僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「全員落ち着いて、施設へ避難行動開始!!ラグドール、一緒に護衛を!!」
「了解!!皆こっち!!」
敵連合の襲撃とその目的に驚かされたが直ぐに気持ちを取り直し、避難指示を行う。それに生徒たちは素直に従う、彼らに個性を使用する許可は出ない、下手に使えば問題に発展する。それを分かっているからこそあの爆豪も苛立ちながらも指示に従っている。が、龍牙は下手に動かなかった。正確には動けない、蜘蛛の身体に上半身が生えている、所謂アラクネのような脳無の集中力が此方に向かっている為に下手に動けば施設側にそれを連れていく事に繋がる。逆に言えば自分はここにいるならば脳無は動く事は無い。
「……龍牙、隙を見てお前も撤退しろ。我がそれまでお前を守る盾になろう」
「私だって守られっぱなしじゃないんだから!!」
龍牙の意図を察すると同時に判断を褒めながら護衛に付く虎とピクシーボブ。脳無とやらの実力は分からないが雄英のUSJに乗り込んできたうえにオールマイトと一戦交えた者と同じような存在、それと生徒がまともに戦えるとは思えない。
「そうだ、龍牙君ドラグブラッカーを貸して!!洸汰君を助けないと!!!」
「ああっ連れてけ!!ドラグブラッカー、緑谷に従え!!」
『グオオオオォォッ!!』
龍牙は即決で緑谷にドラグブラッカーを貸し与えた。この合宿に共に居たマンダレイの従甥、緑谷は今彼が居るであろう場所を知っている。ヴィランが襲撃してきているこの状況で一人きりにしているのは絶対に拙いと判断し、空を飛べる黒龍を借りたいと言ってきて、龍牙はそれを即決で頷いた。
「やばいよマンダレイ、あの子マジで一人でいる!!」
「ええっ!!?それじゃあ私も一緒に行くから、その間にテレパスで状況を全体に伝える!!」
「分かりました、行けっ!!!」
龍牙の指示を聞き、緑谷とマンダレイを背中に乗せた龍は咆えながら空へと舞いながら凄い速度で緑谷が指さす後方へと駆ける。
「ダメね速すぎるし身体をくねらせてるから狙いにくいったらありゃしない……」
「流石はステインを継ぐもの……!!」
「誰が継ぐかってんだ……!!」
「継ぐさ!!お前はステインに認められ、その素質がある者だからな!!」
とスピナーはまるで歓喜するかのように叫ぶ、龍牙と会えて本気で喜んでいるかのように。本気で龍牙がステインの継承者となると信じているかのようだ。
「成らねぇよ!!それにお前はあの人の何を知っている、何を思っている!?」
今も偶に夢に見る、ステインと相対したあの日の出来事を。
―――贋作が……ヒーローという称号を汚すのだ!!!ヒーローとは、目的であり手段ではない!!だから俺が正す、贋作が蔓延る世界の粛清する!!
誰か一人が理解してあげれば、彼は同じヒーローを志しただろう。それほどにヒーローに憧れ、希望を持っていた。だからこそ彼は許せなかったんだ、ヒーローとは思えない人たちを、だからこそ元に戻したかった。自分が憧れたヒーローのように、夢と希望を与えてくれるそんな存在に。
「何も知らずに、少しだけ聞きかじった程度で憧れた奴があの人を侮辱するな!!」
龍牙はキレた。彼自身、ステインの事は好きではないが嫌いではない。道を選び間違えただけの人だった。その程度の認識だがステインの中に遭った信念だけは本物だったと思っている。
「俺はあの人とは違う、違う道を歩いている。俺は―――ヒーローになる!!」
「交渉決裂ね、完全に……だったら脳無、殺さない程度にやっちゃいなさい!!」
マグネの指示を受けて脳無は一気に行動を開始した。その八本の脚を巧みに使いながら一気に加速してピクシーボブと虎を突破して龍牙の元へと駆けていく。
「しまった!!」
「龍牙君ってあらぁっ!!?」
急いでカバーに入ろうとしたピクシーボブと虎だが、今度は互いに引き合うかのように身体が激突した。身体が磁石のように接着され、まるで動けなくなった。マグネの個性である磁力の影響、男性はS極、女性はN極を纏わせる事が可能で範囲は自分の半径4.5m以内。それによる虎とピクシーボブを完全に接着したかのようにして拘束してしまった。脳無はそのまま迫ってくるが咄嗟にピクシーボブは叫んだ。
「龍牙君!!私の名において戦闘を許可する!!戦って!!!」
「―――ピクシーボブ……了解!!」
迫ってくる脳無、それに対しながら龍牙は後方へと飛んだ。脳無はすかさず糸を吐いて龍牙を捕まえようとするのだがそこへ火球が飛来し、糸を瞬時に燃やし尽くしながら地面へと突き刺さる。ドラグブラッカーが二人を送り届け終わり、戻ってきた。そして主を攻撃された事に対して怒りを感じているのか今まで以上に低い唸り声を上げながら脳無を威嚇する。
「―――!!」
そんな事知った事かと言わんばかりに迫る脳無、それをまるで一蹴するかのように尻尾の一撃で払い飛ばしながら特大の火球をぶつける。大爆発を起こしながらその炎はまるで硬質化でもしたかのように脳無の全身を包み込み、固めてしまう。それを見ながらドラグブラッカーは嘲笑うかのような声を上げる。
「―――行くぞ」
短い言葉に頷くかのように周囲でとぐろを巻き始め甲高い咆哮を上げる。その中心で龍牙は構えを取る、全身の力を解き放つかのようの如く。そして軽く跳躍するとドラグブラッカーが吐き出した黒炎を纏いながら脳無へと突撃していった。脳無は必死に硬質化した炎の中でもがくが炎は離れないそして―――
「だああああぁぁぁぁっっっ!!!」
そのまま龍牙は黒炎を纏ったまま脳無へと蹴りを炸裂させた。黒炎を推進力だけではなく攻撃の強化にも用いたこれが正真正銘、自分だけの必殺技。ドラグブラッカーが発現したからこそ出来るようになっていた技、身体の奥底まで響く一撃を脳無へと叩き込んだ―――
「―――そう、そう来るわよね」
「―――最大の好機に最大の一撃、予想通り」
それが失敗だった。直後、脳無の上半身が爆ぜ、そこから途轍もない量の糸が自らとドラグブラッカーを縛り上げていく。
「ガッ……!!?糸ぉっ……!!?」
『グオオオォォォン!!?』
糸はまるで生きているかのように的確に足や腕を身体に密着させるかのようにしながら縛り上げていく。完全に身動きを封じる生きた罠、蜘蛛脳無。爆ぜた部分から噴き出た糸はドラグブラッカーさえも脱出不可能な程に頑強で異常な粘度を持つ。それによって全身を雁字搦めにされてしまった龍牙とドラグブラッカーは地面へと落ちた。かろうじて動く頭を上げるとそこには黒い闇のような物が広がっていた。
「貴方の力は体育祭で承知しております、ですので―――徹底的に封じさせていただきますよ。鏡 龍牙君」
そんな声が聞こえた直後に、龍牙の意識は―――闇へと落ちた。