「トロルに襲われたぁああああっ!? ベベベ、ベル君、怪我は無いのかいっ!? 取り敢えず調べるから脱いでくれっ!」
「神様落ち着いて下さいっ!? 僕は大丈夫ですからっ!」
あの後、流石にこれ以上留まるのは危険だって先生に言われた僕は大人しく地上に戻って来た。二十階層もの出現階層の差があるのに姿を見せたトロル、そして霧の向こうから僕を監視していたって言う人達。理由は分からないけれど、多分その人達がトロルに僕を襲わせたんだと思う。
「あの、神様。今日の更新をお願いします」
僕から話を聞いて慌てるほど心配してくれた神様を宥めた僕はステイタスの更新をお願いする事にした。神様も落ち着いたのか直ぐに更新をしてくれて本当に助かった。帰る道中に考えたけど、僕がトロルと出会した事はギルドに報告しないでおくって言ったらまた怒り出しそうだけど……。
僕を狙ったのなら下手に騒ぎになってトロルが浅い階層に出現するって噂になったら他の冒険者にする必要のない心配と恐怖をさせる事になる。先生の教えでは時に恐怖は必要だが、必要以上の恐怖は身を破滅させるからだ。あくまで僕を狙っての犯行なら大事にする必要は無い。
「先生、神様、僕、もっと強くなりたいです」
トロルを連れてこられるって事は今の僕よりもずっと強いって事だ。でも、其処に至るまでの道中に沢山積み上げてきた物がある筈なのに、少なくとも自分では命を狙われる覚えのない僕を危険に晒すのに力を使った。それは誰かを守る為に自分を鍛え続けた先生達への侮辱だって暴論だけど思う。……だから僕はその人達に勝ちたい。その力で沢山の人を守って、力はそうやって使うべきだって証明したい。
そんな想いを描いていると背中の一部分が熱くなった気がして、更に神様の驚いた様な困った様な声が響いた。
「……あー、ベル君。おめでとうと言うべきなんだけれど、どうしよう? ランクアップだ……」
オラリオに来て二十日程、僕は世界最速のランクアップを果たした……。只、恨まれる覚えが無いのに目を付けられている現状、注目を浴びるのは気が引けた……。
「まあ、アレだよベル君! 魔力以外のステイタスの幾つかがSを通り越してSSにまでなってるけど、どうせなら全部SSになってからにしようか! 一年位掛けてじっくり鍛えよう!」
教えて貰った例のスキルもあり、先生の修行が厳しい事と全集中の呼吸で体を酷使しているからか僕の成長は早い。それこそ下手したら他の神様に目を付けられる可能性が高い位に。だから神様は最速記録であるアイズ・ヴァレンシュタインさんの記録より少し遅れてランクアップをしようって提案して来た。僕もこれ以上の厄介事は避けたいと思いつつもモヤモヤしていて、ちょっと危ないかもと思いつつも人通りの多い通りを選んで夜の散歩に出掛けたんだ。
「先生、あれで良いのでしょうか?」
「そうだな。俺達は一刻も早く強くならなければいけない理由として十二鬼月達の存在があったが、お前は自分の意志で決めると良い。方法が有るなら一気に強くなるのもコツコツと基礎を積み上げて行くのも正道だ」
少しだけ世界最速記録って称号に名誉欲が刺激されていたのを恥ずかしくなる。うん、そうだ。僕を狙っている人達もトロルを倒した後は手を出してこなかったし、一歩一歩前に進んで何年掛けてでも絶対に先生の領域まで……。
「ベル・クラネル。お前に渡す物がある」
その人は突如僕の前に立ちはだかった。巨躯持つ猪人、彼のことは僕だって知っている。オラリオ最強の冒険者、
「今日の出来事は俺達の仕業だ。予想に反してお前は試練を軽く乗り越え、正直言って見事だった。強くなれ……試練を越えられず死にたくなければな」
僕に本を押しつけるとオッタルさんは用が済んだとばかりに背を向けて去って行こうとする。力もファミリアとしての規模も段違いの相手。それが分かっていても僕はその背中に向かって叫ばなければいけない。その言葉は聞き逃せない。
「僕は絶対に強くなります。でも、それは貴方達が与える試練を越える為でも命が惜しいからでもない! だから……僕は貴方を越えるっ!」
「……そうか」
思わず叫んだ内容にオッタルさんは意表を突かれた顔の後、獰猛さを感じさせる笑みを向けて来た。威圧感は先程の比じゃなくって冷や汗が噴き出すのを感じたけど目を逸らさない。オッタルさんは満足そうに僕を見て、今度こそ姿を消した。
「おい、彼奴オッタルに宣戦布告したぞ……」
「世の中知らないにも程があるよな……」
「しっ! 下手に関わると俺達まで目を付けられるぞ!」
あっ、そういえば人通りが多い道だった。ヒソヒソ話が聞こえて来るし、下手したら新入団員が来なくなるかも……。
でも、今は違うことを考える時だ。
「……帰ったら神様に相談してみよう。この本もどうするか話さないと……」
(さて、そろそろベルにも反復動作を教えても良い頃だな)
もっと強くなりたい。一歩でも先に、一日でも早く……。
「さて、ミアハ様。正座なさって下さい。リリは怒っています」
その頃、寂れた医療系ファミリアのホーム兼店にて店長であり主神であるミアハがリリルカの威圧に圧されて言われるがままに正座をしていた。彼の目の前に突き出されたのは今月の帳簿。借金の返済は終わったが売上は乏しく赤字と黒字の間を行き来しているが今月は赤字だ。
「む、むぅ。確かに今月は赤字だが……」
「ええ、赤字です。主に広告宣伝費が先月よりも増えているからですが。確かに経費扱いしますのでポーションを配った時は計上して下されば構わないと言いました。ですが、物には限度があるのですよ?」
リリルカの声も顔も怒っておらず穏やかだ。だが、確実に怒っていると思わせるオーラを放っており、団長であるナァーザは巻き込まれる前に退避済みだが、彼女は彼女でミアハ目当ての客を追い返しているので後でお説教が待っている。
「……来月は控えよう」
「来月も、控えて下さいね? 全く、そこそこのモンスターを倒して安全にランクアップしたら田舎でスローライフするって決めているリリですが……大丈夫なのでしょうか? もう昔の事を思い出す以外に店の帳簿の事で反復動作が出来ますよ……」
リリルカ・アーデ Lv.2 二つ名 未定 所属ファミアリア ミアハ・ファミアリア 冒険者兼薬師兼帳簿係
ベル君の魔法は?
-
原作通り
-
何でお前は燃えてないんだ
-
オリジナル