前の話は読み返してやっぱSEKKYOUはやなーと思った時でした。言葉一つ一つをちゃんとすれば説教という名前の心のぶつかり合いにできると思うのですか、そううまくは行かないものです。
そんなこんながありつつも、プロット上へと帰還します。今回はラファエルイグナーツ外伝。何気にジョニーくんの天敵タイプの初登場でもあります。
「なぁ、提案があるんだが」
「何よクロード、改まって」
「そうだな、かえって不気味だぞ」
「ひっでぇ。ま、俺も同じ事思うけどさ」
「5年後、ガルグマクの千年祭の日に、俺たち全員で集まらないか?クラスの分け隔てなく、ただの同期として1日を過ごすって事をさ」
「……素敵な話だけど、そういう事に真っ先に飛んで来る彼の姿が見えないのだけど」
「だな。ジョニーの発案じゃあないのか?」
その言葉に、クロードは一瞬目を伏せ、ヘラヘラとした仮面を外して真っ直ぐに2人を見つめる。大切な、仲間の為に。
「これは、俺の案だ。あいつに未来の約束を、大切な約束をしてやりたい。皇女殿下は知ってるだろうけど、あいつら、コーデリアの姉弟には残された時間があんまりねぇ。だから、ジョニーはリシテアを、リシテアはジョニーを救うためになんでもするだろうさ」
「だから、そこに待ったをかけてやりたい。あの2人を救いたい奴は、お互いだけじゃないって事を教え込んでやりたい。あいつみたいな繋ぐ力はないから、こんな真似になっちまうが……頼む、この通りだ」
そうして、クロードは2人に頭を下げる。その姿にディミトリは快諾し、エーデルガルトは内心を見せないでそれを頷いた。
そしてそれは、白鷺杯の後夜祭の後片付けをしていた面子から広がり、ガルグマク大同窓会として改めて企画される事となった。
その中に件のお祭り野郎の存在があったことは言うまでもないだろう。
「あら、ジョニー。奇遇ですね」
「アハハハハ、どうも奇遇ですねレア様。ですが用があるのでこれにて……」
「用とはなんでしょうか?力にはなれませんか?」
「いやいやいや!大丈夫ですから!ちょっとアレがアレしてアレなのでさようなら!あとこの前は本当にすみませんでした!」
「……謝ることはありませんのに」
「てな事が頻発していてだな」
「は?お前なにやったんだよ真面目に」
「打ち首に、される覚悟で、頬を打つ」
「なんか良いリズムだな。馬鹿な内容な事を除けばよ」
「なぁユーリス、これはアレかな?帝国のマフィア流の、“死ぬ前に、美味いもん食わせてやるよ……”的な奴かな⁉︎」
「切実に知らねぇよ!つーかこっちはアビスのこれからの営業計画の基本を練るのに忙しいんだ!愚痴ならクラスの奴に言え!」
「……あいよー」
「まぁ、いざって時は一緒に逃げてやるからそんな落ち込むな。な?」
「優しさが傷にしみるぜ畜生!」
「傷なんてねぇだろが馬鹿野郎」
そんな会話を友人とした。
現在は12月、星辰の節の中頃。
今節の課題である旧礼拝堂の調査のついでにアビスに寄り、結構金に大雑把なアルファルドさんのために、あるいはこれからのアビスの財政を担う者のために教本を作るやユーリスにちょっと絡んでみた。
いや、切実な理由はあったのだけれどね!マジでレア様に合わせる顔がないのである。
何せ!俺は!
妙齢の!女性を!
引っ叩いて!怒鳴って!泣かせたのである!
しかもその女性にはこの世界最高の権力者という肩書がついている。なんともアレな話だ。
やっぱ、今からでも土下座しに行くか?だけどカトリーヌさんに知られたら俺殺されるよな!
という堂々巡りがまた始まった頃、戦いの匂いを感じた。嗅ぎ慣れたくない、嫌いな匂いだ。
そうしていると、先生とイグナーツとラファエルが皆を集めている場面に出くわした。
「先生、どうかしたんですか?」
「ジョニー、今出れる?」
「はい、戦闘は可能です。笛も魔力も小道具もありますんで」
「ならお願いします!今度は助けられるかもしれないんです!」
「イグナーツ、焦ったらなんにもならねぇぞ。皆を集めるにはジョニーくんを頼った方が楽だ。ゆっくり、けど急いで話そうな」
そうして語られたのは嫌な事実。
グロスタールからリーガンへ向かう商人に限ってのみ魔物の被害が出ているという事をイグナーツの兄が教えてくれたということ。それはつまり
俺の紋章や笛のように、意図的に魔獣をコントロールできている奴がいるかもしれないという事だ。
そんなのは、当然のように連中絡みだ。戦いに行かない理由はない。
しかし、そうなるとエガ姉の周りを引き抜くのは難しい。声をかければ黒鷲の連中も青獅子の連中もついてきてくれるだろうが、それでは足が遅くなるし、スパイ達に友人以上の繋がりを見られてしまうだろう。
最速での証拠の確保を目的とするならば、金鹿だけでの行動が最適だ。
そんなわけで金鹿フルメンバーで噂の街道に赴く。道中なんか姉さんにジト目で見られていた気がするが、心当たりはない。いや、まさかコレもレア様の策略か……?
……さて、それじゃあどうやって学校から逃げ出そうか考えようか。
そうして商人たちを追いかけて見つけたのは。商人たちを襲い、追い詰めている盗賊たちと
追い詰めた商人たちを
そいつと、ふと目が合う。
それだけで、俺たちは共感した。
その男は、さして特別だったわけではない。普通に同盟で暮らし、普通に騙され魔術師崩れにより改造されて魔獣になった。
だが、そいつがおかしくなったのはここからだ。
追手の兵士を殺した時、こいつの心は喜びを覚えた。
道行く戦士を殺した時、こいつは力に味をせしめた。
そして、魔獣の力で一方的に弱者を嬲る時、こいつは命を玩具として見るようになった。
強くなった自分の退屈を貸してくれる、とても楽しい玩具だと。
「んな事許せるわけがあるか。だからお前をぶちのめす」
「許す?何言ってんだお前。俺もお前を好き勝手にやってるだけだろう?
そう、彼の心は言っている。
その言葉に、反論する言葉は俺にはない。ずっと頑張ってきたけれど、どうしてもそこだけは変えられないのだから。前世でまともに立てなくなった時、俺に生き方を教えてくれたあの人のノート。そこが俺の
俺の仮面の下は、所詮その程度の人間なのだろう。
だから俺はそいつの心を黙って受け入れ「何人の弟を馬鹿にしてんですか。あんた」
そうして、深入りしすぎた俺の心を姉さんが守ってくれていた。
「は?そいつはお前と違って化け物だぜ?なのになんでお前みたいな人間が味方をするんだ?」
「知りませんよそんな事。化け物だろうが異世界人だろうが転生者だろうがジョニーは私の家族です。なら、家族が妙な空気に化かされて騙されるのは普通止めるでしょう」
「……え、化かされる?」
「ジョニー、あんたこいつの心に引っ張られすぎてましたよ。自分を見失なうくらいに。あんたは私の弟なんだから、もっとしゃんとしなさい。もっとカッコよくありなさい。あなたの仮面は素敵なものだけど、その内側の方がもっと素敵なのはジョニーと出会った全部の人が知ってるんですから」
そんな言葉が、俺を俺に戻してくれる。
かつて仮面だったそれが、何故俺の生き方の指針になれたのか、その理由を思い出させてくれる。
単純な話、俺はヒーローごっこが好きな中二病野郎なのだ。だからその根っこを揺さぶれば、俺はさっきのように崩れる。
「……あー!あー!あー!そういう事かお前!どうやったら俺の心を嬲れるかって事を実際にやりやがったのか!根っこの記憶の価値を削るとか最悪すぎて笑えねぇぞこのクソ野郎!お前なんかラファエルにぶちのめされちまえ!さっき見たお前の楽しんだ記憶の中にラファエルっぽい商人さんが居たぞクソが!」
「ジョニー、戻りますよ。これまでのあんたみたく心のぶつかり合いでどうにかできる奴じゃあありません。きっちりと殺してやりましょう。私たち、
そうして姉さんの手を繋ぎ、おれはこいつとの共感を切る。
アレほどの力を垂れ流しているのは恐怖を煽る為で、俺はそれに当てられてしまった。まだ理性の残っているヒトだったから、そんなことが出来たのだろう。
右手の先にある姉さんの手を少しだけ強く握った後、手を離す。
名残惜しいのは、仕方がないだろう。男の子なんだから。
「先生!あいつを笛で退かすのは無理です!周囲の盗賊もろとも、ぶっ飛ばしてやりましょう!」
「わかった。行こう皆!」
「おうよ!」
真っ先に駆け出すラファエル。その力は盗賊4人を一撃で吹き飛ばした。次に動くのはイグナーツ。ラファエルを狙ったアーチャーをさらに遠方からの狙撃で殺して回っている。
そして、続くのが俺たち兄弟だ。俺の紋章の力をレーダーにして、テュルソスの杖を狙撃銃にして、姉さんがその力を撃ちまくる。
「「合体魔術、ガトリングスナイプ・ドーラΔ!」」
それは、英雄の遺産にふさわしい力の振るい方だった。
一騎当千、万夫不当。そんな言葉しか浮かばなかった。
「改めて見ると、凄まじいな」
「私はあんたの姉ですよ?これくらい当然です」
「何故に上がるのは姉のハードルなの⁉︎」
「なんででしょうねー」
そうして壊滅した盗賊たち。残った魔獣に対して皆が総攻撃を仕掛ける。
だが、やはり奴は強い。先生の天帝の剣の事を俺から知ってしまったのだから、警戒するのは当然だった。
「じゃあ、ミスはサクセスで返せって事で!援護よろしく姉さん!」
「私の分もぶっ飛ばして下さいね、ジョニー」
「戦技、アクセルモード」
そうして、ギアを上げる。
バレルにより強化された
雷を纏った、神速の蹴りを。
「戦技、ライトニングソニック!」
障壁を紋章で抜き、コアを一撃で破壊する。
そして、その時に真っ先に飛び出たのは最初と同じくラファエル。
その鋼の籠手に力を込めて、魔物の頭蓋へと拳を叩き込む。
「うぉおおおおお!」
戦技、魔物崩し。それが、ラファエルの放った一撃であり。
知らずに両親の仇討ちを果たした、男の拳であった。
「ラファエルくん、僕は……」
「ならローレンツくんが偉くなってくれれば、こいつは解決だな!」
「ッ!ああ!約束しよう!このような蛮行は二度と起こさせはしないと!このローレンツ=ヘルマン=グロスタールの名にかけて!」
残ってた盗賊たちへの
先程イグナーツには告げたのだが、あの魔獣が両親の仇だと知っても恐らく笑うだけだろう。
器が本当に大きい、ラファエルはそんな
「じゃあ、撤収しよう。商人の皆さん、気をつけて」
「はい!ありがとうございました!治療魔法の件も含めて、必ずガルグマクへと贈り物を届けたいと思います!ありがとう!士官学校の皆!」
「おお!だけど、無茶すんなよー!」
そんな言葉を最後に、今回の戦いは終わった。
最近の激闘の数々に比べればなんてことはない、ただの戦いであった。
「で、ジョニー。覚悟は決まったんですか?」
「ああ。しっかり腹割って謝ってくる。どんな理由であれ間違いは間違いだからな。ケジメは付けないと」
「ま、大丈夫だと思いますけどね」
「あいよ」
「ジョニー?」
「ああなんでもないですよ、先生。怖がる前にちゃんと謝らなきゃなって話をしてただけです」
「私も行こうか?」
「いえ!ご心配なく!」
『あの権力にヘタレてた小僧がよくも持ち直したものじゃわな』
「ヘタレちゃうわ」
「?誰に言ってるんですか?」
「友人だ」
「友人にだな」
「ちょ、ちょっと!ここには私たち三人しか居ないじゃないですか!何を変な事を!」
そんな会話と共に、俺たちはガルグマクへと帰っていった。
そして、レア様の私室で俺はジャパニーズスタイルの極地、土下座にてレア様の頬を叩いた事を謝り倒す。
そうだ、これまでうまくいきすぎていたから忘れていたが!俺は基本的にやらかしては本気で謝るの繰り返しで生きていたのだ!
「あ、頭を上げてくださいジョニー!」
「ですが、レア様に至りましては」
「……では、罰を与えましょう」
「なんなりと仰って下さい」
駄目そうなら逃げるので!
「私と、お茶でもしませんか?」
「構いませんが、それが罰になるとは」
「私は、あなたのあの行動を怒っていませんの。だってアレは、私を思っての事なのでしょう?頬に痛みはありませんでした」
「だから、なぜそうしたか、そういったことを話し合うために、お茶を飲みませんか?」
「恐ろしい罰になりそうですね」
嫉妬の炎とかでさ!
「さて、どうなるのでしょうね?」
そんな会話の後レア様への釈明と、学園での取り止めのない、アビスでの面白い話、外でのさまざまな冒険の話をした。
その全てを、レア様は親戚のおばさんくらいの感じで見守ってくれていた。
なんというか、肩書きの目を眩ませていたのは俺だけだったようだ。面子とかその手のことは気にせず、レア様はちゃんとレア様をやれている。それに前からあった影はどこか薄れているような気がしていた。
そんな天の上の人とそこそこ仲良くなった話が、始原の宝杯を巡る戦いの、俺の終わり方だった。
ラファエルは強くて格好いい男!速ささえ補強できれば最強クラスの男!個人的に作者が大好きな男!
ですが、あまり見せ場は与えられませんでした。鈍足パワータイプの表現って難しいのです。