僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
本編はまあうん……あれだからね、是非もないよね!!
「フフフ~ンフン、フッフフフフンフンフフ~ン♪」
気分よさげな鼻歌を響かせながら手早く且つ繊細な掃除を続けていく、足取りからもご機嫌なのが伺えるほどにウキウキしているのが分かる。変わらぬ日常の一ページだが変わらぬもの事が一番尊くて大切なのは良く分かっている、だからこそ一日一日を大切に過ごしている。久しぶりの非番を自宅で悠々自適に家事をしながら過ごす、これも一つの贅沢な時間の使い方、である。
「よし、家全部の清掃終わり!!」
仕事の関係もあり掃除も出来ない時もある、幸いな事に明日も休み。明日はこの綺麗になった我が家で昼寝をしたりのんびり音楽でも聴きながら甘いものを嗜むのも悪くはない。気付けばもう既に日も暮れている、そろそろ夕食の準備を始めるとしよう。エプロンを付けて包丁を握って食材を切っていく、メニューは既に決まっているので迷う事もなく作業を進めていくと辺りは完全に夜の帳に包まれた。そして―――漸く玄関の扉の鍵が回った音がした、鍋の火を止めながら手を拭きそちらへと足を向ける。
「お帰りなさい流子さん」
「ただいま~……ああ~もう疲れたよぉ~……龍牙君慰めてぇ~」
「よしよしよく頑張りましたね」
「ムフフフ~ン♡」
出迎えた自分の姿を見ると繕っていた凛々しく魅力にあふれていた表情はあっさりと破顔し、そこにあったのは疲れと浮き彫りにさせているが愛しの旦那様に出迎えて貰えた事に対する喜びに溢れている表情だった。素直に疲れた事を吐露して抱き付くと甘く抱き止めてくれながら優しく撫でてくれる、この瞬間がたまらない。
「あと少しでご飯も仕上がりますけど先にお風呂にしちゃいます」
「―――そこはもう一声あってくれてもいいんじゃないの?」
チラチラっと物欲しげな瞳を向けながらも胸を寄せながら誘惑するような魅惑的な声を掛けてその先を要求する。だが旦那である龍牙は妻のそれをあっさりと受け流す。
「普通それ言うのはそちらだと思いますけどねぇ、というか前にお相手したばっかりですよ」
「えぇっ~しようよ~」
「はいはい我儘言わないで上がらないとご飯抜きにしちゃいますよ」
「上がりますぅ~」
困り顔の旦那様を堪能するのも悪くはないのだが疲れ切っている身体に耐えがたい空腹の今の自分にご飯抜きは辛すぎる、自分でも料理は出来るが腕前で言えば龍牙の上が遥かの上なのである。それを抜きというのは些か辛い、なので素直に従いながら部屋で服を脱いでラフな部屋着になってリビングの席に着くと直ぐに料理がやって来たの見て煌びやかな表情を作りだす。
「もう出来ちゃったの!?」
「後は最後の一手間だけでしたからね、後は盛るだけだから直ぐですよ。今日はチーズハンバーグですよ」
「わぁ~い流子、龍牙君のチーハン大好きィ~♪」
疲労と余りの空腹からか若干の幼児退行している妻を見て少しだけ笑いを浮かべながら自分も席について共に手を合わせて食事を始める事にする。今日も会心の出来、そんな料理を妻である流子は美味しい美味しいと子供のような笑みを浮かべて食べていく。余程空腹なのか喉を詰まらせるほどに食べていくので慌ててお茶を手渡したりといった事もあった食事は本当に楽しい一時であった。
「プハァ~……んもうお腹いっぱい、大満足ぅ~……」
「お粗末様でした、今日もいっぱい食べましたね」
「んもう現場が大混乱でお昼も食べる暇も無くて……あ~もうあそこでマスコミが要救助者にならなければもっと早く終わってたのにぃ~……」
結婚しても尚、土川 流子ことピクシーボブはプッシーキャッツにてヒーロー活動に勤しんでいる。今回も出動したのだが現場中継を行っていたマスコミが愚かな真似をして自らも要救助者になるという事をしてくれたおかげで現場の混乱は更に酷くなった上に、それらの救助も困難を極めた為に凄まじい時間が取られた。その為に何時も異常に疲れた上に昼食もまともに取れなかった、そりゃボリューム満点なチーハンを3つ、そしてご飯も3杯もお代わりする筈である。
「お疲れ様です」
「んもう龍牙君の言葉だけで私の苦労は報われるのぉ~ン……」
一人だった頃では考えられない幸福感に身体が溶けそうになりながらも視線を少し前に向ければ洗い物をしている愛しの旦那様がいる。雄々しい背中に思わずムラっとしたのかごくりとなどが鳴った、その名の如く猫のような俊敏さと隠密を発揮して背後を取ってそっと抱き付いた。個性を使って温風で洗い物を乾かしていた龍牙は声を出しつつもそれを受け止める。
「ねぇやっぱりしようよぉ~……疼いちゃってもう抑えられないよん♪」
「いや今日はなんか特に酷くないですか、何かあったんですか?」
「人工呼吸の場面があったんだけど、それを私と貴方で置き換えて妄想してました♪」
「救助現場で何やってんだアンタ」
本当に何をやってんだといいたくなるような思いで洗い終わったそれらを纏めながら背中に抱き付かれたまま棚へと閉まっていく。そんな妄想しながらでも腕は鈍らないしブレる事なんて事もないと取るべきなのだろうか……。
「それじゃあせめて一緒にお風呂入ろうよぉ~」
「庭の草むしりした後に入っちゃいました」
「イケズゥ~!!」
そんな彼女だが、次にそんな態度を一変させた。何故ならば突然深く深く抱きしめられて耳元で囁かれた。
「―――お風呂の後、一緒に寝ましょう。その時にご存分にお相手しますよ」
「流子ちゃん存分に身体を洗ってそれに備えてきます!!!」
敬礼をしながら駆けだしていく姿を見つつ溜息混じりにコップに麦茶を入れてのどを潤す。きっと今日は色んな意味で大変な最後になるのだろう、明日が休みで本当に良かったと思いつつ珈琲を淹れるためのお湯を準備する。なんだかんだ言いつつも心から愛している妻からの申し出を断るつもりなど彼には毛頭なかった。
何も映さない黒い鏡は何時しか消え去ってそこには穏やかな笑みを浮かべる黒龍とそんな黒龍と歩む流れを作った女性がいる。そんな二人は駆け寄ってくる我が子を抱き止めながら、抱き上げながらカメラに向けて笑みを浮かべて―――今ある幸せを噛み締める。
という訳でちょっと趣向を変えて既に結婚済みな所から始めてみました。
こんな物もありかなぁと思いまして、まあピクシーさんと絡ませたり途中を書くのは難しいかと思いまして、こっちの方が膨らませやすいかなぁっと。
あとなんか流れが全体的にあれな感じがするって?ピクシーさんらしいでしょ、この作品の。
活動報告にて番外編の募集をしてますのでお時間があれば覗いてみてください。
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