僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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2人の英雄編―――天才科学者の個性と黒龍

「おおっ凄いなんて走力なんだ!!いやこれは個性関係なしに彼の実力なのか!!?」

『いえ、この姿だと俺の力が底上げされてるので個性も関係ありますね』

「最っ高だ!!なんて素晴らしい個性なんだ、もっと俺に見せてくれ!!」

 

戦兎の研究室にてコスチュームとサポートアイテムの開発の為に龍牙の詳しいデータを揃えてる為に様々なテストを受けている。今現在は走力の計測の為に高速で稼働しているコンベアの上で全力疾走を行っている。走る速度だけでもかなりの好記録なのか、戦兎の機嫌は更によくなっていく。これだけハイスペックな相手に合うアイテムを製作するというのに興奮しているのだろうか、葉隠と龍牙としては良く分からない世界だと思いつつもテストをこなしていく。

 

「腕部集中……ドラゴン・ストライクゥッ!!!」

「WOW!!パワーもとんでもないなぁ!!これは素材も吟味しないとダメだな、しかもただ強靭なだけでは彼の動きを阻害して機動力を殺してしまいかねないから柔軟性の向上も必須。だがそれだけの素材を作り出すのは容易じゃないな、これは素材の吟味と同時に製作面での新しい機材の設計から始めていく必要があるのか!?」

 

顎に手を当てながら高速詠唱をするかのように言葉を途轍もない速度で呟いている戦兎を見つめる龍牙と葉隠、唯々龍牙の個性に合わせた素材を探すだけではなく、それらのを素材を100%活かせるような機材の開発から入らなければならないという事が聞こえてきてなんだか想像以上にとんでもない事になってきたな、と少しばかり不安になりつつある。そんな時、戦兎に天啓が迸る。

 

「そうだ!!確か龍牙君の個性数値はこれほどまでに高いんだから、素材云々よりも個性に合わせてそれらと同調する系統のアイテムの方が余程合理的だし性能もあげられる!!そうだよ、ついついコスチュームって事にとらわれ過ぎたな!!そうだそうだよ、あのアイテムを彼なら活かせるかもしれないじゃないか!!最っ高だっ!!龍牙君ちょっと待っててくれ!!」

「えっ!?あ、あの戦兎さん一体どこへっ!!?」

 

と思わず声を掛けるが戦兎はそんな声が聞こえなく程に一気に加速して部屋を飛び出して行ってしまう。その際に微妙に彼の靴やらが発光しているように見えたが、それは気のせいだったのだろうか。思わず顔を見合わせてしまう龍牙と葉隠、今まで色々と濃い面子と会った事がある二人が、あれは別のベクトルの濃さだと再認識する。

 

「私、桐生博士の事ってすっごい大天才って事しか知らなかったけどあんな人だったんだね……」

「研究一筋って感じだったね……それと好奇心とかが刺激されたらなんか、それを止める色々なストッパーが一気に外れて暴走するタイプ……」

「だね……ねえ龍牙君、大丈夫かな」

「不安になってきた……」

 

2人も戦兎の事はそこまで詳しいという訳ではない。雄英のOBで自分達にとっての先輩、そしてサポート科に所属していたが雄英体育祭で他の優勝候補者を退けての優勝経験がある規格外な人物。それでヒーロー科への転入の誘いもあったそうだが、結局転入したのは3年になってからで基本的にサポート科の人間だった。そして卒業後、本格的に頭角を現した人物。

 

一時的にプロヒーローとして活躍したが、それも僅かな間で直ぐに研究方面に進んで様々な研究成果を世に送り出し続けている。特に革新的な技術の開発に新素材などの分野での活躍が目覚ましい。彼が開発したものがあるからこそ、今のヒーローのコスチュームとサポート業界が大躍進したのは間違いない事だろう。

 

「ただいまぁっ!!!」

 

とそこへドアを蹴り破りながら帰ってくる戦兎。流石は元プロヒーロー、ドアは大きく拉げた上に深々と蹴った際の痕が残ってしまっている。一体どんな脚力をしているのだろうか……と激しく思ってしまった二人が無残な事になっているドアを見続けていると戦兎がそれに気づいたように自慢げに語りだした。

 

「ほうっ二人とも線が細くて筋肉質じゃない俺が此処まで蹴りがやばいのが気になるか」

「流石にね……だって凄い拉げてますよ?」

「くの字ってレベルじゃない位になってますよこれ……」

「ふふん、それじゃあ改めて自己紹介も兼ねて俺の個性を教えちゃおうかな」

 

そう言うと戦兎は懐から何やら透明なボトルのような物を取り出すとそれを龍牙へと向けた、一体何をするのかと思った直後だった。龍牙の身体から黒い炎の粒子のような物が少しずつ溢れ出した。

 

「な、なんだこれ!?」

「りゅっ龍牙君から光があふれ出てるよ!?これが博士の個性ですか!?」

「ふふん、まあ見てな。大丈夫だ危険はない」

 

そう言いつつも粒子は更に溢れていき龍牙の身体から抜けていく、それらは戦兎の手にしているボトルへと次々と吸い込まれていく。その量に応じるようにボトルは少しずつ膨れ上がっていくのだが、それを見て戦兎は驚いたように声を上げてしまう。

 

「うぉっマジか、此処までボトルにギッチリ入っていくってどんだけ個性の出力がやばいんだ?潜在能力的にもまだまだ先があるって事だな……いやぁ将来が本当に楽しみだなぁっ」

「そ、そうなんですか……?」

「うしっもう終わるな」

 

その言葉通りに身体から粒子は収まり、それらは全てボトルへと飲まれた。指で口を閉めながらパンパンに膨れ上がったボトルを今度は巨大な装置の中へと入れて起動させる。静かだが力強い駆動音を立てながら装置が動き出したのを確認しながらモニターで装置にかけたボトルの状態を見て見ると全ての数値が計測範囲の限界をギリギリを記録している。

 

「うわぁっ~……なんだこれ、どんだけやべぇ出力してるんだよ龍牙君の個性。形容するなら放水しなきゃいけないレベルに溜め込んだダムみたいだぞ」

「そ、そんなに凄いんですか!?」

「そんなにやばい。逆にこれだけの出力があるのに暴走一つしてないって事はそれだけ制御を完璧に出来てるって事だな。改めて脱帽だ……」

「それよりも今のって一体……」

「あっそっか、悪い俺の個性の説明忘れてたな」

 

振り返りながら先程と似たようなボトル、何処か兎のような見た目をしている赤いボトルを見せながら声を出す。

 

「俺の個性は抽出、あらゆる物からその成分の抽出して採取する事が出来る。このボトルも俺の発明品でね、抽出した成分を完璧に保存出来る優れものだ」

「じゃあさっきの光は……」

「そう、さっきのボトルには龍牙君の成分が入ってる。正確に言えば個性の成分がな、こいつを解析すれば君にピッタリなアイテムを作り出す事が出来る。この天っ才物理学者に任せておきなさいって」

 

あらゆる物から成分を抽出する事が出来る個性、それこそが戦兎の個性。先程のキックも兎のボトル、ラビットフルボトルの成分を研究して作ったシューズがキック力を何倍にも増幅させた結果なのだと語る。そんなアイテムを複数持っているらしく、戦兎は現役自体はそれらを活用していたとの事。まあ大半の場合は試作品の実験が主だったらしいが……。

 




元サイエンスヒーロー、現天才物理学者、桐生 戦兎。個性:抽出!!あらゆる物から成分を採取して使用する事が出来る。有機物から無機物まで、あらゆる物から成分を取れるぞ!それらを利用したアイテムこそ戦兎の唯一無二の持ち味だ!!

という訳で、戦兎の個性でした。いろいろ考えた結果、こういう個性になりました。何かを作り出すのは個性というよりも戦兎自身の能力によるものだと思いますので。

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