利を悟った者たちは、すぐさま毒を飲んで死んだらしい。カリスマ性のなせる技だろう。

 

 だが、一体フレンちゃんの血を使ってなにをしたかったのだろうか? セスリーンの大紋章は珍しいらしいが、それで彼女をピンポイントで狙う必要があるかといえば疑問だ。

 

 やはり、フレンちゃん、セテスさん、レア様が何か“違う”という事が原因なのだろう。セテスさんはアレでかなりのやり手だし、レア様は警備が硬い上に本人も隠れ強い。フレンちゃんを狙ったのは消去法だろうか? 

 

 そんな死闘があってから数日後。朗報が二つやってきた。

 

「これから金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)でお世話になります。フレンと申します。改めて、よろしくお願い申し上げますわ」

「そんな知らない仲じゃないんだし、緩くて良いと思うけどな」

「ジョニー、親しき仲にも礼儀あり、です」

「それはそうか」

「ま、金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)は来る者拒まず、ってな」

「そうだどフレンさん! さぁ、歓迎会だ!」

「まぁ! ありがとうございますわ!」

「……クロさん、俺に隠れて歓迎会の準備とかしてた?」

「……すまん、俺も初耳だ」

「……ん?」

「「お前適当言ってんじゃねぇよラファエル!」」

 

 そんなやりとりの後、フレンちゃんが好きだという魚料理を作るために食料調達班が釣りをし、俺とイグナーツと姉さんはエンタメ班としてちょっとマジックを仕込むことになった。超特急での準備である。まさかの本人を巻き込んでの。

 

 姉さんと俺で細々とした仕込みを完成させつつ、イグナーツはラストマジックに使うカードを描いて貰っている。肩越しに覗いてみたが、良い仕事だ。

 

 これならば、マジックの締めには丁度いいだろう。

 


 

 ラファエルが思いつきで言ってしまうものだから、場所は町の良い店ではなくいつもの食堂。まぁ、フレンちゃん本人が納得しているのだから構わないのたが。どうせならもっと良いとのでサプライズやりたかったじゃんラファエル! 

 

「レディースアンドジェントルメン! これからお見せする奇術には、種も仕掛けも魔法もございません。では、このトランプを使ってフレンさんをめくるめく奇術の世界にご招待致しましょう!」

「まぁ!」

 

「しかし、ただの奇術というのも面白くありません。三度自分が失敗してしまったら私の負け。

 

「では、手始めに。こちらのカードの中から、一枚選んで下さい……おっと、こちらには見せないで。声にも出さないで皆に見せて下さいな」

 

「みなさーん、これですわー。言っちゃダメですわよー」と小声で言って皆に見せるフレンちゃん。皆の最後尾にいるイグナーツの仕込みには気付かなかったようだ。

 

「では! まずは一発目! あなたが選んだカードは……コレ! スペードの10!」

「まぁ! 正解ですわ!」

「……そりゃな。フレン、イグナーツ見てみ」

「はい? ……あー、酷いですわ!」

 

 フレンちゃんが酷いと言った理由、それは単純にイグナーツが手鏡を構えているからである。姉さんに指摘させるつもりだったが、自然に流れが作れた。クロさん、ナイスである。

 

「おっと、イグナーツの献身的な協力がバレてしまいましたか。では、今度はそんな事が起きないように完全にカードを隠して当ててみましょう」

 

 そうして再びカードを見せ、今度は俺にわからないように伏せたまま取らせる。フレンちゃんも今回は警戒しているのか、鏡を警戒して周囲を見渡しながらこっそり見せていた。

 

「それでは! こちらのカードをそのままカードの山に入れます。そしてシャッフル。……ここにも不審なとこがあるかもしれません。せっかくなのでさっきトリックを見ぬいたクロさん、チェックをお願いします」

「あいよ」

 

 そう言ってトランプに傷があるかどうかや、何か魔法がかけられていないかなどを見たクロさんは、俺にトランプを返してくれた。

 

 これで、前に見せたトランプ浮き上がりマジックに見えるだろう。

 

「それでは! フレンちゃんが引いたカードを当ててみせましょう! あなたの引いたカードは……コレ!」

 

 そう言って指パッチンと共に一番上のカードをめくる。

 スペードのエースだ。

 

「違いますわ! やりましたわ皆さん、一勝目です!」

「……うーん、おかしいですねー。それではもう一度、ハイ!」

 

 そう言ってもう一度指を鳴らして一番上をめくる。

 クローバーのエースだ。

 

「……また違います! ……ですがジョニーさん、もしかして調子が悪いのですか?」

「……かもしれませんね。こういう時はゆっくりカードをみつめてみましょう……おや?」

 

 そう言ってカードを広げる。

 

 その中には、ハートのエースが裏返って現れていた。

 

「おやおや、上に上げるつもりがその場でひっくり返ってしまったようですね。フレンちゃん。あなたの選んだカードは、この、ハートのエースです」

「まぁ!」

「……んー! 今度こそ見破ってやろうと思ったのに!」

「……僕の目を盗むとは、やはり流石だね」

 

「では、このカードをプレゼント。……ついでです、裏を見てくださいな」

「……まぁ! 綺麗な鹿さんの絵ですわ!」

「イグナーツからのプレゼントだ。金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)にちなんで、鹿の絵な。……本当は金鹿の絵にしたかったんだが時間なくてな」

「いえ、こんなに美しい鹿さんなら、それはもう金の鹿のようなものですわ!」

 

 フレンちゃんの感性が時々わからない。が、それは良いだろう、おいおい知っていけば良い。

 

「だがよぉ、さっきのカードの裏にはこんな絵なんかなかったぞ?」

「ご心配なく。今一番上にあったカードをひっくり返すと……」

 

 そうして、仕込んでおいたハートのエースが一番上に出てくる。

 

「というわけで、勝負は俺の勝ち。何があるわけでもないけどな!」

「お見事……あー、今回は種を見抜けなかったぜ。どうやったんだ?」

「それは秘密。まだこの手品を見せたい相手が居るからな!」

「シャミアさんだよねー」

「ええ、私も時々見ていましたわ。シャミアさんの前ではどんな手品も見抜かれてしまうのですよね!」

「今度こそ一泡吹かせてやりますよ!」

 

「……いや、もう見させて貰った。カードが上に来るトリックは分かったが、絵付きのハートのエースを引かせたやり方がわからん。初めて負けたよ」

「……シャミアさん、見てたんですか」

「というわけだ。10Gな」

「トータルの負けからは微々たるものだけど、勝ったぞ! イェーイ!」

「おめでとうございますわ!」

「てか、金かけてたのかよ」

「どうせなら真剣勝負にしたくってな」

「ちなみに、これで今は丁度200Gの負けですね。自分で稼いだお金ですし構わないんですけれど、弟が賭博の道に落ちるというのは姉として止めるべきなのでしょうか……」

「良いんじゃないか? コイツは身の程を超えた賭けはしない。どんなに不利な賭けだろうと工夫で5分まで持っていくタイプの男だ」

「お褒めにあずかり光栄です」

「まぁ、なにかと縁があるからな」

 

 それじゃあな、と去っていくシャミアさん。

 

 ……うん、どこまでが敵の手かわからないが、シャミアさんなら信用できる。それに、シャミアさんならほかの騎士団の連中や生徒をそれとなく調べる事もできるだろう。

 

 折を見て、話をするとしよう。

 荒唐無稽な敵の事を伝える為には、こちらも現物が必要なのだし。

 

 電球を出力にしたモールス信号機くらいならすぐに作れるのだが、それでどこまで伝わるかはちょっと疑問だ。

 いや、シャミアさんなら分かってくれる気がするけれども、それはちょっと高望みだろう。

 

 そうして、フレンちゃんの歓迎会は盛況のままに終わった。フレンちゃんが金鹿の女子ネットワークに馴染めて良かったと思う。まぁ、ヒルダの姉さんがいるから大丈夫だとは思っていたがそれはそれ。心配なものは心配なのだ。

 

 そうして、その日は過ぎていった。

 

 だが、一つ言わせてくれよ先生。

 

 フレンちゃんの歓迎会で黙々と食いまくるなや! せめて歓迎の言葉でもかけろ! いや、一番魚を釣ってきたのは先生だけども! 

 

 そんな本人はそ知らぬとばかりにもっきゅもっきゅと食べていた。人生楽しんでんなーおい。

 


 

「ちーっす、マイクラさん」

「マイクランだクソガキ」

「良いじゃんか、ほら、これまでの自分を超える! みたいな感じで」

「馬鹿じゃねえのかお前?」

 

 街にある牢から修道院の厳重な牢に移されたマイクラさんに、ちょっとおどけつつ話をする。この場所を突き止めるのは実はそんなに苦ではなかった。

 

 なにせ、今のマイクラさんは()()()()()()()()()()()()()()()()。後天的な紋章発現、あの連中を除けばフォドラ初のとんでもないレア物だ。

 それをハンネマン先生に告げ口し、実際に血を使って検査をし、結果として即死刑が無期懲役になったのがマイクラさんの今である。

 

 実の所を言うと、シルヴァンの実家からの嘆願書が届いたというのも少しはある。英雄の遺産を冒涜する行為を厳罰に処すのは当然であるが、それは我がゴーティエ家の不徳の致すところだと。

 故に、青くなった破裂の槍の研究を無条件に許可することと引き換えに、マイクラさんの命だけは助けてほしいと願ったのだ。

 

 それに、配下の者達や囚われていた(ということにしている)人たちが、マイクラさんを慕っていたというのも大きい。

 

 潜在的な不穏分子である彼らを、教会に従順な労働力として確保できるのは悪くない。そんな計算が働いたのかもしれない。

 

 そんなこんなが重なって、マイクラさんは実験体(モルモット)として第二の人生を満喫させることになったのだ。

 

「頼まれてた本、持ってきましたよ。けどどうしたんですかマイクラさん。今更スレン民族について調べたいだなんて」

「……連中はただ敵であるってだけの簡単な事じゃねぇ、ってことに今の今まで気付いてなかった。それだけだ」

「そうですか……それじゃあ、追加で紙とペンです。頭の中だけで“もしかしたら役に立つかもしれない事”を眠らせて置かないで、なんか残してやって下さい」

「……そうか、感謝する」

「……マイクラさんが素直にお礼を言った⁉︎」

「やっぱさっきのはナシだクソガキ!」

「冗談ですよ、マイクラさんがどんな人かは繋がったんで大体分かってます。根っこの優しいクソ野郎ですもんね!」

「……チッ、否定できねぇじゃねぇかクソが」

 

「じゃあ、今日の分の採血しますねー。ファイアー&ウインド、熱消毒旋風」

「なぁ、これに意味あるのか?」

「まだこの世界には統計で人を救う白衣の天使はいませんから証明はできてませんけど、こうやって消毒して空気中の菌を殺しておくことで傷から色々入るのを予防できるんですよ。滅菌室って訳じゃありませんから気休めの域を出ませんけどねー。

 

 そう言って、マイクラさんの腕に針を刺し、そこに容器を当ててウインドで気圧を操作して血を吸い取る。

 

 そうして血を採れた後に扱った空気を抜き、しっかりと蓋をする。

 

「……相変わらず意味わかんねぇ魔力操作技術だな」

「なにせ自分、神童ですから」

「そういうのは、二十歳過ぎればっていうがな」

「……そーですね」

 

 その言葉に、ちょっと答え辛い事を思い出す。

 

 マイクランの一件以来、俺の紋章の力は強くなった。今まで扱えていなかったことのコツがわかってきたかのように、力を引き出せるようになったのだ。

 

 だが、それは決して良い事だけを示さない。

 

 俺の体には、人の体が耐えられない二つの紋章が宿っている。後天的に植え付けられた紋章が。

 

 連中の魔導師の言うことには、このまま力のバランスが崩れていけばどうなるかは大体想像通りなのだとか。マジでくたばれ帝国。

 

 なので、俺のタイムリミットはわからない。今のところ大丈夫だが、もしこのまま二つの紋章が成長すれば、ヒトの体で耐えられなくなるかもしれない。

 

 なので、このマイクラさんの出現は本当に福音になるかもしれないのだ。人に紋章を付与できる術理が見つかれば、人から紋章を取り除く術が見つかるかもしれない。

 

 そんな下心を抱えつつ、けどそんなこと考えなくても普通に面白い人っぽいので仲良くなりたいなーとか思っていたりする。

 

「じゃ、マイクラさん。他に何かいるものあります?」

「……今のところはねぇな」

「じゃ、ちょくちょく来ますねー」

「……おー」

 

 そんな軽い会話の後に、牢を去る。

 シルヴァンにした仕打ちを考えると会わせることは正しいとは思えないが、まぁそれも時間が解決するだろう。

 

 いつかマイクラさんが処刑される時、シルヴァンに残せるものがきっとある。そう信じて、お節介を焼き続けよう。

 

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