僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
入寮も終了し夏休みももう終わりが近づき始めている頃、1-Aの皆は教室へと集まっていた。相澤から集合するようにと言われているからである、これから仮免の向けての事が始まるのかと皆様々な思いを胸にしながらも相澤を到着を待ちわびていると普段と同じ時間通りに相澤がやってくる。
「先日言った様に諸君には仮免の取得を目標として貰う。ヒーロー免許は人命に直接関わる責任重大な資格、その取得の為の試験は厳しい。仮の免許だとしても取得率は例年5割を切っている」
半分は取得すらできないという事実に一部生徒が戦々恐々とする中、矢継ぎ早に相澤が言う。合理主義者らしい。それと同時に教室に雄英が誇るヒーローでもあるエクトプラズム、セメントス、ミッドナイトが入室してくる。
「其処で君達には今日から、最低でも二つ……必殺技を作って貰う!!」
『凄い学校っぽくてヒーローらしいの来たぁぁぁぁっ!!!!』
必殺技を作る、これを聞いてテンションが上がらない者なんていない。全員のテンションが一気にMAXゲージを記録していく。そんな生徒達を見ながら教師たちがそれに対する持論を述べる。
「必殺、コレ即チ必勝ノ技デアリ型、技ノ事ナリ!!」
「その身体へと染みつかせた技・型は他の追随を許さず、己のオンリーワンとなる。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるかとなる!」
「技は己を象徴し、己の象徴は技となる。今時、必殺技を持たないプロヒーローなんて絶滅危惧種よ!!」
「詳しい話は実演を交えながら合理的に行う。全員コスチュームに着替えて体育館γに集合へと集合、早くしろよ」
『はいっ!!』
その言葉を引き金となったように皆がコスチュームを手にとって素早くそれを纏いながら、体育館γへと向かっていく。我先にと皆が掛ける中に当然龍牙もいる。彼だって興奮しているのだから当然。
「ここは複数ある体育館の中の一つであるγ、トレーニングの台所ランド。通称TDL」
『その通称は絶対に拙い気がする……!!』
ヒーローとは事件・事故・天災・人災といった様々なトラブルから人を救い出していくのが使命であり、自らが危険な場へと飛び込んでいく者。仮免試験では当人の力の適正を試されて行く事となって行く。情報力、判断力、機動力、戦闘力、他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など、多くの適正を毎年様々な試験内容で確かめられて行く事になっていく。その中でも戦闘力はヴィランが活性化している現在において重要な物とされる。
「安定した威力、行動をとれるのは高い戦闘力=ともいえる。この中でA組の中で既にあるものを上げるとするならば黒鏡だな、お前にはすでに二つの必殺技があるだろ」
「はい。ドラゴンファングインパクトとあのキックですね」
林間合宿で龍牙が行っていたピクシーボブとの訓練、それは他のメンバーからも酷く目立つもので特に超大型土魔獣を破壊していたこの二つの必殺技は記憶に新しく途轍もない破壊力を秘めている。他にも一時的な超速移動を可能にする飯田のレシプロバーストなどが挙げられた。必殺技と言っても千差万別、移動系や防御系、妨害や攻撃など幅広いのでそれぞれに会った必殺技が完成する事だろう。
「林間合宿の特訓もこの必殺技を作り出す為の個性伸ばし訓練だった、残りの夏休みの10日余りは個性を伸ばしつつ必殺技を開発合宿訓練とする!!個人によってはコスチュームの改良も並行して考えていくように、Plus Ultraの精神で乗り越えろ、準備は良いか」
『はい!!』
それぞれがセメントスの力でステージを作り出して貰い、そこで特訓を開始ししていく。龍牙も個性を発動させながら何やら考え込んでいるかのようにしている。それを静観しているエクトプラズムは如何するべきかと考えていた。既に龍牙には明確な必殺技と呼べるものが幾つも存在している。防御系とは言いずらいかもしれないが、受けた攻撃を相手へと反射する物まで揃っているので龍牙もどうするべきか悩むのも理解出来るからであった。
「サテ、黒鏡君。君ハ如何スル?噂ニ聞ク黒龍ヲ使用シタ物ヲ考エルカ」
「俺もそれを考えてます、あのキックもドラグブラッカーと一緒にやる事で完成したので多分俺にはまだまだ先があると思います」
体育祭で常闇との戦いで見せた龍牙の究極の一撃ともいえる黒炎を推進力にしながらもそれを纏って相手へと突撃して相手を蹴り砕くキック技。最初こそ不安定で成功率が5割を切っていたが、今では100%で出せるようになっている。龍牙はドラグブラッカーがいるからこそであると思っており、今まで自分が黒炎で作り出していた物は身体の中にあった黒龍の残滓だと解釈している。だからこそ今だからこそ出来る事があるはずだと思っている。ドラグブラッカーがいて、完全なリュウガとして成立しているからこそできる事が……。
「剣……そうだ、俺が出せるのは剣だけか。毎回毎回剣も絶対に出てくるから完全に固定だと思ってた、他にも何かあるはずだ何かが……!!」
『グォォォオオオ!!』
龍牙の意思に呼応したのか、それとも心の中で呼んだのか定かではないが影から黒龍が出現し彼を中心にとぐろを巻いた。そしてその龍を見ながら龍牙はまだまだ先へと進む事を決意しながらエクトプラズムへと向き直る。
「相手、宜しくお願いします!!」
「ウムッ力ノ限リ、協力シヨウ。教師トシテナ」
そう誓う中で、既に龍牙は変化を感じ始めていた。身体の中で黒炎が更に純度を増すかのように温度が上がっていくのを。それを感じながら意識を集中してエクトプラズムへとドラグブラッカーともども向かっていく。