ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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スケジュールを気にしたら大変な事になるだろう外伝ラッシュ始まりです。まずはソティス外伝から。




第17話 赤き谷に響く音色

『ザナド、そうザナドじゃ!』

「ソテっさん、どしたん?」

「今は補修中だ」

 

 戦術指揮テストの補修(ヒルダの姉さんは合格点を取った。流石のちゃっかりである)をしている先生と俺。そんな中で、唐突にソテっさんが叫び出した。今日はやけに静かだと思ったが、それは嵐の前の静けさという奴だったようだ。

 

『それどころではないわ戯け共! わしの記憶に引っかかっておったのがわかったのじゃ!』

「あー、ソテっさんが昔にザナドで生きてた人の生まれ変わりって事?」

「なるほど、そうなのか」

『早合点するなおぬしよ! というか小僧は勝手に話を作るな!』

「いや、ソテっさんが考えてるほどソテっさんの過去とか興味ないし。ソテっさんはそこにいるし」

「確かに、今では居ないと不自然だ」

『むぅ、それはありがたいことじゃが、じゃが! わしは知りたいのじゃ! 知らねばならぬ気がするのじゃ! でなければおぬしの運命に陰りが現れるかもしれぬ! わしはそれが心配でならぬのじゃ!』

「じゃあ、過去の実戦の反省含めての学習って感じでザナドに行きます? 幸いそんな遠くではないですし」

「なるほど、名案だ」

 

「ジョニーのやらかした土地なら、戦術指揮の大切さがわかるかもしれない」

「大事さは知ってますよ。ただ頭から抜けるだけです」

『それダメな奴ではないかの』

 

 そんなわけで、補修を切り上げてザナドへと向かうことになった。

 


 

「ソテっさん、なんか思い出しました?」

『わからぬ、しかし懐かしさはあるのじゃ。それに……苦しみのような感情も』

「……なら、鎮魂の一曲でも吹きましょうか」

「鎮魂の曲?」

『そのようなものがあるのか?』

「いや、フォドラにはまだないですけどね。実は俺前世の記憶って奴を持ってまして、そこであったのが鎮魂歌、レクイエムって奴です。世界は違うかもしれませんけど、まあノリは一緒でしょうよ」

『……小僧、空言は大概にせよ。これまでの突飛な行動のせいで信じてしまいそうになるではないか』

「流石に信じられない」

 

「けど、そういうのもあるのだろう」

「流石先生。ちなみに実家で言ったら英雄病疑われました」

『実家でも言ったのかこやつ……』

「ジョニーは前世では何を?」

『空言なに乗るなおぬしよ! 話題の暴走が止まらなくなるじゃろ!』

「火消しやってました。火災が起きたらすぐ出勤! 炎の中から人命救助! って感じで」

「ジョニーらしい」

『……では、何故にそのような仕事をしたのじゃ?』

「いや、前世では自衛隊……まぁ軍みたいな所に居たんですけど、そこで知り合った同期の奴に、“一緒にこの国を変えよう! ”みたいな事を言われてたんですよ」

「軍人だったのか?」

「自衛隊、守るためだけに鍛えて立ち上がる集団です。軍みたいに装備を持ってますけど、先制攻撃の権利を持たないんです。そして、それを誇りにしているトコですね」

「甘いね」

『戦を開かねば国を守れぬ時もあるだろうにの、やはり絵空事じゃな』

「その通りですね。同じことあの馬鹿も言ってました。軍主導の国家にするのではなく、ただ軍であることを国が認めるだけで守れる命があるんだって。……でも、そいつを断ったんです」

『何故じゃ?』

 

「戦争を肯定する事はやっぱできなかったんですよ。なんつーか、性に合わなくて」

 

「まぁ、そんなこんなの後で色々ありまして、結果自衛隊に居られなくなって消防に拾ってもらったんですよ」

『……ざっくりとしすぎではないか小僧』

「いや、あの日々の詳細をを話すのはアレかなーと。面白い話では……いや、他人の不幸は蜜の味って言いますし案外ウケるのでは?」

「話したくないなら構わない」

『もともと与太話として聞いておったからの』

「そうですか、それならこの話はこの辺で……っとと」

 

 そんなことを話していると、何かに躓く。なんでこんな所にちょうど足が入りそうな窪みがあるのだし。しかもなんか見えにくい感じで! 

 

「……ん? もしかして隠し通路的なサムシング?」

「かもしれない、開けられるか?」

「どうですかねー、ここに人が住んでたのって多分1000年以上前ですし。……まぁ、ソナーくらいはかけてみますけど」

 

 そう言ってなんか取手のあたりにグロスタールの紋章の力を波として流す。そうすると俺の紋章が帰ってきた力を感じ取れるので、壁の向こうの事がちょっとわかったりするのだ。

 

 ちなみに、最近覚えた技である。ハンネマン先生と色々やってる成果は出ているのだぜ。

 

「あ、奥に空間ありますね。地下探索行ってみます?」

「どうやって開ける?」

『仕掛けのようなものは見当たらぬしの』

「いえ、見つけました。取手の内側に10個のボタンがありますね。触った感じだと、古代語で数字が書かれてるっぽいです」

「それで正しい数字を入れればいいのか?」

「でしょうね。というわけでソテっさん、なんか心当たりありません? 誕生日とか」

「……青海の節の26日だ」

「ソテっさん先生と誕生日同じなんすね。言ってくれればなんか祝いの品でも送りましたのに」

『戯け、そのような気遣いは無用じゃよ』

 

 そうして、0726と入力するとガコンと音がした。どうやら、当たりのようだ。

 

「うし! じゃあ扉をこじ開けます……マジか」

「どうした?」

「先生、魔獣です。この機動からいって飛行タイプ、それが群れてます。これは逃げられそうにないですね」

『おぬしよ、どうする?』

「戦うには不利だ。弓がない。ここは隠れてやり過ごそう」

「了解です。魔獣もこの中までは入ってこれないでしょうしね」

 

 そう言って扉を開けて中に入る。

 中には結構なスペースがあった。どうにもここはシェルターのような役割の場所だったようだ。

 

 もうここにいる者はみな死んでいるのだが。

 

「……白骨死体だらけ。何年前のものなんですかね、コレ」

「埋葬してあげたい」

『同感じゃな。この者らが少しでも穏やかに眠れるようにしたいしの』

「とはいっても、この辺りの土って硬いですからね。埋めるとなるとどうしたらいいものか……」

「なにか閃かないか?」

「……ここをそのまま崩してでっかい墓にするとか?」

『それはいくらなんでも大味すぎるじゃろ。寝ていた者どもも驚いて飛び起きるわ』

「ですよねー」

 

 とはいってもこのザナドの土地は殆どが岩みたいなものだ。どうにかできるものでもないだろう。

 

「じゃあ、焼きます? 火葬はあんまりフォドラじゃ主流じゃないですけど」

『そんなことをすれば、亡骸を探し亡者が彷徨ってしまうのではないか?』

「その辺は宗教観の違いですよね」

 

 そうこうしながら進んでいくと、何やら宝物庫のような場所に辿り着いた。

 正直、お宝よりもトラップの方が怖いのでスルーしたいが、なんか惹かれるのだ。

 

 この先にある物に。

 

「あれは、笛?」

『小僧の牙笛じゃったか? あれに似ておるな』

「ご丁寧に飾られて、しかもなんか石像がある。先生、罠なんで帰りましょう!」

 

 だが、無情にも後ろの扉には鉄格子が降りていた。ゼルダの伝説かこの野郎! 

 

『気を付けるのじゃ! あやつらは動くぞ!』

「お約束通りか! 先生、右は俺が!」

「左は任された」

 

 石像はボロボロの体を動かして、魔法らしき光の槍を構えた。どうやらこの二体は、魔法攻撃タイプのロボットのようだ。ロストテクノロジーだなオイ! 

 

「だけど、狙いは甘い! そして機械ならコレが弱点の筈! サンダー!」

 

 投槍を回避してサンダーを叩き込む。しかし、雷の力は障壁を全く傷つけることなく、弾かれた。

 

 魔法が効かない障壁のようだ。いやありなのかそんなもん。と叫びたい所だが、そんな物を付けていると言うことは魔法に弱いことの裏返し。

 

「ゼロ距離から叩き込む! 戦技、ライトニングブラスト!」

 

 加速したスピードを乗せた飛び蹴りにサンダーの力を集中させる。

 

 蹴りの運動エネルギーで障壁を貫き、そのままコアにサンダーの力を弾けさせる。

 

 どうやらこのロボットは大分ガタが来ていたようで、今の一撃で機能停止したようだ。

 

「先生、ソテっさん! 片方終わりました! 障壁を超えたら魔法で簡単に崩せます!」

『どうやら小僧の方が相性が良いようじゃな』

「なら障壁を崩す。戦技、魔物斬り」

 

 先生の天帝の剣により切り裂かれた障壁の隙間から、コアに向けてグロスタールの力を乗せたサンダーを叩き込む。それにより障壁は停止し、そこを先生の剛撃により破壊された。

 

 まぁ、1000年前のセキュリティなどガタガタなのが当然だろう。整備をしている技術者もいないのだし。

 

「お疲れ様でーす。じゃあ、お宝を貰いましょうか。そうじゃなきゃこのトラップ解除できないみたいですし」

「笛を吹くのは任せる」

『……小僧なら吹くに相応しいじゃろ。しかしこの笛、青い紋章石がついておるのじゃな』

「英雄の遺産なのだろうか?」

「英雄の遺産は基本赤い紋章石ですし、違うんじゃないですか?」

『まぁ、吹けばわかるじゃろ』

 

 そんな会話の後に、ちょっとトラップにビビりながら笛を手に取る。

 

 すると、不思議と何を込めて吹くべきかがわかってきた。

 

 込めるべき感情は、赦し。

 もう、怒りのままに暴れなくて良いのだというただ一つの願い。

 

『あとは君の音を響かせてくれ。私のような亡霊はここで消えるのが丁度いいさ』

『あんたは、聖者の兄なのか?』

 

 その言葉に返す言葉はなく、しかし笑顔を見せてその幻影は消えていった。

 

「ジョニー?」

「……では、一曲いきましょう! 上の魔獣達にも響くように、強く優しく美しく!」

 

 そうして、名前のないあの曲を全力で響かせる。安らかに眠れるように、怒りはもう終わりでいいのだと伝えられるように

 

 そうして、一曲終わる頃にはなんだか感じられる空気が変わっていた。

 

「……先生、鉄格子開きました?」

「いや、開いてない」

『小僧、しくじったのではないかの?』

「いやいや、そんなわけ……石?」

 

 ふと、天井を見る。すると、そこには今にも崩れそうな予感がひしひしとする不安なヒビがあった。

 

「先生! 鉄格子破壊しましょう! ヤベー奴ですこれ!」

「あ、空いた」

「なんで時間差⁉︎、けどナイスです! 逃げましょう逃げましょう!」

 

 そうして扉を蹴り破りダッシュで地下シェルターから脱出する。インディジョーンズ的なトラップがないか不安すぎるが、それはそれだ。

 

「出れたぁ!」

「……図らずも、埋葬する事になった」

『大味じゃったがな』

 

 背後を振り返ると、そこには崩れ落ちた岩盤地帯があった。これでは、あのロボットの素材から色々するのは無理そうだ。おのれ先人のトラップめ。

 

『む? おぬしよ、あちらを見ろ。なにやら魔獣共が集まっておるぞ』

「だが、危険を感じない」

「ですね。なんか魔獣特有のビリビリって来るプレッシャーがありません。なんでしょう?」

 

 そう話しながら魔獣達の占拠している橋を通ろうとしたら、狼の魔獣に俺の手に入れた笛を見られた。

 

 そして、静かに頭を下げられた。

 

「なんか、妙な感じですね」

「害がないならそれで良い」

『じゃが、此奴らの姿を見ていると心にあった重りが取れるようじゃ。今回も礼を言うぞ、ジョニーよ』

「……この笛には魔獣に意志を伝える力があるんですかね?」

『意志ではなく、心じゃろうな。おぬしの込めた心が、この魔獣となった者どもの心を解き放ったのじゃろう。……このような奇跡、初めて見たわ』

「奇跡ですか……流石にそれで思考停止はしたくないですね、俺は」

 

「この笛を分析して、同じような効果の物を作り出して、この奇跡を日常に変えてやる。人間舐めんな」

『小僧……』

「まぁ、それをするにはまず俺の寿命をどうにかしないといけないわけなんですけれど」

「台無し?」

『じゃの』

「いーんですよ、格好つけると格好がつかないのは自覚してるので!」

 

「じゃあ、ザナド巡り、続けましょうか」

「魔獣の対処は任せる。ソティスの気の向くままに歩いてみよう」

『じゃの、わしの記憶の手がかり、掴んで見せようぞ!』

 

 尚、その日は結局大した成果は得られなかった。せいぜいザナドの地図を作ったくらいだが、ここに人が住むとは思えないので無用の長物というものだろう。なにせ山頂に毒ガス流れているのだし。

 

 アレを身を挺して教えてくれた鳥型魔獣さんよ、君のことは忘れない! 

 

『何をしておるのじゃ小僧』

「いや、鳥さんに敬礼を」

「返事をしてる」

「達者でなー!」

 

 尚、鳥型魔獣は常備していた毒消しで命は助かったので、多分3日くらいで記憶から抜けるだろう。うん。

 

 そんな、先生と俺とソテっさん、3人でのちょっとした冒険の事があった。

 

 ちなみに、帰ってからザナドの地図を見たセテスさんから先生共々怒られたのは言うまでもない。聖地だものなーあそこ。


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