ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女   作:ピトーたんは猫娘

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第20話

 

 

 暗い、暗い地下室。私は何時の間にかそこに居た。部屋の中には子供達が居て、大人の男が私の腕を掴んで来る。抵抗しようにも力が使えない。それから広い会場のような場所に連れていかれて、複数の男達に──汚され、殺された。

 

「っ!?」

 

 身体が急激に起き上がり、周りをみると邸宅にある自分の部屋だった。設置されている鏡には顔面蒼白な私の、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの顔がある。慌てて身体を触ってみるが、刻まれた手の跡など、痛々しい痕跡は存在しない。それでも不安になり、寝間着として着ている大きな男性用のワイシャツを開けて素肌を確認すると、とても綺麗な肌がみえた。ただし、汗でワイシャツが張り付いて気持ち悪い。

 

「ん~どうしたの、おかあさん……」

 

 声が聞こえて、横を見ると目を擦って起き上がってくるジャックの姿が確認できた。

 

「なんでもない。ゆっくりとお休み」

「ん~」

 

 身体を横たえてから頭を撫でてやると、幸せそうに笑い、私の身体に抱き着いて眠っていくジャック。彼女の首には首輪が嵌められていて、服装は私と同じ感じだ。この首輪はハンター協会からの要請だ。私が引き取る条件の一つが爆弾の装着だった。ジャックは大量殺人鬼だ。なので、私が何時でも殺せるようにする事が必要ということだ。また、フェイタン君と同じように心臓に水銀を打ち込んである。これらはジャックの許可を取っているので問題はない。

 ハンター協会はジャックが一時的に身体を霧にできることを知らないからこその処置だ。そもそも情報隠蔽によってジャックの記憶はどんどんと薄れていき、機械にも映らない。なので犯行の実証もできない。そういうわけで、私の権力で引き取らせてもらった。代わりに復興費用として58億ジェニーが求められたので、支払う。まるでガチャだ。星5のジャックを引くのに使った代金がこれだと思うと涙がでてくるが……幸せそうに眠っている彼女をみれば安い買い物だろう。

 

「……おか、あさん……いかないで……」

「わたしはここに居るよ」

 

 私も彼女を抱きしめて先程の夢を考える。アレはジャック達の記憶だと思われる。サーヴァントはマスターに自分の体験を夢として見せてくる事がある。もちろん、彼女達は本当のサーヴァントじゃない。それでも、銀の鳥が融合して作り出している存在だ。それは私との明確な繋がりだ。元々銀の鳥には視界を私に飛ばす機能があるのだから、疑似体験が起こるのは不思議ではない。

 

「それにしても、まあ……」

 

 一週間前の戦いは想定外が多い。本来の想定なら、工房である我が邸宅に誘い込んで誰にも見られずに倒すつもりだった。ここに貯蓄されている水銀とトリムマウの実力ならヘラクレスとはいかないまでも、本物ではないジャックちゃんならば勝てるはずだった。

 それが結果はどうだ。逆に私が追い込まれ、隠された庭園(シークレットガーデン)まで使わされた。この隠された庭園(シークレットガーデン)を展開すると、浮遊している寄生していない鳥達を強制的に戻し、戦力とする。寄生している子達は離れられないけれど、それは仕方がない。つまり、私の切り札だ。なのに負けた。

 こちらから銀の鳥についての情報を伝え、互いに攻撃などで被害を与える事を禁止させたからこそ、ジャックちゃんに解体される事はなかった。あそこで止めていなければ、彼女の身体から出て来たもう一人の彼女に解体されていただろう。それから、私が彼女達の母親である事が間違いないと、なんとか説得に成功し事無きを得た。

 本当にこの世界は化け物だらけだ。たった数瞬の間に相手がどんどん強くなっていく。鳥達のせいかもしれないが、本当に止めて欲しい。

 まあ、もう終わった事だ。お金を稼ぐ事と、ジャックが世話になったマフィアに報復することだね。他にも色々とやる事はあるが、最優先項目はすでに終えている。

 その一つが銀の鳥達を再度、放つことだ。放つ場所が現在地からになるので、私が術者だと見付かる可能性が非常に高くなるから、見つからないための方法はしっかりと考えて実行している。虫などに寄生させ、冷凍させてから列車や車でいろんな場所に運ばせて羽化させるのだ。

 更に複数の人達の手で移動させれば見つかる可能性は低くなる。基本的に私があずかり知らないようにすることで無関係にできる。なに、こちらにはジャックがいるんだ。気配遮断と情報隠蔽を使って運んでもらえばどうにかなる。船に乗せるのだってありだ。いろんな場所を経由してきた荷物なら、どこから虫がついているか判別は難しい。ましてやメビウス湖の中にだって契約者はいるのだから、そこからも増える。まあ、増える量はかなり少ないけれどね。

 

「ふにゃ~」

 

 ジャックの耳を弄りながら、オーラとメモリを調べる。メモリはほぼ無い。ジャックが願いを叶えた代価を支払い、更に令呪まで作成したからね。令呪は絶対命令権であり、一画ずつ行使できる。これはジャックに対する保険だよ。それと彼女の願いは誘導して私が問題なく叶えられる三つにしたから、オーラやメモリは消費していないのが救いか。

 それでも、ジャックの願いの対価は……複数の子供達の分を纏めた対価である。正直、想定以上の対価を支払った。まさかいきなりこんなに支払うことになるとは思わなかった。まあ、彼女にはその価値が十分にある。

 どちらにせよ、オーラの残量が一割を切っている。鳥達を回収して増やしたけれど、それだけジャックの消費が多い。また、ジャックに消し飛ばされた水銀の補給もできていない。ジャックとの戦いに馬鹿みたいな量のオーラを使ったから、トリムマウの戦力は70%も減少している。そう、圧倒的な水銀不足だ。絶もできないからオーラの回復量も少ないし、具現化もできない。

 ほとんどの水銀は私の防御の要である月霊髄液に充てて、トリムマウは普通に活動できる程度にはする。もちろん、ネテロ会長や超一流の念能力者には敵わない。一流ですら怪しいかもしれない。だが、その代わりにジャックがいるから大丈夫だろう。それにしばらくは大人しく回復に専念し、戦いはジャックに任せるとしよう。

 

「朝よ。起きてる?」

「ああ、起きているよ」

「入るわね」

「うむ」

 

 メイド服を着たメンチ君がワゴンを持って入ってくる。彼女はこちらを見るなり、なんとも言えない表情をする。

 

「そんな格好で寝て……」

「可愛いじゃないか」

「感性が男ね」

「否定はできない」

「まあ、なによりも一番驚くのはその子だけどね。もう、記憶がかなり薄れているけれど、あの犯人なんでしょう?」

「そうだよ」

「そうだよって……よく一緒に寝れるわね」

「ジャックは良い子だからね」

「まったく、護衛の身にもなって欲しいわよ」

 

 そう言いながら、起き上がった私に準備されていたカップに紅茶を入れて渡してくれる。貰った紅茶はとても美味しい。紅茶を味わっていると、メンチ君が服を用意してくれる。私とジャックの身長や体型はそんなに変わらないから、私の服を着せる。やはり、ライネスも可愛いが、ジャックも可愛いのでよい。

 

「おかあさん……おはよう……」

「ああ、おはよう。ほら、紅茶だ」

「うん……」

 

 ジャックの身体を抱きしめながら、紅茶を息で冷やしてから飲ませる。次第にジャックも覚醒してきたようで、ベッドから出て猫のように伸びをする。

 

「今日の予定はどうするの?」

「ん? マフィアから奪った会社の整理かな」

「ちょっと待ちなさい」

「マフィア?」

「うむ。ジャック達を酷い目に遭わせた連中に報復をしているところだよ」

 

 表向きは別の人間を使って動かしているから、暗殺は大丈夫だとは思うが、ゾルディック家がきたら大変なのでやりすぎには注意。

 それと既に調べたマフィアの傘下企業を叩いている。こちらは株の空売りを行い、今回の事件についての情報が流れ、国から査察が入ると同時に株価が下落する。そこで買い戻して空売りした代金を支払う。株価が最低になれば逆に株を購入して会社を乗っ取っていく。こうして複数のマフィア傘下の会社を奪ってやった。

 十老頭が動くだろうが、いざとなればジャックに暗殺させればいいだけだ。これはアサシンの運用として何も間違っていないしね。あちらが示談を持ち込んでくればそれ相応の金額をもらって終わりだ。マフィアはカキン帝国を相手にする力はない。故に搾り取れるまで搾り取ってやる。

 

「じゃあ、今日は家にいるの?」

「その予定だが……ジャックはどうする?」

「わたしたちは解体しに行きたいかな?」

「そうか。じゃあ、解体しにいくか。掃除もしないといけないからね」

 

 警察と連携してマフィアの会社や店を襲撃すれば楽しいことになるだろ。そう思いながら、メンチ君が用意してくれた服に着替えて食堂で朝食を食べる。三人でテーブルを囲み、美味しいパンを味わっていく。もうちょっと大きくなったらジャックを膝の上に乗せて食べさせたりもできるんだろうが、私とほとんど変わらないし残念ながら無理だ。

 

 

 

 

 

 

 

 十老頭

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった!」

「運が悪かったとしかいいようがない。実験の結果、生まれた化け物がカキン帝国の王族を襲撃するなど予想できるはずもないからな……」

「それはそうじゃが、報復されているこちらはたまったもんじゃないの」

「そもそも報復対象が広すぎる。下部組織だけじゃなく、わしらの店まで対象じゃ」

「ならばどうする? いっそ暗殺でもするか?」

「それはできない。手を出せば我等は確実に滅ぼされるぞ」

「国が威信をかけて潰しに来るか」

「そうでなければ戦争じゃからな。カキン帝国は王子同士の仲が悪いらしいが、王子が殺されたとなると一つになるだろう。戦争を仕掛ける口実にはなるのじゃろうし、国としては犯人を血祭りにあげる方が痛手ではない。それもカキン帝国が納得する規模となればのぉ……」

「暗殺も駄目となると人質か。そういえば、子供を一人引き取ったそうだ。そいつを人質に取れば……」

「それか、示談じゃな。どうする?」

「決まっておる。まずは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイザック・ネテロ

 

 

 

 

「会長」

「尻尾を出したか?」

「微妙、ですね。メンチ君は気絶していましたし、彼女の家の中は相変わらず外からはわかりません。メンチ君に持ち込ませた盗聴器などは全て排除されていますし、戦闘中は侵入もできませんでした」

「そうか。それだけか?」

「いいえ、まだあります。戦闘中、銀の凶鳥が消失する現象がありました。確認された場所は複数です」

「偶然か必然か、どちらだと思う?」

「さあ、私にはわかりませんね。どちらにせよ、V5の中でも意見が割れているようです。このまま容認するか、それとも消すか」

「消せと言ったのはアイツらなんだがのう……」

「対処するのが遅すぎましたね。ここしばらくの研究で有用な活用方法が判明してきています。彼等はその利益を考えているのでしょう」

「有用な活用方法ねぇ……なにがあるかわかるか?」

「例えば赤子から育て、心から望むように教育すれば望む力を手に入れられるでしょう。特に権力者なら欲しいでしょうね。病気の時に治療したいでしょうから」

「愚かじゃな。このまま放置して手が付けられないようになるかもしれんのにのう」

「いざという時は貧者の薔薇とかで殺すつもりなのでしょう。殺せるかはわかりませんが」

「それぐらい対策してそうじゃし、カキン帝国の王子なら簡単には手が出せんしのう……まあいい。このままわしが殺せる状態を維持すればいいだけだしな」

「他の可能性も捨てきれませんし、彼女の立場だと下手をしたら被害が甚大になりますからね」

「うむ。やはり現状維持じゃな」

「そうですか。腹案もあるんですけどね」

「腹案かの?」

「そうです。今なら、マフィアのせいにしてメンチさんごと殺してしまえばいいんです。そうすれば恨みや被害はマフィアに向かうだけです。我々はメンチさんの犠牲を理由に協力し、全力で叩いてやればいい。これで我々は多少の犠牲で最大の効果が得られます」

「却下じゃ。メンチ君を犠牲にするつもりはないぞ」

「ですよね。まあ、あらゆる角度から可能性を検討いたします」

「頼むぞ。他の王子も可能性は十分にあるからの」

「お任せください」

 

 

 

 

 

邪ンヌの家族が死亡しているかどうか。クルタ予定なので両親は確実に死亡

  • 三姉妹全員生存
  • 姉のみで生存
  • 邪ンヌのみ生存。姉妹死亡
  • 聖女とリリィの姉妹。リリィが邪ンヌ化
  • いっそ邪ンヌとアルトリアオルタのペア
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