ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女   作:ピトーたんは猫娘

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第16話

 

 アイザック・ネテロ会長との修行を行い、一ヶ月が経った。契約期間が終わり、最後の戦いを行ったのだけれど、私、ライネス・ホイコーロはネテロ会長と共に床に倒れ、トリムマウも動けずに身体が保てていない。結果からみれば一撃を入れる事が……できたと思うかもしれないが、できなかった。

 いや、無理なんだよ! 

 だって、このお爺ちゃんあきらかに強くなってるんだよ。新しい技だって編み出してきたしね。

 具体的に言うと前方からは足を組み両手をそれぞれ9の形にすることで凄まじい速度で敵に連射砲のごとく掌打を浴びせる九十九乃掌(つくものて)でこちらの動きを封じ、背後からは追加で顕現された百式観音が九十九乃掌(つくものて)を放ってくる。つまり、前後から強烈な連打を放たれ、押し潰されるのだ。

 お陰で私も月霊髄液で防御したというのに身体中が痛いし、複数本の骨も折られている。月霊髄液が無ければ挽肉になっていた。間違いない。

 

「ししょぉ~君は馬鹿だろう」

「あ?」

「最後くらい弟子に勝利を譲ってくれてもいいのに、なに新技の実験台にして自分まで倒れてるのかな?」

「オーラ切れだよ、ちくしょうが」

 

 百式観音を一瞬とはいえ、二体も作り出すのは練り込んだオーラを全て一瞬で消費するみたいだ。そう、開始直後にやりがったのだ。このお爺ちゃんは! 開幕ぶっぱは基本とはいえ、酷すぎる。

 顕現時間はたったの1秒。しかし、その間に数百を軽く超える連打を前後から叩き込まれた私はなすすべもなくやられたというわけだね。うん、無理だ。

 

「てめぇ、まだ余裕あるだろうが」

「いや、ないから。いくら私でも死ぬよ」

「全然衰えている感じはしねえけどな」

「そりゃ、隠しているからね」

 

 絶をして急速に回復していっているネテロ会長と違い、私は使えない。使えば死ぬからだ。だからこそ、オーラの総量は常に余裕を持って活動している。だが、私は常に8割のオーラが存在しない。残り二割のオーラを更に小分けして使っている。

 それでも量が一般念能力者の数百倍はあるから、半分の1割ほどでもネテロ会長の総量を軽く超えられるのだが、今回私が防御に使った量は2割を100%と考えて約80%。現在、死なないために回復で15%も使っている。残り5%はトリムマウと月霊髄液の維持だ。

 正直、幻想種であるドラゴンを始めとした奴等をクロロ達に投げて始末させ、そいつらを喰べていなければ死んでいたね。

 

「そういえば、なにか忘れているような……」

「うう~む」

「えい♪」

「いてぇっ!」

 

 いつの間にか現れたメンチ君が会長の頭に容赦のない肉包丁をたたきつけてから首筋に添える。開始の時に離れていたし、先の攻撃を喰らわなかったんだろう。いや、少しは行っていたはずだからよけたのかな? 彼女もこの一ヶ月で実力を格段に上昇させているからね。

 

「はい、これで勝ちよね」

「そういえば、メンチ君を忘れておったな」

「ふ、主人の私を囮にするとは駄目な護衛メイドだな、君は……一人勝ちかい?」

「何言ってるのよ。今回も二対一なんだから、私達の勝利でしょ」

「ふむ。それもそうか」

「いやいや、ちょっとわし、死に掛けなんじゃから病院に……」

「弟子に負けないために死に掛けるとか、笑えない冗談だね。それも卒業試験で……」

 

 しかし、予定では勝つはずだったのだが、これはもっと厳しい修行方法を考えないといけないね。

 

 

 

 

 

 馬鹿みたいな戦いから少しして、ネテロ会長はメンチ君の呼んだ救護班によって病院に搬送された。まあ、オーラがほぼ無くなった程度なら、栄養補給して大人しくしていればいいだけだ。ご老体なので念の為ということが大きい。

 私はといえば、ハンター協会から専用車でメンチ君を連れて自宅になる邸宅に移動中だ。まだ動くのは辛いが、骨は水銀で補って再生させているので問題ない。お陰でトリムマウは出せないのだが、色々と忙しいので仕方あるまい。

 

 話している間に車は警備が厳重な門を抜け、林の中を進んでいく。しばらくすると庭園になり、先の方に大きな豪邸が見えてくる。

 

「ここが家?」

「そうなるね。職員は他の場所に宿舎があるので、基本的にあの家に住むのは私達だけだ」

 

 ここはカキン帝国が国から借り受けている土地であり、治外法権だ。つまり、カキン帝国の法律が適応される。そのため、邪魔な連中は宿舎の方に移動してもらった。

 

 

 迎えに出て来ている者達が玄関からずらりとレッドカーペットの左右に別れて並んでいる。その前に車が止まり、扉が開けられていく。

 

「じゃあ、行こうか。荷物は置いておいていいから、武器だけでお願い」

「了解」

 

 メンチ君が出てから左右を警戒してくれている。普通なら手を差し出してくれるのだが、護衛は彼女一人なので両手を空けさせている方が良い。

 

「ライネス・ホイコーロ様、ようこそお越しくださいました」

「うむ。出迎えご苦労。これからよろしく頼むよ」

 

 軽く手を上げながら、頭を下げてくる彼等の間を進んでいく。扉の前に到着し、くるりと回って後ろで手を組みながら皆をみる。同時に試験管を後ろに隠した袖から出し、水銀を垂らして扉から邸宅を探索してもらう。

 

「それじゃあ、もういいから仕事に戻ろうか」

「て、庭園の方にか、歓迎パーティーの用意が……」

「あ~そういうのはいいよ。ここに居るのは我がカキン帝国の者達だけだ。来賓を招く式典以外はいらない。だから、用意されている食事とかは君達で食べてくれ。請求とかもしないし、家族を呼んでもいい。少ししたら忙しくなるから、今日と明日は休みとし、一人二万ジェニーを与えるので英気を養ってくるといい。私は執務室に居ると思うから何かあればそちらに連絡をくれ」

「「「かしこまりました」」」

 

 指示を出してから邸宅に入り、月霊髄液を回収する。爆発物が四ヶ所も仕掛けられていた。私の部屋と執務室、天井と床だ。この邸宅が崩壊するほどの仕掛けだ。

 

「ねえ、メンチ君。爆発物が仕掛けられている。解体できる?」

「流石に専門外よ」

「そうか。では、私が解体しよう。メンチ君はキッチンとかを調べて欲しい。毒物が含まれている可能性がある」

「了解。犯人は?」

「色々な人に狙われているからね。まあ、一番の候補はツェリードニヒお兄様だろうが。私に緋の目を掻っ攫われた事に気付いたのかもしれない」

「あ~確かに恨まれるわね。了解。私が犯人にされてもかなわないし、ちゃんと調べるわ」

「よろしく頼むよ」

 

 オーラが少ないが、やれないことはない。月霊髄液で覆わせて爆破処理すればいいだけだしね。

 

「失礼します。ライネス様」

「おや、君は……」

 

 現れたのは顔が長く丸刈りで大柄な男性ともう一人、若い青年がいるね。どちらも念能力で彼等は原作で見たことがあるような気がする。

 

「王室警護兵のビンセントと申します」

「同じくバビマイナと申します」

「共にベンジャミン王子よりライネス様を護衛するようにとご命令を受けております」

 

 ベンジャミンお兄様が監視として送り込んできたか。お父様には一応、護衛は要らないと言ってあるんだが、ここの警備も兼ねて送られてきたのなら、護衛という扱いではないと言い逃れられるか。それに幻影旅団の事もあったから流石に派遣しないと外聞が悪いしね。

 

「そうか。それではよろしく頼むよ。でも、私は未婚の女だからね。男性を侍らせるつもりはないから、離れて護衛を頼む。ちゃんと女性の護衛も用意しているし、優秀な念獣もいるからね」

「しかし……」

「これは命令だよ。君達がベンジャミンお兄様から護衛として派遣されてこようが、ここでは私が最高責任者だ。命令が聞けないのなら、帰りたまえ。二つの指揮系統が存在するなど混乱するだけで害悪の極みだ」

「ですが……」

「失礼いたしました。そのようにいたします」

 

 バビマイナがビンセントに手で遮られる。ビンセントの方は私の命令を認め、受け入れたようだ。やはり、彼の方が年齢がいっているだけあって私が本当にやると理解しているのだろう。

 

「それで頼むよ。それと君達は爆発物の解体ってできるかな?」

「「は?」」

「だから、爆発物。俗に言う爆弾だね。それが仕掛けられてるんだよ。一時間以内に解除したい。無理ならこちらで対処するが……できるかな?」

「ええ、可能です。軍学校で一応、習っています」

「なら大丈夫か。念能力者なのだから万が一もないし任せるよ。場所はこっちだ」

「「はっ!」」

 

 二人を四ヶ所に案内し、爆弾を任せる。といっても、無理な物は無理だと伝えてもらう。爆破されたら住む場所がなくなるしね。

 というわけで、髪の毛をかき上げながら覗き込んで何時でも覆えるようにはしておく。ここで死なれたらベンジャミンお兄様に何を言われるかわかったものではないしね。

 

「解除できました。これはカキン帝国で使われている物ではありませんね」

「まあ、そりゃそうだろうね。足が簡単につく物を使ってくるはずがない」

「ええ、そうでしょう。ライネス様は誰が仕掛けたとお考えなのですか?」

「ツェリードニヒお兄様。証拠はないけれど、可能性は高いね。まあ、この程度で私が死ぬと思われているのだから、悲しくなるね。私達念能力者を殺すなら、もっと強い爆弾じゃないといけない」

「確かに」

「すぐに犯人を捜します」

「よろしく頼むよ。私は仕事を始めるから。Fervor,mei Sanguis(沸き立て、我が血潮)。トリム、護衛をよろしくね」

「かしこまりました」

 

 試験管から水銀を出し、トリムマウを呼び出す。それから、彼女を私の護衛として引き連れて執務室に戻る。

 

 執務室は本や書類が沢山あり、応接用のテーブルなどもある。隣の部屋は簡易なキッチンだ。もう一つの部屋には巨大なスーパーコンピューターが設置され、壁がほぼモニターになっている。

 早速起動して、IDとパスワードを入れて仕事を始める。この一ヶ月の資料も取り寄せて頭に叩き込んでいるので問題なく仕事ができる。

 月霊髄液の水銀ハンドもつかってキーボードを数十個使い、訓練しながら仕事を処理する。まず不正経理がないか、カキン帝国を裏切っているものがいないかを調べていく。銀の鳥達とハッキングを使った監視網で洗いだす。税金の無駄遣いは許さん。私はパリストンのせいで借金塗れなんだ! 

 

 

 

 

 

 さて、不正の洗い出しは終わったので、次は各国との交渉だ。だが、こちらは武器が必要になる。そのために依頼していた品物が来ないと話にならない。なので各国の情報を収集し直して欲しい技術や、人材、スキャンダルなどを掴んで証拠と同時にデータに書き込んでいく。証拠品は監視カメラの映像などでも充分だし、相手が認めなくてもこちらが秘密を知っているということを告げればいいだけだ。

 

「ん?」

 

 ついでに各国で欲しい弟子候補も探していると、外が騒がしくなってきた。そのタイミングで携帯電話に連絡が入る。相手はクロロだ。

 

「はいはい、どうしたのかな? クロロから電話をかけてくるなんて珍しいじゃないか。勝手に入ってきたらいいのに」

『警備の兵が入れてくれないんだ。それに検分させろって言われてたんだが……問題ないか?』

「あ~別に水銀は問題ないが、手持ちのは困るね。それ、外部に知られる心配はない方がいい。迎えに行くよ」

『頼む』

「しかし、なんでクロロが来ているのかな? マチお姉ちゃんだけのはずが……」

『今回の報酬が本だからな』

「納得の理由だね、うん」

 

 携帯電話で話しながら執務室から出てバルコニーに向かう。そこから下を見れば複数の大型トラックが停車している。近くにはバビマイナとビンセントが必死の表情で止めている二人の姿が見えた。瞬殺されるというのに、頑張っている姿には好感が持てるね。

 

「二人共、お待たせしたね」

「ライネス、引越し祝いも持ってきた」

 

 マチお姉ちゃんは袋を掲げるが、中身はわからない。

 

「おお、それはありがたい。では、指示を出して中に入ってくるといい。ああ、水銀は設置されているプールにでも注ぎ込んでおいてくれ。入り切らなければ周りに置いておくだけでいい」

「了解した」

「いやいや、待ってください! 水銀が排出口から流れ出たら駄目ですよ!」

 

 業者の人が慌てて告げてきたが、一般人からしたらしかたないね。

 

「だそうだ。どうする?」

「そうだねえ、プールの底は排水できないように溶接してしまっていいが……ああ、こうしよう。トラックごと置いていきたまえ。車は貸すし、レンタル代も支払おう。明後日にでも取りにきてほしい。どうだろうか?」

「こ、こちらとしても代金さえいただければ構いませんが……」

「ではそれでいこう。バビマイナ君とビンセント君。その二人は構わないからそのまま通してくれ。私の友人だ」

「それは……」

「命令だよ。気にしなくていい」

 

 私はそれだけ言ってバルコニーから玄関の方へと移動する。二人も玄関から扉を開けて入ってくるので、階段の辺りで合流できた。

 

「それで引越し祝いというのは何かな」

「蕎麦粉と塩」

「……それはマチお姉ちゃんが食べたいだけじゃないのか?」

「否定はしない」

「まあ、いいけど」

「そんな事よりも本だ」

「本は後だ。まずはメンチ君の所に……」

「呼んだ?」

 

 何時の間にか隣に現れていた。護衛なだけあって素早い。

 

「メンチ、これって作れる? 蕎麦の材料なんだけど……」

「ジャポンの料理ね。作れるけど、流石に本職並みにはできないわよ」

「メンチの料理なら大丈夫よ」

「じゃあ、作ってみるか。お昼はこれでいい?」

「いいよ。ついでに護衛二人の分も作ってあげてくれ。私達は執務室にいるから」

「了解」

 

 さて、二人を執務室に連れていき、対面になるようにソファーに座る。するとクロロとマチお姉ちゃんがそれぞれリュックから木箱を取り出して中身を見せてくる。

 

「依頼されていた物だ。確認してくれ」

「ふむ……確かに国々から盗まれた重要文化財や秘宝だね」

「このナイフなんて手に入れるの、すっごく苦労したんだから」

「そうなのかい?」

「そうよ。ゾルディック家と鉢合わせして、取り合いになったんだから」

「確かシルバ・ゾルディックがナイフを集めるのが趣味だったか」

 

 手にしたのはオーラが込められているナイフはベンズナイフ。これは刀鍛冶兼殺人鬼のベンニー・ドロンが殺人を犯し、殺人によって得たインスピレーションで独特なナイフを作ってきた。合計288本のナイフが生み出され、その全てが不思議な形状をしている。そして、シルバ・ゾルディックはこのナイフのコレクターだ。

 

「これは裏目に出たかな」

「どういうことだ?」

「このナイフを頼んだのはシルバ・ゾルディックへの手土産だったんだよ」

「あ~そういうことか」

「残念だったわね」

「まあいいさ。必要な物は手に入った。代金は何時もの通り、口座に振り込んでおく。次の依頼だが……」

 

 クロロが胃が痛くなるような依頼を出してあげた。もっとも断られたが。流石にメビウス湖の中に居る巨大生物の討伐は不可能だね。仕方ないのでとある兎の捕獲と薬草の入手を依頼する。

 

「俺達の仕事じゃないんだが……」

「それがそうでもない。兎は密漁業者に捕まっている。ああ、兎は出来る限り彼女の要望を叶えて連れてきてくれ。薬草の方はこちらに保管されている」

 

 兎の写真と薬草が保管されている場所が書かれた紙を渡す。二人はそれを見て驚いたようだ。

 

「兎人間か」

「へぇ~面白いわね」

「ああ、突然変異の個体だ。元は人間だよ」

「つまり、銀の凶鳥が関係していると?」

「さあ、わからないが、その可能性は否定できない」

「それにこの薬草って……頭に生えてる植物の奴じゃない」

「モンスターごと捕獲されて国立研究所に入れられている。君達らしい仕事だろう?」

「確かにな。だが、裏があるのだろう?」

「兎に関しては裏などない。ただ、薬草に関してだが、国立研究所に入れられている、というより囲われている。また、研究結果ではそのモンスターから取れる薬草はとても素晴らしく、色々な治療薬になるそうだ」

「……わかった。手に入れてこよう」

「団長、いいの?」

「かまわない」

「ではよろしく頼むよ」

「ああ」

 

 私は立ち上がり、クロロに報酬の本と前金としての本を渡す。

 

「ちなみにその国立研究所では非合法な実験が行われているので、研究員は皆殺しにしてくれても構わないよ。君達が事を起こした後は警察や軍が突入する予定だ。だから、その前に奪える物は奪ってきてほしい。カキン帝国で買い取ろう」

「いいだろう」

 

 世界で10冊しかない原書を大切そうに持ち上げ、読みだしていくクロロ。マチお姉ちゃんは呆れた表情でみている。そんな中、お昼の蕎麦がワゴンで運ばれてきた。

 

「おまちどうさま。蕎麦よ」

「待ってました」

「うむ。いただこう」

 

 メンチ君には私が知る前世にあった日本の料理もしっかりと教えてあるのでレパートリーが多い。うん、蕎麦もとても美味しい。夢中で食べられるし、薬味まであって満足だ。二人もそれは同じみたいで、すぐになくなってしまった。もちろん、そば茶まで出してもらえた。

 

「晩御飯は希望がある?」

「オムライスがいいね!」

「オムライスか。いいな。俺達の分も頼む」

 

 オムライス、美味しい。トロトロの蜘蛛鷲卵は素晴らしい。

 

「いいでしょ?」

「まあ、いいけど……」

「いや、君達は今から夕方まで居るつもりなのかな?」

「そうだが?」

「今日は用事もこれで終わりだから」

「まあ、いいが……私はやる事があるから大人しくしていればいいが……」

「やる事?」

「ああ、この邸宅を魔改造する」

「魔改造って何をする気なのよ?」

「この邸宅には足りない物がある。それも致命的なほどに……」

「良い家みたいだけど……」

「確かにそうね」

 

 マチお姉ちゃんもメンチ君も納得しているようだが、私にとっては納得できないのだよ。

 

「この邸宅には圧倒的に銀が足りない!」

「待て。お前、まさか……」

「うわぁ……」

「ちょっと止めてよね! 私も一緒に住むのよ!」

「知らないね! ここの家主は私だ! 故に改造する! そのために水銀を運ばせてきたのだから!」

 

 ガチで引かれているが気にしない。私の安全上とここを抜け出すために必要な措置なのだ。仕方ないじゃないか。そんなわけで、私は三人を無視して邸宅中に計算尽した配置で神字を刻んでいく。ちゃんと裏に隠したりもしていくし、人手はトリムマウにも手伝ってもらうことで一気に刻む予定だ。

 我が家はトリムマウの中になるのだよ。つまり、ここで私を倒せると思わぬことだ。どこからでも攻撃してくるし、全て監視できる。また私の身代わりも用意できるようにするので抜け出して水銀人形(ライネス人形)を置いておけば大丈夫だろう。

 

 

 必死に頑張った。クロロ達が帰った後も寝ずに沢山の月霊髄液で作って手を使って休まずの作業だ。

 邸宅中に強化を施してオーラを込めまくることで建物自体を強化すると同時に内部をある種の異界とする。邸宅全てがトリムマウの管理下に置かれ、普段は大量の水銀が壁に擬態していたりするモンスターハウスとなった。別名スライムハウスとも言う。だいたいそんな感じだ。

 具現化した水銀と実物の水銀を合わせて通路が埋まり、水没するかのような馬鹿みたいな水銀の量だ。それらの水銀が月霊髄液と同じような機能を持ち、常に索敵と自動防御を行ってくれる。一度攻撃指示がでたら容赦なく相手を殺してくれるだろう。トリムマウの腹の中に居るようなものだから、全方位からの攻撃はもちろんのこと、中毒症状も発生する。いや、これは住んでいたら当然か。

 

「はい、これ」

「なんだねこれは……」

「退職願い?」

「……」

「中毒死するのは嫌なのよね」

「大丈夫。ちゃんと対策は取るから、敵以外は中毒にならないよ」

「そう、ならいいけど……」

 

 まあ、オーラで覆って中毒にならないように閉じ込めておけばいい。それにちゃんと敵味方の識別はできるし大丈夫なはずだ。うん、念の為に壁などには別の板を張り付けたり、家具や美術品に擬態させたりしておこう。どちらにせよ、この邸宅の中で起こることは全て把握できる。また、これによって地下に抜けだ……脱出するための隠し通路なども作れるからいいことづくめだ。

 

 

 

 

 

 

 




ネテロ会長は負け嫌い。

水銀屋敷(邸宅) この中でならきっとネテロ会長にも……無理くさい。

さて、グレイを出そうかと思いますが、カイトの妹辺りにして、カイトの設定も捏造や弄ろうかと思っています。


次はジャックの話かな。

その次はアンケート。いい感じの念能力を考えてくれてもかまいません。正直、考えてると結構大変ですので使わせてもらえると幸いです。

ジャックちゃんのメインは37の女性を殺害した少女殺人鬼。





どれからがいいですか?

  • グレイとカイトの兄妹の話
  • ポンズの話
  • ナーサリーライムの話
  • ジャンヌダルク・オルタの話
  • ルサルカ(マリウス)の話

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