ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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第19話 金鹿の守る地

 セテスさんにこってり絞られた後にベレス先生の部屋に行く。一応今回は青獅子への課題協力という形での出兵だったので報告は必要なのだ。それに、ソテっさんの知恵も借りたいし。

 

「ダスカーの件について理解した。けど、大丈夫?」

「はい。体は無事ですよ。なんなら逆立ちでもしましょうか?」

「そうじゃない」

 

「心の話」

 

 相変わらずこういうところが鋭すぎる人だ、ベレス先生は。

 

「……時間かけて飲み込んで行くんで、あんま急かさないで下さいな」

「なら、少し経ったら話を聞く。私は君の先生だから」

「マジでありがとうございます。けど、俺はまだ格好つけたいお年頃なんで」

「前世を含めれば私より年上では?」

「男はいつでも少年なんですー!」

 

 そんな話でちょっと話題がズレたが、本来の話に戻る。

 

「つーかソテっさん、いつもは無駄にやかましいのにどうしてさっきからそうなんです?」

『……わからぬ。わしは竜人というものを知らぬ。作られた紋章石が人に害なす毒になっていることも知らぬ。そう思うと、なんだか胸が苦しいのじゃ』

 

 どうやら、ソテっさんは知らない事を悔いているようだ。

 

「つまり、俺たちはソテっさんが知らないという事を知る事ができました。一歩前進ですね」

「ああ、そうだな」

『何を言っておるか! わしには何もできなかったのじゃぞ! 何も、助けになれなかったのじゃぞ!』

「「そんな事は、どうでもいい」ですよ」

『は?』

 

 少し惚けるソテっさん。だが、実際古代の村人Aにそんな責任感を持たれても困るし、意味はないのだ。

 

「だって、女神様ですら万能じゃないんですぜ? ただ不思議な力が使えるだけのソテっさんが何を背負い込みすぎる必要がどこにあるんですか。あなたは今はベレス先生の相棒で、俺の友人でしかないんです。だから、ベレス先生の手が少し届かない時にやれやれと力を貸すくらいで良いんですよ」

「そう。ソティスはソティスのままでそばにいて欲しい」

 

「その方が、嬉しい」

 

『……わかったわかったわこの馬鹿者共め! 先程までのわしの事は忘れよ! 仕切り直しじゃ! お主よ、時を戻すぞ!』

「面倒だ」

『何を言うかお主は! 仕切り直すのじゃ! あのように情けない所を見せてそのままにしておけるか!』

「……わかった」

「わかっちゃうんですね先生」

 

 そうして、時は止まる。

 

『今から、わしは独り言を言う。勝手に聞くも聞かぬも自由じゃ』

 

『ぬしらには、感謝しても仕切れぬ。わしはわしがわからぬ。だからわしはお主と小僧を助けるものだと己を定めておった。おそらくは昔、前世のわしのように。故に、わしは先ほどのように一人でいれば間違いを犯すのであろうよ。これまでも、そしてこれからも。

 

 だから、おぬしらがわしを、わしの心を見てくれる事を本当に嬉しく思う。感謝するぞ、ベレス 、ジョニー。わしと出会ってくれた事に』

 

 そうして、時間は少し戻った。そうしてアイコンタクトを一つ。彼女の本気の心を茶化すのは、面白そうだが今はやめておく事にした。

 

『では、話し合おうぞ! わしが何かを思い出せばそれが村の病を広めぬ事に繋がるかもしれぬしの!』

 

 そうして、話し合い(と言う名の夜のちょっとしたお茶会)は始まったのだった。

 

 ……尚、その事で姉さんに勘ぐられたりしたのは一生の不覚である。

 


 

 さて、そんな事があった次の日、我ら金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)はグロスタール家の要請という形でグロスタール領へと向かっている。それはどうしてかというと、まぁ同盟名物の小競り合いが起きたからだ。

 

 事を起こしたのは同盟領主アケロン。同盟らしく適当な理由を叩きつけて一方的に仕掛けてきたのだとか。まぁちゃんと宣戦布告してたからマシなんだけれども。

 

 これに俺たちが介入している理由は2つ。まず、うちのスーパー貴族であるローレンツが先生に出兵の協力を依頼したからというもの。まぁローレンツ曰くそれはダメ元だったのだそうだが。

 

 そしてもう一つの理由は、治安維持の為だ。

 現在教団ではルミール村の治療支援の為の準備が進んでいる。が、それは少ない教団のマンパワーを使うという事なので、その分治安にかけられる力が減るの。だからもし、グロスタールが抜かれてアケロンが立った場合はそれまでの秩序が狂うために相当に面倒な事になるのだ。嫌なタイミングでの挙兵です事で。

 

 もっともアケロンがグロスタールを抜けるとは教団もグロスタール家も俺たちも思っていないので、万が一がないようにするだけなんだけれども。

 

「しかし、アケロンがあっさりと崩れてくれたら、ウチの領へ顔を出せるかもしれませんね」

「あー、確かに。でもウチの経営ってグレーゾーンを最高速で突っ走ってるからなー。ローレンツに見られるのは少し不味い気がするぞ」

「グレーゾーンへと爆走させた本人が何を言ってるんですか」

「それもそうか」

 

 ちなみに、コーデリア領では出来ることは少ない。それはかつての一件により働ける男手どころか女手すらほとんど死に絶えたからだ。今はかつてあった近隣の村のほとんどを廃棄し、コーデリアの膝下でちょっとずつ力を蓄えている。

 

 ……盗賊やら山賊やら闇商人やら追放された魔導師やらを抱え込んで。

 

 いや、最初に力になってくれた自警団長の人徳(悪い方)のお陰でそういうダーティな連中がいっぱいやってくるのだ。しかし人足の関係で捕らえて何処かに引き渡すとか処刑するとかは不可能。なんで本当に救えないクズ野郎以外は俺やら団長やらの説得(たまに物理)で移民ということにして領民に抱え込んでいる。

 

 もちろん、持ち主のいない土地は冗談抜きで腐るほどあるので働かせまくっているけれども、どうしてか連中からは不満が出てこない。不思議な事があるものだ。

 

「それでジョニー、父様には何か連絡を入れましたか?」

「近況報告以外ではなんにも。まぁあの連中がちゃんと動いてるなら大丈夫だろ」

 

 そんな一抹の不安を他所に、皆はローレンツの率いる事になる領軍の指揮所に入る。こういう高い貴族用天幕を見たことのないフレンちゃんやラファエルは田舎者としてキョロキョロと目を輝かせている。苦笑されてるぞお前ら。

 

「話はついたよ皆。我々は北側の砦で敵を迎え撃つ事になる。幸いにも戦力は互角だが装備は上だ。気楽に行こう」

「はいローレンツ!」

「なんだねジョニーくん」

「いや、優勢の戦いとかロクに経験ないんだけど、何に気をつければいいんだ?」

「……まぁ、コーデリアだものな君は」

 

 そんなこんなでローレンツのちょっとした戦術講座が開かれ、先生が「よく学んでいる」と褒めたくらいの時に斥候が戻ってきた。

 

 現状は、川を挟んでの睨み合いだそうだ。

 

「ローレンツ、どうする?」

「ふむ……焦る必要はないな。大局で勝っている以上無理に戦う必要はない。防衛を密にしつつゆっくり迎撃していこう。しかし、私が指揮を取るので本当に構わないのですか? 先生」

「頼まれたのはローレンツだ」

「……その信用に、しっかりと答えて見せようとも! イグナーツくんとクロードは両翼に分かれてペガサスナイトの警戒! ジョニーとレオニーは中央で両陣への援護を。東は先生が、西はラファエルくんが中心に防衛線を構築! さぁ、私たちの勝利をこの地に刻もうか!」

 

 そうして、戦いが始まる。グロスタールの兵士たちはとても精強であり、ローレンツの堅実な用兵と相まって危なげなく捌けている。

 

 そんな中、陣営から盗賊らしき者が抜け出してきた。何故わかったのかは、自分の経験としか言いようがない。

 

「ローレンツ! 賊が抜けた! 狙いは多分兵糧! 向こうの狙いも持久戦、ここの兵糧を焼き払って一時的にここを弱所にするつもりだ!」

「何ッ⁉︎」

「どうする? ローレンツ」

「……ジョニーくん、行ってくれ! 君の速度なら盗賊に追いつける筈だ!」

「了解! 姉さん! ここは任せた!」

「ええ、いってらっしゃいジョニー。けど、無理はしないでね」

 

 そうして砦を飛び越えてショートカットして陣幕に入り込む寸前の盗賊たちにサンダーをぶち当てる。やっぱ便利。けど最近戦う連中の強さを考えると、そろそろ雷の上位魔法であるトロンの習得を考えるべきだろうか? でもなー、戦うだけの魔法ってそんなにピンと来ないのだよなー。いや、魔法陣についての知識が足りてない言い訳なのだけれども。感覚で使わせてくれやファンタジーめ。

 

 そして、着地の瞬間にもう一度(フェイ)を発動。側頭部へのハイキックで確実に意識を刈り取る。

 

 そうして中に警告しようとすると。

 

 そこで、槍を突きつけられている盗賊がなにかの薬を口にする瞬間を目にした。

 

「ガッ、グッ! ……GRRRRRRR!」

 

 そして、その瞬間にその人は竜人へと変身した。

 ダスカーのものとは違う、完全にコントロールされている竜人へと。

 

「いや、これは怪人の方が正しいかもな!」

 

 再び(フェイ)にて怪人へと近づき、サンダーを込めた魔拳にて頭に一撃を入れる。しかしダメージは見られず、紋章の共鳴も起きない。

 

 なんだコイツは? 

 

「殴った感触が人のものじゃない! これは人の形をした魔獣だ!」

「そんなの、どうすればッ⁉︎」

「どうにかするさ! 本陣に伝令頼む! 遺産持ちの先生がウチに居るからその人に!」

「なら、俺たちは足止めか⁉︎」

「不要だよ。俺は魔獣殺しのジョニー! 人の形をしてようが殺し方は心得ているさ!」

 

 そうして怪人と俺は相対する。不敵な顔で手招きしつつ風魔法でいくつか実験をする。

 

 案の定釣られてくれて怪人は俺を追って陣営の外に出てきた。思考能力の低下、力への過信、俺を本当に危険視した、さてどれだろうか? 

 

 今回の怪人はダスカーの竜人とは違い、狼の性質を持っている。巨狼というタイプの魔獣に近いのだろう。

 

 なので、とっても速い。爪は鋭く鉄を容易に切り裂くだろう。

 

()()()()()()()()

 

 大振りの右ひっかきに対して身体を滑り込ませて腕を掴み、足を払って全力で地面へと投げ落とす。

 

 背負い投げが綺麗に決まった。

 

 そして、戸惑っている怪人の口を塞ぎつつ寝技の全力で決める。そうすると、怪人との共鳴が始まった。

 紋章の力と魔法の力は感覚マンの俺には同じものなので、いまいち使い分けができないのだ。だが、今はそれで良いと思う。

 

『殺す、殺す、殺スゥウウウウウ!』

 

 それだけの叫びが、ただひたすらに流れている。自分の意思な訳はない、ただ植え付けられた衝動に任せた邪法の結末。

 

『……心が、完全に壊れてる』

 

 これは、助からない。助けられない。助かる気がそもそもない。

 

 おそらくあの飲んだものに精神に及ぼす毒の効果があったのだろう。だから、遠からずこの人は怪人から魔獣へと落ちて殺される。その未来がわかる。

 

 だから、せめて祈りを込めよう。この殺しの先に、この人が救われるような儚い祈りを。

 

「ウインド。お前の体内から酸素を全て吸い出させてもらう。苦しまずに殺せなくて、ごめんな」

 

 そうして怪人は抑え込まれたまま、窒息死にてその命を終わらせた。

 

 最後に感じたのは、殺意の発露ではなく救いを求める声だった。それは、やはり辛い。

 

 だが、辛いだけだ。まだ立てる。まだ戦える。まだ俺はジョニーで居られる。

 

 辛くても、今は格好を付けろ。それが俺のやり方なんだから。

 

「無事か?」

「はい、どうにか怪人は殺せました。けど……救えませんよ、コレは」

「……なら、今は良い。ローレンツの用兵で殆ど趨勢は決まった。戻ろう」

「はい」

 

『小僧、仮面が外れかけておるぞ。もっとしゃきっとせい。格好を付ける男の子なのじゃろう?』

「サンキュ、ソテっさん」

 

 そうして本陣に戻りローレンツに事の端末を伝え、無事に勝鬨を上げる。なんだかんだとあったがとりあえず皆が無事に終わって良かった。

 

「にしても、本格的に動いてきたなクソ共。薬による怪人化とかショッカーか。財団Bでも裏にいるのか畜生め。助けて仮面ライダー」

「仮面ライダーとは?」

「あ、先生。……仮面ライダーってのはまぁ俺の前世での……ヒーローですね。悪の組織に改造された身だけれども、人類の愛と自由を守る為に戦う仮面の騎兵のことをそう言ってるんです」

『そちの英雄か。興味があるの』

「確かに」

「ま、その辺はおいおいって事で。どうにも俺と姉さんをグロスタール伯が呼んでるみたいなんですよ。グレーゾーンがバレましたかねー?」

「骨は拾ってやる」

「おのれ……」

『凄んでも悪意が見えぬので全く怖くないの』

「それはそうだ」

 

「ジョニーは、優しさから怒る子だから」

「そういうのは言わんで下さいな先生。ガチに恥ずかしいですから」

「ジョニーは、優しさから怒る子だから」

「恥ずかしいって言ったよなオイ! この人は本当に!」

 

 そんな馬鹿な会話をしている所を姉さんに見つかり、「あなた、先生に気を許しすぎてはいませんか?」などと小言を言われつつもグロスタール領へと赴くのだった。

 


 

「君たちの育ちは聞いた。ジョニーくん、リシテアくん、君たちをグロスタール家へと迎え入れたいと私は考えている」

 

 グロスタール伯の私室にて、俺と姉さんはお茶を出されている。ローレンツの父親らしい、良い雰囲気の茶器だ。

 だが、そんな馬鹿みたいな提案を受け入れる必要はどこにもない。なので答えは決まってる。

 

「お断りします。あいにく骨を埋める所はもう決めてるんで」

「私もです。というか、体の問題で子供は産めませんし、私達の価値ってそんなにありませんよ」

「あ、でも俺らが死んだ後にコーデリアをグロスタール家に譲渡するみたいな契約書なら書けます。それで良いですか?」

「……意思は固いのだな」

「「はい」」

 

「好きに育てなかった身ですけれど」

「死ぬ時は好きにしますよ。それを望んでくれる人がいますから」

 

 そんな言葉がすらすらと出た事に、姉さんと共に苦笑する。昔よりは、きょうだいをやれている気がする瞬間であった。

 

「ならば、良いか」

「あ、この場での話がどこかに漏れてどうこうってのはしませんのでご安心下さいな。多分ですけどお互いに探られたくない腹はあるでしょうから」

「……」

「これは独り言ですけど、ウチで起きた紋章付与実験、それに使うグロスタールの血ってのはどこからやってきたんでしょうね?」

「……分かっていて、何も言わぬのか?」

「だって、ローレンツが良いやつでしたから。多分グロスタール伯は騙されたんだなーって」

「……それで良いのか?」

「私は思う所がない訳じゃありませんよ、この愚弟じゃありませんから。なので、私たちをこうした奴らを潰した後であなたへどう報復するかは考えるか迷う程度です。……まぁ、それくらいにどうでも良いって事ですよ」

「そうか……感謝する、コーデリアの二人の天才よ」

「じゃあ、そう言う事で。お茶貰いますね」

「ジョニー、はしたないですよ」

「構わぬさ。子供は元気な方がいい」

「……なら、私も頂きます」

 

 実の親ではない血の繋がった彼と、俺たちきょうだいの縁が結ばれた一時であった。

 


 

 そうしてローレンツに先立ってガルグマクへと帰って、グリットさんのクソ婚約者問題を闇商人ネットワークと芸人ネットワークにて潰した翌日、ローレンツは戻ってきた。

 

 なんだか妙な顔をしたままで。

 

「ジョニーくん、リシテアくん。君らに話がある」

「グロスタール伯関係の話ですか?」

「いや、英雄の遺産関係だ。グロスタールに伝わるテュルソスの杖、その使用権利が私と()()()()()()()()()()。……父上に何を言ったのだ?」

「いや、お茶を飲んだだけですよ」

「……まぁ正直魔法がさほど得意ではない私には持て余すモノだったので構わないが……分解などしないよな? ジョニーくん」

「いや、流石にまるっとわからんもんに手を出したりはしねぇて」

 

 それに、流石になんか罰当たりな気がするのだ。今までに見た英雄の遺産の生々しさとかを考えると。……まさか神獣の素材で作ったモンハン的武器だったりしないよな? とちょっと悩みつつ、遺産の修復素材であるダークメタルをどう集めようかと3人で悩む事になった次第である。

 

 テュルソスの杖という遺産があっても問題にはならず、なんだかんだと俺たちグロスタール紋章三人衆は仲良くしていた。

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