「やあ! 三日ぶりだね、リリルカちゃん。全然来てくれないから寂しかったぜ!」
私は確かに寝床に入った訳なのですが、気が付けば見慣れぬ建物の中、極東風の豪華な部屋で一人の男性と向かい合って居ました。これは夢、お師匠様と出会ってから見るようになった起きたら絶対に忘れているのに、この夢を見たら全部思い出す奇妙な場所。
「……いえ、別に来たくて来た訳じゃ有りませんよ? リリは貴方が嫌いですから」
「そんな寂しいこと言うなよ。俺は君のことを実の娘みたいに思っているんだぜ? 何せ愛しいしのぶちゃんの弟子だ。師弟ってのは親子関係にも似ていると思わないかい?」
「……はあ」
どうも彼は苦手です。善人みたいな事を言うのですが、汚い生き方をしていたリリには本心からではないと分かる。この人、お師匠様以外に対して何の関心も抱いていませんね。って言うか異世界から来たあの人についてどうして知っているのでしょうか? どうせ変な回答が返ってくるから聞きませんけど。
「ああ、そうだ。折角だから稽古を付けてあげよう。君が強くなれば俺も嬉しい。しのぶちゃんとの共同作業だからね。じゃあ、俺は守りに徹するから頑張ってくれ。俺が攻めに転じたら弱い君は一瞬でバラバラだからね」
「……まあ、良いですけど。貴方、友達居ないでしょう?」
「酷いなぁ。君みたいなのと違って俺には友達が多いんだぜ? 特に事ある毎に殺そうとして来るのとかさ。主とだって上手くやってたんだ」
絶対に思い込みだと思いながら切りかかりますが始終弄ばれ、弱いだの才能が無いだの挑発を受け続ける。その気も無いのに同情したみたいな言葉で私の人生を語りますし、絶対にその顔に一撃入れてやりますよ。
「うん? まあ弱い君じゃ奇跡が起こっても無理だけど頑張れ! 人間、頑張り抜くのが大切なんだ。無駄な努力、無意味な行動でも諦めたらいけないよ」
ムカついたので股ぐらを蹴り上げるのですがヘラヘラ笑いながら避けられました。
「……ちっ!」
結局、この日も掠りさえせずに部屋が崩れ始め夢の終わりを自覚する。この夢を見た日は疲れているから嫌なのですよね。今日は剣姫とダンジョンに潜る予定ですのに。
「じゃあ、愛しのしのぶちゃんに宜しくね。こっちの俺」
いや、虹色の瞳とか屈託のない笑みとか凄い強さとか性別とか、何処をどう見れば貴方が私だと言うのですか……。
「……あー、何か変な気分ですね」
布団から起きあがればちゃんと寝たのに妙に疲れている上にイライラしています。未だ日も昇りきっていないのですが外に出て冷たい水で顔を洗った私は薬の調合を始めました。
「……今回はこれを大さじ一杯加えてみましょう」
お師匠様が相手をしていた鬼には共通の弱点となる毒があり、それに他の薬を調合して高めた毒性で相手をしていたらしいのですが、モンスターは鬼以上に多種多様。ですが鬼と同様に魔石という共通点が。これを抜き取れば体が崩壊するという事は、魔石から体を構成するエネルギーが流れていると推測出来ます。
そして、リリとお師匠様の研究によって魔石からエネルギーが供給されるのを阻害する毒の開発に成功したのです。未だ強いモンスターには量が必要ですし、採取したモンスターの毒を煮詰めた物の方が効果が高い時も有りますけど。
幾つか新たに調合した薬を換金せずに持ち帰った魔石に付着させて行く。その後で魔石を動力にした道具に装着したり、使用中に毒を塗ってみたりして魔石の力がどの様に失われて行くかを確かめた。今回は全部満足のいく結果は出ず。
「そう言えば師匠、同僚の方と再会したって言いましたけどどんな人なのでしょうか?」
その人にも弟子が居て、冒険者になったとか昨日の晩に一旦戻って来て言ってましたね、確か。まあ、機会が有れば同じ全集中の呼吸の使い手として稽古をしても良いかも知れませんね。……負けたらどんな目に遭うかが恐ろしいのですが。
そんな風に思いながら研究の手を止めて商品の調合を始める。さて、今日はロキ・ファミリアの皆さんに沢山売りつけませんとね。地域密着型店舗を目指して高価なポーション以外の販売に力を入れだしましたけど、売れるなら売りたいですし……。
「へぇ。
「ええ! ミアハ・ファミリアだけのオリジナルで御座います。その他にも傷や疲労の回復効果がある薬湯の素など如何ですか? お湯に溶かすだけですし、お風呂を持っている所からはご好評を戴いています。その他にも特殊な薬を使うまでもない程度の傷や打ち身や腹痛の為の常備薬セットも契約をお勧めしますよ」
まさか他の人も来るとは聞いていましたが、まさか団長まで連れて来るとは思いもしませんでした。次々に商品を売り込みながらも私は焦ります。ちょーっとは情報を漏らす代わりに普段は一人で行けない場所に同行して貰おうと思ったのですが、予想以上の遠征になりそうですね。
「所でアイズ様。ダンジョンにはどれだけ潜る予定ですか?」
「一週間くらいです。えっと、様を付けなくても……」
「いえいえ、長年サポーターをして来た癖でして。ランクアップを果たしても抜けないのには困りますね」
一週間とか聞いていませんよ!? ま、まあ、リヴィラの街で別れた後、無料で診察をすればボールス様が一緒に帰る方を紹介して下さるでしょう。医学の勉強もしておいて助かりました。
「……アイズ。一緒に潜る時は長くなるって伝えておかないと。悪かったね、アーデさん」
「い、いえ、お気になさらずに」
小人族の英雄、勇者フィン。ロキ・ファミリアの団長の彼ですがどうも薬以外にも興味が有る様子。うーん、何か目を付けられる事をしましたっけ?
……そして後ろで威嚇してくるアマゾネスは確かティオネ様でしたね。
「えっと、其方の方は確かフィン様の恋人と噂されるティオネ様でしたよね?」
「あら、そんな噂が立ってたのね! 良いわ、凄く良いわ! あっ、上位回復薬を有るだけ貰えるかしら!」
まあ、実際は一方的なアプローチをしてるって噂なのですけどね……。
「ってな訳で大変でしたよ。それでお師匠様はどうなさいますか? 例の神様を監視するので? それにお知り合いにも会いましたし……」
「いえ、リリルカに同行しますよ」
出発の準備中、少し張り切っている様子のお師匠様を見て嫌な予感がしたのですが、どうも遠ざけるのに失敗したらしいですね。
「実は煉獄さんの弟子には水の呼吸が向いてそうなので水から派生した呼吸の指導を申し出たのですが、先生から習った炎の呼吸で先生みたいに強くなりたいんです、って断られてしまいまして。嬉しそうな煉獄さんを見ていたら私も指導により力を入れたくなりました」
……とばっちりですね。
ベル君の魔法は?
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原作通り
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何でお前は燃えてないんだ
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オリジナル