僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
木椰区総合病院、意識を失ってしまった龍牙はその病院へと運び込まれた。その病院の個室の中で、今龍牙は眠り続けている。そんな龍牙を見つめるようにリカバリーガールや根津の姿があった。二人の心配そうな瞳が向けられ続ける中、龍牙は漸く目を覚ました。
「ううっ……俺、は……?」
「目が覚めたかい、龍牙」
「校長……?それにばっちゃんも……なんで……?」
「覚えてないかい?」
目覚めたリュウガはボンヤリとした意識の中でまだ舟をこいでいた。何がどうしてこうなったのか、如何して今ベットの上で横たわっているのかさえ分からない。それを少しずつ紐解いていくしかない、そしてそれらを行っていくうちに思い出してきたことがあった。
「そうだ、確か俺は……葉隠さんと別れてそれから眼と足が不自由な人に手を貸してそれから……っ!!!」
―――君から預かっていた物を返さなければいけないとずっと思っていたからね、これで君は完全だ。これで君は完全になった。
「あの男は!!?」
「落ち着くんだ、ここは病院だよ。君のいう男はいない」
飛び上がるかのように身体を起こした龍牙を根津は諭すように落ち着かせる、そして何故龍牙が病院にいるのかという経緯を話す。麗日の通報によりショッピングモールは一時的に封鎖され捜査が行われている時に警察が意識を失っている自分を発見し、病院へと搬送された。そして根津とリカバリーガールは駆けつけてくれた、ギャングオルカは本当は来たかったらしいのだが……如何しても外せない仕事があり来られないとの事。
「そうか……緑谷はそんな奴と……あいつもあいつで修羅場だったって事か……」
「ああっ。彼は凄いよ、自分だけではなく周囲の人間の命を握られていたのに冷静に判断して行動出来た。パニックを起こしても可笑しくないのにね」
「本当に大した子だと思うよ」
そんな風に話をしていると個室の扉をノックする音が聞こえてきた。根津が入っていいと言うと入ってきたのは花と果物の入ったバスケットを持ったオールマイトだった。
「私がお見舞いに来たっ!大丈夫かい黒鏡少年、試験のお詫びも兼ねてお見舞いに来たぞ!」
「ああいえあれは本当に気にしなくていいのに……でも来てくださって嬉しいです。有難う御座います」
お見舞いの果物と花を受け取りながらも龍牙は少し嬉しそうにする。ギャングオルカの代わりではないがこうして誰かが自分の見舞いに来てくれると言うのに嬉しさを感じている。そんなオールマイトは少しだけ根津と目を合わせて頷きあった。
「さて、オールマイトも来た事だし話を続けようか。龍牙、どんな男だったんだい?」
「ああはい、えっと……目が悪いって言ってたんですけど足も悪いのか凄いフラフラしてたんです。それでちょっと手を貸して座れる所までその人を連れて行ったんです」
そこまでは龍牙の優しさが出ている話だ、ヒーローを目指している者としてよい行動だと根津も思う。だが問題はこの後なのだ。
「それで少しだけ話をしたんです、そしたらその男は……」
「如何したんだい龍牙、言いにくいのかい?」
「……あの、校長。オールマイトにこの事を話していいのか分からないんですが……そいつは俺の事を知ってたんです。昔の事を……」
「「っ!!」」
龍牙なりに配慮した言葉、恐らく事情を知らないオールマイトには分からないだろう程度の事を伝えると根津とリカバリーガールは強張った。昔の事、つまり龍牙の身にあった事、旧姓を知っているという事になる。過去の事を知っているとなると限られてくる。しかしそれらは鏡夫妻が様々な手を使って隠している事、それをどうやって知ったという話にも繋がる。
「根津校長にリカバリーガール、少年の過去の事とは……?」
「それは何れ話すよオールマイト。龍牙、その男はどんな人だったんだい」
「えっと、山高帽を深く被ってた上にサングラスみたいな眼鏡かけてたんで顔は……でもなんて言ったら良いんだろう……」
あの男に撫でられた時に感じたあの不思議な感覚、あの感触に自分は覚えがあるような気がしてならなかった。だがそれが分からない、何故そんな覚えがあるのか……。
「そうだ、あの男、何かを俺に返すって言ってました!」
「返す……?」
「確かにそう言ったのかい?」
「そうだ、その後急に体の中が熱くなって苦しくなって……それでそいつは俺が完全になるって……」
その時、龍牙を除いた全員がとある男を連想した。敵連合の頭目たる死柄木弔、その背後にいると思われる邪悪な影を強く連想させた。不敵に笑いながら闇に座する邪悪なる影を……。だがそれを連想すると同時に謎も浮かび上がってくる。何を龍牙に返し、何故返したのかという事である。
「……龍牙、今日一日はこのまま病院で身体を休めていなさい。明日迎えに来るから、ゆっくりとね」
「えっ校長……わ、わかりました……」
「しっかり休みなよ」
「うむっではな黒鏡少年」
そう言って去っていってしまった根津らを呆然に近い形で見送った龍牙は如何したのかと思いながらも、既に日が沈み夜となってしまった窓の外を見る。一体自分に何が起きているのだろうか、何も分からないが良からぬ事が始まっているのではという予感だけが不気味に脈動している。
「俺は、何を返されたんだ……?」
そう呟いた時、何かがあった。何かが―――疼いた。