ライネス・エルメロイ・アーチゾルテの真似をする性転換少女   作:ピトーたんは猫娘

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第8話

 

 

 さてさて、内心では怒り狂っているであろうオニイサマ達を見送った後、私はモモゼお姉様の病室へと入る。ベッドの上で眠っているお姉様は眠り姫の状態だ。なら、起こすのはキスがいいかな? 

 女の子の身体だが、心は男だし、身分も王子だ。この国では王位継承を持つ者は全て王子という扱いだから何も間違っていない。

 

「しかし、懸念していた事が現実となったか」

 

 常にしている凝に全身のオーラを集めて込めて行うと、微かにだが眠っているお姉様の身体からオーラが洩れている。生きられたとしてもこのままだと脳死判定にされる可能性もある。念能力者じゃない人の身体とはとても、とても脆いからね。

 お姉様の頬を撫でながら、これからどうするか考える。可愛いお姉様は愛でるに値するし、思考が加速する。

 

 感情を排して軍師である司馬懿として考えるのなら、現状でお姉様に死なれたら私が困る。私はお姉様の事を大切にしているとお兄様達には植え付けることができた。

 お兄様達は今回の事でお姉様の身柄さえ確保しておけば私が牙を向くことはないと考えるだろう。逆にお姉様に危害が有れば王位継承権などかなぐり捨てて殺しにくる可能性も考えるはずだ。故に私とお姉様、双方の安全は確保できる。特にベンジャミンお兄様は今回の件で私が念能力者である可能性を考慮しているはずだ。していないのなら容易く食い殺せる。

 そういうわけでお姉様に死んでもらうのも困るが、起きてもらうも困る。現状なら私が治療目的として連れ出せるが、起きていたらそうはいかない。お父様もお兄様も治療目的で連れ出すのなら納得してくれるだろう。なにせ医療費が莫大になる。それを私個人で賄わなくてはいけないのだから、国に頼らざるをえない。もっとも、これは希望的観測だ。そこまで甘くないだろうね。

 そうなると国に残しておかなければならず、その間にお兄様やお姉様に教育され、私の敵になられたら例え親愛なるお姉様でも殺さなくてはいけない。また私が殺される場合も考えて予備は必要だ。

 

「答えは決まっている。お姉様を私の物にするだけだ」

 

 作りたい発はホワイトキメラ君から回収したスペックとオーラだけでは足りないので、ちょっとこの辺りに集めている回収済みの子達を取り込むことにする。

そのために王宮の窓から複数の銀の鳥達を侵入させる。その間に私はテラスから外に出て星を眺めつつ跪いて両手を頭の前で組んで願う姿勢をとる。

 この時、大きさは最小で隠も使いながら高高度から一気に集める。念能力者に傍から見られていても願いを叶えたように見えるだろうから問題ない。ましてや、今はモモゼお姉様がこんな事になっているしね。

 

 

 メモリとオーラを回収してからモモゼお姉様の部屋に戻り、それらを使って発を作り出す。作り出す発は銀の鳥を基礎にしているが、願いを叶える力はない。

 どちらかというと傀儡術と降霊術だ。基本的な力は肉体操作と念能力者の操作。自動的に念能力を鍛えるようにしておく。

 もう一つは私が死んだ場合に発動するようにしておく。私はライネス・ホイコーロではあるが、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテでもある。だからこそ、死後にサーヴァント(念獣)としてお姉様の下に現れても何もおかしくはない。

 お兄様やハンター達はさぞや驚くだろう。頑張って私を殺したとしても強くなってコンテニューしてくるのだからね。逆にお姉様が死んだ場合は私のサーヴァント(念獣)となるように設定しておく。

 

「うんうん、やはり罠も仕掛けておかないとね」

 

 トラップとして貧者の薔薇でも埋め込んでおきたいな。だが、手に入れるのは少し大変だ。代わりにティアマトでも顕現させてやろうか。まあ、オーラが足りないけどね。頑張ればワンチャンあるかもしれないが、確実に私は死ぬのでやらない。

 罠というわけではないが、お姉様の身体を私が遠隔から操れるようにはしておき、その場合は私のオーラも使えるように制約と誓約を作る。これらの能力はお姉様の許可もしくはお姉様の命が危ない時、意識が無い時に発動するようにしておく。デメリットは私のオーラをお姉様が勝手に使える場合もあるってことかな。

 

「さて、それではしばらくお休み、我が愛しのお姉様」

 

 胸元を開けさせて心臓に念を打ち込む。しっかりとお姉様の全身に行き渡り、全てを操作できるか確認する。まるでマリオネットを操っているみたいだが、操作系にとっては朝飯前だ。

 

「ふむ。やはりオーラの流れが悪いな。鍛えてないから仕方がないが……強制的に拡張するか」

 

 私のオーラを与えて器を少しずつ拡大していく。お姉様が痛みにのたうち回り、身体を跳ねさせるが無視する。どうせ意識はないのだ。それに──

 

「苦しむお姉様の表情、いいね。そそられるよ」

 

 Sっ気たっぷりに言ってみるが……なんだろう。あんまり興奮しない。からかう方が楽しい。それとも意識がないからなのかな? 

 どちらでもいいか。今はお姉様の身体を魔改造する時だ。片手を上げて操作し、徹底的に念能力を強化してふと思った。私が今まで取り込んできた生物の念能力者達の力を一部とはいえ発現させたらとっても強い発ができるのじゃないだろうか。うん、いいね。

 お姉様は裁縫が好きだし、そういうのもありかもしれない。帰国したら相談してみるか。

 

「はい、完成。流石は我が家の家系だ。才能が半端ないね」

 

 ちょっと弄るだけで一流に近い念の総量を保有できるまでに上がってしまった。これなら私のマスターとしても問題ないだろう。

 

 

 

 

 

 あれから一ヶ月。お姉様は目覚めない。やはりお父様達は国外に連れていくことは反対され、私だけが国外に向かう事になった。

 私の見送りは盛大なセレモニーが行われ、お父様まできている。移動は王室専用の飛行船がしっかりと準備されているから移動中は快適だ。こんな状況なので国軍もでてきていて、それを指揮するベンジャミンお兄様も現場にいる。

 

「ベンジャミンお兄様」

「ライネスか、どうした?」

「しゃがんでくれ。届かない」

「なんだ?」

「わっ」

 

 しゃがんでくれと言ったのに、私の脇に手を入れて持ち上げてきた。

 

「やれやれ、こんなことをされて喜ぶ歳ではないのだが……」

「七歳だろう」

「それもそうか。うん。お兄様は使えるから先に言っておく。お姉様に念というものを仕掛けておいた。ちゃんと治療されるから護衛だけお願いするよ。もちろんただとは言わないから安心してくれたまえ」

「ほう」

「私はツェリードニヒお兄様だけは王にしたくないし、さっさと殺したいと思っている。ツェリードニヒお兄様は私達を、他の王族を確実に殺すだろう。でも、私はチャンスが無い限り、軍師としていさせてくれるのならお兄様に従ってもいいと思っている。もちろん、統治に問題があれば話は別だが、お兄様はそこまで考えなしじゃないだろう?」

「……つまり、お前は俺と共同戦線をはりたいと?」

「私は軍師として軍事を扱いたい。お兄様は王になりたい。共同で邪魔な存在を排除する。別におかしなことはないとおもう。それに私はこれから外交を担当するんだ。外堀を埋めるにはとてもいい立場だろう?」

「……わかった。俺もツェリードニヒは殺してやりたいと思っているから乗ってやる。モモゼの護衛は俺の部隊を派遣してしっかりと守ってやる。だが、軍師になりたいのなら士官学校を卒業しろ」

「……七歳だからね。まだ入れないよ」

「それもそうか。特別に用意しておいてやる」

「それは凄く嬉しい! だが、飛び級制度も用意しておいてくれよ」

「いいだろう」

「契約成立だ」

 

 お兄様は継承戦となれば自分が一番有利だとわかっている。だから、邪魔者を排除した後、私を殺すか、飼い殺しにするか、どちらかにするつもりなのだろう。その前提を崩す用意をしっかりとしておかないとね。

 うん。例えばゾルディック家を引き入れるとか。モモゼお姉様とキルアを結婚させてみたら、とっても強い子供が生まれてきそうじゃないか。ちなみにモモゼお姉様を私の物だと言ったが、性的な意味は一切ない。流石に血の繋がった相手だからね。これが義妹ならわからなかったが! 

 そういう意味だとカルトは君かちゃん、どっちだろう。アルカも気になるね。

 

「どうした?」

「なんでもないよ。それじゃあ行ってくる」

「ああ、精々励んで来い」

「もちろんさ。任せてくれたまえ」

 

 お父様やお兄様、お姉様達と流石にでてきているお母様と軽く挨拶してから飛行船に乗る。席に着く前にトリムマウを出して椅子の上に座らせ、その上に私が座る。トリムマウが私の身体にフィットした椅子になった。これで疲れる事はないし、いざという時にトリムマウがすぐに助けてくれる。飛行船が爆発したとしても私は生き残れるだろう。海の上だと鳥人間コンテストみたいにするしかないが、どうにかできる。

 

「ライネス王子、準備はよろしいでしょうか?」

「ああ、出してくれ」

「かしこまりました」

 

 ハンター協会でメンチと実際に会って話をしないといけないが、すぐにはいけないだろうな。本当はもっと前に会ってからしっかりと相談したがったが、そうもいかなくなった。お姉様にかかりきりになったからね。本当に世界は思い通りにはいかない。だからこそ面白いのだが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拍子抜けだ。何事もなく無事に他国についてしまった。当然、空港に降り立って飛行船から出ると大量のフラッシュが焚かれるので手を振って笑顔で挨拶する。歓迎パレードまであり、その後は国のお偉いさんたちと会談し、さりげなく婚姻の事や言質をとろうとしてくるのでとても面倒だ。

 夜になり、ようやく公務から解放されてホテルにあるスイートルームの前に立った。念の為に月霊髄液で部屋の中を探査する。すると中に誰かいる気配がした。

 トリムマウを服の下に纏ってから部屋の中に入り、ベッドにダイブする。淑女にあるまじき行為だが、私は男なのでセーフ。

 

「づがれた~」

 

 そんな風にぐだった瞬間、上から降ってきた誰かが私の上に乗り、ナイフを当ててくる。

 

「誰かな。今日、ここは私の寝室なのだがね」

「答えるね。銀の凶鳥について知っていることを……」

 

 この特徴的な喋り方に身のこなし、もしかしてアイツか? なんで私の所に来るのか理解できない。そもそも銀の凶鳥ってなに? 私の鳥の事かな?

 

「ふむ。答えてもいいが、まずは顔を見せるのが礼儀ではないかな?」

「黙るネ。聞いているのはコッチネ。始めは指ね。軽く爪はぐ」

「そうか。では下郎に答える事はない。大人しくここで死にたまえ」

「後悔する──ネ!」

 

 背中から串刺しにされる前に飛びのき、天蓋を粉砕して距離を取る暗殺者。私の背中から無数の杭が生えているままで立ち上がり、トリムマウが私の前に立つ。

 

「やれやれ、招かれざる客は盗賊か。王族の寝室に侵入するとは無礼千万だ。程度が知れるな幻影旅団。こんな幼気でか弱い女の子を襲うなんて君はその身長と合わせてロリコンなのかな」

 

 私は月霊髄液の準備をしつつベッドから起き上がり、伸びをしながら振り向く。やはり幻影旅団だ。

 

「オマエ!」

「そう憤るなよ、少年。君では私に勝てないし、ただで逃がすつもりもない。まあ、メッセンジャーとしては使ってあげようか」

「クソが 調子に乗りやがって!」

 

 すごい速度で突撃してくるが、サーヴァントとしての力を手に入れている私はしっかりと視認できるし、なによりもトリムマウからは逃れられない。

 突撃してきた盗賊、フェイタンはトリムマウを簡単に貫く。すぐに違和感を感じたのか離れようとするが、その前に再生したトリムマウがしっかりとフェイタンの腕を固定し、足に絡みついて身体を固定していく。

 

「両手を斬り落とせ」

「ぐ! 馬鹿、ネ!」

「馬鹿は君だよ」

 

 許されざる者(ペインパッカー)という反射技を使ってくる。トリムマウが一瞬で粉々にされて周りに巻き散らかされていく。私も例外ではないが、月霊髄液で全面を覆って防ぐ。

 ある程度は蒸発してしまうが、そこは隠された庭園から水銀をトリムマウと月霊髄液に供給して防ぐ。クラスター爆弾の直撃すら耐える月霊髄液なので安心だ。もっとも、ホテルのスイートルームは吹き曝しの屋上になってしまった。

 直撃を受けたトリムマウは瞬時に収束して元に戻る。幻影旅団の念能力は知っているし、トリムマウはフェイタンにとって天敵だ。

 人よりも早く動き、液体金属であるがゆえにナイフは効かない。また瞬時に再生するから壊す事もできないし、私が具現化する水銀によって私のオーラが続く限り無限に再生できる。

 他に仲間がいないのは最初に月霊髄液で確認してある。幻影旅団であろうと相性で完封できる。幼い餓鬼だと思って侮って一人で来たんだろうが、それが間違いだ。そもそも今の警備状況はかなり悪い。本来の護衛であるメンチは明日に合流予定だ。

 一応、本国から連れてこられた護衛は他の王妃達にねじ込まれて派遣されてきた一般人だけだ。彼等は簡単に突破できて油断したのかもしれないね。最後に現れたのが私のような幼女の皮を被った化け物だったのだから仕方がないのかもしれないが。

 

「まあ、安心したまえ。君は殺しはしないよ。団長に伝えたまえ。君達が私の配下になるか、ビジネスなら応じるとね。それとこの両手は今回の慰謝料としてもらっておく。返して欲しければそれ相応の品、そうだね……クルタ族の緋の目を全て頂こう」

「殺す殺すコロス!」

「君では無理だよ。相性が悪すぎるからね。それに保険は打たせてもらうよ。トリムマウ、彼の身体に君の一部を埋め込みたまえ。そうだね、心臓の辺りがいい。私に危害を加えようとしたら殺せ。それとお帰りだ。窓から放り捨ててあげなさい」

「かしこまりました」

 

 ホームコードを書いた紙を彼の手を覆う水銀に突き刺して、窓をあけて解放する。すごい勢いで飛んで行ったが、幻影旅団なら大丈夫だろう。いやはや、フェイタン一人で助かったね。彼なら私でも完封できる。彼の念能力はカウンター型であり、与えたダメージを返してくる上に戦闘技術はかなり高い。だが、それはあくまでも人としてだ。

 人を殺す事に特化しているがゆえにトリムマウは天敵となりうる。これが団長や筋肉だるま君とかなら私が負けていた可能性が非常に高い。いや、筋肉だるま君ならなんとかなるか。水銀を相手の体内に入れて操作してしまえばいいのだから。

 おやおや、幻影旅団って結構どうにかなるのかな? うん、無理だね。一人ならどうにかできるかもしれないが、もっと人数がいたらどうしようもない。これはちょっとネテロ会長かゾルディック家を少しの間だけ護衛に引き入れるか。

 でも、ゾルディック家を雇うお金なんてないしなあ。待てよ。稼ぐ手段はあるじゃないか。というか、やばい。原作が、原作が致命的に崩壊する可能性がでてきた! 

 

 

 

 グリード・アイランド編が消滅する! 

 

 

 

 

 

 




あの富豪さん、銀の鳥の効果があれば絶対に助けようとするよね!

フェイタンはまだ原作ほど強くないです。あと相性悪すぎ問題。

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