……急いで準備して忘れ物しそうになった自分の妹を見て、急かすんじゃなかったかなと考える俺だった。
はい、どうも。とりあえず誰へとでもなく自己紹介しとこうと思う。
俺は篠崎
んでもって、兄妹共に原因不明の不老不死と来た。“うわー、ゲームみたいだなー”とか適当に考えた俺と違い、妹の葵は酷かった。
……と、関係ないからそれ以上は黙っておくとして。俺は火を出せる。
日常生活でも意外と役に立ってな?俺の知り合いに喫煙者がいるんだが、ライターを忘れた時には火をつけてやれたり、家では食材を少し炙りたい時に使える。便利だぞ、この能力。
だからっていつも使えるわけじゃない。今日みたいに葵達と遊びに出かけるといらなくなる。そもそも用途が限られてるからしょうがないとしか言えないけどな。
「やっほー、悠希と一ノ瀬さーん!」
「そこはまだ“おはよう”だろうに……」
というかそんなに元気よく右手をふってて葵は疲れないのか?と俺は思ってしまう。
んで、今葵が呼んだ1人目の名前は“橘悠希”という男友達だ。
そうだな…だいぶ落ち着いた感じの服ばかり着ている奴で、短い黒髪とかよくいる感じの人間だな。肌がやや日焼けてるが、それはそいつの友人とか俺が原因だな。だが、反省も後悔もしてない。
2人目は“一ノ瀬湊”という奴だな。こいつも男友達ってとこだ。
基本的にこっちは悠希ほど髪を短くしない。あっちが坊主頭からのベリーショートって言えば湊はショートヘアでいることが多めだ。……とは言ったが、女性のショートヘアよりは短いぞ。うん。
こっちは服装はカジュアルなことが多いが、本人曰く“オタクとしてオシャレに!”がモットーなのでもう好きにすればいいんじゃないかな。
「よっす、2人共おはよ」
「篠崎さん、茜、おはよう」
「おっはー」
「おう、おはよう………葵、それキラッてやる時のポーズだろ。挨拶違いだ」
うん、何故俺にそのドヤ顔を向ける?
「むしろ半年も友人として遊んでんのに見たことのあるポーズが今のマク○スとかル○ーシュとか一部だけだからいいんじゃないか?」
「そ、それはどうかと思うぞ?……って茜も茜で頭抱えるよりもその子の人見知りをどうにかしなきゃだろ」
そう言われてもな。
(むぅ…これでも兄さんから“お前にも友達が2人できた。だから大丈夫そうだな”って言われたのにな)
「大丈夫だろ。というか君達も仲良くなれば私とみたいに話せるさ。葵でもな」
「もう猫でいいんじゃないかな……」
悠希だけじゃなく湊すら呆れたような表情を浮かべている。葵の人見知りが酷いのは教えただろ。
これでも良い方なんだ、諦めてくれ。
「っと。そんなことより遊園地行くんだろ?行くぞ」
「あれ、教えてもらってるのかい?」
「教えてもらってないが、葵のことだ。湊や悠希らを連れていくならゲーセンかその辺りかと思ってな。……むしろ私が頑張らないとだが」
「そういやそうだったな。頑張れ」
めっちゃ他人事だな、こいつ。
「まぁ、今日は平日なんだ。多分空いてるんじゃないかな。ね?篠崎さん」
「た、たぶん?…というか湊さんなら僕のことを名前で呼んでいいって言ったはずだけど」
そう言われて気まずそうにするのはいいが、“いいから”と“やっぱり苗字の方が”みたいなほぼエンドレスなやり取りはさせんぞ。
「とにかく、もう移動するぞ。電車が混む」
「だな。それにバスも混む時は混むはずだからそれはそれで面倒だ」
「あー…それもそうだね。んじゃ、行こうか」
うん、とだけ言って頷く葵。俺や悠希も納得したところで移動し始めた。
というか集合場所で数分は話してたのか?凄いなあ。
電車とかバスは思ったよりも混んでいなかった。むしろその方が全員座れて助かるが。バスはなるべく近くに座って移動し、電車は端から葵、俺、悠希、湊の順で座って移動していた。
移動して大体一時間弱ほどたった時に目的地の遊園地“ファンタズムパーク”についた。
それにしても時期的なものもあるのか、朝だというのにそこそこ人がいるな。まだ春休みに入ってた方が多いから……うん、マシか。
「兄さん、これであまりいない方とか凄いね…」
「むしろ花粉症の人がいないことの方が助かるのだが」
そう言ったら湊から「いや、もう俺達の中で“花粉症の人がいない”と言えなくなるんだよ」と言われたあとに
「どうしてかって?……俺、スギ花粉になったくさいからだ」
「うわぁ、この時期に大変だな。よし、湊。今度ゲーセンでガンダムやりに行こうぜ!」
「話聞いてなかった!?」
「うん、さすがの僕も頑張れとしか……」
「………ハハッ」
(驚いたり、遠い目をしたりと表情が忙しないなぁ…。これからゲーセンで遊ぶ時とか大変そうだね、湊さん)
「まあ、楽しい話はさておき私が4人分買ってくるからそろそろいいか?」
「俺的には楽しい話じゃないぞ?!」
「ハハハ、いいじゃないか。ーーーああ、葵ちゃんなら俺らと一緒なら大丈夫だろ?」
いや、お前達相手に心配もないだろ……と内心思った。どうせはぐれたりしないし、まだ気心知れた友人だから一緒にいて落ち着くだろうって話だろう。
(確かに僕もこの2人とは仲良くなってきたけどさ……。あ、でも一緒にいた方が分かりやすいみたいだし、いいか)
……お?なんで呆れたような顔を葵はしてるんだろうか?ふむ、よく分からないぞ…。とりあえずさっさと買ってくるか。
いい加減チケット売り場に人が並んできたし。並ぶ前に買いたいもんだ。
5分後、俺は大人4人分のチケットーーー4人分で2万円したーーーを持って葵達の元へ。
おお、話してるのにこっち向いた。いや、誰かが先に気づけば当たり前か?
(俺より数センチ高いだけでも普通に目立つとか探しやすくて楽だな)
「おーい、買ってきたから渡すぞー?」
「あんがと」
「ありがとな」
「ん……ありがと」
上から悠希、湊、葵の順番に返事をしてきた。まあ、中学生の頃からの友人2人なら流れで大人1人分のを渡してくれるんだな。
葵はー…あとで渡してくるだろ。妹ならありうる。というかこの4人で遊園地とか初めてすぎて分からん。
そこそこ人が並んできているチケット売り場を横目に俺達は園内へ向かっていった。……といってもチケットにあるQRコードを読み込ませて入るだけなんだけどな?
しかもちゃんとしたのじゃないと通れないところを聞くと凄いとしか思えない。
(だいぶ前に来たっきりだったけど、平日とはいえさすが五周年なだけあるなぁ)
「ふぅん、五周年記念なんてしてたのか」
「みたいだね。というか悠希は来たことないっけ?」
「ないが?……ってお前らは来たことあるのか」
「うん、1人だったり、友達とだったり…だね」
「まあ…うん、あるよ。前は家族で、今は兄さんとたまに来てた」
俺も葵につられて頷く。
「んだな。私や葵の都合のいい時に気分転換として……ね。ただたまに人が多くて困ったことがあるが」
ハハハ…と苦笑された。なんだ、俺だって多少苦手なものはあるもんだよ?
(あ、そうだ。最初はちょっと“楽しい”アトラクションに皆で行こうかな。たぶん兄さんなら気づけるだろうけど)
「……ん」
「お、どうした?服なんか引っぱって…ってまさか最初から行くのか?確かに良いかもしれんが…」
(
あ、ちょっ。話もしないうちに葵は行くんじゃない。悠希もノリノリでついてくとか分かってるのか?これからコーヒーカップに行くことを。
「え?ちょ、どこ行くねーん」
今の湊の言葉はある程度時間が経って平日なのに増えてきた人々によってかき消された。ーーーというか俺達が聞き流した。