僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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昇る黒龍

肉体を駆け巡っていく炎を感じながら、龍牙は駆け巡る。不安定な足場から不安定な足場へと階段を開け上がっていくかのように飛び移りながら上を目指しては再び降りていく。だがそれだけではなくセメントスに依頼し、ランダムに足場を酷く脆弱な物にするように頼んでいる。体重の掛け方、次の足場へ飛び移る為に込める力加減を間違えるだけで崩落するように。

 

「つまり龍牙君の訓練とは己の力の完璧なコントロール、それ自体は自身その物を必殺技に変える事になります」

「成程。常に出せる必殺技、確かに合理的だ」

 

相澤がセメントスから説明を受けながら龍牙を見つめる。他が突出した何かを作ろうとする中で龍牙は全体を伸ばす事を選んだ、彼はもう既に突出した物を複数所持している。ならば平均(アベレージ)を上げる事を選ぶ。安定した威力と効果こそが必殺技になるならば、通常で出せる力を上げる事も必殺技になり既にある必殺技の強化にもつながっていく。正しく一石二鳥、いや龍牙にとっては三鳥だろうか。

 

「ブラッカー!!」

『グオオォォォッッ!!』

 

適切だと思われた力だが、その最中にセメントスが強度を落とす。崩れる足場から黒龍の身体へと足を移しながら黒龍は飛ぼうとしていたのと全く同じ力で龍牙を飛ばして次の足場へと誘いながら共をする。この訓練を行ってからドラグブラッカーが急激に龍牙のレベルに合うかのように成長している。その影響もあるのが黒龍の胸部と言っていいのかその辺りに新しい装甲のような物が生まれ始めている、これも内心で呼び出せるようになるのかと思いつつも訓練に励む龍牙。そしてラストの仕上げ方は―――

 

「だあああぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

黒炎を纏いながらの突撃する蹴りで登ってきた山を蹴り砕く事、成長する度に黒炎の温度とそれを纏う龍牙の一撃の破壊力は上昇しており彼が通った後には蹴りで空いた穴がトンネルのように出来上がり、そして崩れ去るという事が出来ている。黒龍の成長は龍牙の戦力強化に直結するが矢張りその幅が大きい。山を蹴り砕いた直後の事、TDLにブラドキングの声が響いた。

 

「午後からはB組は使わせてもらう、さっさと退いてくれA組」

「まだ時間外だブラド、時間内位自由に使わせろ」

 

言いたい気持ちは理解出来ると思いつつも龍牙はブラドキングの無言の視線に気付いた。頭部の個性のみを解除しながらそちらへと向かっていく。目の前まで来るとブラドキングは勢い頭を下げた、それに隣にいたB組の拳藤と物間は驚いていた。

 

「何の真似ですか」

「改めて礼をさせて欲しい。黒鏡、俺は君に本当に感謝しているんだ。君が林間合宿に居てくれたおかげで俺の大切な生徒達には傷一つ付く事が無かった、本当に有難う」

 

同時に教師としての情けなさを彼は痛感していた。確かに自分の生徒は無事だったがその代償と言わんばかりに龍牙はヴィランに誘拐されてしまった、その事に自分の生徒がそのような目に合わなくて良かったと心からの安堵を浮かべてしまい酷い自己嫌悪に陥ってしまった。だからこそ今この場で、顔を合わせた時には絶対に誠心誠意を込めた礼をすると誓っていた。それに対して龍牙は頬を欠きながら言う。

 

「そう言われても俺には助けたつもりはないですよ、というかぶっちゃけますけどあれはそちらさん方が俺の姿を見てぶっ倒れた結果ですよ。言うなればある種のB組の自己判断に近い何かです、俺個人としては補修を受けてたやつ以外全員ぶっ倒れた事について不服を申し上げたいです」

「うぐっ……いやそれについては本当にごめんなさい……本当に怖くてその、マジで意識飛んでさ……」

 

隣の拳藤はバツの悪そうな顔を作りながら頭を下げる、そういう彼女も夜の森の中を闊歩する龍牙に絶叫を上げながら意識を喪失を果たした一人。しかも気絶した自分達は龍牙によって宿泊施設に送り届けられた結果としてヴィランの魔の手から逃れられているのである。感謝と恐怖、それしか浮かべられない。そして隣の物間は補修を受けていたので龍牙の暗闇の恐ろしさを知らないが、その恐ろしさのお陰でクラスメイトが助かっているのも事実なのでお得意の嫌味な毒舌も全く回っていない。此処で毒舌を言うほどに性根は腐っていない模様。そしてなんだかんだでやっぱり多少なりとも根に持っている龍牙であった。

 

「まあ結果良ければって奴です、ですので俺は気にしてません」

「そうか……分かったもう何も言わんさ」

「俺の見た目に関する事も何も言わないで貰えると嬉しいですね」

「これからは気を付けるよ……」

 

満足したのか龍牙は一度頭を下げてからドラグブラッカーに飛び乗ると残りわずかな時間を有効に活用する為に動き出した。そんな後姿を見て物間は気まずそうに口を窄めた。

 

「如何したのよ」

「……以前食堂での事を謝り損ねた……」

「え"っアンタが謝るとか何があったの、天変地異でもこれから起こるの?」

「拳藤君さぁ僕の事を何だと思ってるんだい!?」

「精神的疾患持ちの毒舌家かな」

「……流石に酷くないかいそれ」

 

そんなやり取りをしているのを尻目にドラグブラッカーの背中に乗りながら体勢を整えているとドラグブラッカーから僅かに黒炎が漏れていた。それは少しずつだが炎が結晶化していくかのように固まっていき龍の身体の一部を構築していく。

 

「……もしかして、今俺とお前ってシンクロしてるのかな」

『ォォォォッ……』

 

龍牙の呟きにドラグブラッカーはンな事聞かれても困るわっと言わんばかりに困惑するような低い唸り声を上げるのであった。


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