僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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狙われる黒龍

「取り合えずドラグブラッカーに宿泊施設に行くように指示出しました……」

「うん、こっちもブラドキングに事情はテレパスで伝えておいたから。えっとさ、龍牙君元気出して?」

「……いえ落ち込んでないですよ、ええ落ち込んでないです」

『絶対気にしてる……』

 

空を飛びながら気絶してしまったB組連中を施設へと送っていくドラグブラッカーを見送りながら、皆は顔を俯かせながら沈んだ声をしている龍牙を気にかけた。彼自身、もう自分の見た目についてはある種のあきらめもついているし気になどはしていなかった。しかし、流石にB組全員が気絶した事は流石に心に来るのか普段の元気は数割減っていた。

 

「大丈夫だって龍牙君、それにほらっ君だって悪気があった訳じゃないんだからさ。ネッ!?」

「そうだ、奴らがお前に慣れればそれも無くなるという物だ。気にしていると前に進めんぞ」

「……分かってます」

 

とマンダレイと虎が励ましの言葉を掛ける。龍牙も分かってはいるのだろうが……それでも気になる物は気になるのだ。A組の皆は完全に慣れきっているので何も思わないが、慣れていない者からしたら暗闇で個性発動中の龍牙に遭ったら卒倒してしまうのも分かる気がする。

 

「……どうやら戻ってくるみたいですね、送り届け終わったみたいだ」

「そう、それなら次はどうしようかしら……」

「恋バナでもする?」

「うぉいラグドール、それ私に対する当てつけなの?」

「おいやめておけ、ピクシーがキレるぞ」

 

そんな風な長年連れ添ったチームメイトの絆を感じさせるようなやり取りの最中に、妙な焦げ臭さを感じた。何かが燃えるかのような焦げ臭さと迫ってくる煙のような物、一瞬思考が遅れる中で誰かが叫んだ。

 

「や、山火事!!?」

「なんでいきなりっ!!?」

「消防呼ばねぇとやばくねぇか!?」

 

突然の山火事にパニックになりかける中、龍牙は直感的に何かを感じ取った。それは敵意と殺意、ギャングオルカとの本気の殺意を交えた訓練の中で培った経験と感覚がそれを捉えたのか、個性を発動させながらピクシーボブを守るかのように立った。

 

「如何したの龍牙君ってな、何身体がっ!!?」

 

突然の龍牙の行動に困惑するが、それよりも先に身体がいきなり引っ張られるような強い感覚に襲われる。だがそれを守るように立っていた龍牙の背中に押し付けられるような形で留まる。

 

「俺に掴まって下さい!!」

「う、うんっ!!」

 

背中に抱き付くような形で自分を引き付ける引力のような物に耐える、龍牙も腰を落としながら自分事引っ張るような力に耐える。

 

「何だ、そこの茂みか!!?」

「ドラグブラッカー……そこだぁっ!!!」

『グオオオオオォォォォッッ!!』

 

耐える龍牙の声に応えるかのようにドラグブラッカーが帰還し虎が見定めた場所の少し手前に黒炎を吐き出した。

 

「熱っ!!?」

「いきなり放火って本当にヒーロー志望のやる事かしら!?」

 

龍牙とドラグブラッカーの黒炎は通常の炎よりも火力は高い、その温度に軽く悲鳴を上げつつも茂みから二人組の人影が出てくる。それと同時にピクシーボブを引っ張っていた引力が消え去り、龍牙と隣に並び立つかのようにして構えを取る。

 

「何者だ貴様ら!!この山火事も貴様らの仕業か!!」

「その通り、そしてご機嫌よう雄英高校!!我ら(ヴィラン)連合開闢行動隊!!!」

「敵連合……!?」

「USJで襲い掛かってきた連中の仲間か!!?」

 

敵連合、USJを襲撃してきた者達と同じ組織。だがそれだけではないよう様子、正式な部隊名を持ったチームがここに来ている。明確な目的があるとプッシーキャッツの面々は感じ取る、しかも最初に狙ったのが自然の中からならば最大の力を発揮出来るピクシーボブを奇襲で潰そうとしていた。それも恐らくラグドールのサーチに掛からないようにする為、だがそれは龍牙によって潰され、致し方なく出てきたのだろう。

 

「貴様ら何のつもりだ、何をしに来た」

「言っただろう。開闢行動隊だと、我らが齎すのは天地の始まり。そして新たな創成を呼ぶ」

「何だこいつ、頭おかしいのか」

「……」

 

何やら黙り込む常闇、開闢という言葉の響きに何かを感じつつも今の状況で何を考えてるんだと若干辟易している模様。プッシーキャッツの面々には目の前のヴィランの情報も頭に入っている。ヴィラン、スピナーとマグネ。どちらも多くの事件の参考人として手配されているヴィラン。そんな一人、スピナーが懇切丁寧な礼を行いながら頭を上げる。

 

「我らの目的は―――君だ。ステインが認めし男、そしてステインを継承する男。黒き龍を従える竜騎士―――黒鏡 龍牙」

「俺、だと……?」

「そう、我らの目的は君なんだよ。君さえ来てくれるならば我々は何もせずに帰るが……如何かな?」

 

顔を歪めながらそう問いかけるスピナーの返答に応えるかのように、ヒーロー達が盾になるように構えを取る。行かせる訳がないという返答その物、だがそれも想定済みと言わんばかりにスピナーとマグネの背後から何かが現れる。それは余りにも異形すぎる存在、異常に膨張した筋肉が模ったかのような蜘蛛のような8本の脚を生やした身体に人間の上半身が接続されているかのような脳みそが剥き出しのヴィランがいた。

 

「あ、あれって!!?」

「USJでオールマイトに倒された奴と同じ!!?」

「保須でパワーコングさんにぶっ飛ばされたのと同じ……!!」

 

「さあ行くぞ、偽りのヒーロー共!!」

 

混沌に満ちた、夜が始まる。


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