僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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現れる黒龍

「おい、ここで一旦休憩だ。お前ら一度降りろ」

「はーいってB組は」

「つうか、なんだ此処。パーキングエリアじゃねぇな」

 

バスはとある場所で止まった。そこで相澤が降りるように通達すると、生徒たちは疑うこと無くそれに従う。逆らうのが怖いのもある。外に出て身体を伸ばしほぐしながら辺りを見渡すとそこは崖の上の何の変哲もない空き地。確かに景色の良い場所ではあるが、公衆トイレも何も無い。ただ、普通車が一台止まっているだけだった。特に峰田はジュースを飲み過ぎたからかトイレに行きたいと訴えるが相澤はそれをパーフェクトスルー。

 

「やっほ~イレイザー!!」

「ご無沙汰してます」

 

相澤が丁寧に頭を下げた相手は小さな少年を一人連れている猫のようなコスチュームを纏った女性が二人。しかし龍牙は見覚えがあるのかあっと小さく声を漏らすのであった。

 

煌めく眼でロックオン!!

キュートにキャットにスティンガー!!

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

 

見事なポーズを決めながらもヒーローらしい口上を述べる二人の綺麗な女性がそこに居た、クラス一のヒーローマニアが食いついた。

 

「連名事務所を構える4名一チームのヒーロー集団!!山岳救助を得意とするベテランチームだよ!!今いるのはマンダレイとピクシーボブだぁ!!」

「緑谷、緑谷興奮するのは分かるがストップ」

 

と興奮しっぱなしの緑谷を龍牙は何とか抑え込む、特にベテランと言ったあたりから地味にグサッと来ているプッシ―キャッツのマンダレイとピクシーボブ。そんなとき緑谷は思い出した、龍牙は自分達の中ではプロヒーローと一番関わりが強いのだと。

 

「もしかして龍牙君知り合いなの!?」

「いや、師匠が新聞読みながらチームワークがいいなって言ってたから覚えてた程度」

 

流石に龍牙の師匠経由でもプッシーキャッツとは関わりは存在しない、龍牙もギャングオルカが読み終わった後の新聞を見てみたらそこにあった彼女らの活躍記事を読んだ程度。尚この時のギャングオルカは対集団ヴィラン戦闘訓練の相手にいいなと言う意味で言ったのであった。

 

「でも凄いやもうキャリアは12年にもなるあのベテランチームのプロヒーローに遭えるなんt」

「心は18ぃ!!!心はぁ……?」

「じゅっ、18ぃ!!」

『必死かよ……』

 

緑谷にピクシーボブのアイアンクローめいたものが炸裂する。こうかはばつぐんだ。尚この時、龍牙はミッドナイトに初めて会った時にお姉さんと呼んだ時に滅茶苦茶喜んで抱きしめられた事を思い出す。矢張り女性は年を気にするんだなと思いながら、自分も気を付けようと思うのであった。そんな僅かにカオスになりつつある空間でマンダレイが説明を始めた。

 

「ここら一帯は私らの私有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

『遠っ!!?』

 

そんな彼女が指さしたA組の宿泊施設の行方、それは鬱蒼としている森の先にあった。勘のいい物ならばここで思うだろう、何故そんなに遠い此処でバスから降りさせられたのかを。龍牙は場所を指差された時点で察していた。何故ならば―――

 

『龍牙、俺はこの無人島の中心で待つ。日暮れまで着かなければ……夕飯抜きだ』

 

既に体験済みだからである、この時は直後に海に向けてぶん投げられてまず海外まで泳ぐ工程が挟まれていたので特にやばかった。因みにその時は日暮れの30分後辺りに到着して夕飯を抜きにされた、目の前で焼き魚を美味しそうに食べられて辛かった。

 

「今は午前9時30分。そうね、早ければ12時前後かしらん。12時半までにこれなかったキティはお昼抜きね♪」

「やっぱりそういう系。まあうん、この後はピクシーボブの個性に飲まれて下に落とされるとかかな」

「大正解!!そこの子、目聡い子は……大好きよ、中々にイケてるし♪」

「―――悪いね諸君、既に、合宿は―――始まってる」

 

直後、ピクシーボブが地面に手を当てる。そこからまるで土石流のごとく地面が盛り上がってA組を飲み込みながらそのまま崖の下へと叩き落としていく。唯一巻き込まれていないのは海へと投げられた経験がある龍牙のみで、それを回避した後に自主的に崖の下へとジャンプしていった。

 

「ネコネコネコ……いいわね、彼」

「ちょっとやめときなさいって。見境なくなってきたんじゃないの?」

「いいえこれは、本気の愛の炎がバーニングオンしちゃうかもね……」

「……私は止めたからね。この辺りは私有地だから個性の使用は自由だよ!!今から3時間、自分の足で施設においでませ!!この、魔獣の森を越えてね!!」

 

そんな風に何か危ない方向性に駆け出していきそうな同僚(ピクシーボブ)を軽く牽制した後に個性を活用して宿泊施設に来るように伝えるマンダレイ、しかしその直後に驚いて変な声が出てしまった。何故ならば……崖下からぬるりと龍牙が顔を覗かせたからである。

 

「すいません。相澤先生、炎とかはあんまり使わない方向性の方が良いですよね、山火事怖いですし」

「当然。轟と爆豪にもいっとけ、仮に火事起こしてら自分達で始末付けろって」

「分かりました」

 

そして下へと戻っていく龍牙だが思わずマンダレイとピクシーボブはそれを目で追った。その時には龍牙は既に地面に降りていたが僅かながらに見えた、彼の周りに蜷局を巻くようにしながら彼を守護する黒い龍の姿を。

 

「何々最近の雄英の子ってあんなのまで出せるの……?」

「黒い龍を従える年下イケメン彼氏……じゅるり」

「うぉいアンタ流石にいい加減にしなさいよ」

 

 

「龍牙君、もしかして分かってたの?」

「何となく。師匠に無人島で海にぶん投げられた経験があるから、それが生きたんだと思う」

「どんな経験だそれ……」

 

地面に降りて周囲を見回すとそこにあるのは薄暗い森だけ、だが龍牙は敏感に感じ取っていた。嘗ての1週間耐久訓練のように此方を見つめ続けている存在の視線に。それに対応する為のように龍牙は個性を完全発動させる。

 

「兎に角に頑張っていくしかないな、多分オールマイトとの死闘で目覚めたこの力を存分に使ってやる……!!」

「それってもしかしてさっきの……!!」

「ああっ……召喚(アドベント)……黒龍!!!」

『グオオオオオォォォォッ!!!』

 

その時、龍牙の身体から一匹の黒い龍が飛び出し龍牙を守るかのように現れた。この龍は一体、何なのかという考えを行うよりも先に魔獣の森と呼ばれる所以が襲い掛かってくるのだが、黒龍はそれと対峙するのであった。しかし龍牙は知らなかった、何故この力を存分に使えるのか、何故龍を呼び出せるのか、その意味を……。




龍の詳細は次回辺りにでも。

でもこれ、詳細いるかな。

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