いや、周回要素ありありなのに終章なかなかに難しかったです。主に強すぎるペガサスナイトが!
逆に言えばペガサスナイトの処理さえちゃんとすればどうにでもなるマップでしたねー。光の槍の必殺はクソでしたが。
まぁ、天刻使いまくりましたけどね!いや、レア様にたどり着くまでがしんどすぎるねん。レア様はヌルゲーでしたけど。
やってきたガルグマク大修道院のお偉いさんであるセテスさんに事情聴取を受ける俺と少女、ベルナデッタ=フォン=ヴァーリ。寝巻きのままというのはアレなので外套を着せてあげたが、一緒に送られてきた荷物の中に彼女の服が入っていたそうなので今は別室で着替えている。
それに対しても怯える子鹿のように俺の背中から離れなかったが、流石に裸を晒すのは抵抗があったのか俺が扉の前で警護するという約束の元でようやく着替えをしてくれている。
ちなみに、姉さんとドロテアは戻らせた。女子2人にお菓子などを運ばせるのは少し心苦しかったが、事情が事情なので仕方がないだろう。
「……あの! 居ますか? ジョニー君!」
「居ますよー。ゆっくりで大丈夫ですから」
そうして、貴族の令嬢が着るような綺麗な仕立ての服の上に俺の外套を着た少女が現れた。
「いや、なんで俺の外套着てるんだし」
「ひぃい! ごめんなさいぃ!」
「……では、話を聞かせてもらおうか」
そうして、始まる事情聴取。といっても、話しているのはやはり俺とセテスさんだけだった。ベルナデッタはひたすらに怯えていた。
「うん、大丈夫。ここには君を害する人はいないから」
「その通りだ。……信じ難い事だが、君の事情はわかった。ヴァーリ伯のご息女が入学するという話はあったからな」
「うう、ベルを無理矢理こんな所まで!」
「落ち着けってベルナデッタ。なんにせよ早いとこお前の引越しを終わらせないとだろ? いつまで俺の後ろに隠れてんだ、早いとこ自分の部屋を作って、そこで落ち着いて色々考えればいい」
「そ、そうですね……」
そんなわけでセテスさんの尋問はそのあたりで終わり、ベルナデッタの荷物を一緒に部屋に運び入れる事になった。
「少しいいかね?」
「はい、大丈夫セテスさん」
「彼女を拉致同然に連れてきた事から、彼女の境遇は察せられる。彼女の心の傷は相当に深いものだ」
「ええ。でも特別扱いはするつもりはありません」
「普通に、手助けします。ベルナデッタと友達になれたら、きっと面白そうですから」
「そうか……ジョニー=フォン=コーデリア。君のことは覚えておこう」
「いやー、これからたくさん迷惑かけると思うので、その辺のお目こぼしをしてくれるとありがたいですねー」
「自分が問題児という自覚があるなら直したまえ。拾ってくれたコーデリア家に泥を塗るつもりか?」
「……すいません、直そうと努力はしてるんですが、どうにも頭より体が先に動くタチでして」
「……まぁ、いいだろう。引き止めてすまなかったな、行くといい。彼女が産まれたての子鹿のようになっているぞ」
「ですね」
そうして、捜査のために詰問部屋に運び入れられていた荷物を俺が持ってベルナデッタの部屋に行く。
「お、このガーデンスペース通れそうだな」
「ひぃ! こんな人が多い所を歩くんですかぁ⁉︎」
「そりゃ、近道だし」
そうして歩いていると、なんだか愉快な声が聞こえてきた。
「待たせたな! 私が茶器を持ってきたぞ! 貴族なら貴族らしい上等な茶器で飲まなくてはな!」
「あ、もう始めちゃってますフェルディナントさん」
「まぁ、茶器の良し悪しとかわかんねぇしな! 俺は!」
「それは威張るところではありませんよカスパル……というかウチの弟は何をしているのだか」
聞いたことのある声と、聞いたことのない声がちらほらと。
「悪い、もうちょっと遅くなる! ちょっと引越しの手伝いする事になってさ」
「ジョニー君! 大丈夫だったの⁉︎」
「ああ、なんとあの子、新入生らしい。誘拐とかではなかったみたいだ。ベルナデッタ、挨拶できるか?」
「む、無理ですぅ! ベルに、こんな大人数相手に何かできるわけないじゃないですかぁ!」
「そっか、じゃあ俺から。彼女はベルナデッタ=フォン=ヴァーリ。帝国の貴族だけど、筋金入りの引きこもりだ。多分かなりの問題児っぽいけど、色々頼むなドロテア」
「えー、私?」
「帝国貴族ならば、黒鷲の学級だろう! ならばこのフェルディナント=フォン=エーギルに任せたまえ!」
「いや、同性の方が色々良いだろ。野郎はこういうのには向かねぇから。…….じゃ、そんな感じで」
「ジョニー、早くしないとお茶菓子がなくなってしまいますよ」
「そこはこっそりキープしてくれたりとかは?」
「しません。お茶会は戦争なので」
「じゃあ、なるはやで戻ってくるよ」
「なるはやって?」
「なるべく、早く。どう? ちょっとお茶目な気がしない?」
「む、ジョニー君。正しい言葉を使い民の模範となるのも貴族の務めだ。気をつけた方がいいぞ。たしかに軽快な響きであったが」
「……面白い奴連れてきたな、シルヴァン」
「俺もそう思う」
「じゃあまた後でなー」と声をかけてベルナデッタを体で隠しながら先を急ぐ。
話しながら横目でベルナデッタを確認してみたが、顔色は悪くなる一方だった。
セテスさんの言う通り、これはかなり根が深い問題かもしれない。
どうして俺は大丈夫なのかは少し疑問だが、それはそれだろう。
「大丈夫か、ベルナデッタ」
「ダメです、早く引きこもりたいです」
「そっか……なら急いで部屋を作らないとな」
「……ジョニーくん、どうして駄目って言わないんですか? 私、今すごい迷惑をかけてます。初対面の人に、どうしてそこまで優しくなれるんですか? わかりませんよ」
「んー、その場のノリ? まぁ、俺もよくわからないんだけどさ」
実際、なんとなくほっとけないだけなのだ。なんだか苦しんでいる気配が伝わってきて、それを見て見ぬ振りはできない。それだけなのだし。
「裏があるのは分かってます! ……でも、その裏がわからないんです! じゃなきゃ、ベルに、ベルに優しくしてくれるわけ!」
「じゃあ、一つお願いを聞いてくれるか?」
「なんですかぁ!」
「いつか、心の底からの笑顔を見せてくれ。俺にとっては、それが一番の報酬なんだ」
「……え?」
「そういうわけで、部屋行くぞー」
そうして、部屋の扉を開けて中に荷物を丁寧においていく。
とは言ってもベルナデッタの荷物は本当に最小限であったため、時間は全くかからなかった。
これも、実家で冷遇されていたことが原因なのだろう。
溜まってくる怒りを押し込めて、笑顔の仮面を被っておく。
この部屋の前の持ち主が残してくれた、ちょっとしたいたずらを手に。
「じゃあ、ベルナデッタ。部屋の片づけも終わったことだし、一つプレゼントをば」
「プレゼント?」
「俺からじゃなくて、この部屋の前の人が残してくれたものだけどな。寂しくないようにっていう願いが込められた、プリティーな一品だよ」
「……見えませんが?」
「そりゃ、隠したからな。だが、こうしてテーブルに布を被せて、魔力を与えると……ハイ!」
そうして、熊の人形が一瞬にして出現するというマジックを披露してみせた。
まぁ、仕込みをする時間はあまりなかったので、布で目線を切っているうちに蹴り上げた熊をテーブルの中心に置くという単純にして無理矢理なものだったが
ベルナデッタのポカンとした表情からして、手品は最高のようだ。
「コイツに同封されてた手紙はコレ。前にこの部屋を使ってた人も、ホームシックで苦しんでたんだってさ。でも、友達ができて、世界がちょっとずつ広がって、なんとかなってきたらしい。ベルナデッタにそうなれって言ってる訳じゃない。けど、そうなってくれたら、俺は嬉しい」
「広がる、世界……」
「ま、まずはドロテアあたりと仲良くするのを勧めるぜ。1人じゃなくなれば、ちょっとずつ世界は広がっていくだろ」
「あの、ジョニーくんは?」
「俺? 当然手助けはするさ。でも、本当の意味でお前を救えるのはお前だけだ。だから、な」
その言葉になにかを感じ取ってくれたのか、ベルナデッタは何かを考え込んでいた。部屋も片付いたのだし、長居は無用だろう。
「じゃ、お茶会に行ってくるわ。持ち帰り出来そうな菓子があったらくすねてくるから、期待しないで待ってろよー」
「あ、あの!」
「ん?」
「ありがとうございます!」
その、必死の声に応える言葉は一つだろう。
「どういたしまして!」
お茶会には、今日の午後の馬車で来た同盟のラファエル、イグナーツ、レオニーの三人に訓練所で汗水を流していた王国のフェリクスと帝国のカスパルが追加で参加した。なにやらイグナーツは居心地が悪そうだし、フェリクスは終始不機嫌だったが、フェルディナントが持ってきた一級の茶器と茶葉、追加で買いに行った茶菓子などによりとても楽しい時間を過ごすことができた。
「同盟の三人とは、これからも仲良くなれたら良いな」
「そうですね。……まぁ、レオニーとラファエルは私たちを子供扱いしてくるので、そこを実力で黙らせることから始めないといけませんけれど」
「実際年下じゃねぇかよ」
「年下扱いが気にくわないのです。同じ年に士官学校に入ったのなら、それはもう同期で括れる筈なのに」
「ま、おいおいな」
「ジョニーは嫌じゃないんですか?」
「んー? 別にどうも。最初侮ってくれてた方が楽なこともあるし」
「そう、ポジティブにはなれません。私達には、時間がないのに」
「時間はあるよ」
「ジョニー?」
「ハンネマンって人は、紋章学の権威だ。だから、その人のとこにいれば俺たちの紋章を安定させたり、捨てたりする方法を見つけられる。そうじゃなきゃ、わざわざこんなとこまで義父上たちを放っておいて来るかっての」
「そんな、夢のような可能性を信じてるんですか?」
「信じるさ。だって、可能性にゼロはないんだから」
強がり混じりの笑顔とサムズアップで、姉さんに勇気を見せる。
正直に言えば恐ろしい。二つの紋章に魅入られて外道の実験に与することになってしまうかもしれない。だが、姉さんがこれから先の未来を生き残る可能性を掴むには、これしかなかったのだ。
だから、やるしかない。やるべきだ。やりたいのだ。
「じゃあ、また明日」
「ええ、おやすみなさい、ジョニー」
そう言って、姉さんの部屋を出る。
さて、今日は月が綺麗だ。どこか散歩にでも行きたい気分になる。
そうしていると、貴族の馬車がガルグマクに入ってくるのが遠目に見えた。
あれは、確かエドマンドの家の家紋だ。
とすると、同級生だろうか? 野次馬根性でちょっと行ってみよう。
そうしていたのは、荷物だけを残して去っていく馬車と全てを諦めているような雰囲気の美少女だった。
「これから、どうしましょうか」
「とりあえず、ガルグマクにやってきた事を知らせるのが最初かな? 寮長さんがまだ起きてるかは微妙だけどさ」
「……あなたは?」
「ジョニー、ジョニー=フォン=コーデリア。同盟出身だから、同級生になるのかな?」
「私は……マリアンヌと申します」
「じゃあ、案内するよ。実はちょっと散歩したい気分でな。そのついでに荷物運びくらいはするよ」
「いえ、そんな事をして頂く必要は……」
「その結構な量の荷物、運び切れる?」
「……すいません、お願いします」
「任された!」
そうしてマリアンヌさんの荷物を手分けして持ち、寮長さんの所に行く。
「うん、やっぱ良い月だ」
「月?」
「上、見てみ」
「……本当ですね。なんだか、吸い込まれてしまいそう」
「その時は俺も連れてってくれ。星の世界って凄く興味があるんだ」
「ふふっ」
そうして、寮長さん(物凄く不機嫌だった。寝ようとしていたらしい。ガチにすいません)に話を通して鍵をもらい、貴族部屋のある二階へと足を向ける。
「さ、着いたよ。ベットは備え付けのがあるから、とりあえず寝ちまうのが良いよ」
「……そうですね」
「じゃあ、マリアンヌ」
「また、明日!」
「は、はい」
そうして、ガルグマクにやって来る生徒たちの第一陣は終わった。
なんだかこれから先の生活がちょっと楽しそうに思えてきて、なんとなく月に向けて手を伸ばしてみた。
そうしていると、今日の恥ずかしいやらかしが自然と思い出される。あかん、考えないようにしなければ。
と、考えていると余計に思い出してしまう。その場は良くても、後から振り返るとものすっごく恥ずかしいのだ。
「あー、ちょっと皆に言いたい事があるんだが、良いか?」
「なんだ? コーデリアの雷落としさん」
「あー、それも訂正したいけどそれは後な。さっき連れてた彼女、ベルナデッタについてなんだが……」
「ふむ、たしか顔色が悪かったな。それが理由か?」
「ああ。彼女、多分人間関係にものすごいトラウマを抱えてる。俺は多分恩人って事で感覚は麻痺してるみたいだけど、それもいつまで保つかはわからない」
「つまり、それの治療に手を貸して欲しいって事か?」
「いや、ちょっと違う。ベルナデッタが自分で扉を開けて誰かと繋がろうとした時に、それがどんなに不恰好でも受け入れてやって欲しいんだ」
「ふん、弱いな」
「優しいんだよ、多分な。だから、皆は積極的にどうこうするとかじゃなくて、ゆっくり彼女を見てやって欲しい。この通りだ」
そう言って、皆に頭を下げる。あげられるものなどないのだから、誠意は姿勢で示すしかない。
「……一つ聞く、お前には何も関係ないそいつの為に、どうしてお前が頭を下げる?」
「だって、関わっちまったから。ちょっとでも繋がったから。だから、ベルナデッタの笑顔を守りたい」
「オーケーだ。お前さん、思ったよりも良い男だねぇ。フェリクス、こいつは一本筋がちゃんと通ってるお人好しだ。こいつに免じて、彼女にはゆっくり接してこうぜ? ……まぁ、訓練バカのお前には縁はないかもしれないけどな!」
「黙れシルヴァン」
そんな、道化を演じてくれたシルヴァンのお陰で自分の声は少しくらいは届いたようだ。
俺の手は二本しかない。その手で誰を守るかはもう決めている。そこは絶対に曲げるつもりはない。
けど、俺は知っているのだ。二本しかない人の手を、どこまでも届かせる方法を。
それをかつては表面的にしかわかっていなかった。繋いだ先が崩れて落ちる苦しみを味わったのは今世になってからだ。
だが、それでも繋ぐことは諦めない。
それが、リシテアが格好いいと言ってくれたジョニーという奴の姿なのだから。
「じゃあ、場を白けさせるだけなのもなんなので、一発芸やります!」
「このテンションからそれは自爆芸しかねぇだろ⁉︎」
そうして、本日大活躍のフクロウの羽を使ったマジック。パームで消したように見せたフクロウの羽を、微弱な風魔法を使って空に飛ばしてドロテアの帽子の羽飾りにするマジックだ。
結果は、本人でさえ帽子を取らないと気付かなかったという大成功っぷりを見せた。
もっとも、魔力を使って何かするという事を見抜かれていた姉さんには、少し滑稽に見られていたかもしれないが、それはいいだろう。
そんな訳で、ベルナデッタについての賄賂を渡すついでに一芸の役に立って貰ったのだった。
すると、ドロテアはこのショーマンシップに対抗して、帝国のミッテルフランク歌劇団の歌姫をやっていた美声でのアカペラ演奏でこの場を盛り上げてみせた。
うん、俺の手品が前座になった気がしなくはないが、歌声が綺麗だったので問題はない。
今日やってきた連中だけでこれなのだから、噂に聞く皇女王子に次期盟主、その他様々な経験を経てこのガルグマクにやってきた者達が来たらどうなるだろうか。
学業には正直期待していなかったが、楽しくなってくれると嬉しい。
そんな未来を、このお茶会に見ていた。
そして、そんな風に格好つけた自分を、今の自分はぶん殴りたいと思うのだった。