僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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平和の象徴と黒龍

未だ病室での入院を強いられている龍牙。事件の被害者として今龍牙の顔は全国に広まっている、体育祭の一件もあり龍牙が攫われたのはヴィランとしての適性があるからでないのかと世論で騒がれたりもしており、なんとか龍牙にインタビューをしようとするマスコミが多い。龍牙の入院先は秘匿されている為、見つかる心配はないがその対処の為に根津は走り回り、それを変えようとしている。そんな父の頑張りを受けながら病室で大人しく龍牙の元に来客が訪れた。

 

「私が来た!!」

「オールマイトォ!?」

 

そう、巨悪であるオール・フォー・ワンを打ち砕いた平和の象徴、オールマイトであった。だがオールマイトは既に限界を迎えており、まるで骸骨のようにガリガリに痩せ細った姿のトゥルーフォームと呼ばれる姿だった。その姿は龍牙も何度か雄英でも見かけた事のありその時は、オールマイトの親戚で彼が無理をしないか近くで見ている八木 俊典と名乗っていたが……如何やらがそれが本名だったらしい。

 

「オールマイト、如何して……!?」

「休んでいるのにすまないね、是非とも君に話を聞きたくて」

「俺なんかで良ければ……」

 

そう言ってオールマイトは部屋に入ってきた。身体中に包帯を巻き片腕をギブスで固めて吊るしている状態なのに話を聞きに来た。その背後からは警察官の塚内とオールマイトとは長い付き合いで担任だったというグラントリノまでやってきていた。それを見て自分の話を随分と真剣に聞きに来たと背筋を正すとオールマイトは椅子に腰かけながら言った。

 

「まず、君から言いたい事は無いかい。ナチュラル・ボーン・ヒーロー、平和の象徴がこんな姿になって」

「……んじゃ一言」

「何でも言ってくれ」

「オールマイト、貴方……」

 

どんな事を言われる覚悟もある、もっと早く助けて欲しかったという責める言葉も確りと受け止めるつもりでここに来た。例えどんな罵声を浴びせ掛けられようとも―――

 

「日本人だったんですね」

「そこなの黒鏡少年!!?」

「だってどう見たってザ・アメリカンじゃないですか」

「いやもっとあるでしょ!?何でこんな姿なの的な質問!?」

「オールマイトは何でもありでもおかしくないでしょ的な所ありますから」

 

龍牙的なオールマイトは何でもありのスーパーヒーロー、ある種の理不尽の塊的なものになっている。そこには少なからず自身をボッコボコにしてくれたことに対する事もないようである。

 

「そう言えば俊典……お前、この小僧の試験の相手をしたときに瀕死寸前の重体にしたらしいじゃねぇか……オルカから聞いてるぞおい」

「ギクゥ!!?」

「おいおいオールマイトそれマジなのか、教師に向いてないとは正直思ってたけど流石にそれは……」

「龍牙っつったよな小僧、試験の時こいつは加減してたか?」

 

グラントリノの問いかけに龍牙は正直困った、目の前の平和の象徴はまるで捨てられそうな子犬のようなウルウルした瞳で此方を見つめている。言わんとしている事は分かる、オールマイトはグラントリノを酷く恐れている。自分にとってのギャングオルカ的な立場であると同時に相当に厳しくされたのだろう。だからこの場面で良いから自分の味方をしてほしいという懇願だ。

 

「正直言って、俺にとってオールマイトの加減って言うのは分かりません。まあ確かに俺は瀕死になってたらしいです。その事でばっちゃん、いえリカバリーガールや根津校長がオールマイトに説教したっていうのも聞きました」

「やっぱりか……」

 

ギロリッ!!と擬音が付きそうな程に鋭い視線が投げかけられる、それに漫画のような怯え方をするオールマイトに少しだけ笑いがこみあげるが言葉を続ける。

 

「でもそれはオールマイトが俺の相手を真摯にしてくれたんだと思います。確かにオールマイトはちょっと教師的な意識が欠けてるともいえるかもしれませんが俺にとっては良い先生ですよグラントリノさん」

「何でそう言い切れる、お前さんを重傷にした奴だぞ?」

「ぶっちゃけた話、俺は師匠に何度も大怪我させられてますから」

 

それを言われてグラントリノは呆気にとられたような顔になった。オールマイトは顎が外れんばかりにあんぐりと口を開け、塚内はうわぁっ……と言わんばかりに引いている。

 

「骨折、打撲、脱臼、切り傷擦り傷、もうどんだけの怪我をしたやら……それらに比べたらオールマイトから受けた傷なんて優しいもんですよ」

「……おい小僧、俺がオルカに一言言ってやろうか。弟子の育て方見直せって」

「いえ大丈夫ですよ。あれが父さん、いえ師匠なりの優しさなんです。俺の事を思って厳しくしてくれてるんですよ」

 

そんな事を笑いながら言う龍牙にグラントリノは何も言えなくなった、痛みに慣れているのと厳しい訓練に秘められている師の意思を完璧に汲み取っているからこそ言える事だ。これ以上は完全な藪蛇だ。

 

「俺はオールマイトは何事にも全力投球で、プロとしてアマチュア以下の俺にも向き合ってくれた先生だって思ってます。俺個人としては……好きな先生です」

「く、黒鏡少年……!!」

 

素直にオールマイトは感激していた、まだまだ教師として未熟であることを自覚している身としては此処まで自分の事を認めてくれている生徒がいる事に感動を覚えずにはいられない。それを聞いてグラントリノは溜息混じりに言う。

 

「ったく良かったな俊典、俺は小僧が少しでもお前が駄目だと言えば徹底的にシバくつもりだったからな」

「ヒィィッ!!?ご、御勘弁を先生!!?」

「……平和の象徴がヒィィッ……って言っちゃ駄目でしょ……というかグラントリノさんに何されたんですか」

「何、徹底的に実践訓練でゲロ吐かせただけだ」

「えっそれだけで恐れてるんですか、師匠の方がよっぽど恐ろしいんですけど」

「ちょっと待って黒鏡少年、おじさん少し君が恐ろしくなってきたんだけど!!?」

 

この後、龍牙は話をしたが大した事は無くそのまま解散となった。龍牙はゆっくりと身体を休める事になる―――筈だったのだが

 

「龍牙君っお見舞いに来たわよ!!」「龍牙君来たよ!!」

「ちょっと葉隠ちゃん押さないでよ入れないじゃない!!」

「それはピクシーさんでしょ!?」

 

部屋に飛び込んできて、互いに部屋に入るのを邪魔しあっているピクシーボブと葉隠を見て休める暇なんてないなと思いながら二人の相手をするのであった。

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