僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

117 / 327
猛特訓する黒龍

『グオオオォォォォッッ!!』

「チェストォォオオオオ!!」

 

刻一刻と変化し続けていく足場が不安定なフィールド、周囲への注意を解かないまま足場の微小な変化にも気を配りながら迫ってくる土魔獣一体一体の特徴を判別して的確な攻撃を導き出し、その攻撃を当てるまでの身体の動かし方を即座に思考し身体に反映させる。それを何度何度も行いながら個性を限界まで酷使するという地獄に近しい特訓を行っている龍牙だが、既に早朝から昼食を挟んでも7時間以上が経過しているが彼は真摯にそれに向かい続けながら全力を振るい続けている。

 

「あの子凄いスタミナ……もうプロの中堅クラスを超えるぐらいのタフネスを持ってる」

 

新たに土魔獣を作り出してそれらを送ると同時にフィールドを崖に幾つかの足場が点在する物へと変化させるピクシーボブが思わず呟いた。他の生徒らも頑張っているが龍牙のそれは他を凌駕している。肉体面もそうだが精神的なタフネスさが異常の一言では済まない、強靭な肉体を強固な精神が支えている。

 

「ピクシー、ハイドリンク。貴方も適度に休憩挟まないときついでしょ」

「悪いわねラグドール、でも大丈夫。私のトレーニングにもなるから結構為になる」

「本当に凄いね……あの龍もコントロールしてるなら、マルチタスクなんて話じゃない」

 

ピクシーボブも土魔獣を操る為のマルチタスクには慣れている、無意識的な操作も含めるとA組が宿泊施設に到達するまでに繰り出した数など目ではない数を制御して操る事を可能にしている。だが龍牙のそれは異なる。対する敵への考察などを一切やめずに身体を動かして考えを即座に実行する、それでありながら龍へ最適と思われる指示などを飛ばして活用する、どんな脳内活動をしているのかある種気になってくる。

 

「これは負けてられないねぇ……!!よぉ~し新技、超大型土魔獣行くよぉ~!!」

「ちょっとやりすぎないようにね?」

「ムフフフッ……見た目こそ怖いけど本当は純粋無垢な青少年……じゅるり」

「ちょっと……それにしても……」

 

ラグドールはサーチで見た情報を再び回覧する、それは彼と近い位置で特訓している鏡 白鳥についての物。個性としても酷く似通っている、自らを動物を模したかのような鎧で包み込みながらもした動物の特徴を使用出来るという個性。その情報を見て真っ先に連想したのがビーストマンの個性だった。一度だけ会った事があるが、ビーストマンの個性は複数の動物の身体的特徴を発現させ使用出来るもの。それに酷く似ている。

 

「(……駄目、これ以上見ちゃ駄目。それは明らかに逸脱しちゃう)」

 

そう思いながら情報を閉じる、ラグドールはサーチで気付いてしまっている。龍牙と白鳥が血の繋がっている兄妹である事、龍牙の個性に関する情報で分かってしまっている。龍牙は個性が原因で両親に捨てられ、妹とも会えなかった事を……だからこれ以上は見ないと決めた。

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「おおおおっっマジでっ!!?」

 

ピクシーボブの驚く声に引かれて顔を上げるとそこには黒炎を纏った龍牙は天から彗星のごとく駆け抜けながら巨大な土魔獣の頭部を撃ち貫いている姿があった、そして彼はそのまま着地すると素早く倒れこむ土魔獣の下へと潜り込むと一度ドラグブラッカーと一体化すると龍頭を土魔獣へと振り抜いた。

 

ドラゴンファングインパクト

 

DRAGON FANG IMPACT(ドラゴンファングインパクト)!!!

 

龍頭を激突させた部分からは龍の頭部のような紋章が刻まれると同時に黒炎が走っていき、全体へと浸透すると同時に土魔獣を完全に粉砕して見せた。そして即座にドラグブラッカーを分離させると、それと同時に背後から迫ってきていた土魔獣を一蹴する。

 

「まだまだぁっ!!!」

 

「……やばい、本気でキュンと来た」

「マンダレイに報告しとこ……」

 

 

「さあさあ昨日言ったよね!!世話を焼くのは今日だけだって!!」

「己で食う飯は己で作るのだ!!」

「こんな時のド定番カレー!!」

 

日も大きく傾き始めた夕暮れ、夏なのでまだまだ日の光はあるがそれでも暗くなってきたのは事実。夕暮れ時にその日の特訓は終わりとなってそれぞれが食事の準備をする時間となったのだが……皆、特訓の厳しさ故か元気がなく疲れ切っている。唯一元気そうなのはもっときつい経験をした事がある龍牙ぐらいだろう。

 

「にしても龍牙君君本当にタフだね、なんでそんなにタフなの?」

「師匠に鍛えられてますから、それに食事がちゃんと出来るなら良い事尽くめです。以前、散々苦労した挙句に飯抜きにされたのに師匠は俺の目の前で焼き魚を頬張ってましたから……」

 

ギャングオルカには本当に感謝している龍牙だが無人島での訓練、その一点は未だに根に持っているらしい。まあ海にぶん投げられた上に自分が目標を達成出来なかったせいではあるのだが……見せ付けるかのようにして食事をされたら根に持たない方がおかしいのだが。余談だが、その日から少しの間、龍牙はギャングオルカに対する反応がキツくなって、そんな態度を取られてギャングオルカは嫌われた!?と本気でショックを受けており、根津が言葉を掛けるまで仕事に影響する程に消沈していた姿がそこにあった。

 

「……苦労、してるのね」

「いえ、それほどでもないです」

 

尚、軽く目が死んでいたのは言うまでもない。

 

「ジャガイモ凄い多いな……ポテトサラダにでもするか、砂藤に障子手伝ってくれないか。ジャガイモを洗うの。それだけやってくれれば後は俺が全部やる」

「それだけでいいのか、お前だって疲れてる筈だろ」

「その後も俺達もやるぞ。お前だけにやらせるのは気が引ける」

「A組とB組の分のポテトサラダだから大変だぞ。ざっと40人前」

「「いいからいいから」」

「じゃあお願いする、有難う」

 

カレーを作りながらもその時間の合間に一番量が多くあったジャガイモを洗ったり蒸かしたり、人参なども加えたりして作っていく。流石の量に砂藤も障子も多少ウンザリするのだが、自分からやると言い出したのだから責任を持って確り遂行するのであった。龍牙はそんな二人に感謝しながら、黙々とジャガイモを潰していくのであった。そしてそんな苦労もありながら作ったポテトサラダは皆に好評で作った甲斐があったと三人は笑顔になりつつ、カレーを食べるのであった。




カレーとポテトサラダは鉄板だと思っております。

というか毎回毎回カレーとワンセットで家だと出てきました、ので私も毎回毎回カレーを作る時はジャガイモを多く買い込んでおります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。