葵が出ていった後、俺はこっそりリビングからあいつの部屋に入った。和室なだけあって畳の匂いが良いね。
っとあまりリラックスできないんだよな。
んで?右奥に座椅子にパソコンがあって、その手前側に遊ぶ用か。左側の奥が空いててその下段、中段にPS3とPS4を置いてるんだな。……外付けHDDとかマスクとかを空きスペースに置いてるのはすき間を埋めてるのか?
別になんでもいいが。
左奥は細めのタンスが2つあるだけか。んで、本棚が…あれ?左手前と右手前にあるんだな。左手前の方が大きい本棚だけど、ほとんどライトノベルとかコミックだな。
「俺が勧めた本もあるのか。律儀に分かりやすく置いてくれてるとか真面目なやつだな」
それで、右手前のはスライドする部分もないし、ライトノベルとかっぽくないが…………少し分厚いが、日記か?しかも、何冊はあるのか。
ふむ、あっちから“今度2人で読もう”と約束した本を探すよりはこっち読んだ方が早そうだな。
どれどれ、と読んでみた日記だったけど、最初は普通の日記だな。
書き方も片ページってとこか。ま、別にどうしたって話なんだけどな?人それぞれだし。
「……ん?ここだけ乱雑だな」
今まで、ひらがなと習いたての少し歪な漢字が続いた日記の中でやけに乱れた文がある。
“○○○○年△月□□日(晴れ)
きょう、お父さんとお母さんとわたしと友だちとで、こうえんにいきました。
お父さんとお母さんの言うとおりに水分とってたのにねっちゅーしょー?っていうのになった。死んだみたいなかんじとか、ものすごくあついようなかんじとかしたって言ったのに友だちのおやといしの人しかまともにきいてくれなかった。ひどい。
それにしてもふじみ?とかふろうふしって……かごでもなんでもないと思う。
お父さんとお母さんはにじげんっていうよく分からないのにむちゅう?になりすぎ。この日ほど“おちついてほしい”っておもった日はないと思う”
あー、うん。なるほど。両親に熱中症の知識は無かったけど、二次元への知識とか子供への愛情はあったと。
何だこの矛盾どころかさすがに他の子供の親に聞けよ、と考えてしまいそうな案件だな。
んで、この後からふざけたりするようになったんだな。確かにふざけるのは楽しいもんな。
「というか、それで気分転換になるのか。凄いな。……あ、ところどころ風邪ひいたとか書いてある。…ん?ここだけおかしいな」
“○○○○年△月□□日(晴れ)
不老不死になってから何年たったか。
高校卒業をしたとはいえ、成長が
それでも誕生年で言えば今年の夏で23歳になるのにな。……まだ見た目がまだ18か19歳みたいに見えるのか。いや、見えてるから違和感なく卒業できたのかもしれないけど。
逆に入学もしかりだろうから、なんとも言えないね。
まさかと思い、一人暮らしにさせてもらってから傷をつけてみようと実験した。
結果で言えば背中にもう二度と消えぬ傷跡になった。医師からそう告げられたので、今は消すのに努力している”
これで二年前かよ。小学1年生からずっと書いてるとか生真面目だな、おい。
「……お?これ、最近の方だな」
ああ呟いたはいいが、そろそろ戻ってきそうな気がする。まあ、見たら悪いってのを分かった上で読んでるんだ。
何を今更。ってことで読む!
“○○○○年△月□□日
最近健康診断を受けた。春だからか花粉症の人がちらほらいた。あと少しとはいえ、毎年辛そうだね。
そういえばショックなことが一つあった。
二年前に作ってしまった自業自得の背中にある火傷の跡が消せなかった。
あの時実験と称してやらなければよかった。ほんと、なにがいけなかったんだろう…。わけがわからないよ”
「消えなかったのかよ!」
「そうだよ、消えなかったんだよ、悪かったね!」
おおっとー……?これはー?
まあ、後ろにいるのは確定だから、そのまま手にしてた少し分厚い日記を戻してー
「おう、おかえり。昼食を先に作るのか?なんなら微妙に手伝うぞ」
「うん、その微妙な手伝いに関してツッコミたいけど、そうじゃないよね?」
(なにせ入ったらダメって行った場所にいるし。…もしかして僕が見つけた面白い本を教えるって言う約束を忘れかけてたのが悪いとか、ないよね?)
うん?なんか複雑そうな顔してるけど、ようやく思い出したか?
俺だって知りたかったんだぞ、別の人のお気に入り作品。価値観が違うのは普通だしな。いや、好奇心の方が大きかっただけなんだけどな。
黙ってればバレないべ。たぶん。
あ、なんかため息つかれた。
(やれやれ。ともかく日記を全部読んだと見ていいだろうね。あの時はタイミング的に僕の不老不死は冗談って受け入れられたけど、どうしたものかな)
「お、そうだ。葵、ちょうどいいからガン○ラ作る前にお互いのオススメな小説教えあおうぜ。それか
「……はい?いや、ここに来たのはプラモを作るためじゃ…」
目を少し大きくしてる辺り、驚いてるのか。全く、不老不死だとかなんとかが本当だとしても病気になるとかある意味バグってね?
もう老いないと死なない以外に不老不死要素ないじゃないかよ。ひでーな、そよバグ。直せないんだとしたらたちも悪いな。
「ん?あぁ、そうだったな。んでも約束忘れるお前もお前だからな?」
「アッハイ」と困ったように笑いながら葵が言った。
いや、人のを勝手に読んだ俺も悪いんだけどな。
「……まあ、なんだ。葵。お前の日記を勝手に読んで悪かったな」
「はいはい、それならいつも通りに接してくれればいいから。というか今回素組みで済ませないよね?」
(いつも真面目にやると面倒とか言いつつ、僕の家に本格的な塗装道具を置いていくんだよね。一人暮らしじゃなかったら置く場所少ないんだからね!?……いや、そもそもツッコミどこはそこじゃないような……)
軽く受け入れられたが、まあいいか。
というか接し方を変えようにも老いないことに目をつぶれば普通の人と一緒だろと。あと変にふざけなければ死なんだろ?と。
お前、瓶ビールすら少なくて一本、多くても二本か三本しかあけないのによく言うわと。……いや、俺は黒霧島とかだから訳が違うか。
というか不老不死ってマジな話なのか?にわかにやっぱり信じがたい。
「不老不死を相手にしていつも通りに接するとか二次元でよくいる主人公じゃないんだからふつーは出来ないだろ。まあ、お前の場合、どう見ても不老不死っぽくないから平気だが。あ、ネ○・ジオ○グとかあるし、分かんね。とりあえず作ろうぜ」
(うん、普通はこうか。あの両親みたいに“二次元の力が使える”とか“不死鳥だかフェネクスの加護”とか言わないんだね。というか不死鳥とフェネクスって一緒だと思うんだ。むしろ彼みたいに……いや、彼はちょっと流しすぎじゃない?信じられにくいのは分かってたけど)
ん、なんか考えるような顔しながら部屋から出ていこうとしてるな。せめて一言ぐらい伝えておくかな。
「そうそう、葵。お前の不老不死が本当かどうかはともかく、あんな実験するとかどうかと思うぞ」
「うん、そうだね。後悔先にたたずとか言う通り、すごく後悔してる。なんで消えないのかは分からないけど、とにかくヤケドさせなきゃよかったと思ってる。もうなにをしても手遅れだけどね」
そう言いつつけっこう渋い顔をした彼女は困ったような笑みを浮かべたと思ったら「と、とにかく組み立てようよ、ガ○プラ。ね?」と言って部屋を出ていった。さすがに分かってるのか。信じられにくいことぐらい。
でも一応今は信じておくか。あいつ…というか彼女はそんなに嘘つかないからな。なら、そういうことで嘘はつかんだろ。
ま、嘘だったら嘘で今後そのネタで楽しませてもらうが。
本当に不老不死かは後々分かるべ。まだ俺らも若いし。それにまだいくらでも時間はあるしな。まだ頭の片隅に残しておいた方がよさそうだ。
いやぁ、今は組み立てが楽しみだ。ヒャッホイ。