ファイアーエムブレム風花雪月 双紋の魔拳   作:気力♪

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迷いに迷った結果としてプレイした本編!その時に気づいたあの人の存在!全ては、繋がった!

という訳で、FEであるからこその超力技で解決した問題とその他諸々。心を助けるあったかいものは絶対にコレにしたかったのです!という妙な拘りが投稿をここまで遅らせました。申し訳ありません。

原作よりちょっとだけ心が成長して、言葉を受け取っている先生です。どうぞ。


第30話 愛されている事

 12月29日、星辰の節の終わりの頃。

 

 廃協会からジェラルトさんの亡骸を皆で持ち帰り、レア様と俺で身なりを整えていた。

 

 ジェラルトさんの残った身体は呆れるほどに古傷だらけで、しかしそのどれにも強さが、引けなかったときの覚悟が、さまざまな勇気が感じられた。

 

 “壊刃”ジェラルトここにあり。もし、消し飛んだ体の半身があればそんな事を言って起き上がるなんて事を想像してしまうだろう。

 

「でも、レア様。どうして俺をこの秘術の助手に?」

「あなたなら、理解できると思ったからです。使い方も、この術が生み出された意味も」

 

 そう言って、粘土細工のように整えたジェラルトさんの半身の代用品に、仮初の形を与えていく。

 

 おそらく、先生のお袋さんであるシトリーさんの遺体もこのようにして傷ついた臓器などを補完し、時を止めたのだろう。

 

 仮初の命を与えるこの術は、確かに呆れるほどの魔力の精密操作と大量の魔力付与があればそれを実現できる。

 

 本来は延命措置のために作られただろうその術は、前世でのコールドスリープによく似ていた。

 

 ……起こす手段がまだないということも含めて。

 

 だから、死体を補完し保存する術式に変わっていったのだろう。レア様が、あるいはレア様にこの術を教えた誰かが悲しみを受け止める時間を作るために。

 

「……終わりました」

「ええ、死後の世界がどんなのかは知りませんけど、これなら手と足に困ることはないでしょうよ」

 

 そうして、仮初の半身を作ったジェラルドさんにブリザーをかけて防腐処理をしてから布をかぶせる。

 

「じゃあ、俺はこれで。……先生と話してきます」

「ありがとう、ジョニー。あなたがいてくれたから、私は少しだけ無理をできました」

「……一番上の人が、勝手に倒れたりしないでくださいね」

「分かっています、それくらいは」

 

 そうして、霊安室を去っていく。

 すれ違ったアロイスさんは、泣きそうな目をしながら、感謝の言葉を述べてくれた。ジェラルトさんの死出の旅のために、心を砕いてくれた事に、深く深く。

 

「救えなかった奴に、それは一番しんどいんだよ」

 

 そう、小さく呟いて目的のモノがある食堂へと向かう。

 

 小器用に不器用な自分だ。先生と話すにしてもやはり真正面から行くしかないだろう。

 

 自分の心にある、大切なあの味で。

 


 

『のぅ、お主よ。いつまでそうしておるつもりじゃ?』

 

 そんな事を、ソティスから言われる。

 しかし、わからないのだ。自分の心が。

 

 時を戻す力で、ジョニーと二人で、絶対に助けようと戦ったその結果、傷つき倒れ、余計に父が傷ついただけ。それを決して許すつもりはない。

 

 そう、それだけなら自分は復讐の為に戦えただろう。心の内に鬼を飼うディミトリのように、あるいは鬼を心で支配するジョニーのように。

 

 だが、最後のあの時、ジョニーの力で父と最後の会話をした事で、父がそれを望んでいないという事がわかってしまった。

 

 父の最後の思いは、言葉にすればたったの一言。それが、自分の立ち上がり方を迷わせていた。

 

 憎しみで立つのでは、父に顔向けができない。

 他の何かで立つ事を、私はまだ知らない。

 

 だから、こうして父の手記を手に取ってじっとその内容を読み返していた。

 

 自分がどれだけ愛されていたのかが、伝わってくるそれをじっくりと。

 

「私は、父に愛されていた」

『そうじゃの』

「けど、私はどうだったの? ちゃんと父を愛せていた?」

『……そんな事も分からんのか。おそらく儂のせいじゃが、それでも心の成長が遅すぎる。情を知り、恋を知り、愛を知ってようやく人の子らしくなったというのにな』

 

 そんな言葉を投げかけるソティス。その姿は他の誰にも見えないが、ふんわりとした暖かさが自身の背中を撫でてくれている事を伝えてくる。

 

 その愛にも、自身は答えられているのかわからない。

 

 そんなことが、自分のちぐはぐさを表しているようで嫌になった。

 

 こんな自分の中に、立ち上がるための何かはあるのだろうか? 

 

 ……そうしていると、ふと優しい匂いが感じられてきた。

 

 不思議な匂いだった。誰かが食べ物でも持ってきたのだろうか。

 

 そういえば、しばらく何も食べていないことに気がついた。心の痛みでそれすらも感じられていなかった事に苦笑する。

 

 誰だか知らない……わけはない。こんなことをする人間などガルグマクでは一人しか知らない。

 

 何故なら、明らかに風の魔法で匂いが部屋の中に入るように整えられているからだ。

 

『食べるかの?』

「食べよう」

 

 そんな言葉と共に、ベレスは一晩ぶりに部屋の扉を開けた。

 

 そうして見えたのは、多くの生徒の心配する顔。金鹿の学級だけでなく、青獅子も黒鷲も揃っていた。

 

「先生!」

 

 そんな声が聞こえてくる。本当に皆に心配されているのがわかり、そのことが申し訳なく思える。

 

 自分にそんな価値は……

 

 などと思っていても、腹の虫は鳴る。この美味しそうな匂いが悪いのだと内心で言い訳をしながら、ベレスはその鍋をファイアーで温めながら風で匂いを送っていた張本人に声をかける。

 

「ジョニー?」

「はい。お腹空いてると思ったんであったかいのを持ってきました」

 

「美味しい匂いだけど、見た目が泥水?」

「言われてるぜジョニー。だからまともな料理にしろって言ったろ」

「うっさいですよクロさん。この料理は魔法のスープなんですからこれで良いんですよ」

「信用できねぇなぁ、アレの事も含めて」

「信用して下さいよ、アレの事も含めて」

 

 などと言われながらも、器にスープがよそわれた。

 

 茶色のスープに、白い塊。海藻などがあるそのスープは、とても暖かかった。

 

 温度ではなく、心がぽかぽかする。不思議なモノだった。

 

「先生、どうぞ」

「……ありがとう」

 

 その言葉と共に匙を受け取り、スープを救って飲む。

 

 それは海藻の味がよくなじんだものに泥のような色のものが混ざり合い、かつて魚醤の料理を味わったときのような旨みが感じられた。そして白い塊をすくって食べると、ふわふわの食感によくスープの味が染みていた。

 

 そして何より、スープ全体が不思議な暖かさに包まれていた。

 

「ジョニー、これは魔法?」

「俺が昔受けた、笑顔の魔法です。あったかいものを飲むと、心もあったかくなるんですよ」

 

 そう言ったジョニーは本当に優しい顔をしていて、紋章で繋がっていなくても何を考えているのかが理解できた。

 

 本当に、心の底から、自分の心に熱をくれている。

 

 かつて灰色の悪魔などと言われていた自分の心が変わったのはいつだったかわからない。

 

 けれどきっと、きっかけなどないのだろう。

 

 ジョニーが私と共にいれた事。そこから広く生徒たちと、教師たちと、騎士達と、そして父たちと繋がれたのだ。

 

 だからきっと、今があればそれでいい。過去は切り離せないけれど、自分の事は少し嫌いになってしまったけれど。

 

 この“好き”に関しては、誇れるのだと私は思えるようになれたのだ。

 

「ご馳走様でした」

「お粗末様でした」

 

 そう言って器を返す時に、私の手がジョニーの手と触れ合った。

 

 そこで紋章の繋がりは生まれなかったが、きっとそんな事はどうでもいいのだ。

 

 だって、あれだけ閉じていた私の心が前を向いて開いている。

 

 父のことは、決して忘れない。けれど、その最後の言葉を遂げる為に何をすれば良いのかを、本当の意味で理解できたからだ。

 

 この、暖かいスープのお陰で。

 


 

「幸せにな、ベレス 」

 


 

 その為に、今日を生きよう。ようやく私はそう思えた。

 

『まったく、気づくのが遅いぞお主よ。お主は見えてないものが見えるようになってしまったから困惑しただけで、芯も根も変わってはおらぬじゃろうが』

 

 そんなソティスの言葉に、「そうだったのか」と納得してジョニーの方を見る。

 

 ジョニーは、集まった皆に大鍋のスープをよそっていた。そうして広がる「うめぇ!」「美味しいですコレ!」という声。

 

 特にフェルディナントなど本当に愉快に顔を変えていた。それだけ暖かく美味しいスープだったのだコレは。

 

「ジョニー、これはなんて料理?」

「味噌汁……じゃフォドラに通りは悪そうですね。ミソスープってことで」

 

 そう言ってジョニーはしてやったりという笑顔を見せた。そんな顔を見て呆れたように笑うリシテア。

 

 この二人の絆がどうなっているのかはわからない。けれど、きっと失恋だって構わないのだ。

 

 そんな事を、母の事を大切に思っていたが故に今地下に居るアルファルドを思い出して思った。

 

 負けるつもりは、ないのだけれど。

 

『お主、意外と負けず嫌いというか、肉食じゃの』

 

 そんなソティスの言葉に、内心で頷いた。

 


 

 先生に、そしてついてきた皆に振る舞ったのは、我が魂の故郷日本の魂の料理、味噌汁である。

 

 俺が麹を作り出させたというわけではない。アンナという謎の行商人が倭刀のついでに持ってきた食料のなかにあったのだ。

 

 味噌を作るために必要な必須なモノ。種麹である。

 

 種麹とは、要するに味噌やら醤油やら日本酒やらを作るために必要なカビの元である。

 

 それを培養し、帝国への技術提供(という名目のただの協力関係)により生まれた資金の余裕で大豆(ヒヨコマメ)と塩を買い、魚醤の時に作ったフォーメントβにより発酵を促進させて作ったのがこの味噌である。

 

 麹からの味噌作りはやった事があるのでどうにか味噌と言えるだけの味に整えることができた。それは本当に良かったとしか言いようがない。そこまで大量に塩やらを買い込む財力はまだないのだから。

 

 ……これから種麹とフォーメントβの魔導理論によって儲けるつもりであるのだけれども。

 

 そうして作り出したのが、今回先生に振る舞った味噌汁だった。勢い余ってにがりを使っての豆腐まで作ってしまったがそれに後悔はない。

 

 だって、先生は()()()()()()のだから。

 

 かつて、子供の頃に涙しか流せなかった自分を変えてくれたあのときのように。

 

「やっぱ魔法のスープだよ。味噌汁は」

「はいはい、調子に乗らないの。あんた、これから先生にアレを使ったって言わないといけないんですよ? 私はぶん殴られる方に賭けます」

「いいじゃねぇかよ、美味しいんだから」

 

 とはいえ、やはり問題は大きい。

 味噌は、このフォドラではあまり受け入れられるような見た目ではないのだ。

 

 その先入観をぶっ壊すきっかけに同期の皆がなってくれると良いなとおもった今日なのであった。

 


 

「ジョニー、あなたあんなモノを作ってたの?」

「仕方ないじゃないですか。食べたかったんですから」

「まぁ、美味である事は否定しませんよ。目を瞑れば」

「ヒューさんは言葉のナイフをしまって下さい。それと味噌を受け入れさせるための知恵もついでに下さい」

「お断りします」

「ケチー」

「前世を含めると私たちより年上なのに何を子供見たく言ってるのよ」

「精神は体に引っ張られるんですよ」

「断言しますエーデルガルト様。これは詭弁です」

 

 などとぐだぐだな会話をしながら、闇に蠢く者たちについての情報を暗号でやり取りする。今は、帝国への技術提供という建前の時間だ。

 

 暗号のやり方は目の前の魔力式豆電球にライトがつくかどうかでの、モールス信号だ。モールスさんはこのフォドラにはいないからジョニー信号、あるいはコーデリア信号となるのかもしれないけれど。

 

 利便性などかけらも考えずに適当に作った符号テーブルなので、闇に蠢く者たちにモールス信号を知る者がいても内容までは通じないだろう。暗記しているのは俺とヒューさんだけであり、紙は燃やして捨てた。どうせ短い間しかお互い使わないのだからこれで良いだろう。

 

『タレスは何者?』

『連中の頭、正体の確信はなし』

 

「所でジョニー、あなたって(せんせい)にも気があるの?」

「エガ姉はなんでそんな乙女回路を走らせるようになったのかなぁ……」

 

『帝国の者?』

『なので、我々が殺します』

 

「昔、あんな風に元気付けて貰ったことがあったんですよ俺。だから、大切な人の死に苦しんでる人には昔からああしてるんです。励ますのも、ほっとくのも違いますから」

「それはちょっと気になるわね」

「はい。あなたの人格形成は意味不明ですから」

「意味不明って酷くないですヒューさん」

 

『モニカの役割とは?』

『不明ですが、先生への対抗策かと』

 

「子供の頃、火事で死にかけたんです。んで、命を助けられたんですよ。その人(ヒーロー)の自分の身を顧みないのような行動で」

「……」

「まぁ、その時に相当落ち込みまして。けど、その人の親だって人が作ってくれたんですよ、あの味噌汁を。息子に救われた命なんだから、格好をつけなって言葉と一緒に」

 

 そう、罵るべきヒーローの親が、自分の心を救う為に心を砕いてくれた。そして、格好をつけろと言ってくれた。

 

 それが今に至るまでの、俺の原点。ヒーローに憧れて、ヒーローの親に導かれて俺はヒーローごっこを始めたのだ。

 

「ま、そんな程度の事ですよ。あ、ちなみに生き残った奴だから云々ってのは聞き飽きたんでどうでも良いです。今は、俺の心でそう動いてますから」

「……知ってるわよ、誰よりも私が」

「ですね、あなたのソレが仮面だというのなら、人は皆顔がないような者ですから」

「まぁ、年相応に格好はつけてますけどね! やっぱ憧れはいっぱいあるんで」

「憧れとは?」

「仮面ライダーですね。やっぱり」

「意味のわからない単語を唐突に言わないでほしいのだけれど」

「意味は秘密で。その方が名乗りやすいので」

「名乗るつもりなのですか貴方は」

 

『現在話せる事は以上です』

『了解』

 

「もちろん。仮面もスーツも手作りしてる所だったりしますし」

「本当に多芸ね貴方」

 

 そんな事を、呆れながら、しかし楽しげに笑いながら話すエガさん。

 

 そんな会話を最後に、予定の時間になったので技術提供(情報共有)は終了した。

 

「ねぇジョニー。本当に、(せんせい)には何もないの?」

「美人さんだとは思いますけれど、それだけですよ」

 

「俺が守ると決めた一番は、姉さんなんです。それは、死んでも変えません」

 

 

「なら、やっぱりリシテアを勧誘する方が先かしらね」

「ヒューさんお願いします止めて下さい」

「いいえ、彼女は優秀ですから。元からこちら側に欲しい人材ではあったのですよ」

「……姉さんに釘刺しておかなきゃ」

 

 そんな会話が、寮へと帰る道の中で交わされたというのが、その日の暮れの事だった。

 


 

 そして、その日の夜も笛を吹く。

 

 先生に、エガ姉に、そして心が荒ぶっている他の皆に安らぎを与える為に。

 

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