個性ソビエト   作:ゆっくり霊沙

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入学試験2

 ~中学校~

 

 どよ~ん

 

「鈴どうしたよ」

 

「あの様子だと雄英ダメだったんじゃね?」

 

「え、鈴でもダメって雄英ヤバすぎね。鈴の個性滅茶苦茶応用効くじゃん」

 

「というか個性ソビエトって何だよ、あいつ社会主義者なん?」

 

「馬鹿、おまえあいつその事すごい気にしてるからな。話したら普通の子だし」

 

「小学校の頃それで虐められていたらしいよ」

 

「え~鈴ちゃん可哀想、男子心無さ過ぎ」

 

「俺星野さんの個性についての過去初めて知ったぞ!」

 

「それでもさぁー」

 

「ねー」

 

 

 

(死にたい死にたい死にたい死にたい)

 

 ブツブツブツ

 

 他クラスの子まで私の事噂してる……

 

(滑り止めの私立のヒーロー科がある高校は押さえてるけど……ハァァ……)

 

 入学試験以降薬は切っているが、そのせいもあって死にたくて仕方がない

 

 というよりも何で皆私が雄英受験したの知ってるんだ? 

 

 担任以外言ってないハズだけど……

 

「あやねちゃん、何で私が雄英受験したの皆知ってるの?」

 

 席が隣で精神病2つ患ってるのに怖がることなくお喋りしてくれる数少ない友達に聞くと

 

「他のクラスで学年主任の先生が授業中にぽろっと言っちゃったらしいよ」

 

「くぅぅう!! あのバーコード……死にたい」

 

「あぁこら、軽く死にたいなんて言わないの、愚痴なら聞くからさ。学年1位なんだから自信もってよ」

 

「英語はこの学校のテストでも40位以下だし……」

 

「あんたに皆が勝てそうな教科それぐらいしかないでしょ!!」

 

 机に伏せていた私の顔を両手で挟むように上げる

 

「ほら、大丈夫ね」

 

「う、うん」

 

 

 

 

「テェテェそしてチョーラブリー!!」

 

「うげ、百合の変態だ」

 

「近づくと百合にされるぞ」

 

「もー男子を百合にする趣味はありませ~ん!! 女の子を百合の道に引きずり込む越そ我求道!!」

 

(((大丈夫かこいつ)))

 

「んー、もっと近くで見たい嗅ぎたい、しゃぶりたい!!」

 

 ドッドッドッ

 

「あぁ、いっちまったよ」

 

「流石にあれでも女子だし羽交い締めはできねーな、女子は余程の事がないとあいつに近づかねーし」

 

「だよなぁ……何であれが学年2位何だよ」

 

「この学校学年トップ10変人しか居ないじゃん」

 

「星野は……コミュ症じゃん」

 

「だいぶ言葉選んだなお前」

 

「で2位の阿宮愛麗(あみやあいり)は百合」

 

「3位は猛虎弁しか喋らないし、4位は……」

 

「まぁそれも個性ってことで」

 

「なぁ何で俺ら解説見たいな事喋ってんだ? 俺生徒会長なんだけど……」

 

「それ言ったら生徒会の副会長に何で阿宮据えたし」

 

「あんな性格なんて知らなかったんだよ!!」

 

 生徒会魂の叫びであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねね!! 星野さん!! あやねちゃんとやっぱりこういう関係(百合)なの!!」

 

((なんだこいつ))

 

「えっと……副会長、どうしました」

 

「星野さんが落ち込んでるって聞いてね、大丈夫かな~って見てたらお二人がテェテェなことしてたから!!」

 

(副会長ってこんなにヤバい子だったんだ……)

 

「副会長、鈴ちゃんはそうグイグイいくと」

 

「う~ん!! 怯えている姿もイイネ!!」

 

「あの副会長「愛麗って呼んで!!」……愛麗さん、何で今この時期に私に話しかけたのですか?」

 

「ゆ・う・え・い受けたんでしょ」

 

「……たぶん落ちましたが」

 

「副会長、今言うの「たぶん受かってるよ」え?」

 

「え? ……副会長? いや愛麗さん?」

 

「私、サポート科を受けてるんだよね。で、サポート科はヒーロー科……いや、ヒーローをサポートするのが将来の仕事でしょ(女性ヒーローを愛でたいのが主目的だけど)だから同学年となるヒーロー科志望の子達の事をある程度調べたんだ~」

 

「調べられるものなのですか?」

 

「それがねぇ調べられるんですよ奥さん」

 

 ごそごそと副会長こと阿宮愛麗さんはカバンに手を突っ込むと数冊のノートを見せてきた

 

「正直言って私達の代は……谷間の世代なのよ」

 

 そこには学力平均や個性強度、全国統一身体能力テストの統計、人口比率等が細かく書かれていた

 

「雄英はいつも通りの倍率と偏差値を維持できたけど、他の学校は酷いよ~、ほら、ここの高校なんか定員割れ起こしてる」

 

「……個性の強さも全体で見ると例年よりも弱いんですね」

 

「そうそう、さっすが鈴ちゃん!! 私のパートナーに相応しい!!」

 

(いつからパートナーになった……)

 

 個性強度という言葉で書かれているそれは全国の小、中学生対象の個性識別テストを数値化したもので、けっこう無理矢理数値にしているので先生方は参考程度に使う代物だけど、学生の私達にとって全国だと自分の個性がどれぐらい希少か、強いか、有用なのかが良くわかる

 

 基本同じ年のデータしか見ないが、愛麗さんは10年分のデータを引っ張り出してきていた

 

 それを平均値及び中央値それぞれで見ると平均値は10年間で下から2番目に低いのだが、中央値にすると自分達の代がダントツで低かった

 

「本当に一部の強個性の人が完全に数値を引っ張ってる形だ」

 

 あやねが呟く

 

「あやねちゃん個性は?」

 

「私の個性は傾斜……ただ、自分の体重以下の物を30°までしか傾けられない」

 

「鈴ちゃんはソビエトでしょ、私は見ての通り個性は馬なの」

 

 ピクピクと頭からはえた耳を動かす

 

「馬っぽいことができる個性って言えば聞こえは良いけど、疲れがとれにくい、体重の変動が激しい、下半身の消耗が激しくて壊れやすい、鼻血が出るだけで呼吸困難になるっていう足が早くなるっていうメリットを消すデメリットがあるの」

 

「母方の親族にこの個性の人が多いんだけど40歳には皆車椅子生活に必ずなってる」

 

「っと、私の家族事情を話しちゃってゴメンねー、でもパートナーなら知っててほしいし~」

 

(だからパートナーになるなんて言ってないんだけど)

 

「私達の代はな~んでか知らないけど強力な個性なほどデメリットが大きいのよ、ソビエトって個性も特定の能力使うと人格破綻するって聞いたけど本当?」

 

「え、えぇ。本当です」

 

「でしょでしょ、で、雄英は国立、ヒーロー飽和時代と言われているけど実態は上位ヒーローの抑止力で犯罪発生率を下げているのが現状、現場だとヒーローの質の低下を訴える声もチラホラ聞こえてくる」

 

「だからヒーロー育成の見本である雄英は例年通りの定員を多少出来が悪くても入学させて質の悪いヒーロー作らないというアピールをするのではないかと仮定すれば、例年より本当に少しだけだけど入学可能圏内の点数が狭まるんじゃないかって思ったから私は鈴ちゃんが受かると見てる」

 

「それにそんなに強い個性を雄英が見逃すはずないじゃん……何らかのアプローチが雄英側からあると思うね」

 

 自信満々に愛麗さんは言うけれど自信は全くない

 

 また顔を伏せるとバーコード(学年主任)が慌てて教室に入ってきた

 

 そして私の肩を掴み

 

「雄英側から面接をしたいと連絡を受けた!! 今から私と校長(以後ツルッパゲ)と星野さんの3人で雄英に向かうぞ」

 

 滲み出る汗をまずは吹いてから触って欲しかった

 

 お陰でワイシャツの肩にバーコードの手形がクッキリと……うぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~雄英 来客室~

 

「ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は……雄英高校の校長さ!! 急に呼び出してすまないね」

 

「いえ、我々も雄英さんからお呼びと有れば可能な限り急ぎますから」

 

 校長がへりくだった言い方で雄英高校の校長に挨拶をする

 

 私? 緊張して今にも吐きそう

 

「今回皆さんをお呼びしたのは星野鈴君の入学についてです」

 

「「おぉ!!」」

 

 バーコードとツルッパゲが滅茶苦茶反応してる

 

 この2人が反応するのも仕方がない

 

 あの雄英に合格者が出る……それは昔なら高校からプロ野球選手に指名や東大に合格する生徒を輩出というくらい名誉あることなのだから

 

「星野鈴君、君は精神の病気に蝕まれている……正直に言うと君をヒーロー科として入れることに賛否が教師の中で割れていてね、君の本心を直接聞かせてもらえないかい」

 

「……最初に言うべきでしたが遅れてしまい申し訳ありません。星野鈴と言います……よろしくお願いいたします」

 

「……」

 

 ジット雄英の校長先生は私の目を見てる

 

 正直私は自分の目が好きじゃない

 

 相手をまっすぐ見ているハズなのに模様のせいで目をそらしているように相手が感じるから

 

 それでも今日はまっすぐ雄英の校長先生を見る

 

 そうしないと失礼だと思ったから……

 

「本心と言われたので私に言えることを話します」

 

(吐きそう……死にたい……でも)

 

「皆はヒーローを人を助ける職業だとか、高収入な職業、人気者だとか憧れの人がヒーローをしてるから……色々と言ってそれぞれの目的でヒーローを目指します……」

 

「私はまだ自分の中でヒーローとは何なのかを見いだせてはいません」

 

「まだ自分の個性が何なのかを手探りで探している幼い子供です……志望理由もオールマイトの個性がもしかしたら私の個性に通ずる何かが有るかもしれないと思い受験しました」

 

 口の中に酸っぱいものが広がるが、それを無理矢理飲み込む

 

「精神が病んでるのは否定しません、今も吐きそうです。死にたくもなります。でも……そんな私にも私のように苦しんでいる子のために精神障害が有っても人の役に立てる、一人前の人物になれるって事を見せてあげたい」

 

「死ぬのは簡単で、個性の力を使えば痛みもほとんどなく死ねるでしょう。生きることは苦痛でしかないのだもの」

 

「でもそれを乗り越えなければ……親より早く死ぬことになる」

 

「私の家族はどんなことをしても親より早く亡くなる事が一番の親不孝者だと言っていました……そんな当たり前の事がわからなくなるのです」

 

「支離滅裂な事を言っている自覚は有りますがこれが私の本心です。ヒーロー科に入りたい理由は自分の個性を探究すること、自分を乗り越えること、精神障害者でも周りの役に立てることを証明したいことの3つです」

 

 言い切った……キツイ……けど言ってやった

 

 全部出しきった……

 

「わかった。後日改めて合否の連絡をご自宅に届けます、一旦星野さんは廊下で待機してもらってもよろしいですか。外にはプレゼントマイク先生がいるので何か有れば彼に言ってください」

 

「はい……本日はありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

「ナイスガッツ!!」

 

 廊下に出ると入学試験で説明をしていたプレゼントマイク先生が横にある椅子に座りながら私に親指を立てていた

 

「あ、ありがとうございます……ウッ」

 

「おとと、本当にメンタル弱いんだな。バケツだ、思いっきり吐け」

 

「あ、ありがとうウッエ……ございます」

 

「雄英に入ったらそういうメンタルも直さないと……youの場合は新しく組み立てるか? まぁ強くしないとやってけないぜ!」

 

「頑張ります!」

 

「良く言った、な~に、先生方は皆生徒を第一に考えてる。キツイことを言われるかもしれないがそれは生徒を伸ばそうと思ってるからって事を頭の片隅にでも入れておいてくれよ」

 

「はい」

 

「俺としたことが何時ものテンションじゃなくなっちまってるな……ナイショな。世間だともっと明るいキャラだから」

 

 これで本当に最後の入学試験は終わった……雄英の校長先生と先生2人の会話は聞けなかったけどプレゼントマイク先生が良い先生だとわかった




個性強度ですが作者が読者の方にこの人がどれだけ強い個性を持っているのか解りやすくするために追加した物なので本当に参考程度でお願いします

また、個性強度=その人物の強さではないのでよろしくお願いいたします

ちなみに今現在星野鈴の個性強度の数値は78です

参考に1-Aの轟は93
爆豪は90
瀬呂が65
八百万が98
ですね。

鈴が78なのはデメリットがデカイからと表面上でできていることが少ないからです(八百万よりも効率が悪いカロリー消費量と精神崩壊)

鈴が個性をしっかり理解すれば数値は跳ね上がります

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