僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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演習試験に臨む黒龍

三日間に渡って行われた期末筆記試験、1学期の集大成的なテストに皆が顔を青くしたり勉強した所が出たと一喜一憂したりする中漸くそれが終わりを迎えた。テストの回収も済んだところで実技試験前の少しの休憩時間に葉隠は龍牙の元へとすっ飛んで行った。

 

「龍牙君ありがとうぉぉっっ~!!!問題殆ど分かったよぉ~!!」

「そりゃよかった、為になった?」

「なりまくりだよぉ~!!やっぱり龍牙君は私の救世主だぁ~!!」

 

実は中間の結果がクラス内で18位の葉隠、今回の期末は絶対的にやばいと思っていたらしい。そんな葉隠は期末までの1週間をみっちり龍牙と勉強をしてきたのである。時にはカフェで、時にはお弁当を持ち寄って高台の公園で、場所を変えながら分からない場所があれば丁寧に解説と簡単な解き方を教えながら葉隠は頑張って勉強をしてきた。そのお陰でもあってか、問題を全て埋めたどころか殆どの出題が理解出来た程だった。

 

「龍牙君の予想ドンピシャだったよ、なんであんなにぴったりだったの!?」

「……勘?」

「凄い勘!!今度お礼にアイス奢るね!」

 

勘。実際勘なのだが……実は今まで龍牙は根津に勉強を見て貰っていた。その根津は教材として過去の雄英のテストから出題した事があったのでテスト傾向が龍牙には何となく読み取れていた。それに合わせてラスト二日の模擬テストとして龍牙が予想問題にかなり近い物が多く出題されたのであった。そのお陰もあって葉隠は大きな手応えを感じる事が出来ていた。

 

「龍牙君って先生の才能あるよ!!凄い解りやすかった!」

「葉隠さんが元から頭が良いんだよ。俺はそれに合わせてちょっと調整しただよ、自分に合ったやり方さえすればどんどん伸びていくのが人間だからね」

「兎に角ありがとうぉ~!!これで赤点回避だ~!!」

 

余談であるが、葉隠の点数は全教科で最低でも70点台で、クラス内では9位という好成績だったという。尚、龍牙は緑谷と同率3位だった。

 

「それでは演習試験に入る。当然これにも赤点はある、補修地獄に遭いたくなきゃ死ぬ気で乗り越えてみろ」

「あれ、先生多い……?」

 

全員がコスチュームを纏っている中で集合、間もなく行われる演習試験に向けて気合を入れるのだが……明らかに先生の数が多い。相澤にエクトプラズム、セメントスにミッドナイト、13号にパワーローダーと雄英が誇る教師陣が集結している。

 

「尚、君達なら事前に情報を仕入れてこの試験の事を聞いてるかもしれんが生憎その情報は無駄になった」

「「……えっ」」

 

その言葉に絶望し真っ白になったのは上鳴と芦戸であった。情報ではロボ相手の演習という話だった、この二人に共通しているのは対人相手では全力で個性を使いづらいという事。だがロボ相手ならば一切の加減をする事なくぶつかっていけると踏んでいたのだが……どうやら変わっているらしい。

 

「今回から内容を変更しちゃうのさ!!」

『校長先生!!?』

「(父さんお茶目……!!)」

 

相澤の捕縛布の中から顔を出す根津、それを見て龍牙は軽く可愛いなと思ったりするのであった。変更するのは試験をロボから対人戦、つまり教師との対決へと変更。ヴィランの活性化を警戒してより実戦的な物に変更し、より高みを目指した教育の為との事。そして、これから行われるのは二人一組(ツーマンセル)か、三人一組(スリーマンセル)での教師と戦う試験となる。

 

「ペアの組と対戦する教師は既に決まっている。動きの傾向や成績、親密度…その他諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ」

 

発表されていく組み合わせ、龍牙は一体どうなるのかとドキドキしながら待っていると遂に自分の名前が呼ばれた。その相手とは……

 

「黒鏡」

「はいっ!」

 

 

数日前。学校の一室では教師らが集まりA組の演習試験によるペアの検討が行われていた。

 

「次に黒鏡ですが、個人的にはこいつをどうするべきかと思っています」

「彼カ……確カニナ」

 

相澤の意見に賛同するエクトプラズムに続くように殆どの教師がそれに同調した。それは龍牙が飛び抜け過ぎている実力と鍛え上げられ過ぎた個性が関係している。

 

「言わずもがな、攻撃防御機動力の全てにおいて完璧と言っていいでしょう。黒炎に剣、個性の部分発動、攻撃の反射……それでいながら力押しに頼らず、それなりに頭を回した小細工も出来る上にかなり周りを見る。ハッキリ言って1年で此処まで個性を鍛え上げている奴は滅多にいない。加えて1年が躓きがちな持久力においてはそれが最も優れている」

「アハハハッいやぁ全く息子が優秀だと困っちゃうよね!!」

 

と笑っている根津だが、他の教師たちからも同じような笑いがこぼれる。確かに教師からすれば課題を用意するのが大変だがそれだけ将来有望でこれからも期待が出来るという事になるのでこれはこれで相手をするのが楽しみになる。

 

「僕が相手をしようかい、僕は龍牙の苦手コースは全て知り尽くしているよ!」

「私でもいいわよ。龍牙君相手なら私の個性は十分通用するし」

 

と根津とミッドナイトが名乗りを上げる。龍牙の相手としてはこの二人が最も効果的なのは明白、二人に決定するべきと思ったのだがそれに相澤は待ったをかけた。

 

「ですので、こいつの課題はパートナーと如何に歩調を合わせ、如何に相手を活かせるのかにするつもりです」

「成程……確かに龍牙君単体で見た場合はかなり厄介ですが、それを抑え込んで相手に合わせる、如何にその中で全力を出すかにシフトするんですね」

 

13号の言葉に相澤も頷く。龍牙一人だけの能力はギャングオルカに鍛えられているだけあって申し分ない。だが相澤はそこに目を付けた。根津から聞いたが基本的に龍牙の訓練は一対一か一対多が殆どで自分の方が数的な優位にあった事は無い。ステインの時に経験こそあるが、あれはパートナーが経験豊富なパワーコングだったからこそとも言える。だから実力的に大きく劣る相手と組ませる事にする。

 

「その相手は葉隠を当てるつもりです。当人の個性は透明化のみで戦闘向きではありません、故にそれが黒鏡の足枷にもなる。そこを如何フォローするのかを見ます」

「では相手は如何するんだい?」

「黒鏡に最も通用するのは搦め手でしょうが、敢えて―――全力で叩き潰す方向で行きます。ですので相手は―――」

 

 

「私がする!!さあ黒鏡少年、葉隠少女、全力で掛かっておいで!!」

「オ、オールマイト先生が相手なの!!?」

「おいおい冗談きつくねぇか……?」

「HAHAHA!!」


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