僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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黒龍、敵中にて。

龍牙君は私にとって、憧れだった。最初会った時は確かに凄い個性だと思ったけど、怖くはなかった。だって今の社会、色んな個性があるしそれによって見た目だって色々、それで驚いてたら駄目だし何より見るべきなのはその人の内面だってお母さん言ってたもん。

 

それから龍牙君と友達になって分かった、龍牙君はとっても優しくて暖かい人だって。ちょっと天然ぽいけど、凄く周りの人のことまで考えてる人で、私の……憧れの人。

 

何時の間にか龍牙君とよくいるようになってた、勉強を教わったり一緒にご飯食べたりするのが当たり前になってた。見えない筈の私の手を握って貰うのも当たり前に近くなって、すごくうれしかった……今まで私の手を直ぐに握ってこれる人なんていなかった。お母さんとお父さんだって何か持ってないと分からないのに……。

 

―――何時の間にか、龍牙君の笑顔も大好きになってた。

 

そして、林間合宿で気付いた。なんか猛アピールしてるみたいなピクシーボブを見てて分かったの、私―――龍牙君の事が、好きなんだって。だからそれを伝えたい、だからだからお願い―――!!

 

「ダメダメダメ……龍牙君を連れて行かないでぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」

「駄目今行ったら貴方まで危なくなる!!」

「龍牙君っっっっ!!!!」

 

その日、雄英高校1年の林間合宿にて事件が起きた。敵連合による襲撃が発生。怪我人はA組のみ、不幸中の幸いとも言える事だった。だが―――その大きな代償としてA組所属生徒、黒鏡 龍牙は連れされられてしまった。

 

 

こんなにも気分が悪いのもそうそう無いだろう、そんな苛立ちを抱えながらも龍牙は何とか気分を落ち着かせながら目の前の現実と相対していた。所持していた携帯などは取り上げられてしまった上で椅子の上で拘束具を付けさせられている。龍牙は一応ギャングオルカからヴィランに拘束された際の訓練なども受けているが、それの経験を実際に使う事になるとは思ってもみなかった。

 

「それがお前の姿か、成程。ステインの継承者に相応しい顔立ちだ!!」

「あんたさ、それ連呼してるけど意味不明よ。確かに中々に良い顔立ちしてるけど♪」

 

薄暗いバーの中と言った所だろうか、狭い室内の中に複数人のヴィランが此方を見つめるように監視しながら腰かけたりしている。この状況で暴れたとしても直ぐに抑えられる、ドラグブラッカーを暴れさせる案もあるが流石に狭すぎて力を発揮しにくい。また一緒に拘束されるのは明白だろう、ここは大人しくしているのが最善策。

 

「はぁっ……何がステインの継承者だよ、要するに自分の推す相手が欲しいだけだろ……」

「違う、俺はこのヒーロー社会を壊す為の象徴を欲しているだけだ!!それこそステイン!!」

「他当たれ」

 

呆れたような声を出しながら対応する龍牙にいよいよをもってボスのような存在が此方に声を差し向けた。身体中の至る所に手のような物を付けている男、顔すらも手のマスク、いや手その物が掴みかかっているかのようになっていてわからない。

 

「初めましてだな、黒鏡 龍牙、いや鏡 龍牙。歓迎するぜ」

「……」

「そう警戒するなよ、俺達はお前に危害を加えるつもりはない」

「あんな化け物トラップを差し向けてくるような奴らが言っても説得力ねぇだろ」

「出なきゃお前を連れてくる事は出来なかったからな、必要経費って奴だ。おっと名乗るのが遅くなったな、死柄木弔だ」

 

これだけでもかなりの情報を得られている、敵連合は自分の情報をかなり集めているらしい。自分の戦闘能力を詳しく分析してその為に最適な脳無を差し向けて確実に確保に出向いてきた、それだけを自分を評価しているともとれる。そして何より―――自分の旧姓を知っている事、紛いなりにものあのヒーロー夫婦が手を尽くして法律的にも関係を絶たれたの名前、それを知っている時点で油断の一つも出来ない。

 

「んで俺を如何する気だ」

「簡単だ、俺達の仲間になれ。鏡 龍牙」

「……はぁっ?」

 

完全に本音が出た、何言ってんだこいつ的な声がでた。

 

「お前は今のヒーロー社会の犠牲だ、偽物のヒーローによってお前は捨てられた。高々個性の見た目が恐ろしいってだけで自分にある地位や名誉に目がくらんだ愚か者が、お前を捨てたんだ。お前は拒絶されたんだ、だからこそお前がすべきものはなんだ。そう、同じような犠牲者を作らねぇために今の歪んだ体制をぶっ潰す事だ。俺達はそれをやる、勝ち続けて今の社会を崩壊させる。俺の右腕になれ、龍牙君」

 

目の前の男、死柄木は自身に誘いをかけている。自分の中にあるだろう両親への報復を願う心、怒り、憎悪を刺激しながらそれを今の社会へ向けろと言って来ている。しかもそれは自らの為ではなく他の為に使えと言っている。己ではなく自らと同じような思いをしたであろう者達の為に使えと。上手い揺さぶり方だ。

 

「……死柄木弔、聞きたい事がある」

「ああ勿論。これはスカウトだからな、対等じゃなきゃフェアじゃねぇ」

「そうか、なら聞くが―――何故俺の旧姓を知っている」

「ああそれか、先生が知ってた」

 

先生、そう言った時に死柄木弔の背後のモニターが動き、SOUND ONLYとだけ表示された。そしてそこから声が聞こえてきた。

 

『久しぶりだね、龍牙君。こうして君とまた会えてうれしいよ――――以前は親切にしてくれてありがとうね』

「この声、あの時の―――!!!」

 

確信した、過去を今に結び付けた犯人はこいつだと。


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