先輩達との歓迎会を楽しんだ私は自室に戻っていた
「宗教か……」
精神が不安定になるとそこを埋めるように入ってくるのが偏った主義、主張
宗教しかり、過激主義しかり……
「私はこの個性が宗教を拒絶するから大丈夫だったけど……改めて読めばヤバイよねこれ」
【異能解放戦線】
簡単に言うと法による個性……いや、彼らの主張では異能の抑圧、抑制ではなく異能の自由行使は人間として当然の権利である……というもの
強い個性を持ち、その個性を制限されている社会……ヒーローになれれば問題ないと陰で言う人は多くいるが、それが出来ないのが現代社会
トップヒーローも副業をしているような時代
その活動に疑問を持ち、過激なヒーロー原理主義……有名どころはヒーロー殺しのステインかな?
「彼の主張が書かれた本も数冊有るけど本人が書いた訳じゃないからなんともな」
【英雄回帰論】
ヒーローは見返りを求めてはならないものであり、自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない……ていうもの
上を全て満たせる者のみがヒーローであり、それ以外のヒーローと名乗るものは贋物であり、ステインは贋物の実力で排除する
この行為を結果論で良しとした評論家はテレビから姿を消したが、ちょくちょく持論の本出すので本棚の1列分くらいは集めてある
最近は
【象徴論】
ていう本が出版されてワゴンに早々並べられて他ので他の古本と5冊まとめて300円で買ったりした
「オールマイトは象徴として理想のヒーローであるが、彼も人間である。いつかは衰えがでるであろう、次世代でオールマイトの様なカリスマのあるヒーローは居るだろうか? これは若者達への警鈴である」
「次の時代はすぐそこまで近づいている……か」
この作者は新しいオールマイトが出てきて欲しいのか……それとも今のヒーロー社会に変化を求めているのか……たぶん後者だろうなぁ
「通形先輩にはヒーロー向きと言われたけど」
≪本当にそうかな?≫
「……失敗作」
≪おいおい、偉人に対してそれは無いだろう≫
私の人格を壊した張本人が煙草を吹かしながら椅子に座っているような幻覚が見える
≪久しぶり個性とやらが暴走しているようだな鈴よ、どうだ聖書でも音読してやろうか?≫
「黙れ失敗作……今日は分裂したからいいけど混ざると自分なのかわからなくなるのよ!!」
≪その程度コントロールしたまえ、私にそんな口をしてきたもの達は全員消した≫
幻覚が近づいてくる
≪つまり鈴、貴様も例外ではないぞ≫
「いつか必ず消す!!」
≪楽しみに待つとしよう……何、困ったら私を頼るといい……対価は貰うがな≫
そうして幻覚は消えた
「……」
1冊の本を手に取る
【鋼の男・ヨシフ・スターリン】
彼は優しい……やろうと思えば私の体などすぐに乗っとることもできるのに
心が混ざっていないとき……いや、2つの人格が完全に分裂状態にある時、彼は個性の隅で木の椅子に座り私の記憶という本を常に読んでいる
しかし、滲み出る狂気を彼は隠せていない
だから私は常に彼を怖がり消そうとする
そして混ざり彼の狂気の一部が私を苦しめ死にたくなる
「もう寝よう」
「1-A……1-A……え~っとここだ」
バ──ーン
「デカ……い? あ、でもいちいち背中を折らなくても教室に入れるって良い!!」
ガラガラ
「失礼しま……す」
ガラーン
「良かった一番……か? え? 寝袋?」
「……そういう性格治さないとヒーローやってけねーぞ」
「は、はい!」
「映像でも名前言ったが一応言っておく、担任の相澤消太だよろしくね」
「よ、よ、よろしくお願いします!!」
「あー、星野お前に出した宿題先に回収させてもらうぞ、ついでに席は真ん中だ」
「はい!」
ドン
「……今日の放課後確認テストを行う、いいな」
「はい!」
「あー、元気なのは良いが耳もとで叫ぶな、もうパニクってるのか」
「き、き、気を付けます」
星野は宿題を提出したら読書か
(相当体も鍛えてるな、勉強面もこの様子なら問題ないだろう……問題は)
メンタル
向上心は有る、ヒーローそのものには価値をまだ見いだしているかわからないが……見いだしたら化けるな
見せてみろ星野、宿題の裏に書いたメッセージにはああ書いたが……Plus・Ultra越えていけ、壁を
「お、君受かったんだ~おめでとう(笑)」
受験の時に肩を叩いた人だ
「……あの時体が急に重くなったのですがそれはあなたの個性ですか?」
「知らないよ、まぁ互いに合格したんだから頑張ろうよ」
また肩を叩こうとするので手で払う
「……信用できない」
「酷いなクラスメイトだろ~星野鈴さん」
「名前……貴方名前は?」
「オリエンテーションがどうせあるだろ、そこで言うよ」
片手をポケットに手を突っ込み最後列の席に座る
そこから続々と人が入ってくる
皆ピリピリして正直怖い
「なぁあんた」
瓶ぞこ眼鏡の男子が話しかけてきた
「精神に病が有るんだったら今からでも間に合う、そういう高校行きなよ、困るんだよね……授業でパニックでも起こされたらさー、ねだから今から先生に言ってさ」
「嫌です」
「はぁ……」
ドン
私の机を強く叩く
私はじんわり涙が出てくる
「調べたよ君の事色々、正直君の個性ヴィラン向きじゃん、強いけど暴走しやすいとか、せめてさ個性の把握ぐらいはしっかりしようよ……ここに居るべきはエリートのみだ欠陥品は居場所ないよ」
つーっと頬を涙がつたう
「え、あれぐらいで泣くのあの子」
「適当な事言われてるなら反論するなり適当に無視するなりすれば良いのに……やっぱり何かしらの精神病持ってるって情報本当だったんだ」
ざわざわとクラスメイトの視線が私に向かう
ヒーロー科だよね?
こんな人達がヒーローになるの……
嫌だ……嫌だ……でも死にたくはない
こんな奴らの為に死にたくない
こいつらに自分の死体を見てほしくない
「はい、静かにしろ……ほぉ、瞬時に静かになるとはな……お前らの担任になった相澤消太だよろしくね!」
「時間は有限だ、これからお前ら体操服に着替えろ、体力テストをする」
私は少し手を上げ
「あ、あの……相澤先生、オリエンテーションは? 入学式は?」
「そんなもの時間の無駄だここは雄英……自由の学校だ。生徒もある程度自由だが先生方も自由だ。だから無しだ。理解したか星野」
「はい」
「じゃあ着替えろ」
こうして入学そうそう体力テストが始まる