僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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テスト前の黒龍

「勉強全然してねぇ!!!」

「「してな~い!!」」

 

上鳴と芦戸、そして葉隠の悲鳴のような声が聞こえてくる、そんな悲鳴を上げたのも間もなくに迫っている期末テストが大きく関係している。雄英高校のヒーロー科と言えど此処は高校、当然期末テストは存在するのである。体育祭やら職場体験やらで忙しかったので致し方ないと言えばそうだが……この雄英には筆記だけではなく実技に当たる演習もある。頭と身体を同時に鍛えなければならない。

 

「如何しよう!?私、中間やばかったから今回低かったら大変だよぉ!!」

「私も~!!」

「マジでやべえよ!?」

「演習試験もあるのが、辛えとこだよな。勉強ばっかりしている場合じゃねぇし」

 

と葉隠と芦戸、上鳴が慌てている中、一人どや顔を浮かべている峰田。なんだかんだで全開中間でクラス内順位は9位なのでそれなりに成績自体は良い峰田。上鳴曰く、お前のようなキャラは馬鹿で需要があると語るが、当人は世界に需要があると謎の余裕を見せる。

 

「でも峰田、お前演習大丈夫なのか。寧ろ心配すべきなのはそっちなんじゃ」

「オイラなら完ぺきにこなせるさ」

「何その謎の自信」

「うわ~ん龍牙君どうしよう~!!!」

 

と龍牙に泣きつく葉隠。透明なので分かりにくいが制服を見る限り、龍牙の目の前で懇願するように手を組んでいる……と思われる。

 

「勉強、見ようか?」

「良いの!?そうだ龍牙君って頭良いもんね!!」

「そうでもない、と思うけど」

 

と当人が言っているが中間の結果は飯田と同率3位なので相当に頭がいい部類である。自宅学習の外にも根津に勉強を見て貰ったりもしていたのでその影響もあって頭の中も鍛えられている。教える方もハイスペックの根津であるので全科目を完璧に教え込んでいる。

 

「俺なんかで良かったら」

「うわぁ~ん龍牙君は私の救世主だぁっ~!!!」

「大袈裟だなぁ……」

 

と龍牙の手がブンブンと上下に振られる、葉隠が握って感謝を示すように振るっているのだろう。

 

「それじゃあ勉強会……って感じで良いのかな」

「うんっそれでいいよ!!それじゃあ今度の御休みに何処かのカフェとかで」

「よしそれじゃあ頑張っていこうか葉隠さん」

「うん!!(あれこれってもしかして……)」

 

デートって奴なのでは!!?と葉隠の脳内が一気に染まってしまった。全く意識こそしていなかったのだが勉強会をする為に二人で外出をしてカフェに行く、これは少女漫画で見た伝説のお勉強デートと言う奴なのでは!!?と一瞬で頬が熱くなっていく、先程まで何も思わなかったのに急に顔が熱くなっていく。

 

「―――さん、葉隠さん」

「うわぁっ何!?」

「いやこれからお昼ご飯行くけど、如何する?」

「あっうん行く行く!!」

 

龍牙は緑谷達に誘われたらしくそれについて行くのだが、葉隠は龍牙に連れられるように昼食に行くのだが……その間に葉隠は顔を真っ赤にしながら龍牙の事をチラチラと見ながら後に続いて行った。

 

「(ううっ何でこんなにドキドキしちゃうのぉ……ううっただ勉強教えて貰うだけなのにィ……)」

 

 

「でもまあやっぱり、問題は峰田も言ってたが演習試験だろうな。何をするのか把握出来ないのが怖い所だ」

 

食堂に付いた面々はそれぞれ食べたいものを注文してテーブルに着き、食べながら話を続ける。因みに龍牙が頼んだのは海鮮丼セットである。

 

「流石に突拍子の無い事はしないとは思うが……普通科目は授業範囲内だからそっちは何とかなる」

「うん。ノートも確りとってあるし、それと一緒に教科書を見直せば何とかなるよね」

「なんとかなるんや……」

「龍牙君も、何とかなるの……?」

「まあなると思う」

 

そんな話をしつつも龍牙は葉隠との勉強内容を決めていていく。そんな中、緑谷の背後から迫る影がトレイをぶつけそうになるのを間一髪のところで隣に座っていた龍牙が手を上げて止める。

 

「気を付けろ。食事中だ」

「……ああっすまないね」

 

まさか止められるとは思ってもみなかったのか、口角をひく付かせながらも謝罪するB組の物間。龍牙からすれば悪意に満ちている彼のような存在の行動は簡単にセンサーに引っかかる。龍牙としては分かりやすい相手なのである。

 

「所でさ、龍牙君だっけ?君、ギャングオルカの事務所に行ってる時にパワーコングの活躍に居合わせたって言うじゃないか。注目を浴びる要素ばかり増えていくよねA組って…ただ、その注目って、期待値とかじゃなくてトラブルを引きつける的なものだよね。特に君なんて個性を発動させた時なんて完全にヴィランじゃないか!何時か、君がヴィランと間違われて退治されない事を願うよ!!」

「ちょっとなんてことを!!」

 

物間の嫌味ったらしい発言が進んでいく中で流石に看過できない物が出た。それは龍牙の個性に関する事、彼とて好きで今の個性の見た目になったわけではない、これは全ての異形系個性に当てはまる事。これは嫌味ではなく完全な差別だ、と葉隠は怒りながら言い返そうとするのだが龍牙は緑茶を啜りながら返す。

 

「それで結局何を言いたいんだ、B組の物間……だったか。今の発言はヒーローとしてアウトな事気付いてるのか?」

「はぁっ?何処かアウトなのか教えて欲しいねぇ、寧ろ君の無事を祈ってるんだけどねぇ!!」

「そうか、ならば次から気を付けておけ。俺はもう気にしていないが、個性の見た目云々は異形系の個性を持っている人たちに対する差別になってしまう恐れがある。ヒーローが差別的な事を口にするのは良くないぞ」

「うっ……!!」

 

本人も言われて気付いたのか後ずさりをする。

 

「無事を祈って貰えるのは感謝しておく、有難う」

「ま、まあそういう事だよそれじゃあ……」

 

毒気を抜かれたように少し気落ちしながら去っていく物間、龍牙にとってはあの程度の言葉では心が揺らぐ事などあり得ない。

 

「大人だね龍牙君~!」

「葉隠さんもありがとうね、態々怒ってくれて」

「当たり前だよこの位!」


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