ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女   作:ピトーたんは猫娘

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クルタ族への繋ぎ


第29話

 

 あ~面倒だ。ゾルディック家と交渉は終わり、ハンター協会にも査察が入って徹底的に調べられる。一応、ハンターになる前の犯罪歴やハンターになってからの犯罪歴を調べ、続いて功績で減刑する形を取るそうだ。暗殺に関しての証拠はゾルディック家から状況証拠として引き出してあるし、通話記録もあるので問題ない。

 問題は私が今、居る場所に起因している。私がどこに居るか、そんなの決まってるじゃないか。カキン帝国の王宮だよ。そこで王であるお父様や、色々と国内の仕事について日夜頑張っているのか知らないお兄様やお姉様、それに王妃達を前にしている。つまり、何が言いたいかというと──

 

 

今回の件と前回の件などで本国に緊急招集された

 

 

 ──という訳だよ。うん、面倒だ。放っておいてくれればカキン帝国へ利益を出し続けてあげるんだけどね。それにわざわざ来なくても、電話会談とかできるしね。まあ、秘匿性の観点からしたら会って話した方がいいけれど。

 

「以上がカキン帝国内の経済状況となります。順調に成長し続けているといえるでしょう」

「チョウライ、ご苦労だったホイ」

「はい」

 

 トウチョウレイ王妃の子である第3王子が報告し、席に座る。彼はチョウライ=ホイコーロ。色黒の肌をしている王族然とした小柄な男性だな。

 

「次はベンジャミン」

「はい。諸外国からの干渉を防ぎ、防衛するために訓練と変異種の討伐を行っております。何度か我が国の領海に侵入してきた船もありますが……」

 

 お兄様方がお父様に報告しているのを、足をぶらぶらさせながら聞く。私が座っている椅子は大人用の物で、高いからね。足がつかないんだよ。

 会議の内容はしっかりと聞いているし、報告用の資料も用意した。ジャックとメンチ君には外で待機してもらっているが、いざとなれば呼び出すこともできる。

 

「さて、ではライネスの報告を聞くホイ。随分と色々とやってるホイね。暗殺されかけたという報告が何度か来ているホイな」

「はい。全て排除しました」

「俺からの護衛を断るからだ」

「護衛は自前で用意していますので、必要ありませんよ。ですが、ありがとうございます。心配していただけて」

「ふん」

 

 寝首をかかれる可能性があるベンジャミンお兄様の護衛などお断りだ。こちらの勢力がもっと増えてからなら使わせてもらうが。

 

「私もお兄様に感謝しておりますよ。輸送に色々と使わせて頂いておりますから」

「確か、ハルケンブルグの所に変異種から出た物を送っているんだったホイね」

「はい。研究して頂いております。ハルケンブルグお兄様、そちらの方はどうですか?」

「今の所はまだ基礎研究の段階だ。ツベッパ姉様にも協力してもらっている」

「新しい物質も発見されていますので、もうしばらくかかります」

「なるほど、なるほど。外交の方はどうなってるホイ?」

「そちらは顔見せを終えて、費用は使いましたが幾つか成果を上げています。カキン帝国が所有していない技術について、共同研究という形で技術者を派遣できるようにしました。貿易に関してですが……」

 

 私に被害を出した国からはかなりの譲歩を頂いたが、ある程度に調整しておいた事も伝える。絞り尽そうとしたら駄目だ。恨みを買って戦争になれば結果的に損をする。あくまでも戦争は最後の手段だ。

 

「温いぞ」

「最悪、かの国の同盟国を含めて、V5を全て相手にせねばなりません。やるなら確実に勝つ根拠などが必要です。一国ならまだしも、全てを相手にするには国力がまだ足りません」

「今は技術を研鑽し、国を強くする事こそが重要だホイ。それも気づかれないようにやるホイな」

「わかりました」

「しかし、ライネス。それ以外にも報告があるはずだホイ」

「そうですね。幾つかお父様に許可を頂きたい案件もありますので、先にお父様の気分を良くさせてもらいましょう」

「ほう、それは気になるホイね」

「他国の造船所を手に入れました。技術者諸共買収し、私の支配下にありますので国に送りつけることも可能です」

 

 他の王子達が鼻で笑う中、ベンジャミンお兄様は忌々しそうにしている。

 

「そこの君。こちらの資料をお父様だけに渡してくれ。これをどう伝えるかはお父様に全てを任せるのでね」

「かしこまりました」

 

 執事を呼び、資料を渡す。執事はすぐにお父様に全てを渡し、しばらく私達はそれを待つ。

 

「くっくっく、これは本当かホイ?」

「はい。資料と実物は全て破棄されていましたが、その技術は継承され、技術者も生きていました。もっとも、本人達はそれに関わっているなどとは知らないでしょうが。どちらにせよ、国の監視下には置かれていますので連れてくるには一度殺してから、別の人間として甦らせる必要があります」

「いい土産だホイ。ベンジャミン、すぐにそいつらと……」

「お待ちください。今、やられますと困ります」

「ん?」

「せっかく手に入れた造船所が国に睨まれます。ですので、一部の技術者を受け入れて技術を継承し、来年と再来年辺りに決行すべきです。現状はハンター協会への査察で忙しいでしょうが、それだけに徹底的に調べられる可能性も否定できません。また、無理矢理拉致するよりも、こちらを裏切らない者に接近させ、篭絡させてから技術を教えてもらった方が安全です」

「ふむ……確かにその方が裏切らないホイな。時間がかかるが……」

「今の現状ではアチラに向かうよりも、変異種を解析して力を得る方がよろしいかと」

「ふむ。確かに国内でもまだ猛威を振るわれているホイな。他国に全ての旨味を持っていかれるのも許容できんホイ。変異種の力を取り込んでからの方が確実か。ベンジャミン。ライネスと協力して変異種をどんどん捕まえていくホイ」

「了解」

「さて、直近ではなく時間が経つにつれて利益を出す方をライネスは好んでいる感じホイ」

「そちらの方がリターンが多いですからね。駄目なら修正させていただきますが……」

「いや、それで問題ないホイ。国を運営するには直近だけを考えていも駄目ホイな」

「はい」

 

 どうにかなったか。問題は次だ。

 

「ライネスのお願いというのは、ライネスの事をおかあさんと呼んでいるあの娘の事ホイ?」

「それもありますが、あの子が呼んでいるだけなのでそこまで問題はありません。実際に国内外に孤児院を運営するつもりですので、そこ出身の子ということで呼ばれても問題なくします」

「そういえばライネスは結婚するつもりはないんだったホイな」

「ありませんね。子供を作る方法なんていくらでもありますから。しても人工授精で、他の者に産ませる程度でしょう」

「王族として問題ある発言だな」

「まあ、理解はしていますが今の所は変える必要もありません。お兄様とお姉様の子供がいますしね」

「ふん。そういうことにしておいてやる」

「じゃあ、ライネスの願いは何ホイ?」

「モモゼお姉様を好きに使わせて頂きたいのです」

「どういうことホイな?」

「まず、ゾルディック家というのをご存知でしょうか?」

 

 私はゾルディック家について説明し、世界最高の暗殺者一家だと伝えて彼等が実際に行ってきたと思われる暗殺のリストをお父様達に見せる。同時に巨人との戦闘映像をお父様とベンジャミンお兄様の端末にだけ流して確認してもらう。

 それ以外のお兄様、お姉様達には巨人が居た国が軍隊をだして戦っている映像をハンター教会のもの混ぜて、まるで指揮をとっているかのように編集して流した。

 

「今回、私はハンター協会のアイザック・ネテロ会長と共に居たので助かりましたが、次はどうなるかわかりません。ベンジャミンお兄様、正直に客観的に見てアイザック・ネテロ会長に少人数で勝てる者は我が国の護衛にいますか?」

「勝てる」

「本当に? と聞いてもそれ以外答えられないでしょう。お父様」

「うむ。本音でいうホイな。それによってなんらベンジャミンに問題は起きないことをナスビー=ホイコーロの名で宣言するホイ」

「……なら、無理だ。俺と部下たちを合わせてもまだ届かない。数年後はわからんが、現状では勝てん。それこそ広域破壊兵器を使わねばならん。だが、それでは我等の敗北には変わりがない」

「そうです。確かに戦略級兵器を使えば倒す事は可能かもしれません。ですが、暗殺者の特性上、何時、何処で、誰が暗殺をしてくるかわかりません。可能性が高いのは外出中か王宮です。技術的に王宮への侵入も彼等は可能としています。こちらが気付いてもその瞬間に殺されている場合があるのです。それに戦略級兵器を使うわけにも、普段から近くに置いておくわけにもいきません。敵対している存在に操られた者がスイッチを押すかもしれないし、それこそ機械のミスで発動してしまうかもしれない。緊急時に使うのなら、何時でも発動させる段階にして置いておかないといけないのですから」

「厄介な相手というわけだな。だが、それなら先に滅ぼす事はできないのか?」

「大義名分がありません。今回のように私が、王族が殺されればそれを理由に戦争でも、報復として流星街の人間に貧者の薔薇を持たせて特攻もさせられましょう。ですが、大義名分なくそれをすれば戦争は不可避です」

「他国は確実に黙っていないか」

「はい」

 

 ゾルディック家を潰すにはそれ相応の犠牲が必要だ。ツェリードニヒお兄様達も、改めて映像を見てアイザック・ネテロ達が化け物だと知る。ちなみに私の映像はカットしてある。

 

「さて、このアイザック・ネテロと少なくともまともに戦えるのがゾルディック家に居ます。マハ・ゾルディック。ネテロ会長と同じ強さか、その下だと予想されますが、彼には一族がいます。その強さはベンジャミンお兄様に勝るとも劣らないでしょう。それだけ、彼等は我々と同じく代々優秀な者を取り込み、暗殺という技術に一極集中してきました」

「つまり、ライネスはゾルディック家にモモゼをやる事で不可侵にするか、それに近い事をするつもりホイね?」

「はい。ゾルディック家の次期当主とする予定だと伺ったキルア・ゾルディックとモモゼお姉様を婚約、結婚させます。産まれてくる子供については暗殺者の素質がある者をゾルディック家の者とし、王位継承権を与えないことにすることで話はついています。それ以外の子供はこちらかあちらで相談しますが、王位継承権についてはお父様に任せる事なので、ゾルディック家の子供になる者は破棄だけは確実にさせます」

「ふむ。こちらのメリットはゾルディック家がホイコーロに対する暗殺依頼を受けない事と、血筋かホイ?」

「はい。連中も私達も、優秀な血を欲しています。それに暗殺者の視点から護衛の穴や暗部を鍛えてもらうことも交渉次第では可能でしょう。その人材の確保に孤児院を運用しようかと思っております」

「ライネス、それは……」

 

 お兄様もお姉様も私を睨み付けてくる。そりゃそうだろうね。暗部を、言ってしまえば諜報機関を作って自分で運用すると言っているのだから。

 

「運用はお父様に任せますが、その特性上、必要なのは内政と外交です。それにゾルディック家と渡りをつけたのは私です。ですので、関わりがある私が作り上げます。それに大切な姉を捧げるのですから、お姉様の幸せのために動かせてもらいます。また、起きたお姉様も私の言葉なら安心なさってくれるでしょう」

「だが……」

「おや? お兄様やお姉様達は私がお父様を裏切るとお考えですか? それはない。私はカキン帝国の、ひいてはお父様の利益となる行動しかしませんよ。それにこれはおいおいお姉様達の利益にもなります。暗殺者の事は暗殺者がわかります。ですので、護衛としてつければ尚更安全でしょう」

 

 お父様以外が、何処が利益だと言いたそうな憎々しい顔を向けてくる。ああ、最高にいい気分だ。お父様はゾルディック家の血を入れることにとても喜ばれるだろうしね。

 

「ライネス。自分で自分の首を絞める可能性もあるホイよ?」

「構いませんよ。モモゼお姉様に寝首をかかれるのなら、くれてやります。もっとも、ただでやるつもりもないですが」

「ふむ。しかし、モモゼは目覚めておらんが、あちらはよいのかホイ?」

「問題ありません。最悪、眠っていても子供は産めますからね。もちろん、その前に治療法をなんとしても見つけます。その為にも暗部を作り、情報を収集させることも考えております」

「良かろう。ゾルディック家の血はわしにとっても価値ある物だホイ。全てライネスに任せるホイ。報告と監視だけは怠るなホイ」

「もちろんです。お父様には包み隠さずお伝えするつもりです」

 

 あくまでもこの部隊に関しては全て教えるさ。銀の鳥は教えないけどね。

 

「他に何かあるホイ?」

「では、私から。ライネス。お前、緋の目を手に入れたようだな」

「アレですか、ツェリードニヒお兄様。それが何か?」

「渡せ。あの秘宝は我が国の宝物庫で管理する」

「お断りします」

「なに?」

「緋の目は全てクルタ族に返還します。その式典の準備もしています」

「どういうつもりだ」

「どうもこうも、カキン帝国のイメージアップ戦略ですが」

「は?」

「少数部族が不幸な目に遭い、瞳を奪われるという悲惨な事件が起きました。それを王族が購入または討伐して手に入れ、返還するというのは美談になります。国民の感情は国内外でよりいっそうホイコーロを称えるでしょう。もしも何かあったら助けてくれるかもしれないですしね。それに私はまだこの通りのか弱い若輩者。名を売るために実を捨てたまでです。

 おかげでハンター協会からの覚えもめでたくなりましたし、諸外国との交渉も便利になりました。なにせ秘宝の価値をわかっていない小娘だと侮ってくれましたからね。大々的に告示して回収もさせます。お兄様もお持ちですよね? 国の為に提出していただけませんか? 式典にはお父様もお呼びする予定でいますし、お兄様もどうぞお越しください。あ、後でお兄様が持っている物もお父様に教えておきますね。場所も含めて」

「わしを呼ぶホイな?」

「はい。国の顔はお父様ですから。そちらの方がより強く印象づけられ、我が国の狙いについても目を逸らす効果もあるでしょう。どちらにせよ名声が高められるので利益になります。お父様、どうでしょうか?」

「ふむ……スケジュールを空けておくホイ。後で執事に知らせるホイよ。お前達も持っているなら出すホイ。ライネスの言う通り、そっちの方が利益がでるホイよ」

「ありがとうございます」

 

 視線をツェリードニヒお兄様の方へと向けると、物凄い形相で見ていた。一瞬だけですぐに笑顔に変わったけれど、机の下では拳を握りしめて血を流しているし、目が一切笑っていない。ベンジャミンお兄様はそれを見ながら、手で顔を覆って笑っている。

 ツェリードニヒお兄様の心が手に取るようにわかる。怒りで腸が煮えくり返っているかもしれないね。それにお父様に逆らうわけにもいかないし、絶対に提出するしかない。更に式典に誘ったことで皮肉もとても効いている。

 これが愉悦と言わずしてなんという! いやぁ、楽しいなあ。やっぱり来て良かったかもしれないね! 

 

 

 

 

 

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