ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女   作:ピトーたんは猫娘

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あれ、なんか後半がモンハンになってる。

後半のラストは汚い表現が一部含まれます。嫌な人は流し読みしていいです。ライネスちゃんの大事な物が汚され、汚されるだけです。


第14話

 

 

 マチ

 

 

 ライネス・ホイコーロから連絡があり、私とフェイタン。それとシャルナークがハンター協会へと向かう事になった。私とフェイタンは指定されているし、逆に来るなと禁止されている団長とパクは来れない。なので私達の中で比較的、ちゃんと対応ができるシャルナークが選ばれたというわけね。

 選ばれた私達は現在、スーツ姿で街中にあるカフェでお茶をしながら相手を待っている。予定としてはここでホイコーロの関係者と落ち合い、品物を受け取ってからハンター協会に向かう予定だ。

 実際に注文している様々な品物に緋の目を混ぜて届け、中身が無くなった空箱にフェイタンの腕を入れて返してもらう。つまり、堂々と正面からハンター協会に侵入して帰る事ができる簡単な仕事だね。フェイタンが暴走しなければだけれど。

 

「フェイタン、ぐれぐれも攻撃をしかけないでくれよ」

「しつこいネ。ワタシだて分かてるヨ。アイツは油断している時に殺すネ」

「ならいいけどさ」

「それより、シャルナーク。お前は、ちゃんと調べてくれたカ?」

「もちろんだよ。具現化か操作系かはわからないが、ライネス・ホイコーロの念能力は水銀が使われている可能性が高い」

「弱点は何ネ?」

「水銀は水と銀の特性を持つんだけど、金属としては熱に弱くて蒸発しやすいってことかな」

「熱、ネ。なら、ワタシの力を更に強化するヨ。もと高温で、広範囲を一気に焼き尽くす。そう、まるで太陽のように……」

「それ、防火服とかも必要になりそうだね」

 

 一応、今は力を蓄える事にしたみたいだし、よしとするか。ここで何かあれば困る。団長の決定は絶対だ。私としてはここでライネス・ホイコーロを処分してしまいたいが、彼女に手を出す危険性も理解している。

 彼女は他の人間がいくら死のうとも私達を確実に殺す手段を平気で選択できる人間だ。そして、それを選ぶのに躊躇もないだろう。だからこそ、毒ガスなんてものを使うように指示をしてくる。

 シャルナークが調べた限りじゃ、神経系のガスで麻痺を起こす物が用意されていたようだ。私達念能力者にも効く濃度になると、この国の住民が数百人が死ぬことになる。カキン帝国と戦争になる事を示唆しながら、毒ガスの自国での使用を国に認めさせた。その時の言葉が──

 

『数百人の犠牲か、数万の犠牲、どちらがいいか選ぶといい』

 

 ──だったそうだ。楽しそうに笑っていた彼女はカキン帝国の軍隊を実際に動かす指令を出そうとしていた。王子同士が不仲だと聞いていたが、それはそれ。これはこれとの事で、国外に舐められたまま泣き寝入りするつもりはない。というのが王子達の共通見解のようで、カキン帝国の方でも進軍の準備が進められていた。こちらは軍事演習という事で今は大人しくしているそうだけれど、何時動くかはわからないのでこの国の軍も警戒している。

 こちらとしては戦争になっていくら死のうが知ったことではないけれど、私達蜘蛛の念能力を抜いてきたホイコーロの情報網なら居場所だって把握される可能性が高い。そこを戦車などで集中砲火でもされたらウボォーはともかく、私達は耐えられない

 

「マチ」

「ああ、気付いてる」

「ようやく来たようネ」

 

 私達の方に歩いてくる数人の男性と女性。男性はスーツ姿で、女性はスーツと着物を着ている人で分かれている。どいつも一般人だけど、ライネス・ホイコーロのような事もあるから油断できない。

 

「失礼します。マチ様でしょうか?」

「そうだよ。アンタ達はライネス・ホイコーロに物を売りに行く商人って事で間違いないのかい?」

「はい。私共もライネス・ホイコーロ様より、ご注文を頂いた商品を届け、売り込むために参りました。ですから、くれぐれも無礼な事はおやめください。互いに足を引っ張らず、競合する商品は正々堂々品質で勝負するようお願い致します」

 

 私の態度で釘を刺してきたか。まあ、呼び捨てにしているし仕方ないのもあるね。

 

「もちろんです。こちらの商品はすでにライネス・ホイコーロ様よりご購入の確約を頂いておりますので、そちらの方々と競合する事はありません」

「なるほど。それは助かります。それではこちらにどうぞ。女性の方はトラックで、男性の方は車の方でお願いします」

「別、ですか」

「何か企んでるカ?」

「勘違いしないでいただきたい。そちらが嫌なら一緒でも構いませんが、そちらの女性はライネス・ホイコーロ様に着付けをすると、ご連絡を頂いております。ですので、こちらの商品を実際に着ていただいて、勘違いしているような場所があれば指摘しなくてはいけません」

「ああ、なるほど。つまり、わけるのはマチがオレ達の前で着替えられるかって事が重要なんだね」

「そうです。その女性の方にとって嫌な事でしょうから、このような対応にさせていただいております。ですので、そちらの方がよろしければこちらとしては何の問題もありませんが……」

「嫌よ。絶対にイ・ヤ」

 

 何でコイツらに着替えている姿を見られないといけないのよ。そんなの緊急時以外は嫌よ。今はライネス・ホイコーロが仕掛けてくることもないはずだし、ハンター協会も動きはない。なら、罠の可能性は低い。それに定時連絡がなければ団長達が襲撃する手筈になっているから大丈夫なはず。

 

「じゃあ、トラックの助手席などに乗せてもらうというのは構いませんか?」

「そちらは構いませんが、揺れますよ。荷台は改造しているので快適ですが……」

「大丈夫です」

「では、そのように」

「マチ様、こちらへどうぞ」

「ええ」

 

 着物を着た女性達とトラックの荷台に入る。その前に一応、シャルナークの念能力で見えないアンテナをつけてもらう。これで私がどこかに飛ばされても追跡はできるし、操作される事もない。

 

 

 

 

 大きなトラックの荷台は和室に改造されていて、沢山の綺麗な着物が飾れている。どれも職人の手によって丹精込めて作られた物だ。

 

「今回、ライネス様にご購入頂けましたら、マチ様には一着差し上げます。ですので、どうかよろしくお願いいたします」

「ええ、わかったわ。私としてもやる気が湧いてきたし、確実に買わせるわ」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべる着物の女性に私も着物を選んで着替えていく。やはり、知っていると思っていたところでも、プロの目から見たら間違っていたり、より綺麗に見せる手段があった。

 

「しかし、普通の着物じゃないのもあるけど、これは……」

「ライネス様のご注文の品ですね。袖を大きくしてフリルをあしらうようにと。なんでも、萌え袖とのことです」

「確かに可愛い」

 

 トラックが動いていく中、そちらのタイプも着てしっかりと勉強する。彼女達もボーナスがかかっているから、必死で教えてくれる。

 

 

 

 それから何事もなくハンター協会に到着して駐車場に入った。ここで荷物を調べられるみたいね。私達が持ち込んでいる荷物も例外ではないが、ぬいぐるみの中にでも入れて持ってくるように指示されている。それとハンターにならバレても構わないから、正直に話して緋の目を購入した事も告げていいとも言われているので、何の心配もない。

 

「これは中に何か入っているな」

「ライネス・ホイコーロ様がご購入の品よ。一般人には見せないようにってね」

「……開いて中身を見せてくれ。それだけでいい」

「OK」

 

 見せると、驚いた表情をした後にハンターは納得したように他の品も確かめていく。

 

「流石は王族というか、緋の目をこれだけ買い集めるか。だが、七歳でこの趣味は……」

「否定はしないけど、こちらは配送を依頼されただけなのでね」

「ああ、すまない。聞かなかった事にしてくれ」

「わかった。それで、危険な物ではない事はわかった? ある意味では危険だけど」

「もちろんだ。通ってくれ」

「あいよ」

 

 シャルナーク達と合流して進んでいくと、何時の間にか駐車場からハンター協会の内部へと入る入口に化け物が居た。顔と名前は知っているけれど、直接は見た事はない相手。ハンター協会の会長、アイザック・ネテロ。

 

「お前等、かなりの使い手だな。もしかして──」

 

 バレた。まずい、殺される。コイツには勝てない。何をしても殺される。赤子の手を捻るように簡単にやられる未来しか見えない。シャルナークもフェイタンも必死に恐怖を押し込めている。

 

「っ~~~~!?」

 

 私は急に何かが飛び降りてきて後ろから抱きしめられる。その感覚に思いっきり飛び上がろうとしたが、ネテロの前でそんな事をしたら殺されるのがわかりきっていて、必死に我慢する。

 

「やあやあ、よく来たね、マチお姉ちゃん。待っていたよ」

 

 横を向くと、テレビやフェイタンの記憶で見たライネス・ホイコーロが、私の首に手を回して抱き着いていた。降ってきたのはこいつのようで、気配は一般人程度だが、感じる事ができる。だというのに見逃したのはアイザック・ネテロの存在が大きすぎたからだ。

 

「師匠、彼女達は私が呼んだ知り合いでね。凄腕の配送屋なんだ。とある高価な、とても危険な品物を運んできてもらっていてね。だから、安心して欲しい。彼女達は敵ではないよ」

「ふむ。そうか……まあ、お主がそういうのなら、良かろう。下手な事さえせねばこちらからは手を出さん」

「感謝する」

 

 アイザック・ネテロから放たれるオーラが消え、重圧から解放された私達はほっとした瞬間、私にぶら下がって頬擦りしてくるコイツをどうするか悩む。

 

「とりあえず、アイアンクローでもしていい?」

「我慢だよ、マチ」

「ふざけた奴ネ」

「あっはっはっ。アイアンクローはされたくないから離れよう」

 

 そっと降りて私達の前に出た後で両手を広げてクルリと回り、笑顔でスカートの裾を掴んで挨拶をする。

 

「ようこそ、ハンター協会に。ライネス・ホイコーロだ。よろしく頼むよ」

「おい、それはワシの台詞じゃろ」

「まあまあ、いいじゃないか。一応、私も住んでいるのだしね」

「たく、こいつは……」

 

 楽しげに談笑している姿は祖父と孫だ。だが、師匠か。それならライネス・ホイコーロが年齢の割に強いのも理解できる。

 そんな風に話しているアイザック・ネテロにハンターが報告している。おそらく、緋の目の事だろう。

 

「それよりライネスよ。お前さんが持ってこさせた物について聞きたいことがあるんだが……」

「そうだね。とりあえず、それらを持ってついてきてくれ。それとネテロ会長、パリストンぐらいには伝えておこう。一部屋、用意して欲しい」

「では、第三会議室を空けてありますから、そちらに向かいましょう」

「うわ、何時の間にいたんだパリストン副会長」

「おもし──愉快な事がありそうなところに私はいるのです」

「最悪だね」

「まったくのう」

 

 私達三人は頷いてから移動していく。シャルナークは彼女達に伝えて携帯でハンター協会に着いたという定時連絡だけを送る。

 

 

 

 第三会議室。そこでぬいぐるみから取り出した数々の緋の目を見せる。秘宝と謳われるだけあってとても綺麗ね。

 

「まさか全部、緋の目かよ」

「そういえば少し前にクルタ族が襲撃されていましたね」

 

 二人の視線は私達に向いている。やはり、私達が幻影旅団だというのがバレているのかもしれない。

 

「ああ、そうだ。そいつらが奪った緋の目がこれだ。これは醜聞になるから黙っていて欲しいが、人体収集家のツェリードニヒお兄様が依頼していたのか、買い取ろうとしていたのかはわからない。どちらにせよ、それを私が横から掻っ攫って彼等に運んできてもらった」

「いいのかよ、怒られるんじゃないか?」

「知らないねえ。こんな物を買おうとするなんて、露見したら外交特使としてやってきている私に不利になる。勝手にツェリードニヒお兄様が自爆してくれる程度であればいいが、緋の目ともなれば各国の要人がこぞって狙ってくるだろう。国を叩く恰好の餌にもされるし困るんだよね」

 

 両手をあげてやれやれと手を振るうライネス・ホイコーロ。まるでハンター達にツェリードニヒ王子がどんな奴か伝えているみたいだ。

 

「じゃが、それはお主も同じじゃろう」

「ですよね。盛大に返還でもしない限りは……」

「ああ、そうだね。だから、盛大にクルタ族に返すよ。襲撃されて無残にも殺された部族の慰問と復興、それに加えて彼等の同族の瞳を王族が購入して取り返した。美談だろう?」

「人気取りの手段、ですね」

「その通りだよ、シャルナーク君。クルタ族がどう思おうが、国内と国外に対するアピールにはなる」

 

 シャルナークの言葉にフェイタンがイライラしている。私も同じだ。つまり、このライネス・ホイコーロは私達が苦労して手に入れた緋の目を使い、フェイタンの腕と交換することで元手をほぼ無料で手に入れながらそれで人気を獲得するというのだ。悪魔かね。

 

「ツェリードニヒお兄様への嫌がらせにもなるし、ベンジャミンお兄様は大喜びだろう。そして、私も嬉しい」

「それほど嫌いなのかの?」

「ああ、嫌いだとも。さっさと死んで欲しいぐらいだ。だってアイツ、私をいやらしい目で見てくるし、私の綺麗な身体に入れ墨とか入れた後で剥製にして飾ろうとか考えてるんだ。間違いない」

「おいおい、マジかよ」

「ぶっちゃけるとツェリードニヒお兄様が繋がっているマフィアが何人もの若い女性を攫って殺しているね。揉み消されたり、死体を処理されたりしているけど」

「それはそれは、調査しがいがありますね」

「是非とも捕まえてくれたまえ。陰ながら全力で協力するよ。いや、本当に。だから、マチお姉ちゃんはカキン帝国には近づかないようにね。剥製にして飾られる趣味があるのなら、別に構わないが……」

「ないわよ!」

 

 本当に碌なのがいないわね、カキン帝国の王族は。ライネスも含めてだけれど。

 

「で、返還するという話じゃが、どうするんじゃ?」

「まずはクルタ族の位置を調べてから使節を送り込むんだが、正直言って我が国の者では上位の王位継承を持つツェリードニヒお兄様に抵抗できない。だからさ、ハンター協会にカキン帝国外交特使として正式に依頼しようと思う。クルタ族との交渉と緋の目の保管、復興支援をお願いしたい。いくらぐらいになるかな?」

「パリストン」

「そうですね。値段は……50億ジェニーで」

「高すぎるよ。もっと安くして欲しいな。王族とはいえ、予算は無限ではないのだからね。国税なんだよ、国税」

「それなら稼げばいいじゃないですか」

「ほほう。なら、ハンターライセンスをくれるか、秘宝や素材を買取をしてくれるのかね?」

「買取はかまわんが、ライセンスはやらん。12歳まで待つんじゃ」

「ちっ、どちらにしろ高すぎる。10億だ、全て含めてそれぐらいで頼む」

 

 パリストンとライネスがやりあっているのを見学しているが、相場とかよくわからないのでシャルナークに聞いてみる。

 

「どんな感じなの?」

「ライネスが遊ばれてるね」

「ざまぁないネ」

「まあ、子供だから仕方ないよ。というか、10億ってのも護衛を含んだ場合はかなり高いんだけどね。何想定しているのかわからないけどね」

 

 私達のような連中、だろうね。

 

「わかった。50億でいい。かわりに護衛としてダブルハンターや十二支んを派遣してくれるんだろうね? これだけの金額を出すのなら、それ相応の質を求めるのは当然だよね」

「はっはっはっ、それは無理な相談ですね」

「なら、ぼったくるだけで金に合うだけの護衛を出さないと。それは出資者として問題を提議しないといけなくなるねぇ」

 

 あ、普通の交渉から外の力を使いだしたね。パリストンの奴は笑顔だけど、感じがかわった? 

 

「まだまだ交渉が甘いから、そのような外堀の力に頼らないといけなくなります。そればかり使っていると痛い目をみますよ?」

「わかっているよ。だから、普通に交渉していたら君が……」

「では、駄目な点をあげていきましょうか」

「え」

「これも勉強です」

 

 それからパリストンの攻撃……口撃は容赦なく、ライネスは涙を浮かべてしょんぼりするまで続いた。その間、私達は放置されているので、他の部屋で食事と休憩をしていく。もちろん、団長にも連絡を取った。

 

 

 

 

「パリストンめぇ、パリストンめぇ……アイツなんか虫を埋め込まれて脳をぐちゃぐちゃにされてしまえ!」

 

 ご機嫌斜めなお姫様がこちらにやってきたのは優に二時間が経ってからだった。

 

「やっと終わったのかい」

「遅すぎるネ」

「すまないね。でも、美味しい食事だったろ?」

「それは確かにそうだね」

「ええ、これはいい味を出している」

 

 私達に提供されている食事はグルメハンターが私達と一緒にきたトラックの一部に積まれていたキッチンで作っている。購入前に試しに作っているみたいだが、食材も腕も機材も全てが一級品であり、私達の口を満足させてくれる。必要以上に。

 

「さて、こちらの商談を終わらせようか。緋の目は確かに受け取った。数も間違いないし、頭部のもあった。確かに君達が手に入れた全ての緋の目のようだ。コピー品でないことも除念師を使って確かめさせてもらったし、こちらも品物を渡すとしよう」

 

 コピー品の対策に除念師を用意していたのか。もしも知り合いにコピーを頼んでいたら、交渉が決裂していた可能性が高いね。

 

「じゃあ、ワタシの腕を返すネ」

「それはちょっと待ってくれたまえ。まずは私とマチお姉ちゃんの和服のファッションショーだ。それが終わってからだ」

「そんなものはどうでもいいネ」

「あははは」

「いや、ここは従いましょう。もめてもいいことないから」

「マチ、お前は服が欲しいだけネ」

「なんのことかわからない。ほら、さっさと終わらせるわよ」

「オーケーだ」

 

 二人で別室に移動し、様々な服を選んでいく。トリムマウというらしい彼女の念獣が着付けを手伝って覚えていく。

 そんな中で何着も着せ合い、彼女が着けている銀のアクセサリー達に似合う奴を選んでいく中で一つ思った事がある。ライネスが選ぶ奴は男が見て可愛いや綺麗だと思われる服装で、女としては微妙な感じだ。

 

「あなたって男?」

「何を言っているんだ。私は生物学的に女性だよ」

「いや、心がだけど。勘だけどそんな感じがする」

「ああ、そちらか。どうだろうね。私は男性より女性の方が好きだから、男性といえるのかもしれないね。まあ、女性でもあるのだが」

「そうなのね。よし、近づかないでくれる」

「失礼だね」

「絡めとるわよ」

「ふむ。私のトリムとマチお姉ちゃんの念糸。どちらが強いか、試してみるのも一興ではあるが……止めておこうか。私としては君達と戦うつもりはない。よいビジネスパートナーとして歩んでいきたいと思っているからね」

「こちらもよ」

「それは良かった。よし、この緑のにしよう。あと、何着か予備も買っておくとするか」

 

 緑色の布地に花柄の着物で、萌え袖がある奴を選び、それを着たままこちらにやってくる。

 

「今日はありがとう。良い取引だった。次の依頼は電話でするよ。ただ、個人的にマチお姉ちゃんには治療を頼むかもしれない。だから、そちらのホームコードを教えてくれ」

「わかった。でも、高いわよ」

「それは理解しているとも」

 

 ホームコードを渡し、私が持って帰る荷物を片付けていく。

 

「それで腕は何時渡してくれるの?」

「今渡してもいいんだが、その場合は問題があるし……そうだね。トリム、彼女達を送っていってくれ。別れる時にマチお姉ちゃんに抱き着いて、その時に身体を密着させてこっそりと渡してくれ」

「かしこまりました」

「マチお姉ちゃんもそれでいいかな?」

「確かにその方が安全か」

「それと言うまでもないが、気をつけて帰るようにね」

「ええ、そうね」

 

 何気に私には好意的なのよね、この子。油断は微塵もしていないけれど。いえ、正確には念獣の方が一切の油断をしていない。本人の方は隙だらけだけど、手を出そうとした瞬間に私が死ぬ予感がする。

 彼女が身に着けている銀のアクセサリー、あれも水銀だろう。つまり念能力で武装して何時でも身は守れるようにしている。彼女自身が素人のようだから、おそらく念獣による自動防御とかそういった感じなはず。フェイタンの速度に対応できる時点で私の速度では対処不可。諦めるしかないわね。

 

「それじゃあ、また会おう。個人的にまた私の服を見て欲しい」

「いいわよ」

 

 そっちの方が都合がいいしね。ちびトリムなる物も返したし、他に用事はない。

 

 

 

 シャルナークとフェイタンの二人と合流し、無事にハンター協会を出てトリムマウという念獣の体内から念によって保護されているフェイタンの腕を受け取る。念獣と別れたらカラオケボックスに入り、団長達と合流する。

 

「どうだった?」

「やっぱり彼女からはなにかをしてくるつもりはないね。問題はハンター達だよ。おそらく、アイザック・ネテロとパリストン・ヒルにはオレ達が幻影旅団だという事がバレている可能性が高い。その上で見逃されたね」

「ライネス・ホイコーロがわざとばらした可能性はあるか?」

「あるだろうね。そして、自分がもうオレ達とは話を付けたという事を伝えたのかもしれない」

「目的はわかるか?」

「アイザック・ネテロを師匠と呼んでいたから、修行をつけてもらっている可能性がある」

「俺達を使って契約を取ったから、後は修行に集中したいということか」

「それぐらいか。まあ、どちらにせよ腕は取り返したよ」

 

 団長達が話ている間にフェイタンの腕を念糸を使って縫合していく。綺麗に縫って神経までしっかりと繋げる。フェイタンの腕はかなりボロボロではあったけれど、保存状態はよかったみたい。

 

「これはしばらく治療に専念しないと駄目だな」

「ワタシの攻撃でこうなたから、わかているヨ」

「水銀で攻撃されたわけじゃないのか」

「斬り落とされただけネ」

「しかし、これからが大変だな。腕の治療と除念師を探さないといけない。フェイタンの心臓に貼り付いている奴を剥がさないと……」

「それだけど、除念と同時に手術もしないといけない。もし、それが具現化された念ではなく、本物の水銀を使っていたら除念しても水銀は残る。それも保護しているオーラも効かないから、中毒が発生するだろう」

「腕のいい外科医と除念師だな。各自、仕事をしながら探すようにしてくれ。フェイタンには悪いが、しばらくは諦めてくれ。ライネス・ホイコーロから来る依頼をこなしつつフェイタンの楔を外す。奴を殺す為に戦うにしてもそれからだ」

「他に報告は……」

「あの念獣についてネ。アイツ、ワタシと戦た時よりも格段に強くなているヨ」

「この短期間でか。アイザック・ネテロとの修行はそれほどか。俺達も負けていられない。現状、俺達は雌伏の時とする。修行を怠らず、銀翼の凶鳥の調査も継続する。やる事は沢山あるが、必ずやり遂げるぞ」

「「「「了解」」」」

 

 さて、これから忙しくなってくる。そう思っていると団長の携帯が鳴り出した。団長は表情を歪めながら、電話に出てスピーカーにする。

 

『やあやあ、会議は終わったかな?』

 

 まるでこちらの作戦会議が終わるタイミングを待っていたかのようで、団長は頭に手を当てている。私達も周りをみるが、おかしなところはフェイタンの心臓ぐらいしかない。これはわかりきったことではあるけれど、なにもこのタイミングでかけてくるとはね。

 

「ああ、終わった。聞いていたんだろう?」

『まあね。それで早速依頼をしたい。パリストンのせいで、パリストンのせいでお金が足りないんだ。私のポケットマネーを足しても足りない。だから、稼ぐ事にした』

 

 二回言ったのは相当に頭に来ているようね。

 

「それで依頼はなんだ?」

『二つ用意した。困難でハイリスクハイリターンの依頼か、ローリスクローリターンの依頼だ。どちらがいい?』

「断るという選択肢は?」

『あるけれど、この儲け話を他の人に振るだけだよ』

「両方教えてくれ。それを聞いてから判断する」

『了解した。では、まずローリスクローリターンから。マフィアを襲撃して金を巻き上げる。奴等が上位組織に上納金を運ぶルートと時間はこちらで調べる。この程度は君達なら余裕だろう』

「確かにそうだな。次だ」

『ハイリスハイリターンの方だが、こちらは捕獲依頼だ。とある山脈でドラゴンが確認された』

「は?」

「え?」

 

 私を含めて全員が聞き返す。

 

「待て。今なんと言った」

『だからドラゴンだよ、ド ラ ゴ ン ! ワイバーンじゃないガチのドラゴンだ。こいつを捕獲してくれ。代金はドラゴンを売った金を折半だ』

 

 ワイバーンなんて初めて聞いたよ。ドラゴンも本当にいるの?

 

「高いな」

『場所の情報と販売、輸送などは全てこちらでやる。君達はこちらの手勢が到着するまでの護衛と倒す以外は普通にお金を受け取るだけだ。嫌なら別の人に情報だけを売るよ。欲しがる人はいっぱい居るだろうしね。どうするクロロ。時は金なりだよ』

「確かにそうだな」

「いやいや、ちょっと待とうよ! ドラゴンだよドラゴン! 実在するとしたらからなりやばいから。そいつって火を吐いたりするだろ!」

『するねぇ。牙も爪も尻尾も巨大だ。下手をしたら街どころか、国がピンチだね』

「尚更面白いじゃねえか」

「よし、コインで決める。表ならマフィア、裏ならドラゴンだ」

 

 出たコインは裏だった。

 

「ドラゴン狩りだ。今回の緋の目の穴埋めもしないといけない。行くぞ!」

「よっしゃぁああああああああああああ!」

 

 ウボォーがうるさいので耳を防ぐ。さて、依頼を受けるのはいいけれどドラゴンってどれだけ強いのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 険しい山を駆け抜け、立ち入り禁止の場所も抜けて秘境中の秘境。そこに奴は居た。全長10メートルを軽く超える緑色の鱗を持つドラゴン。その巨大な口から放たれる吐息は灼熱の業火であり、周りの木々を燃やしつくして地面を結晶化していく。

 

「うわ、駄目だろこれ」

 

 ウボォーの一撃が少しよろける程度しか効いていない。他の攻撃なんてほとんど効きやしない。代わりに相手の攻撃はウボォー以外が喰らったらほぼ即死。ウボォーでも吹き飛んで腕が折れる。

 

「無茶苦茶だ。なんだこの化け物」

『だから言っただろう! ハイリスハイリターンだってね!』

「限度がある!」

 

 団長が声を荒げつつ胃の辺りを触るのも無理はない。私だっていきなりこんなのを相手にするなんて思ってもいなかった。ちなみに私は腕とかが切り飛ばされたら、繋げて戦線復帰させる役割だから後ろにいる。シャルナークはその辺の動物を操って肉壁にしているけれど意味をなしていない。

 

『どうしても無理そうなら、こちらの軍を増援として派遣する。当然、金額はかなり減るがね』

「買い手はカキン帝国の第一王子か」

『その通りだよ、クロロ。輸送も全部彼等にやってもらう。私はどちらでもいいが……』

「お前も手伝え。どうせできるんだろう?」

『仕方ないね。このままやられても困るし。これ、結構疲れるんだが……フェイタン君、君に力を貸してやろう。受け取り給え、これが倒せる可能性がある力だ』

 

 電話からの声が聞こえると、フェイタンが苦しみだす。それから馬鹿みたいにオーラの量が跳ね上がり、フェイタンの身体の中、腕から水銀が溢れ出てくる。それと同時にフェイタンの増えたオーラは全てその水銀へと移った。

 

「お前! ワタシの身体に水銀を潜ませていたカ!」

『腕に仕込まないとは言っていないからね。それと心臓の水銀を通して私のオーラを少しくれてやる。頑張って戦いたまえ。それとウボォー君といったね。君は自分のオーラを身体以外に纏わせられるか?』

「できるぜ! おっと、あぶねっ!」

 

 ウボォーが避けたドラゴンの腕により、大地が裂けて巨大な爪痕が作られる。フェイタンのオーラの上からライネスのオーラが覆って鎧みたいな感じになったみたい。

 

『そうか。なら、天元突破だ。螺旋の力をトカゲ風情に思い知らせてやれ、ウボォー君』

「うぉっ、腕に水銀が纏わり付いてきやがったぜ」

 

 水銀が腕に纏わりつき、それが高速回転するドリルとなる。それがウボォーのオーラによって徹底的に強化される。

 

『正直に言おう。コントロールがすっごい大変だから後は任せるよ』

「ああ、わかった。フェイタンとフィンクス、ノブナガが前衛。俺が遊撃をする。マチとシャルナークは動物でドラゴンの目線を妨害。ウボォーの一撃を決める。狙うのは目や口、尻穴とかだ」

『待て待て、やめたまえ! そんな汚い事を私の銀にやらせないでくれ!』

「知らん。それが一番勝てる見込みがある。お前も苦しめ!」

「ひゃっはー!」

『いやぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 電話からライネスの悲鳴が聞こえる中、私達は死闘を繰り返す。

 

天元突破・超破壊拳(ビッグバン・ドリルインパクト)ぉおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

 ウボォーの一撃がライネスの悲鳴と共にドラゴンに叩き込まれ、二人のオーラのジョイントにより、絶大な威力を発揮したソレはドラゴンを内部から粉砕していく。

 その状態でも攻撃を続けてくるドラゴンに、私達は生命活動に必要な物を除いてほぼ全てのオーラを振り絞って戦い、なんとか勝利した。

 周りはクレーターだらけで、ドラゴンの巨体は酷い事になっている。ウボォーもだけど。臭いから近付きたくない。それでも私から近付かないといけない。ドリルでウボォーの腕もねじ切れたし、繋げないとやばいから。

 

「やはり分厚い装甲は内側から攻めるに限るな」

『ぐすっ、汚された。私の大事な銀が穢れたぁぁぁぁっ!』

「馬鹿め。武器は使ってなんぼだろうが」

「団長、生け捕りが依頼だったわけだけど、これって生きてるの?」

「あ」

 

 ドラゴンを見ると、身体が光って巨大な銀翼の凶鳥が飛び立ち、複数に分裂して拡散していく。ドラゴンの身体は皮と爪、牙を残して消滅してしまった。やっぱりコイツのセイカ。

 

「ら、ライネス……この場合はどうなる?」

『ぐすっ……か、買取はできるよ……でも、生け捕りよりはやすくなる、かな……むしろ、これならオークションに出すのもありかも……この戦闘映像もセットであげたら、もっと高く売れそうだけど、念がばれちゃうし……』

「くそ、最悪だ。だが、仕方ないか。それと戦闘映像は却下だ。販売は任せる」

『はぁ……私の銀がぁぁぁぁ……汚物まみれに……』

 

 可哀想だけど、仕方ないわね。ちなみにこの戦闘映像は私がライネスに依頼され、団長の許可をもらって撮っている。ちゃんと依頼達成の証拠映像としてだ。

 

「ちょと待つネ! まさか、それをワタシの腕に戻そうなんて……」

『ふん。恨み言は指示を出した団長のクロロに言うんだね!』

「知らん。この依頼を持ってきたライネスに言え」

「とりあえず、川を探して身体とその銀を洗おうよ。流石にこのまま入れたらフェイタンが病気になるし」

「そうね、それがいいわ」

「まあ、そうだな」

「あ~疲れたが、いい敵だったな」

 

 本当に酷い戦いだった。さっさとライネスの所に行ってご飯を食べさせてもらおう。それぐらいしてもバチは当たらない。

 

 

 

 

 

 

 




ドラゴンぇ。君はいい奴だった。ただ、その身体の硬さが仇になったんだよ。
何気にフェイタンが一番の被害者かも。

ライネスからの依頼は厄介で危険がいっぱい。これはライネス・エルメロイ・アーチゾルテを目指しているから仕方がないね。

それとトリムが汚されたわけではないです。ただ、増やした銀がやられただけ。トリムは泣きわめいているライネスの横でオロオロしています。

モモゼの念能力を募集

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