モン娘 他種族特務部隊 MIST   作:欅乃猫

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一章

目の前に、大切な人が居る。

 

昔見た、今でも忘れられぬ光景。

 

微睡みに落ちると、良く見る光景。

 

守りたいと、思った。強くなりたいと、思った。

 

私は……だから私は……

 

 

「……長……隊長……」

 

 

遠くから、何かが聞こえる。

 

分かってる。そろそろ夢の終わりなんだろう。

 

少し名残惜しいが、きっと今夜また見れるだろう。

 

さぁ、起きなくては……

 

………………

 

 

「…………う……む……」

 

ゆっくりと目を開くと、見慣れた顔が私を見ていた。

 

髪は柔らかな金髪、肌は小麦色、可愛らしい整った顔立ち、そして誰もが目にするであろう額に生えた白い角。

 

「おはようございます隊長!またオフィスに止まったんですか?」

 

「……あぁ、昨日の書類……終わらせててな……」

 

ソファから身体を起こし、目を擦る。

 

「あんまり無理しないで下さいね……?昨日の書類だって、急ぎの内容ではなかったじゃないですか。別に明日……今日に回しても良かったんじゃないですか?」

 

「馬鹿言え、いつ出撃するか分からないんだから、終わらせられる仕事はその日に……ふぁ……」

 

話途中に大きな欠伸が出てしまう。それを見た彼女……鬼娘(オーガ)のレティシアはクスリと笑った。

 

「コーヒー、入れますね。砂糖1ミルク1ですよね?」

 

「あぁ、頼む」

 

ソファから一旦立ち上がり、大きく伸びをする。

やはり安物のソファより段違いで寝心地が良い。多少値は張ったが、体躯の大きな他種族向けのソファを買って正解だった。

 

「寝心地良すぎてもう家のベッドがなんか物足りないんだよな……」

 

「……家に帰って寝ましょうよ……はい、コーヒーです」

 

目の前にそっと出されるコーヒーの匂いが鼻をくすぐる。

礼を言って受け取り、口につける。

 

「……ん、旨い」

 

コーヒーの味は、何時も通り旨かった。

 

コン、コン

 

「お、おはようございます……」

 

ノックされた扉の先から声が聞こえて扉が開く。

髪は黒髪ロング、肌は少し色白で、顔は前髪で多少隠れては居るが整った顔立ち。そして目につく背中の羽と尾、頭に生えた二本の黒い角。

 

「あ……た、隊長またオフィスで寝たんですか……」

 

「おはよう、今日は早いな、リリイ」

 

リリイ、と呼ばれた淫魔(サキュバス)は荷物を自分のデスクに置き、こちらに来る。

 

「め、珍しく早く目が覚めたので……」

 

「おはよう、リリイちゃん。何か飲む?」

 

「あ、おはようございますレティシアさん。ではコーヒーを……砂糖ミルク2個で……」

 

……いーや、たけのこだね!きのこは認めない!

……タヌキはやはり無粋やわぁ……きのここそ王道、たけのこは邪道でありんす

 

「ん?」

 

扉の外からなにやら言い争う二人の声が近付く。

声はだんだん近付き、扉が開いて二人の女性が部屋の中に入ってくる。

 

「たけのこが一番だ!」

 

「だからきのこが一番でありんす」

 

「朝から喧嘩か二人とも……」

 

目の前で火花をバチバチと飛ばす二人。

一人は鮮やかな金髪を後頭部で不思議な束ね髪にし、肌は浅い小麦色、顔は糸目て何処か妖艶な雰囲気も見せる顔立ち。そして頭に生えた狐の耳と尻尾。

 

もう一人はボサボサの短く揃えた茶髪に、肌は健康な肌色だが、両手に巻かれた包帯が見える。顔立ちは目付きが鋭く近寄り難い風ではあるが頭の可愛らしく丸まったタヌキの耳と尻尾がそれを幾らか中和させていた。

 

「おう、おはよう隊長。隊長はきのこ派だよな?」

 

「おはようございます隊長、隊長は勿論たけのこ派でありんすよね?」

 

ずい、と二人は顔をこちらに近付ける。

 

「その話は止めろ……朱、セン。終わらないし止まらないから。それに、俺はどちらでもないしな」

 

「んだよ……じゃあシアとリリイはどっち派だ?」

 

朱(アカネ)……タヌキ耳の娘の眼が二人に向けられる。

 

「んー……私は、どっちも好き……じゃダメ?」

 

「わ、私も……どっちかは決められないかも……」

 

「……まぁ、予想はしていんした……」

 

はぁ、と溜め息一つつく仙李弧(セリコ)。

 

「きのこたけのこ論争はそこまでにしろ、朱、セン。マジで終わらなくなるから」

 

「ちぇっ、分かったよ」

 

「……はぁ」

 

再び溜め息一つつくセン。

と、部屋の外から今度はバタバタと走る音が聞こえてくる。

 

「お、おはようございます!」

 

「おはよう、レイア……って急いでどうした?」

 

「レイちゃんおはよう!」

 

レイア、フレイアは息を切らせながらこちらを向く。

 

「はぁ……はぁ……み、皆居ますか?居ます……ね。つい先程出撃要請がありました!」

 

「!」

 

その場に居る全員が一気に緊張する。

俺も寝ぼけ眼が一気に覚醒した。

 

「内容は?」

 

「純血主義者……かや?」

 

「はい。場所は紋星町の外れの廃倉庫街、既に複数名集結しているとの情報です!」

 

レティシアが机上のマグカップを手早く片付け、リリイが持ってきた地図を机上に広げ、その回りに全員が集まる。

 

「奴等の規模とかはどんぐらいなんだ?」

 

「確認しているだけで10名以上、恐らく武装している可能性が高いです」

 

「はっ、朝っぱらから元気な奴等だな」

 

朱が上機嫌に拳を鳴らす。それを傍目で見ているセンも御機嫌そうに唇を舐める。

 

「廃倉庫街周辺状況は?」

 

「早朝なので今は人が少ないですが、近隣には住宅地、本日他種族交流のイベントがある森林公園があります」

 

「イベント……か、開催に影響が出たら大変……」

 

リリイが公園位置にマークする。倉庫街からは確かに目と鼻の先にある位置だった。もし純血主義者の狙いがこの他種族交流のイベントであれば、開催前に決着を付けなければならない。

 

「総員、武装準備!5分後に出撃する!」

 

「了解!」

 

全員号令と共に即座に行動開始し、俺も準備を進める。

朱は車両のキーを取り即座に部屋を出て、レティとセンは武器保管室へ、リリイとフレイヤは機材室へ走る。

先程までののんびりした会話が嘘のように、全員が機敏かつ迅速に行動する。

俺も整備机の上でフィールドストリップ、分解整備されて組み上げ途中の銃、M57A3を組み上げ、ホルスターを装備し駐車場へ走る。

 

「車両、準備OKだ!」

 

先に駐車場に着いていた朱が車両、ハンヴィーを入り口前に停車させる。

停車と同時に俺はドアを開け、入り口を見る。

 

「武装、準備オーケー!」

 

「電子機材、準備完了です!」

 

武装したレティ、センが先に乗り込み、電子機材を持ったリリイとフレイヤが乗り込み、最後に俺が乗り込んだ。

 

「よし!MIST、出撃!」

 

「りょーかいッ!!!」

 

出撃の合図と共に、朱がアクセルを目一杯踏み込む。

ハンヴィーのエンジンが唸り、一気に加速し始めてそのまま公道へ飛び出し、目的地へと走った。

 

 

 

 

ー廃倉庫街・とある倉庫ー

 

「……オイ、ブツは集まったのか?」

 

倉庫内には、黒い覆面を被った者達がその手に武器を携えていた。ライフル、拳銃、ナイフ……持っている武器はそれぞれ違ったが、それが玩具ではない事は全員周知していた。

 

「バッチリっすよ、残ってた銃器も全部整備して撃てるし、その他の準備もしっかりとな」

 

「大丈夫なんだろうな?いざ撃つ時にブッ壊れたじゃ話になんねぇぞ?」

 

「ご心配無く。状態が良かったからな、整備無しでも撃てる位だったよ」

 

ライフルを構える男がそう言って、コッキングレバーを引く。ガシャン、と音がなり、薬室に弾丸が装填された事を告げる。

 

「……しかし、一緒に置いてあったエロ本……ここに武器隠してた奴等一体なんなんだ?」

 

「なんか……ブタみたいなデケェ化け物と……やたらエロい騎士みたいな女とか耳長い女とか……そんなんばっかだったよな」

 

覆面達が目を向けた先には、山……とまでは行かないが美少女と巨体、いわゆるオークが描かれた本……同人誌が積まれていた。

 

「……エロいっちゃエロいんだが、凌辱系はなぁ……」

 

「……あぁ、絵は良いんだ。だが……なぁ……」

 

「いちゃラブ系とかがありゃ多少は暇潰しにはなったろうに……」

 

「あ、わかる。エロ本なのに話に引き込まれて用意したティッシュで涙拭くような本とか良いよな」

 

「そーそー、エロ主体、つまり使用目的じゃなくてストーリーに力入れてる本とか時間忘れて読んじまうよな」

 

「あるわー、めっちゃあるわー」

 

「シリーズ物でそんなのあると使うの忘れて一気に読んじゃうよなー」

 

「分かりみが過ぎるわーソレ!」

 

うんうん、と覆面達は首を縦に振る。

 

「……んな事より、もうちょいしたら銀行までの地下通路が開通する。そうしたら……」

 

少しエロ本談義に花が咲きそうになるのを遮ろうとしたその時だった

 

ヒュッ……と風切り音が鳴り、地面に何かが落ちて

 

「ん?何の音……」

 

瞬間、光が炸裂した。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「……総員、確保ォ!!」

 

フラッシュバン、爆音と閃光で相手の動きを封じる武器を倉庫内に投げ入れ、爆発と同時に全員に号令を出す。

 

「了解!!」

 

レティシアが大盾片手に倉庫内に突撃する。

それにセン、朱も続く。

 

「一体何……ぐぁぁぁ!?」

 

「それーっ!!」

 

大盾を振り回し、動けなくなっている敵をばったばったと凪ぎ払うレティシア。通常の防弾盾、ライオットシールド……と言うよりブンカーシールドよりも遥かに大きく分厚い盾を難なく振り回し、次々と武器諸共に無力化させる。

 

「クソッ……!!食らえ!!」

 

そんな中、フラッシュバンの効果が薄かったのか、ライフルをレティシアに向け引き金を引こうとして

 

「遅ぇぜ!!」

 

「ぐぁっ!!」

 

拳が眉間に叩き込まれ、壁まで吹き飛ばされる。

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