ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女   作:ピトーたんは猫娘

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つ、繋ぎ2。3までありそう。


第30話

 

 

 会議が終わり、私は先に退出する事になった。お父様達はこれからも話し合うことがあるのだろう。生憎と七歳である私にはまだ関わらせてもらえない。

 そんな訳で外に出ると、すぐにジャックがこちらに寄ってきた。メンチ君の姿が見えないが、探りに行ったのかな? 

 

「おかあさん! 終わった?」

「ああ、終わったよ。待たせたね」

「それじゃ、あそぼ!」

「遊ぶのはまだ少しやる事がある。だから、待っていてくれるかな?」

「うん、いいよ~」

 

 二人で手を繋ぎながらモモゼお姉様の居る場所に移動する。彼女はカプセルに寝かされていて、最新の治療を受けている。

 モモゼお姉様を見詰めると、彼女のオーラがかなり増大している事がわかる。私と繋がっている事もあり、魔術回路の作成も問題はなさそうだ。後はタイミングを見て起こすだけでいいだろう。

 

「飛行船の手配と運び出す準備をしてくれ。お父様の許可は取ってある」

「かしこまりました」

 

 医師や護衛に指示をだし、万が一が起こらないようにお願いする。ジャックは不思議そうにモモゼお姉様を見ているので、彼女に頼み事をしよう。

 

「ジャック、少し席を外す。モモゼお姉様を見ていてくれないか?」

「うん、わたしたちに任せて」

「ありがとう」

「ふにゃ~」

 

 ジャックを撫でてから、私は弟の部屋に移動する。弟の部屋の前には護衛が数人立っている。私がそれを無視して部屋に入ろうとすると、止めて来た。

 

「なんのつもりだ?」

「マラヤーム様にお会いになるにはセヴァンチ様の許可が必要です」

「私はマラヤームの姉だが?」

「それでも、です」

 

 押し問答をしていると、お母様が走ってやってきた。おそらく、護衛から連絡を受けたのだろうね。

 

「ライネス! マラヤームになんの用ですか!」

「おや、ここを離れるので弟の様子を見に来ただけなのだが、いけないのかな?」

「いけないわ! 貴女は私の可愛いマラヤームに悪影響を及ぼすの! モモゼもそうだったわ! 貴女に関わらないように言ったのに、あの子は私の言いつけを無視して! 挙句の果てに意識不明の重体よ!」

「それは私のせいでは……」

 

 いや、私のせいか。

 

「ほら、やっぱり! それにモモゼの婚約者だって私が有力者の人と話をつけていたのに!」

「それに関しては知らなかったからね。もっとも、ソイツがお姉様に相応しいかどうか、しっかりと調べるが」

「暗殺者風情の子供がカキン帝国の王子を嫁に迎えるのが相応しいというの!」

「少なくとも武力では相応しいね。それにこれはお父様がお認めになったことだ。異義を唱えるの?」

「っ!? わかったわ。モモゼに関しても貴女に関しても好きにしなさい! でも、マラヤームには関わらないで!」

「そうか、わかった。それがお母様の意思ならば従おうじゃないか」

 

 大人しく踵を返す。しかし、お母様はわかっているのかな? 私が関わらないということは、マラヤームの後ろ盾にはなれないのだが……まあ、いいさ。

 マラヤームに念能力を与えようかと思って会いに来てみたが、お母様が関わるなと言うのなら切り捨てよう。モモゼお姉様以外の親族はやはり、どうでもいいな。障害になるなら排除し、ならないのなら放置という方針でいこう。

 

「何故、ライネスに暗部を任せるの!」

「諜報機関の一つはわしが握っとるから問題ないホイ。それにできる部隊はライネスのコネがあるからホイ」

「それなら、カミィがライネスからそのコネを貰えばいいわね」

「できるのなら、構わんホイ」

 

 誰が渡すか。というか、カミーラお姉様は相変わらず傲慢だ。私も人の事は言えないが、さっさと退散しよう。

 

「あ、ライネス」

「こ、こんばんは」

「ああ、こんばんは。カチョウお姉様とフウゲツお姉様。ご機嫌は如何かな?」

 

 私達姉妹とは別の母親から生まれた双子の姉妹。会議に呼ばれていないので、偶然だろう。手にはヴァイオリンケースが握られているから、稽古に向かう途中かな? 

 

「めんどくさいの」

「あははは……ライネスは弾ける?」

「そうだね……弾けるかどうかと言われれば弾けるよ。習ったからね」

「じゃあ、手本を見せてよ。妹なんだからいいでしょ」

「それは……よし、今すぐ移動して演奏しようか」

 

 二人の手を取ってすぐにその場を離れようとすると、肩を掴まれた。もちろん、肩の下には月霊髄液を身に纏って身体が痛くならないようにする。それから見上げると、凄い形相のカミーラお姉様がいた。二人もちょっと引いている。

 

「ねえ、ライネス。暗部を作ったらカミィに献上しなさい。子供のライネスには過ぎたものよ」

 

 ここは普通に断るよりも、逆上しやすいお姉様を貶めるため怒らせた方がいいか。

 

「そうだね。そうかもしれない……」

「ええ、そうよ。カミィにこそ相応しいの」

「でも、考えてみるよ」

「いますぐ答えをだしなさい。答えなんて決まり切っているでしょう?」

「そうだね……お姉様、耳を貸して。答えるから」

 

カミーラお姉様がしゃがみ込み、耳を近づけたところで声を上げて答えてあげる。

 

お・こ・と・わ・り・だ!

「なぁっ!?」

「欲しければ自分で作るんだね。私が命を賭けて手に入れたコネクションを何故お姉様に渡さなければいけない。代価はなんだい? それ相応の代価をもらわないと納得できないね。うん、差し詰め、お姉様の持つ王位継承権破棄か、私の順位との交換かな」

「ふざけて……いるの?」

「いやいや、大真面目さ」

「そう、悪い子ね」

 

 肩から私の首に手が回され、そのまま持ち上げられる。

 

「なな、なにやってるの!」

「そ、そうですよ、お姉様!」

「お仕置きよ」

 

 苦しいし、足も付かない。よって両手でお姉様の腕を掴んでジタバタするふりをする。

 

「ねえ、もう一度聞くわ……カミィに寄越しなさい?」

い・や・だ・ね

「ぐっ!?」

 

 ジタバタ攻撃。それもオーラを込めた一撃がたまたまお姉様の腹に良い感じであたり、何かが潰れる音が響いてお姉様が蹲る。ああ、これでもう子供が産めないかもしれないが、事故だよねぇ? 

 

「けほっ、けほっ」

 

 カミーラお姉様は悶絶しているけれど、流でガードされたか。込めた量的に壁ぐらい普通に粉砕できる量を入れたしね。それなのにただ苦しんでいるだけ……壊れているかどうかも微妙だな。

 

「ライネス!大丈夫!?」

「ああ、平気だよ。それよりも人を呼んでくれるかな?」

「わかった。行くわよフウゲツ!」

「う、うん!」

 

 さて、二人が人を呼びに行ったので、私は首を撫でながら待つとすぐに兵士がやってきて説明する。私の首筋にハッキリとお姉様の手の跡が残っているし、私以外にもフウゲツお姉様とカチョウお姉様が目撃者だから問題ない。

 すぐにカミーラお姉様がこちらを睨み付けてくるけれど、拘束されて運ばれていく。だから、私は口パクでバ・カ・メと伝えてあげたら、余計に怒り心頭になった。

 

「平気?」

「ああ、平気だよ。それより、演奏だったね。モモゼお姉様が眠っている隣でなら演奏できるよ」

「え? この状況で?」

「何かおかしいかな?」

「……えっと、大丈夫……?」

「では行こう」

 

 二人を連れてモモゼお姉様の所に向かい、ジャックを紹介すると尚更呆れられた。まあ、私が引き取って育てている子供だと言われたら、何とか納得された。そこでモモゼお姉様を運び出すまでヴァイオリンの演奏をしていく。

 そこでふと思いついたのだが……演奏によって攻撃する指示とか出せればトリスタン卿みたいにできるかもしれない。彼は戦闘に矢を一切用いず、弓の弦を弾くことで空気を弾き飛ばし、それを刃に変えて飛ばす。私の場合は水銀を展開し、それによって指示を出す事で言葉を発せずに高速攻撃を行う事ができるかもしれない。うん、今度試してみるのもいいかもしれないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゾルディック家に行った時に試してみたが……演奏に指示している暇がなかった。指示しても私の貧弱な身体能力では対応できない。そもそも、トリムマウと月霊髄液の操作方法からして、自動戦闘と自動迎撃だ。

 彼女達の学習能力を利用した高速戦闘の方が圧倒的に強かったよ。私が指示するにしても、指を鳴らす程度でも十分だ。わざわざ楽器を持つ行程が一切いらないし、メリットがないから没だな。

 いや、メリットかデメリットか、わからないが……トリムマウが演奏を覚えた副産物があった。一人楽団とかもできるかもしれない。ん? 一人楽団……もしかして、アレって使えるか?

 取り寄せてみるか。いざという時の切り札に使えるだろう。私は絶対に演奏もしたくないし、聞きたくもないがね!

 

 

 

 

 

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