僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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仮免前の黒龍

合宿訓練を経ていよいよ雄英1-Aは仮免習得試験へと挑む事になった。林間合宿と雄英での合宿訓練は全てこの日の為に蓄えてきた経験と力、それら全てを持って挑むのが仮免習得試験なのだ。1年の時点で仮免の習得に動き出すのは全国でも少数派、必然的に自分達よりも長い期間訓練を重ねてきた者達と鎬を削る事になるのだが龍牙は何も恐れていない。訓練期間が長い、それなら自分とて同じだ。一度試験場に立てば全員が対等に扱われる、自分の力でそれを証明すればいいだけの話なのだ。そんな思いを胸に抱きながら試験会場の国立多古場競技場へとやって来た。

 

「いよいよ試験か、緊張してきたぁ……」

「仮免取れるかなぁ……」

「耳郎、峰田。不安は飲みこんでおけ、それに取れるか否かじゃない。取ってこい」

 

緊張に露わにする二人に対して何処か脅しに聞こえるようだが力強いエールを送ってくる相澤に二人は覚悟を決めたように表情を作る。そんな光景を見つめながらも龍牙は何処か飄々としているような表情で試験会場を見つめている。緊張など微塵も無いような姿に頼もしさを覚えた葉隠は笑いながら問う。

 

「龍牙君は全然大丈夫そうだね」

「ああっ師匠とのタイマン前に比べたら全然怖くないからね、師匠の場合は尋常じゃない覇気と一緒に殺意を向けてくるからマジで怖いんだよ」

 

それを聞いて確かにそんな物を一度経験していたら緊張などしないだろうなぁと皆が納得する。ある意味この中で一番過酷且つ実戦に近い物を体験し続けてきた龍牙にとっては緊張などは慣れ親しんだ友人のような存在なのでそれが身体を強張らせる事などあり得ない。加えて偶にプロヒーローを連れて来て複数で向かって来る事もある、その時には自分を本気で潰すつもりで、と前以て言ってあるのかマジでプロヒーローが潰しに来るのでもう必死である。考えてみて欲しい、ギャンクオルカとそんなオルカが認めて連れてきたヒーローがタッグを組んで潰しに来るのである、本気で怖いのである。

 

「まあここでお前らが合格し仮免を取得すれば晴れてセミプロのひよっ子に孵化出来るという訳だ。頑張ってこい」

「うぉしみんな頑張ろうぜ!!」

「んじゃいっちょ何時もの行きますか!!」

『Plus……』

「ULTRA!!!」

 

皆が雄英のお決まり文句の言葉で元気よく行こうとしたところをぶった斬るかの如く、一人の男が肝心なところを全て持って行った。全員がそれに驚いて何事!?と騒ぐ中で再度男は大声を出しながら勝手に円陣に混ざってしまった事を謝罪する、大きく腰を落としながら勢い良く頭を地面に叩きつけながら。

 

「一度言って見たかったんッスPlus Ultra!!自分雄英大好きなもんで!!勝手に混ざって申し訳ありませんでしたッス!!では自分はこれで!!」

 

と自分の言いたい事を全て話しきったと言わんばかりにそのまま去っていく。嵐のようなテンションで全てを押し通るような相手の登場に思わず全員が呆気に取られるのだが、少ししたと後に相澤がその男の名前を口にした事で全員が再起動する。

 

「夜嵐 イナサ……奴は強いぞ」

「でしょうね。彼が着てたのって士傑高校の奴ですよね」

「ああそうだ」

 

士傑高校。東の雄英、西の士傑と呼ばれるヒーロー科高校の中でも最難関と呼ばれる学校。士傑はその中でも雄英に匹敵するの超難関校として酷く有名。そして先程の超熱血漢、夜嵐 イナサは雄英高校の推薦入試にてトップの成績を叩きだしたのにも拘らず入学を辞退しているという事を相澤が語った。

 

「つまり、焦凍並の実力者か……油断してると勝てないな」

「いやお前なら勝てるだろ」

「やってみないと分からないと思うけど」

 

強敵と思われる士傑高校の夜嵐、これから行われるであろう仮免試験に対して皆が気を引き締めている中の事だった。またもやこちらに向けて歩いてくるような足音が聞こえてきた、それは―――A組にとってお世話になった方々だった。

 

「やっほ~応援に来たよ皆」

『プッシーキャッツ!!?』

「そう皆様ご存じプッシーキャッツのお姉さんたちが応援に来て上げたわよ!」

「無論我もいるぞ」

 

そう、林間合宿で自分達を徹底的に鍛え抜く為に協力してくれたプロヒーローチームであるプッシーキャッツがやって来ていた。

 

「えっでも如何して皆さんが!?」

「いやぁ偶然休みが重なってね、それで折角だから見学申請を出して見に来たって訳よ」

「そういう事だね~、あちきらが見てるんだからいい所を見せてよね~!」

 

林間合宿で指導役として様々な世話を焼いてきた彼女らも雄英での合宿で必殺技づくりをしていたという話は聞いていた。自分達の所での訓練をどのように生かし、自分だけの技を身に着けたのか大いに興味がある様子。が、約一名ほどそんな事より他の事に興味が行っている女性がいるのだが。

 

「龍牙君必殺技とか出来た?」

「勿論。度肝を抜かれちゃいますよ」

「ああんもうカッコいいなぁ!!でもそこはハートを射抜くって言うのよ♪」

「そうなんですか?」

「違うからね龍牙君、ピクシーさんのジョークだから」

 

そう、ピクシーボブであった。愛しの龍牙に会えて酷くご機嫌である上に言って貰いたい台詞に行くようにさり気なく誘導している辺り強かである。そしてそれを未然に防ぐかのように立ち塞がる葉隠にピクシーボブはにこやかに笑いながら言葉を出す。

 

「あらぁ誰かと思ったら葉隠ちゃんじゃな~い、ごめんなさい貴方も成長したのか今まで以上に気配が読み取れなかったわ」

「いいえ良いんですよ~ピクシーさん。だってそれってプロヒーローとしてキャリアが長いピクシーさんの目をすり抜けられたって事ですもんねぇ~」

「「……」」

 

「マンダレイ、まさかあれって……」

「うん。マジで龍牙君に惚れちゃってるのよ」

「我も色々言ったんだがなぁ……駄目だった」

「ギャングオルカに許可は貰ったとか言ってたけど、それもなんだか怪しいと思うよあちき」


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