ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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第23話 皇女殿下暴走曲/獄中の友人

「おはよう、ジョニー」

「おはようございます、お姉様。所で扉には鍵がかかっていたようなんですけれど」

「少し強く回したら空いたわよ?」

 

このお姉様ゴリラの類ではないだろうか?と思う次第である。

 

「さぁ、一緒に鍛錬に行きましょう。授業の前に走り込むのでしょう?」

「まぁ、そうなんですけど」

 

そんなんで運動着に着替えて走り始める俺とエガさん。

 

ここ3日ほど、だいたいこんな目覚めである。

 


 

エガ姉は、おそらく酔いによって俺に恋心を抱いてしまっている。実質もう振ってるのに付き纏うとか馬鹿じゃねぇの?とは思うが、その本気を受け流す事は俺にはできない。

 

それに、本人の本気をこれがまたギリギリのラインを攻め続けているのである。あからさまに敵なのだ!というオーラである負の紋章オーラを放っているモニカさんは、エガ姉の監視的な人なのだろう。どうにか事故を起こしたいんだけどどうしよう。そして決して色恋のような話を他人がいる中では話さないし(ヒューさんを除く。マジごめん)、俺が他の女子と二人きりになるのを避けさせる程度だし。強く言えない状況なのだ。

 

という話を、最近見つけたとある場所在住の新たな友人に話した所「もっぺん振るしかないだろ、拗れるぞ」と言ってくれた。無駄にイケメンなコイツの人生経験なら信用できるかもしれない。うん。

 

「それで、盗賊の出どころは分かったか?」

「セイロス騎士団の情報網だと雇われとしか分かってなかった。ツテで調べてみたけど、最近の騎士団……ってか学生のせいで表に出れなくなってた盗賊連中がこの話に乗ってるみたいだな。けどそこまで、雇い主の匂いからいって俺の追ってる奴らとは違うってくらいだな」

「へぇ、どんなのだ?」

「フォドラを牛耳る悪の組織」

「ならそいつは違うな。連中は結局雑魚だし、緩い」

 

ちなみにツテとはうちの自警団長(元盗賊)の古い友人とのこと。ダメ元で聞いてみたら情報をくれたわけである。本当に良かったわ味方になってくれて。

 

「……強いのか、今年のクラスは」

「あたぼうよ。金鹿には俺がいる!……ってのは冗談として、ファドラの未来を担う連中が集まってるからな。次期の権力者とのコネ目当てだったりで。そりゃ例年より質は高いってもんだよ」

「だけど、そういう連中ってプライド高くないか?」

「そうでもないぞ?男子連中は基本仲良いし、女子連中は一部の引きこもりを除いて普通に接してるし」

「……そうだった。お前がいるもんな」

「俺がいることと連中がいい奴だってことになんの関係があるんだよ」

「類は共を呼ぶって奴だよ」

「あー、ありそう」

「あるのかよ」

「だって俺守りたい人の為にその人の弟になった男だし」

「お前もストーカーみたいなもんじゃねぇか」

「うっせぇよ()()()()

 

そんな会話の後、不定期コンサートと約1名の感動のため息によるアンコールを終わらせてそこを去っていった。

 

ガルグマクの地下に隠されているアビスというこの場所から。

 


 

「あらジョニー、どこから出てきたのかしら不思議ね」

「俺はエガ姉の行動が不思議だよ」

 

いつも通りコソコソと隠れながら進んで行ったのにどうして近くにいるのだろうか?

 

「愛よ」

「愛なら仕方ないか」

 

ファンタジー世界だし、そういう事もあるのだろう、うん。

 

「んで、エガ姉さん。ちゃんと言葉にしないと伝わってないんじゃないかと思ってもっぺん言うんだけどさ」

「貴方がリシテアを女として愛してるという事?分かってるわよそんなの」

「だから、貴方の想いには答えられない」

「だから私は奪うのよ、ジョニー。貴方を貴方から」

「……ノータイムですか」

「ええ、心に決めるとはそういう事なのでしょう?」

「まぁ、そうなんだろうけど」

 

「まぁ、時間はまだあるのだしゆっくり追い立てていくとするわ。帰りましょうジョニー」

「あ、すまんハンネマン先生の所に行かないと行けないから別な」

「なら一緒に行きましょう、ジョニー」

「……ハンネマン先生にあんま研究されたくないだろ?」

「いえ、あの人は信用できるわ。貴方とああいう風に接していたのだしね。それに、今の私の紋章について少し調べたいもの」

「へーい」

「緩いわね、貴方」

「そりゃな」

 

最近色々あってハンネマン先生との個人授業(仮)はなかなか時間が取れなかったが、その分大量のデータは纏めてある。

 

より良い知見を得られると願いたいものだ。

 

「やぁジョニー君、エーデルガルト君。エーデルガルト君は何か用かな?」

「ええ、少しジョニーに関係してる事で」

「……ジョニー君、彼女は」

「エガさん個人は大丈夫です。全体は不明ですけど」

 

「なら、いつも通りにレポートを頼むよジョニー君」

「はい」

 

そうしてバッグに入れていたレポートを渡す。いつも思うが、クリアファイル欲しいなーと思う次第である。今はないのでそこそこ頑丈な薄い木(くれたラファエルも名前は知らなかった)で挟んで持ってきているが。

 

「ふむ……ふむ⁉︎……ジョニー君、君の笛を見せてくれるか?」

「はい。どうぞ」

 

そうして、伝える笛(仮)を渡す。ハンネマン先生は興味深くみた上で、紋章石を入念にスケッチし始めた。

 

「なんか変わり事でも?」

「……フォドラにはこの紋章についての記述はない。だが、古い友人からの手記にこの紋章を描かれた笛と共に旅をする楽士が居たと聞いたのだ」

「一度フォドラから離れた血が戻ってきたって事ですか?」

「ああ。しかし完全に同一なものかはわからない。今度友人に話をしてみるつもりだ」

「あざっす」

 

「おっと、順番を間違えてしまった。エーデルガルト君、君の用件を済ませよう」

「少し自分の紋章について調べたくて。機材を借りたいと」

「紋章を?……その白い髪、まさか⁉︎」

「そういう事です。ですが、ジョニーの感じた限りだと私は完成品だと」

「比較的寿命はあるってだけだよ。身体に邪魔なもんは邪魔だ」

「そうか、君はセイロスの小紋章の他に別の紋章を持っているのだね」

「ですが、その紋章の疼きがあるときより治ったのです。その確認をしたくて」

「それならば構わない。だが……」

「ハンネマン先生は、口が固い方だと信じています」

 

渋々といった様で肯くハンネマン先生。そうしてエガ姉は機材に血を垂らした。

 

そこには、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何ぞコレ⁉︎」

「これは、どういう事だ⁉︎」

「ジョニー……」

 

「あなたは私の心に、傷をつけてくれたのね」

「言い方ァ!」

 

「……エーデルガルト君、君はどういう状況でこの現象が起きたと思っているのだい?」

「私の心にジョニーが真っ直ぐに踏み入ってくれたことがきっかけかと」

「君の、紋章共感か」

「はい。まぁ色々あってエガさんに使うことになったんです」

「それでコレか。……訳がわからないな」

「憶測ですが、ジョニーと私が本気でぶつかった結果だと」

「なるほど、ではやってみようか」

「この前もやって失敗したじゃないですか」

「何かが変わっている可能性もあるじゃないか」

「まぁ、やりますけどね!紋章、タッチ!」

 

当然、なにも起こらない。

 

「殴ってみるかね?」

「マヌエラ先生に言い訳ができるならどうぞ。俺は弁明しませんよ?」

「なら、これで仮説は立てられた」

 

その言葉に、俺とエガさんは興味深く耳を傾ける。

 

「君の紋章共感は、相手が激しい感情を表に出しているときにのみ使えるのだろう。今は心が表に出ているからと解釈しておく。そして逆に、きみの笛はさほど大きな感情でないなら共感させることができる。個人に対して有効な紋章に対して、大勢に対して有効な笛という事だろうな。紋章の力の手の届かないところに力を届けようと工夫した結果だろう。……しかし、とすると……君はこの笛を害意や殺意を込めて使ったことはあるかねる?」

「ないですけど」

「……なら、これはそういう遺産なのだろうな。忘れてくれ。君は君のあり方でその遺産と付き合っていくといい。どうせ君以外にはただの笛だ。……だが、君にとっては笑顔を作る素晴らしい相棒になる。扱いを誤らないようにね」

「はい、先生」

 

「では二人とも、今日はこれまでだ。エーデルガルト君には必要ないかもしれないが、ここでの話は3人の秘密で頼むよ」

「「はい」」

 

……隣のエガ姉の顔を見るのが怖い。なんかすごく艶やかな空気を感じるッ⁉︎

 

助けてヒューさん!ってヒューさんはモニカの相手でいっぱいいっぱいだよ!女神様の馬鹿野郎!ソテっさんと混同されて駄目属性つけられてしまえ!

 

『なんだか謂れのない侮辱を受けた気がするのぅ』

 

あ、先生!ソテっさん!ヘルプミー!

 

「こんにちは、先生」

「先生、どうもです」

「珍しい?」

『確かに、あの陰気者がおらぬのぉ』

「ヒューさんならモニカさんと色々やってますよ。寝てた事で色々鈍ってたらしいんで」

「そういえば、モニカの事をよく知らない」

「先生だって聖人じゃないんですから、仲良くない人なんて……やべぇ、ほとんど居ないぞこの人。コミュニケーションモンスターだ」

「照れる」

『こやつの言葉にも慣れたものじゃの』

 

「仲がよろしいのですね、(せんせい)

「なんか他人の気持ちがしないんですよねー。ソテっさんが

「そういえば、ソティスが同じ事を言っていた」

「へー、ふーん、そうなの。あなた、近くに想い人がいるのにそんなに手が広いんだ」

「誤解にも程があるというか、そもそも俺にも選ぶ権利があると思うんだが」

『なんじゃと小僧が!表に出ぬか!お主よ奴をしばいてやれ!』

「だが、たのしそうにしている」

『ん、お主よどうした?……大丈夫には思えぬぞ!本当にどうしたのだお主⁉︎」

 

「ジョニー、補修を前倒しにしたいのだけど、今日は大丈夫?」

「あー、すいません。今日はマイクラんとこ行かないと行けないんで」

「そう……」

『お主、まさか⁉︎。わかった言わぬ!言わぬからこれ以上頭の中でそれをやめよ!わしを狂い殺す気か!』

 

真面目になんぞや。先生は俺の事を弟的に思ってるだけだろうに。アレか、だからこそ弟に先に恋の話が来て面倒になったのか?

 

流石に家族的愛情を男女のソレと同一視する原因なんてないだろうに。なんでだろ?と思ったけど割と天然の先生の話だし、あり得なくないぞ。どうにかして誤解を解かねば。

 

「じゃあ先生、エガさん、この辺で。まだ明るいとはいえ気をつけて下さいね」

「そういうところよ、ジョニー」

『そういう所じゃぞ、お主よ』

「気をつける。ジョニーも気をつけて」

「はーい」

 

「それで師、話があるのだけど」

「私も。聞きたいことがある」

『小僧、ここにおらぬ事を恨むぞ……』

 

ごめん聞こえてるからやめて、ごめん俺には無理ですはい!

 

「あ、ジョニー。ハンネマン先生の所からの帰りですか?」

「姉さん。まぁそんな感じ。んでこれからはマイクラのとこに持って行く本を借りに来たのさ」

「休日でも忙しい奴ですね。働いてないと死ぬんですか?」

「いやいやいや、マグロじゃないんだから」

「マグロとやらを私は見た事ないですけどね」

「そーだよなー。米と一緒に早く見つけたい。多分東にあるんだ!」

「あんたの東に対してのその執念は相変わらずすぎてなにも言えないけどね」

「魂の故郷だからさ。いつか姉さんと一緒に見つけたいとか思ってるのさ」

「はいはいどーも。それじゃあ手分けしましょうよ。私はマイクランの事を特にどうとも思ってないけど、ジョニーは気にかけてるんでしょう?早く行ってあげなさい」

「はーい」

「伸ばさない」

「へい」

「……何度目ですかこのやりとり」

「わかんない?俺もわかんない」

「暗に自分は馬鹿だと言ってないですかあなた」

「暗にじゃないけどな」

「普通に頭は悪くないと思うんですけどね、ジョニーは」

 

そうして手分けしてスレン民族についての本と、北方への旅行記のようなものを見つけて借りる事にした。アッシュ曰く、スレン民族の国まで行った騎士の話が載っているとの事だ。

 

脚色はあるだろうが、まぁなにかのイメージにはなるだろう。

 

「じゃあね、姉さん」

「ええ、せいぜい捕まることがないように」

「ま、またすぐ戻ってくるけどな」

 


 

とりあえず面会にやってきた俺。あいにくと今日は馬鹿話をするにはテンションが足りてない。なので自虐話を初めにするとしよう。

 

ていうか!問題が問題だからマイクラさんとユーリスくらいしか相談できる人居ねぇんだよ!話す人が居ないのと、信用相応にに口が固い奴なのだから理由は違うけどさ!

 

というわけで、薬にもならない愚痴である。

 

「ってな事があってなー」

「自慢か手前」

「自虐だよ。本当に惚れた女以外に思われても辛いだけだぞ?本気で言われるんだから本気で返さないとダメじゃねぇか。でもそれで悲しい顔見るのも辛いじゃねぇかよ」

「どんな理屈だよ。向こうが勝手に思ってるだけなんだから普通に振れや」

「さっき振ったんだけど、さらに勢い付いて来た」

「……いや、今までは馬鹿にしながらも笑える話だったが、今回は笑えねぇよお前。どうすんだ?」

「どうすっかなー本当」

 

なんて話をしていると、マイクランのレポートと本と、マイクラさんへの本の検閲が終わったらしい。まぁ凶器や犯罪計画がない事を確認してるだけなんだけれども。

 

「差し入れは受け取った。本とレポートは受け取れたか?」

「20枚で合ってる?」

「ああ、問題ない。……アレがどれだけ役に立つかなど考える必要もないがな。お嬢様はさして重要視せんだろうに」

「いい加減名前で呼んでやれよお前」

「煩い、嫌いなものは嫌いと言ってなにが悪い。どうせ俺は死ぬまでここなんだから、こんな事聞く奴も居ないしな」

「そりゃだよなー。うん、お前が牢から出ないような事を祈るよ」

「何じゃそりゃ」

「何だろな」

 

一頻り笑ってから別れを告げて面会室を後にする。

 

エガさんの事を考えると、卒業してすぐ、あるいは在学中にでも準備が整ったらやってくるだろう。それが具体的にどんな計画になるのかはこれから軌道修正するだろうけど、苛烈なものであるのは間違い無いだろう。

 

ならば、それまでに色々準備しておきたいものだ。

 

 

 

と、ふと俺のやっている事を客観視してみる。

 

俺は教会に技術協力をする事で連中の動きを掴むという役目、帝国と組んで連中をぶちのめす手駒になるという役目、コーデリアに帰って両親と姉さんを幸せにするという役目を持っている。

 

なんだろう、キャパオーバーで空回りするか、“お前は知りすぎた”で殺される未来が見えるぞう。某鋼の漫画の中佐的に。

 

「なに百面相してんだよジョニー」

「あ、たまたまだなシルヴァン。たまたまだな!シルヴァン!」

「わかってんだからたまたまを連呼すんな馬鹿野郎!」

 

ちなみに俺が面会に行くときに牢屋近くにシルヴァンがナンパという名目で現れるのは毎度の事である。最近はその事を知ったグリットさんがわざと“休日はあの辺りに行きますかねー”とか言っておくくらいに。本人は実際には行かないけども。

 

「んで、ナンパの成果はどんなもんだ?」

「空振りじゃなきゃ俺はここにいねぇよ」

「そうだな、仕方ない。そういえばゴーティエ伯に届けてほしい書類があるんだけどお前暇なら近況報告と一緒に送ってやっちゃくれないか?差出人は不明でいいって話なんだけど」

「ああ、構わねぇよ」

「そりゃよかった。ちゃんと届けてくれよ」

「あいよ。まったく今日は女運が無い日だぜ」

 

「いい加減素直になんない?」

「なれるなら、苦労はねぇんだよ。お前自分を殺そうとした奴とすぐに仲良くはなれねぇだろ?」

「いや、そうでもないけど」

「お前を引き合いに出した俺が馬鹿だった。普通は勇気が必要なんだよ」

「へー」

 

「シルヴァンは普通には見えないけどな」

「ったくお前は……」

 

今日は頑張れよーと声をかけて、マイクラさんが呼んだ本を見る。

本当にしっかりと読み込んだ後が見える。若干まだ荒っぽいマイクラさんっぽい跡だ。

 

図書館に写本のアルバイトがあるならちょっも手伝いに行こう。そんなことをちょっと考えていた。




煤闇の章プロローグでした。尚煤闇にはEP3からの参加になります。場所が場所ですからね!途中参加はアリだと思いました。

尚、ニンテンドードリーム5月号のインタビューによると、煤闇の障害は本来マイクラン戦の前くらいにある出来事だったそうです。しかも本編には関わらず、本編では別の解決をした結果のパラレルワールドだとやんわり言われてました。

なのでこの小説でもパラレルワールドという事で、気にしないでいただけるととってもありがたいです。
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